No.319916

鳳凰一双舞い上がるまで 第三章 8話

TAPEtさん

真・恋姫無双の雛里√です。
雛里ちゃんが嫌いな方及び韓国人のダサい文章を見ることが我慢ならないという方は戻るを押してください。
それでも我慢して読んで頂けるなら嬉しいです。
コメントは外史の作り手たちの心の安らぎ場です。

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2011-10-17 21:49:19 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:3580   閲覧ユーザー数:3157

一刀SIDE

 

 

「隊長、本当に行っちゃうんすか?」

「おらー隊長が行ねぇここって叶わねえっす。おら達と一緒に言ってくだせえ」

「……何弱音吐いてるんだ」

 

僕のことを隊長といいながら行くななどと言ってくれる前江賊の奴らを見て、僕の顔には思わず少し笑みが出来た。

これがこの人たちの本性だ。

この時代に人たちは、基本的に悪者の素質がない。まだまだ頭が回らないと言ったらちょっとかわいそうな言い方だが、普通の人々にとっては、賢いよりは愚かな方がもっと

 

善く生きていけると思う。

彼らには自分たちがしたことが悪い事だとは一言も言ってない。なぜなら彼らの行為は、自分たちが生きるためのものだったからだ。だけど、だからと言って他の人の幸せを

 

奪って自分の幸せを掴むとしたら、それは確かに罪になるだろう。

普通に良い世の中だったら、この人たちが悪者になったいただろうか。官軍や義勇軍に殺されることになっただろうか。

 

「って、泣くなって。年上の男に泣かれても全然嬉しくないぞ」

「隊長…おいら……隊長が好きです!愛してます!」

「ホモじゃねーから!」

 

しまった!思わず殴り倒してしまった。

でも、なんとなく必死だった。色々と……

 

「と、とにかく、僕がないからって脱線するんじゃないぞ。お前たちのことはこれからも凌操や甘寧の管轄下だ。こらからまた長江に江賊が荒ぶってるなんて噂が僕の耳に入

 

った時は、お前たち許さないからな」

「はっ!」

「任せてください!」

「長江の平和は俺たちが守ります!」

「「「おお!!」」」

 

頼もしくなってくれたな……うん。

 

・・・

 

・・

 

 

「よぉ、子分たちに挨拶は済んだか?」

「あぁ……後は、お前と甘寧だけだ」

 

部下たちと挨拶をしてから僕は凌操のところへ向かった。甘寧は不在だったが、恐らく蓮華のところにいっているのだろう。あいつの行き場所なんてこことあそこ二箇所以外

 

に考えられないし……

 

「お前が居ないとまたここも物騒になるよ」

「…僕が居たところで別に物騒でないところでもないさ」

 

いくら良い形で丸めても、結局長江を守るという使命のためにはまた人が死ぬのだから。

僕がしたことは、結果的には一回性なものなのだ。

 

「あのさ、行く前に、僕どうしても聞きたいことあるのだけど」

「んだ?」

「凌操って甘寧のこと好きなんだ、どうなんだ?」

「…ん?……馬鹿タレが…んなこと今まで悩んでたのか?」

「悩んでるんじゃないけど…何か、付き合ってる中なら二人みたいな接し方も有りなのだろうかと思ってさ」

 

甘寧と凌操のやりとりはいつ見ても冷や冷やしてたからだ。

事々に対立して、或いは互いに剣抜いて戦ったりもした。

最初はそんな二人を止めようとしたけど、元から部下だった連中が『いつものことです』とかほざいていて、見てみたら二人とも見事に傷一つなく戦いは終わっていた。

互いのことをあまりににも良く知っているからどうしても勝負がつかないらしい。

 

僕も雛里ちゃんが武人だったらあんな感じだったかも知れないと思ったら……いや、雛里ちゃんに武人になってもらいたいわけじゃないけどね。ちょっと体力は付けて欲しい

 

とは思ってるけど。

 

「俺はな、こう見えても江賊やる前にはちゃんと妻子あった家長だったんだぜ」

「………え?嘘」

 

何それ、初耳。

 

「俺の村では幼い時に結婚して子供残すのが普通だったからな。15才何も知らねえ年に、親が決めてくれた女と結婚して娘が一人出来た。でも、娘がやっと親の言うことが分

 

かる年になって、街に賊が現れて、俺たちの村は滅んだ。俺は妻子が守れず街から逃げてしまった…」

「……すまない」

「んなーにお前が謝ってんだ。とにかく、それから何もできることがなかった俺は、体一つ当てにして長江で賊になったってところだ」

「そっか……」

「…あいつが今いきていりゃ…今頃俺が結婚した年ぐらいにはなってるだろうな……」

「…じゃあ、アレか。甘寧のことは妹分ぐらいにしか見えてないってか」

 

確か甘寧ってそこから何年か上ぐらいだし。

 

「別にそんなわけでもねーけどな……ほら、あいつって割りとほっとけねーところあるんだよ」

「…どこがだよ」

 

むしろ深く関わりたくもないよ。

 

「わかってね-な。あいつはあんなのがいいんだよ」

「で、女に見てるんだ。どうなんだ?」

「くっ、あいつにそんなこと言ってみろ。直ぐに鈴の音聞かされるぞ」

「……難しいな」

「そういうお前は難しくないのかよ」

「僕の恋のどこが難しいんだよ」

 

むしろ一直線だよ。どこも捻くれてないよ。

 

「そうじゃなくてよ。お前の理想だ。賊だって悪くない。喧嘩するな。無駄に血を流すなとか言ってるだぞ。んなくせにちゃんと問題解決してるし。最も、これからもそんな

 

風にうまくいくだろうとは思わないけどな」

「……一度僕がこの世で見れる一番悲惨な死に方を見ていたんだ。これ以上は御免だよ」

 

これからもその気持ちは変わらないし。

 

「でもまぁ、俺はそういうお前のところ、嫌いじゃねえ」

「……おいおい、僕さっき真剣に僕に告った奴ぶん殴ってきたんだよ。お前までとか勘弁……」

「ちげーよ!阿呆か!」

 

今度は奴のケンコツが僕の頭を剛打した。

頭蓋骨潰れる!

 

「くぅーーーー」

「牙莎だ」

「…ん?」

「真名だよ。知らんとはいわさんぞ」

「……餞別代わりってか?まぁ、…僕はやる真名はないけど」

「まぁ、そういうことにしろよ。最も、この次呼ばれる機会があったらいいけどな」

「そんなこと言うなよ。これから蓮華が呉に行くと甘寧とそっち行くんだろ?」

「まぁ、そうなるだろうな。大体俺は国への忠誠なんてできそうにねえが……」

「……まぁ、そこからはお前の道だろ」

「…そだな」

「また見ようよ、牙莎」

「ああ、次あったら酒比べでもしようぜ」

「……」

 

 

 

 

「あ、一刀さん」

「雛里ちゃーん!」

「あわわっ!」

 

蓮華の屋敷に帰ってきて雛里ちゃんを見た途端、僕は『思わず』彼女の足を掴んで抱き上げた。

ことは一瞬。僕も気づいた時は、雛里ちゃんを腕に乗せていた。

 

「な、何するんです!お、落ちちゃいましゅ!」

 

実際上で中心がつかなくなった雛里ちゃんは倒れそうになったが、両手で僕の首を掴んでなんとか止まった。

 

「いや、ついやってみた」

「ついってなんですか?…重くないですか?」

「結構ノリでやったからね。正直きつい」

「当分このままで良いですよね♡耐えた時間=愛ってことで」

 

この発言が雛里ちゃんにとって策士策に溺れるようなことになるだろうとは誰もが知ってる話だった。

 

「北郷さん、準備整いました……なにしてるんですか?」

「あ、真理ちゃん。そっか、準備済んだのか。あ、コレは気にしなくてよ。うちで一番大事な荷物で特別扱いしてるだけだから」

「あわわ、荷物扱いですか?」

「てわわ……まぁ、良いですけど…倉ちゃんの準備済んだら孫権さんに挨拶して出発するのでいいですよね?」

「うん、それで良いよ。ありがとう、真理ちゃん」

「てわわ……別に、私だけしたことじゃないです。明命ちゃんと倉ちゃんも一緒にしました」

「でも、真理ちゃんが一番頑張ったんだろ?あの二人はなんだかんだ言ってゆっくりだしドジるし色々大変そうだし」

「てわわ……まあ、明命ちゃんに関しては触れないでおきます」

 

……ほんとにまた大変なドジやってないだろうな。

 

「倉は?」

「倉ちゃん、何か部屋で身支度すると言って入って出て来ません」

「ん?」

 

倉って、そんな身支度とか気にする娘だっけ。

いや、割りと朝起きて自分で櫛入れることもできないタイプだぞ?

 

「まぁ、遅くなりそうだったら行ってみることにしましょう」

「そうだな」

「それじゃ、私は行く前に何か忘れてるものはないか確認してきますから……ほどほどにしてください」

「妬いてる?」

「………」

 

冗談のつもりだったのに、真理ちゃんは何も言わずに激しくぐるんと回って反対の方へ行ってしまった。

 

「真理ちゃん……」

「雛里ちゃん?」

「い、いえ、何でもないです!…それよりも、もうそろそろ下ろしてくれませんか?」

「僕はまだまだいけるけど。雛里ちゃんって軽いよね。訓練用な木刀の方が重いよ?」

「あわわ、まさか、孫権さんに挨拶する時までこうだとか言いませんよね?」

「むしろ耐えられたら豫州までこうして行ってもいいんだが?」

「あわわー!!」

 

ほらね?

 

 

雛里SIDE

 

恥ずかしくて死ぬかと思いました。

さすがにあのまま孫権さんたちに挨拶しに行くとされたらたまりません。

 

「一刀、今までありがとう、何から何まで」

「こっちこそ……世話になったよ。一から全部…最後にはこんなものも準備させていただいたし」

 

孫権さんには豫州まで行くための馬一頭と荷馬車を一つもらいました。

中はなかなか広くて、途中で何か買って商売をしながら行ってもよさそうな感じです。

 

「鳳士元、色々教えてくれてありがとう」

「はい、孫権さんもこれからも精進なさって、今後良い君主になれたら嬉しいです」

「……そうね」

 

私が言ってることの意味がわかる孫権さんは少し苦笑しました。

私も一刀さんも、孫呉の王には孫策さんより孫権さんになった欲しいというのが本望ですし、孫権さんもそれ無礼だとは思っていてもそれ以上何も言いません。

どの道、上に立つものとして人の命を大事にできる者になれるのなら私はそれで構いません」

 

「それと、鳳士元。もし良ければ、私の真名蓮華、あなたにも預かって欲しいのだけれど」

「…!……宜しいのですか?」

「構わないわ。あなたさえ良ければの話だけど」

「………はい、ありがたくいただきます。私のことも雛里で構いません」

「ええ、また会いましょう、雛里」

「……」

 

今度はこっちが苦笑する方です。

 

「蓮華、その、お前に仕えるという約束なんだけど……」

 

一刀さん、例の事件で蓮華さんが孫呉に戻ったら孫呉に仕えてあげるという約束をしたらしくて、一刀さんはたとえ正気じゃない時した約束でも、絶対に守るようです。ただ

 

し、

 

「僕は孫策と仲良くできそうになりし、その辺においては、蓮華の立場を困らせたくない。どういう意味か分かってるのよ」

「………そうね…。分かったわ、一刀。それに関しては私も頑張ってみるから……」

「……蓮華…」

 

あ、それ以上二人とも変な空気作らないで欲しいのですけど。人の目もお構いなしで。

 

「蓮華さま、宜しいでしょうか」

 

その時、甘寧さんが割り込んできました。

 

「し、思春?!」

「北郷、牙莎から話は聞いた。真名を預かったようだな」

「そうだが……」

「……北郷、一つ良いか?」

「何?」

「あの時白鮫と戦う時、貴様の腕は見た。牙莎も己と私別々だとお前に勝てないと言っていた」

「……!」

 

甘寧さんの話を聞いて私は内心一刀さんの力に驚いていました。

 

「まぁ…牙莎とならかなりいい勝負出来ると思うけどな…どっちかは死ぬけど」

「…貴様が見るには、私が牙莎より弱いか?」

「そうだな……甘寧の場合、戦う理由がないとあまりやる気出なさそうだからね。例えば、普通に牙莎と戦うとほぼ同格だろ?でも、本気の殺し合いの戦いになると、きっと

 

甘寧が牙莎に負ける。あいつは自分の身を顧みない戦い方をするからな。肉を斬って骨を断つという戦法とか普通に使いそうだ」

「………そうかもな」

「でも、そうだな…例えば牙莎が孫呉に歯向かって立ち上がったとしよう。そしたらきっと牙莎は甘寧に一捻りもなく潰されるだろうな」

 

「その点においては蓮華は本当にいい部下を得たと言える」と一刀さんは一人で頷きながら蓮華さんを見ました。

蓮華さんはそう自分を見る一刀さんと甘寧さんを順番に見ながら良く分からないという顔をしました。

 

「甘寧の場合、もう腕はその辺からもう飛躍的に成長するというところはなさそうだし、牙莎も大体完全体。普通にどっちが上なのか聞かれたら、僕は牙莎の方を選ぶ」

「………そうか」

 

甘寧さんは、少し悔しそうな顔をしていました。

でも、聞く話だと、確か凌操さんは甘寧さんに負けてから江賊やめたんじゃ…?

 

「まぁ、最も牙莎は甘寧のこと好きだし本気に戦ったりなんてできそうにないけど」

「……は?」

「え?」

「……貴様、今なんと言った?」

「いや、だから牙莎が甘寧のこと好き……はっ!」

 

甘寧さんの顔がどんどん赤くなるのを見て、一刀さんはしまったという顔で目を逸らしました。

 

「貴様、ここで少し待っていろ」

「い、いや、甘寧?そんなに怒ることもないんじゃないのか?」

「貴様とは関係ない。蓮華さま、私はこれで失礼致します」

 

甘寧さんがそういいながらこの場を去って、一刀さんは荷馬車に手を当てて何かぶつぶつ言い始めました。

 

「やばい、刺される。二人のどっちかには僕刺される。つか両方同時に来たら死ぬ……」

「か、一刀、思春には私が言っておくから…」

「逃げよう。今直ぐ逃げよう、そうしよう……倉!真理ちゃん!そろそろ行くぞ!」

 

一刀さんは突然焦り始めて、あそこで周泰さんとお別れを告げている二人を呼んできました。

 

「……明命ちゃん、さよなら」

「明命ちゃん、それじゃあ、元気にしていてください」

「はい、また逢いましょうね。真理ちゃん、遙火ちゃん」

 

そう言いながら、二人が私たちのところで戻ってきました。

……あれ?今周泰さんが、倉ちゃんのことを遙火って呼んでませんでした?

 

「北郷さん、もう行くのですか?」

「ああ、今直ぐ行かないと僕が背中に剣刺されて死ぬかもしれない」

「一刀様、どうしたのですか?一体誰に命を狙われてるのですか!?」

「……あたしが守ってあげる」

「うん、倉は頼もしいな」

「……えっへん」

 

あ、頭撫でられてる。いいな。

 

「あの、倉ちゃん、さっき周泰さんが倉ちゃんのこと呼んでいたのって……」

「あ、遙火ですか?真名ですよ」

「「……え?」」

 

私と一刀さんは二人とも面食らった顔になって倉ちゃんと真理ちゃんの顔を見ました。

 

「どういうことだ?」

「……真名、作ってもらった…さっちゃんに………」

「あ、……あわわ、そうなんだ」

 

そういえば、そういうことありましたね。左慈さんが倉ちゃんのお母さん……。

いえ、何か聞いては居るんですけど、何かアレで倉ちゃんのお母さんとか言われたら変な気分が……

 

「へー、じゃあ、僕たちもこれからそう呼んだらいいの?」

「……一刀と雛里ちゃんには、倉って呼ばれた方が良い」

「え、何で?」

「……名前……二人にもらったから」

「あ」

 

そういえば、倉っていうのは、私が付けてあげた名前でしたね。

倉ちゃんにとっては、私たちが付けてあげた名前も、真名ほど重要な意味を持っているのかもしれません。

 

「そっか。じゃあ、これからも倉って呼ぶよ」

「これからも宜しくね、倉ちゃん」

「……うん」

「てわわ。何か、こうなると、私ちょっと複雑な感じするんですけど…私どっちに呼べば…?」

「…遙火でいい」

「てわわ…真名を受けたはずなのに、何か私だけ仲間外れです」

「……遙倉?」

 

何なの、その変な合わせ方は?

 

「一刀様!私、これからも蓮華さまを護るために、日々是精進致します!」

 

最後に、周泰さんです。

 

「そうだな。周泰の場合、もっと頑張らないとな」

「はい!……あ、あのそれってどういう意味ですか?」

「どういう意味か分からない?(笑)」

「はうあ!が、頑張ります!」

「宜しい」

 

…あわわ……一刀さん、あんな爽やかで怖そうな笑顔も出来るんですね。

 

 

「んじゃ、蓮華、またね」

「ええ、一刀たちも、お大事に」

「お元気でいてください、一刀様」

 

私と倉ちゃんと真理ちゃんは荷馬車の中の席に付いて、御者台に座って出発しようとしてます。

 

「あ、そうだ。蓮華」

「何?」

「念のため言ってあげるけど、どっかで呂蒙子明という人を見つけたら、そいつ絶対に呉に連れて行くように。きっと頼りになるから」

「呂蒙子明?……どこにいる子なの?」

「さぁ?」

「さぁって……まぁ、とりあえず分かったわ」

「…それじゃ…豫州に向かって出発ー!」

「……しゅっぱーつ」

「出発ー!」

 

倉ちゃんと真理ちゃんが軽快そうにそう言って、一刀さんが馬に鞭を打つと、馬車を動き始めました。

 

「一刀様ーー!」

 

どこかまでは周泰さんが付いてきたのですが、しばらくすぎると、その姿も見えなくなってしまいました。

 

「……やっとまた出発ですね」

 

あそこでも結構長い間泊まってました。

 

「そうだな……まぁ、豫州ではあまり長居しそうにないからね、通りすぎる感じで良いだろ」

「豫州の次は確か徐州でしたっけ?」

「ああ、徐州で青洲、そこから河北に入る。河北には色々と用事が多いからね」

「その前に豫州で何もなかったら良いのですけど……」

 

孫策さんに会ったりして面倒なことになるのは、正直ごめんです。

倉ちゃんも、また孫策さんのことを見たら、どうなるか約束できない状態です。

 

「あれ?そういえば、倉ちゃんは?」

「あわ?」

「てわわ、遙火ちゃん?」

 

さっきまでここ居たのにどこ行ったの?」

 

「呼んだ?」

「てわわー!」

「あわわー!!」

「へっ、何、何!?」

 

倉ちゃんがいきなり一刀さんの鞄の中から出てきて、私も真理ちゃんもびっくりしちゃいました。

 

「……どうしたの?」

「どうしたのじゃないよ。何でそこから出てくるの?」

「……真理ちゃんも入る?」

「へっ?あ、ちょ、遙火ちゃーーん!」

「真理ちゃん!?」

 

突然、倉ちゃんが真理ちゃんのことを引っ張って鞄の中に引きこむと、真理ちゃんも倉ちゃんも、鞄の奥に消えて行きました。

 

「何?どうしたの、皆?」

 

御者台に座ってて奥の方の状況が良く分からない一刀さんが私たちの叫び声を聞いて慌てながら聞きました。

 

「か、一刀さん、真理ちゃんが……」

 

あの、鞄の奥に消えて行きました……って、何ですか、これ?

鞄の奥が……深いです。

 

「あわ」

 

奥を覗いていたら、帽子が落ちて鞄の奥に落ちて行きました。

底が見えない鞄の奥に落ちて行った帽子は、やがて姿が見えなくなってしまいました。

 

「な……な」

 

私は状況が飲み込めなくて何も言えずにただ見ているだけでした。

 

 

 

真理SIDE

 

 

「てわわ……」

 

私は……きっと夢を見ているんです。

遙火ちゃんに鞄の中へと引っ張られて、鞄の奥へと落ちたと思ったら、大きな布団があって、周りにはこの世界のものとは見えない風景が見えます。

 

「あの…倉ちゃん、いや、遙火?お母さん、あまりここに他の人たちを連れてこないで欲しいのだけど……」

「……真理ちゃん、お友だち」

「うん、知ってるわ。でも、ダメなのはダメよ」

「……どうしてダメなの?」

「私は他の人たちに私の居場所をバレるのが嫌いなの」

「でも、皆ここにさっちゃん居るって知ってる」

「だから、そういう感覚の問題じゃないの。あのね、遙火には説明しにくいけど、貴女以外の娘をここに連れて来るためにはここのプロテクトを外さないといけないのよ、そ

 

したら貂蝉や他のお母さんを追ってる奴らにバレてしまう可能性があるのよ。そしたらね……」

 

そして、奥の方で四角い卓があって、そこに遙火ちゃんと左慈さんが座って話をしていました。

左慈さんって、普段はずっとここでこうしていたんですね。

遙火ちゃんは、「さっちゃんは鞄の中で冬眠してる」と言ってたのですが、実は鞄の中、こうなってたのですね。

 

「あ、あの……」

「!」

 

左慈さんが私の方をにらみました。

何やら邪魔されたことがすごく不機嫌そうです。

 

「……さっちゃん」

 

そしたら、遙火ちゃんがすごく複雑な顔で左慈さんを見つめました。

 

「……はぁ…もう入ってきたことは仕方がないわね……お母さんほんとに困っちゃうのだけど……」

 

そう言いながら、左慈さんは立ち上がって、私のいる布団の方へ来ました。

 

「諸葛均ちゃん」

「は、はい」

「以前では私が普通に外に居たけれど、これからは私はほぼこの鞄の中に居なくちゃいけないの。私が外に居たら、あなた達を危険な目に合わせるかもしれないから。だから

 

、外に居る間は、あなたに遙火のことをお願いしたいわ。お願いできるかしら」

 

そういう左慈さんの顔は、以前のように半分戯言混ぜた言い方ではなく、すごく真剣な顔で娘のことを心配している母の顔でした。

 

「……は、はい、分かりました。私はあまり力は自身ないし、どっちかと言うと遙火ちゃんに護られる側になるかもしれませんけど、頑張ります」

「…それで、構わないわ。せっかく来たんだし、お茶でもして行く?」

 

 

ーー真理ちゃーん、倉ちゃーん

 

私が左慈さんの誘いに乗ろうとしたら、上から雛里お姉さんの呼び声が聞こえてきました。

 

「あら、上では大騒ぎのようね。まぁ、無理はないでしょうけど。遙火、人が居るところで入ってきちゃダメって言ったでしょう?」

「……あたしのろぐには何もない」

「くぅ…この憎めない奴……良いから二人とも戻りなさい」

「……うん、真理ちゃん、こっち」

 

遙火ちゃんにまた引っ張られてどこかへ連れされました。

 

 

 

 

 

――娘の友だちね………ふむ……まぁ、次に来る時にはお茶と菓子でも用意しようかね……

 

――まぁ……もう一眠りしようか。暫くは悩む問題もなさそうだしね。

 

 

・・・

 

・・

 

 

 

 

 

 

 


 
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