No.336420

頑張れP坊主!「第四章:救出」

Puuryさん

雌火竜『リオレイア』に攫われてしまったP坊主を、バケツとメリィは無事救い出すことができるのでしょうか?・3・

2011-11-19 01:33:46 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1942   閲覧ユーザー数:359

<前回までのあらすじ>

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P坊主達は、街の近くに現れたランポス1体の討伐に出かけたが、空から現れた雌火竜

『リオレイア』によってP坊主が攫われてしまう。バケツとメリィは、P坊主を救出すべく

エミルに渡された地図に印されているリオレイアの住処に向かう。

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第四章「救出」

 

エミルに渡された地図に記されている場所の近くまで辿り着いたバケツとメリィは、

一先ずこの辺に設置されているキャンプに向かう――

 

ここは『森丘』

多くの木々が立ち並び、自然豊かな場所で、多くの草食動物達が生息している。

 

バケツとメリィは、森丘に設置されているキャンプに辿り着くと、荷物と武器の確認を行う。

メリィが自慢の大剣を磨いていると、その横でバケツが何やら調合している。

 

「あのぅ…何を作っているんですか?」

 

メリィが問いかけると、

 

「フフ。きっと役に立つ物ですよ」

 

不気味に微笑むバケツは、調合したアイテムを褌の中にしまう。

 

準備を整えた2人の目に飛び込んだのは、キャンプ場の出口に数人の男達が立っている

光景だった。

メリィが何をしているのか問うが、男達は何も話さない。

 

「あのぅ…なんだかこの流れ…どこかで…」

「確かに…」

 

メリィとバケツは、不審に思いながらキャンプ場を出た瞬間、男達が一斉に立ち上がり、

何やら楽器のような物を取り出し綺麗な音色を奏で出す。

すると、男達は満足したのかそそくさと帰っていく。

 

「なんだったんだ…」

 

バケツが頭を傾けていると、

 

「ぐぅ~」

 

っと、メリィが腹の虫を鳴らす。

 

「お腹が減りました…」

「そーいえば、朝から何も食べていなかったな」

 

腹を空かす2人の目の前に、大きな生き物が通り過ぎる。

目の前を歩く生き物の名は『アプトノス』と呼ばれる草食動物である。

ハンターの主食である肉の殆どがこのアプトノスの肉で、ハンターとしてはアプトノスを倒し、

生肉の採取は基本中の基本である。

 

しかし、極めて大人しい性格であるとはいえ、その容姿はランポスよりも大きく、運悪く

振り回した尻尾に当たりでもすれば致命傷になりかねない。

 

「……どーしたものか…」

 

アプトノスを見上げるバケツは、腕を組み困ったように悩む。

すると、そこへメリィが近寄り

 

「あれは…どうでしょう?」

 

と、バケツに問いかける。

 

メリィが指差したのは、アプトノスの子供だった。

バケツの腰ぐらいの高さで、まだ産まれて間もないであろうアプトノスの子供。

採れる肉の量は少ないが、とても柔らかく高級素材として扱われている。

 

「じゃ~コレで…」

 

メリィが不気味な笑みを浮かべ武器を構えると、異変に気付いたのかアプトノスの群れが

次々と川を渡って逃げていく。

メリィは、逃げようとするアプトノスの子供の足目掛け大剣を大きく振り回す。

すると、アプトノスの子供は体制を崩し倒れ込む。

そこへ、バケツが駆け寄りアプトノスの子供の頭を何度もハンマーで殴り討伐に成功した。

 

「我々の勝利です!」

 

バケツとメリィが大いに喜んでいると

 

「最低だ…」

 

と、茂みの中で2人を監視するハンターが1人……

どうやら街からずっとバケツ達の後を追っているらしい。

そんなことに気づかないバケツ達は、アプノトスの子供の体にナイフを差しこみ、

肉を剥ぎ取っていく。

 

「さて、調理しましょう」

 

そう言うと、2人は同じ道具を取り出しアプトノスの子供から剥ぎ取った肉を

その道具の上に置いた。

2人が取り出した道具は「肉焼きセット」と呼ばれる道具で、ハンターが簡易的に

肉を調理出来る物だ。

調理と言ってもただ焼くだけだが、焼き方が違うだけで味が大きく変わり、食べた者の

体調にも影響する。

 

2人が肉を焼き出すと、何やら音楽が聞こえてくる。

どうやら肉焼きセットの先端に何かが付いているようだ。

 

「タンタタン~タタタタンタタン~♪」

 

肉焼きセットの先端に付いているのは、コックの女の子?のような人形で、音もそこから

出ているみたいだ。

 

メリィは、音が鳴り終わって少し時間が経過した後に肉を持ち上げると

 

「上手に焼けました~!」

 

と、先端に付いている人形が喋った。

どうやら焼き加減が完璧だったらしい。

 

次に、バケツは音楽が鳴り終えても持ち上げることは無く、長めに焼いた結果

 

「○ねよ」

 

と、人形に罵られた。

 

こちらは肉がコゲてしまい、表面が真っ黒になってしまっている。

こんがりした肉を美味しそうに食べるメリィを余所に、バケツは人形を睨みつけ、

コゲた肉を頬張る――

 

「腹ごしらえも済んだようですし、先に進みますか」

 

2人は肉焼きセットを片づけ、その場を去ると茂みの中からハンターらしき人物が現れる。

 

「…エミル…僕は不安になってきたよ…」

 

そう呟くと、謎のハンターはバケツ達の後を追う――

 

「はて?この辺のはずなのですが…」

 

バケツ達は、リオレイアが生息する場所に辿り着いたが、立っている場所は住処ではなく

森丘を見渡せる崖の上だった。

しかし、地図には確かにここがリオレイアが生息している場所と印されている。

 

「おかしいですね~」

 

メリィが崖の下を覗きこむと、大きなモンスターが崖の割れ目から姿を現す。

 

「ギャァーーーー!!!」

 

そのモンスターの発する鳴き声、容姿、まさにあの時出会ったモンスター

リオレイアだった。

 

リオレイアは優雅に空を舞い、そのまま遠くの方へ飛んでいった。

 

バケツとメリィは崖の下を再度覗きこむと、リオレイアが出てきたであろう

大きな割れ目に目ろやると

 

「今リオレイアが出ていったということは…チャンスですよ!」

 

メリィがそう言うと、バケツが重い口を開く。

 

「……た、高いっすね…」

 

どうやらバケツは高所恐怖症のようだ。

 

「P坊主さんがどーなっても良いのですか!?」

 

メリィが珍しく大きな声でバケツに怒鳴りつけるが

 

「……で、でも…どーやって下に降りるんですか?」

 

と、メリィに言い返す。

確かにロープでも無い限り、割れ目があるところまで降りることは不可能だ。

今のバケツ達には、ロープ等の道具は持ち合わせていない。

 

すると、バケツ達の前にロープらしき物が突如現れた。

 

「本当に駄目な奴らだ…これぐらいの用意もしていないなんて…」

 

どうやらバケツ達の後を付けていた謎のハンターが、バケツ達を見かねて

ロープを投げつけたようだ。

 

「あれ?こんなところにロープが!」

 

メリィがロープの存在に気づき、バケツにロープを木に巻きつけるように指示する。

 

あまり気分が乗らないバケツだが、しっかり巻き付けないと落ちてしまうので、

真面目に作業に取り掛かる。

 

しっかり木にロープが縛られていることを確認し、メリィがもう片方のロープを

崖の下に投下する。

すると、僅かにロープの長さが足りないことに気づく。

 

「ん~…これは無理ですな」

 

高いところから降りるのがよほど嫌なのか、物凄く諦めるのが早いバケツとは別に、

メリィは何か使えそうな物が無いか辺りを見渡すと

 

「あ!使えそうな物がありました!」

 

と、言いながら指を差した場所は、バケツの股間だった。

 

「え!?」

 

動揺するバケツに向かって、にじりにじりとメリィが近寄ってくる。

 

「少しだけ…少しだけ使わせてもらいます…」

 

にじり寄るメリィに向かってバケツは

 

「ま、待ちなさい!わ、私は…その…経験が無いのだ!そ、それに…流石にそこまでは

長くないし…」

 

と、自身が童貞であることを曝け出す。

しかし、メリィは耳を傾けようとせず、容赦なくバケツが身に付けている

褌を剥ぎ取る。

あられもない姿で横たわるバケツには目もくれず、メリィはバケツから奪い取った

褌を、ロープの先端に結び付ける。

 

「よし。これで長さが足りるはず…」

 

メリィの予想通り、褌が結ばれたロープは崖の割れ目がある場所まで届くことが

できた。

 

「……ふむ。予想通りだ。うむ。大義であった」

 

むくりと立ちあがったバケツは腕を組み、苦笑いする。

 

「っさ、降りましょう」

 

そう言うと、メリィがバケツの肩の上に乗る。

 

「……ふぅ~…大丈夫…私なら…これしき……」

 

バケツは、何かを言い聞かすかのように小言で呟きながらロープを握り、崖を降りていく。

 

「ん~…やっぱりここに座る事にします」

 

っと、メリィはバケツの上腕二頭筋の上に座る。

 

「ちょっと…邪魔なんだが…」

 

バケツは、メリィを落とさないように慎重に崖を降りていく。

 

「なんとかなるかな?……ん?」

 

茂みに隠れていた謎のハンターがある異変に気づく。

木に縛っていたロープが解けそうだったのだ。

 

「まずい!」

 

謎のハンターは、急いでロープを掴むが、バケツの体重(メリィは軽いので省略)を

全て支えることができなかった。

 

「だ、駄目だーーー!」

 

謎のハンターが崖から落ちると同時に、バケツ達はなんとか崖の割れ目に降りることができた。

バケツ達は、何事も無かったかのように崖の割れ目の中に入っていく。

 

「ぐぬぬ…あいつらぁ~…」

 

崖から落ちた謎のハンターは、間一髪のところで岩の隙間から飛び出している木にしがみ付き、

助かることができた――

 

「暗いですね~…」

 

バケツ達が割れ目の奥に進んでいくと、遠くの方から薄っすら明りが射す場所が

あることに気づく。

光が射す場所に向かったバケツ達の目に飛び込んだのは、リオレイアの巣と思われる

場所だった。

 

「なんだか…凄く…静かですね…」

 

メリィが警戒しながら辺りを見渡す。

地面には、動物と思われる骨が散乱している。

全てが全て動物なのかも分からない程で、中には見覚えのある形をした骨も転がっている。

恐らくハンターだろうか、装備等も一緒に転がっている。

 

「…あれは…使えないか…」

 

メリィは、落ちている装備の中から使えそうな物がないか物色していると、一際目を引く

場所がある。

そこは、光が唯一射す場所で、木の枝で作られた大きな器が配置されている。

バケツとメリィが木の器の中を覗きこむと、白い物体が幾つも並んでいた。

恐らくリオレイアの卵だろう。

 

「ん~…ここにはP坊主さんはいませんね~」

 

ため息をつくメリィの頬を、バケツが指で突き、卵の方を指差す。

 

メリィはもう一度卵がある場所に目をやる。

良く見ると、1つだけ動いているように見える卵があった。

 

「ふ、孵化するのでしょうか?」

 

メリィがバケツに問いかけるが、バケツは首を横に振り

 

「耳を澄ませてごらんなさい」

 

メリィは疑問に思いながら耳を澄ませると

 

「………す~………ぴ~………」

 

何やらいびき声が聞こえる。

バケツが動いている卵を持ち上げると、卵とは思えない程柔らかい感触を感じ

直ぐにP坊主であることが分かった。

 

「……ん?…ッハ!バケツさん…それにメリィさんも!」

 

眠りから覚めたP坊主を見て、ホットするバケツ達。

 

「急いでここから出ましょう。リオレイアが戻ってくると厄介です」

 

バケツはP坊主とメリィを抱え、急いで外へ向かって走る。

外に出ると、落ちたはずのロープが元に戻っている。

バケツ達は気づいてないみたいだが、あの後、謎のハンターがロープを元に

戻していたのだ。

 

「急ぎましょう!」

 

急いでいるせいか、バケツは高所恐怖症であることを忘れてロープを掴み

早い速度で上に登っていく。

 

「へぇ~。あんな奴らでも成長ってするものなんだ。」

 

崖の上から覗いている謎のハンターが、バケツ達を見て笑みを浮かべていると、遠くの

方から何かが飛んできていることに気づく。

 

「ん?ま、まずい!」

 

その物体は、獲物を捕まえて帰ってきたリオレイアだった。

なんとか崖を登り終え、褌を締め直しているバケツが、咄嗟に後ろを振り返ると、こちらに

向かって物凄い勢いで飛んでくるリオレイアが目に入った。

 

「危ない!」

 

謎のハンターが茂みの中から現れ、バケツ達を突き飛ばそうと試みる。

しかし、バケツは冷静に立ちつくして

 

「フフ、こんなこともあろうかと用意しておいて良かった」

 

と、呟き褌の中から緑色の玉(モドリ玉)を取り出し地面に向かって叩きつける。

 

ボン!と破裂した音と共に、バケツ達は緑色の煙に包まれその場から居なくなる。

 

「え?」

 

謎のハンターはその場で倒れ、リオレイアの突進を受ける。

数十メートル先まで吹き飛ばされた謎のハンターは、不気味な笑みを浮かべながら立ち上がる。

 

「フ…フフ…これも…エミルの為…」

 

そう呟くと、謎のハンターは背負っていた弓を取り出し、リオレイアに向かって矢先を向ける。

リオレイアは口元を炎で包み、体を少し反り、大きな火の玉(ブレス)を吐き出す。

ブレスはぶれることなく真っ直ぐ謎のハンター目掛け飛んで行く。

しかし、謎のハンターは避けることなく、そのまま弓をブレス目掛けて放つ。

すると、ブレスは真っ二つに割れ、ブレスの火を纏った弓がリオレイアの頭に突き刺さる。

謎のハンターは、大きく怯んだリオレイアの頭上に飛び乗り、素早く貫通性のある弓を何度も

頭目掛けて放つ。

リオレイアは、大きな雄叫びと共に地面に横たわり、力の無い叫び声を最後に息を引き取る。

謎のハンターは、一滴の汗も掻くこともなく、無表情で

 

「はぁ…とりあえず…喉が渇いたな」

 

と、呟きリオレイアから素材を剥ぎ取ることもなく、そそくさとその場を立ち去る。

 

一方、P坊主達は街に着くと、直様エミルが待っているギルドに向かう。

 

「あら。おかえりなさい。」

 

安心した顔で出迎えるエミルが立っているカウンターの前に、黒い装備で統一された

ハンターが座っていた――

 

第五章『一匹狼』に続く――


 
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