No.313696

真・恋姫†無双‐天遣伝‐(32)

またまた遅くなりました!
でも、やっぱり続きです。
頑張って書き続けますよ!

2011-10-06 18:52:50 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:8259   閲覧ユーザー数:6495

 

 

・Caution!!・

 

この作品は、真・恋姫†無双の二次創作小説です。

 

オリジナルキャラにオリジナル設定が大量に出てくる上、ネタやパロディも多分に含む予定です。

 

また、投稿者本人が余り恋姫をやりこんでいない事もあり、原作崩壊や、キャラ崩壊を引き起こしている可能性があります。

 

ですので、そういった事が許容できない方々は、大変申し訳ございませんが、ブラウザのバックボタンを押して戻って下さい。

 

それでは、初めます。

 

 

 

 

 

袁紹軍は、全く機能しなくなっていた。

肝心の総大将が軍議にも出て来なくなったのだから、当然だろうが。

それ故、臨時の総大将を立てなければならなかった訳であるが、意外にも即決した。

その臨時総大将とは、美羽であった。

押し付けられたのでは無く、自ら進み出たのである。

そして今は、虎牢関攻めの次曲を担当する軍を決めている所であった。

 

 

「では、虎牢関を破る為に往くのは、曹操殿と言う事でよろしいかの?」

 

「えぇ、構わないわ。

但し、我が方にも相応の準備がある。

その為の時間は取らせて貰うわよ」

 

「構わぬ」

 

 

短く会釈を返し、華琳は軍議の場から去った。

それを見送ってから、ホッと安堵の溜息が美羽の口より漏れた。

 

 

「何じゃあ奴は。

妾と同じくらい小さいくせに、孫堅よりも恐ろしいではないか」

 

「そうですねぇ・・・巷では覇王と呼ばれているそうですが。

器も才覚も十二分って所ですかねぇ?」

 

 

七乃が冷汗をかきつつぼやいた。

先程までは張り付けた様な笑みで、華琳の気圧に耐えていたのだが、やはり堪えたらしい。

美羽は、背もたれに身体を預けて脱力し、全身を深く椅子に沈めていた。

此方も相当堪えた様だ。

 

周囲も少しホッとした様に空気が弛緩した。

『何故か』体調不良の大蓮の代わりに出席していた雪蓮が、美羽のぼやきを聞いて思わずプッと噴き出している他は、何処となく緊張の糸が切れた感がある。

 

 

「凄い迫力だったね、曹操さん」

 

「あぁ、あれが例の・・・全く。

直接受けてたら、生きた心地がしなかっただろうな」

 

「本当にね~」

 

 

此方は劉備と公孫瓉。

気心の知れた者同士、如何に華琳が恐ろしかったかを語り合っている。

 

 

「ぷくくくくくく・・・・・・」

 

「雪蓮、いい加減に笑うのを止めたらどうだ?」

 

「だ、だって、さっきの曹操が、袁術並に小さいって・・・何が小さいって?

それはm」

 

「おい馬鹿止めろ」

 

 

馬鹿を言い出そうとする雪蓮を制する冥琳。

かなりの脂汗を掻いている辺り、相当焦っていると思われる。

 

実際、冥琳は背筋に寒気を感じていた。

 

 

「まぁ、ここは曹操に任せよう。

自ら進み出てくれたのは、何にせよ我等にとっては善しだ」

 

「そうね・・・う~ん」

 

「? どうした雪蓮?」

 

「何か、何かが変ね・・・」

 

 

頻りにぼやく雪蓮の言葉に、冥琳の形の良い眉が顰められる。

その顔は既に一軍師のそれだ。

 

 

「何か、とは何だ?」

 

「それが分かってれば、何かが、だなんて悩まないわよ」

 

「・・・・」

 

 

冥琳のこめかみに青筋が浮いた。

雪蓮はそれに気付き、苦笑い。

しかし、尚も同じ様に考え込む。

 

 

「・・・はぁ、まぁいいわ。

兵の前ではそんな顔しないで、不安に思われるから」

 

「だいじょーぶ、私だってそこの所は心得てるからね」

 

 

悪戯っぽくウインクしつつ笑う雪蓮に、呆れた様に冥琳は苦笑を漏らした。

 

 

「あー、でも、何か引っかかるのよねー。

曹操の軍が黄巾党の時よりも錬度が下がってるのと何か関係してるのかしら」

 

「!? 何だと!?」

 

「キャッ!? ちょ、ちょっと冥琳、いきなり大声出さないでよ!」

 

「う、す、すまん」

 

 

しかし、冥琳の勢いはまだ止まっていない。

声を上げた後は静かだが、脳内では凄まじい勢いで様々な可能性の推敲が行われる。

そして2分足らずで、真実と思われる考えに至った。

 

冥琳の顔色が目に見えて衰える。

雪蓮も思わず病気かと気をもんだ。

 

 

「あー、冥琳「今すぐ戻るぞ!」ちょ、と、ぇっ、ちょおおおおおおおおお!?」

 

 

ソッと冥琳の肩に雪蓮が手を置いた瞬間、猛然と駆け出した冥琳に、雪蓮は引き摺られる形で移動する事となった。

軍師だと言うのが嘘の様な猛烈な勢いで冥琳は自陣へと急いで駆ける。

雪蓮は、その肩に手を置いたまま、冥琳が歩みを止めるまでずっと半泣き状態であった。

 

 

 

 

 

―――虎牢関

 

 

「菖蒲と恋を洛陽に?」

 

「そうよ」

 

「はい」

 

 

朝議で詠と稟の、虎牢関にいる筆頭軍師二名から投げかけられた言葉に、一刀は首を傾げた。

当然、別方向からも疑問の声が上がる。

 

 

「それは駄目なんじゃないか?

今は虎牢関に奴等を引き付けて倒すべきじゃ」

 

 

と発言したのは翠。

確かに、と西涼組は追従して頷く。

だが、詠は首を横に振って否定した。

 

 

「袁紹が前に出ているままだったら、それでいいんだけどね・・・前曲が代わったわ」

 

 

皆の間に、緊張が走る。

あの目立ちたがり屋かつ自信(過剰)の袁紹が出て来なくなるとは、完全に予想外だった。

 

 

「それは、拙いな」

 

「はい、とても」

 

 

一刀のボヤキにも近い言葉に、稟がしっかりと返答した。

与しやすい相手のままならばいいが、それ以外となると、かなり条件が変わる。

 

 

「それで、新しい前曲の旗は?」

 

「・・・群青に『曹』の一字です」

 

 

ザワリ、と辺りが騒がしくなる。

その様子に、詠はチッと舌打ちを漏らす。

 

 

「ほらほら、黙んなさい。

で、分かった? ボク達が徐晃と呂布を洛陽に戻すって行った理由」

 

 

少し静まった室内で、今度は皆が肯定の意を示した。

宜しい、と詠は頷いた。

 

 

「そう言う事だから。

回り込んで直接洛陽を狙われる危険性を考えて、二人には洛陽の護りに入って貰いたいの。

良いわね?」

 

「は、はい!」

 

「・・・ん」

 

 

呼び掛けられた二人が返事を返す。

少し不満そうなのは、総大将たる一刀の傍にいられないが故か。

詠は鼻を鳴らす。

心中で「色ボケ共」と毒づいた。

しかし顔が笑っていたのには、自分では気付いていなかった様だ。

その為、皆からは微笑ましい目や、忍び笑いを受ける事となった。

 

 

「な、何よ?」

 

「いや、何でも無い」

 

「ならいいけど・・・」

 

 

何処か釈然としないと言った表情で首を傾げる詠だったが、真相を知るのは何時になる事やら。

 

 

「話を戻しましょう。

洛陽の守護は徐晃殿と呂布殿の両名を派遣し、我等は連合軍の本隊を此処で引き付けます。

ここまではよろしいでしょうか」

 

 

皆が一様に頷いた。

稟も一度だけ頷き、先を続ける。

 

 

「次に、我等の行動指針を決めねばなりません。

即ち、護るか、攻めるか」

 

「虎牢関と言う堅牢な関に籠っておるのだ。

このまま籠城すべきと考えるが」

 

 

朱儁が発言し、一刀の方を見る。

一刀の意見を聞きたいと言う意思が見える。

 

一刀は目を閉じて考え込む。

室内の誰しもが固唾を呑んで、その姿を見ていた。

誰かが喉を鳴らす音さえ聞こえそうな程だ。

 

暫くして、一刀が目を開く。

誰かが息を呑んだ音を、皆が聞いた。

 

 

「そう、だな。

軍師両名は?」

 

 

フッと、我が意を得たりと言わんばかりに、二人の軍師の口元が笑みを形作った。

 

 

 

 

 

真・恋姫†無双

―天遣伝―

第三十一話「吶喊」

 

 

―――曹操軍

 

 

曹操軍は次の一戦の前曲として出撃する。

それ故、軍の最終調整の様な演習が行われていた。

 

 

「そこの(ピー)! 何を愚図愚図している!

貴様の股座の粗末な(ピー)がそんなに重いか!?

ならば前へ出ろ、私が即消し飛ばしてやる!」

 

「も、申し訳ありません!」

 

 

華織の烈火の如き叱責に、先程まで隊列を乱していた兵士が慌てて隊列に加わる。

その後の部隊の統制は、それはもう素晴らしい物だった。

 

演習が終わり、暫くして。

華織の近くへ、檪花が歩み寄った。

 

 

「お疲れ様です、曹洪将軍」

 

 

そう言い、水筒を差し出す。

華織は至極当然の様に受け取り、中身を口に含んだ。

 

 

「む・・・?」

 

「あ、気付きました?

ちょっと茶葉の配合を変えてみたんです」

 

「ほう、美味いな、これは善い」

 

 

ボソリと呟く様に賞賛し、飲み続ける。

大声で罵り続けていたのだ、喉が渇くのも無理はない。

 

 

「ふぅ、いきなり連れて来たばかりのこいつ等の出番か。

やれやれ、調練不足だと言うのに」

 

「あれで、ですか?

十分な気もしますが」

 

「全くもって駄目だ。

あの倍は機敏に動いてくれねば、私の矜持に関わる」

 

 

真顔で言い切った華織に、檪花は苦笑。

噂には聞いていたが、桁が一つ予想とは違った。

正に鬼の様な厳しさだ。

 

 

「何かおかしいか?」

 

「いいええ、確かにあれでも実戦よりは厳しくないでしょうしね」

 

「その通りだ、それを分かっていない奴が多過ぎる。

あの程度でも、「殺してくれ」と命を差し出させる為に戦場へ往かせるのと変わらん」

 

「本当に、厳しいんですね」

 

「私から言わせて貰えば、その他がヌル過ぎる!」

 

 

いきなり咆哮した華織に、檪花はかなり驚いた。

竹製の水筒が軋んだ音がしたのは気のせいだろうか。

 

 

「ま、幾ら厳しくしようが私は構いませんよ」

 

「御理解、感謝する」

 

 

華織は檪花に向かって頭を下げた。

綺麗に角度を決めた一礼。

こんな所にも、華織が華織たる所以が見える。

 

 

「あ、そうです。

次の戦では、軍師は私が務めます」

 

「そうか、励んでくれ。

私も全力で支援しよう」

 

「はい、頼りにさせて頂きます」

 

 

全く疑問も言わず、華織は即答した。

檪花は頭を少し掻く。

何故桂花ではないのか、も問われないとは正直思っていなかった。

少し拍子抜けした感もあるが、まぁいいやと思い、檪花はその場から去った。

 

残った華織は、最後の茶を飲み干す。

少しだけ暗い表情をした状態で。

 

 

「・・・・・・華琳め。

企みはばれぬ様にするのが必定だろう。

私程度に見抜かれてどうするのだ・・・」

 

 

何処か寂しそうに、そう呟いたのであった。

 

 

 

 

 

―――劉家軍

 

当軍の大将である桃香は、布団の上で思い悩んでいた。

このまま連合に居続けて本当に良いのか、と。

 

いや、もう既に答えは出ているのだ。

それを実行に移せず、動けずにいるだけで。

 

否、それさえ正しくない。

本当は、動ける筈なのに動いていない。

 

 

「はぁ・・・・・・」

 

 

本日何度目となるかも分からない重い溜息が、横たわった桃香の口から漏れる。

惚れた男に何度弓を引いた事だろう。

どんな言を労そうとも、それは間違いなく自身の意思で行った事で、だけど本当は一刀と戦いたくなんてない、だけど民の為に、でもそれは唯の自己弁護にしか過ぎなくて、しかしそれは間違いなく自身の意思で・・・という思考の無限ループにどっぷりと嵌ってしまっていた。

 

もう半分病気にさえ見えて来る。

そんな桃香の様子を、陰からひっそりと見護る影が一つ。

 

 

「あいつ、大丈夫かなあ・・・」

 

 

白蓮であった。

誰にも気付かれていないのは、本人の影が薄いからでは決してない。

きっと、多分、恐らく、メイビー・・・

 

 

「何か酷いぞオイ!」

 

 

地の文への突っ込みはメタでNGです。

 

 

閑話休題(それはともかく)

 

 

今回、桃香がこんなになってしまった理由は、今回の冒頭にあった華琳の「天遣攻め」の立候補にある。

今の状況ならば、きっと「戦を止めよう」という言葉に皆賛同してくれると思っていた矢先だった。

説得出来れば最大の味方となってくれたろうに、それがいきなり頓挫したのだ。

特に、この機に乗じて私服を肥やさんと企む諸侯勢は、やけに張り切り始めている。

それが更なるマイナス要素。

 

 

「拙いな、桃香がこんなじゃ、この軍も思い通りに動かないんじゃないか」

 

 

事実、白蓮の危惧通りだった。

今はまだ、愛紗達が何とかしているが、あちこちで何らかの形で不協和音が起こっている。

劉家軍と言う勢力は、桃香の持つ不思議なカリスマで何とか保たれているのが現状だと言うのに、肝心の桃香がこれでは。

白蓮は自然と頭が重くなった。

問題しかない。

 

 

「お姉ちゃん、お姉ちゃん!」

 

「ん、黒蓮どうした?」

 

 

急いで走って来た妹に向き直る。

やけに慌てていたのが気になった。

 

 

「あのね、袁紹さんの所の将軍が来たの」

 

「何だって!?」

 

 

物凄い驚き様だった。

それもそうだろう。

総大将が引き籠ってしまった所為で、完全に機能不全を起こしている軍の将軍が暇な訳が無い。

なのに何故?

 

 

「とにかく、会ってみよう。

案内してくれ」

 

「うん、分かった」

 

 

黒蓮に続いて歩き出す。

一体誰が、と思うが、恐らくと言う予想はあった。

そして、その人影が見えた時、白蓮は自分の頭も思っていたより捨てた物じゃないな、と自嘲した。

 

 

「こうして面と向かって話すのは久し振りだな、斗詩」

 

「はい、お久し振りです、白蓮様」

 

 

差し出した手を互いに取り、握手する。

同じ河北出の者同士、以前も会った事がある。

特にこの二人は、何かしら感じ合う物があったのか、格別仲が良い。

 

 

「それで、何の用なんだ?

劉備でなく私に、とは」

 

 

少し目を細める。

しかし斗詩は首を傾げた。

 

 

「えっ、普通は逆では?

勢力や軍の大きさから言えば、先に白蓮様を頼ると思うのですが」

 

「えっ! あっ! そ、そう言えばそうだよな」

 

 

無意識下で自分を桃香よりも下の者だと思っていた事に愕然とする。

どうして自分は何時もこうなのか、と悩み始めた所で、斗詩がその流れをカット。

 

 

「それで、要件なのですが。

白蓮様、私達を統率していただけませんか?」

 

「へっ!?」

 

 

今度こそ白蓮は、空いた口が塞がらなくなった。

そして、日が移る。

 

 

 

 

 

―――翌朝・曹操軍

 

華織は、最後の軍備の確認を行っていた。

武装に不備は無いか。

身体に異常は無いか。

軍馬に異常は無いか。

その他諸々。

 

それ等の全ての不安材料を払拭し、限界の二歩前程まで鍛え上げた彼女の精鋭が此処に立ち揃った。

 

 

「よいか! 貴様等は只今を以ってウジ虫より一端の兵士となる! どうだ、嬉しいか!?」

 

『サー! イエッサー!!』

 

「貴様等はこれより、あの戦場へと向かう!

殺し、殺される世界の幕開けだ! 心は躍っているか!?」

 

『サー! イエッサー!!』

 

「しからば貴様等! 我等の特技は何だ!」

 

『殺せ! 殺せ! 殺せ!!』

 

「貴様等! この戦の目的は何だ!」

 

『殺せ! 殺せ! 殺せ!!』

 

「我等は誇りある曹家が兵! 曹家の為に生き、曹家の為に戦い、曹家の為に死ぬ! その覚悟が貴様等にはあるかぁ!!」

 

『ガンホー! ガンホー! ガンホー!!』

 

「ならばよし! 総員戦闘準備! 敵はあの関に籠る (ピー!)野郎共だ! 引き摺り出して鏖殺せよ!!」

 

『サー! イエッサー!!』

 

 

・・・凄まじい光景である。

しかもこれで、調練は不十分と来ている。

見る者が見たら、自身の両の眼を疑うに違いない。

だが此処にはいなかった、それだけで、突っ込みは致命的にずれたものとなっていた。

 

 

「何時見ても凄まじい、やはり華織に鍛えられると質が違うな」

 

「うむ、流石は華織だ!

しかし、あの下品な言葉は如何にかならんものか・・・

華琳様の兵には似合わんと思うのだが」

 

「だが、完璧なまでに忠実で、死をも恐れん。

ある意味では最も華琳様が求める理想の兵に近いのだよ、姉者」

 

「むむむ・・・」

 

 

春蘭が悩む。

無い頭を悩ませると言うのも変な話だが。

 

 

「姉者、私達も準備をしよう」

 

「おぉ! そうだな、兵に手柄を取られてたまるか!」

 

 

腕をブンブン回しながら、意気揚々と自分の馬へ向かう春蘭の背を見ながら、秋蘭は「姉者は可愛いなあ」と一人ごちた。

そして、後方を見る。

台座に座すのは、彼女達の最愛の主。

一言も発さず、唯悠然とそこに存在している。

 

 

「・・・・・・」

 

 

密かに囁かれた秋蘭の呟きは、誰にも聞こえる事は無かった。

 

 

 

――― 一方の虎牢関

 

城門の上に立つは、蒲公英。

遠方に展開を始めた曹操軍を見る。

隣には、休もいる。

 

 

「ほわー、凄い統率だね」

 

「うむ、しかし。

あれでは、兵と言うよりも躾のなった犬の様だ」

 

「あはは、言えてる」

 

「くくっ、走狗と言う意味ではピタリだがな」

 

 

二人とも笑い混じりに言っているが、それは本来非常に恐ろしい事である。

と、そこへ後ろから加わったもう一人が二人に言葉を掛けた。

 

 

「二人とも、もう見張りはいいから下に行きな。

こっちはあたし等でやっとくから」

 

「おや大将軍様」

 

 

休の返しから分かる様に、その一人とは美里であった。

腹心の部下達を脇に連れ、何処か罰が悪そうに頭を掻いている。

 

 

「分かりました、それでは」

 

「それでは!」

 

 

二人は礼を返し、関の下へと駆けて行った。

残った美里は肩を竦める。

やれやれとでも言いた気だ。

 

 

「うーん、戦力としては数えてくれないか。

やっぱり、大将軍なんて肩書きは余計かね」

 

 

城壁の一部に肘をつき、ハァと溜息を吐く。

今回も関の内部に回されたが故、多少の暇を持て余していた。

勿論、戦いの為の気は抜いていないが。

 

そんな美里の憂鬱を余所に、虎牢関では防衛戦が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

事は、朝議の時にまで遡る。

一刀が二人の軍師に問いかけた時まで。

 

 

「分かりました、では私共の意見を述べさせていただきます」

 

「私共、か」

 

 

一刀はその言葉の真意に気付いた。

そして同時に、この内の幾人かもその事実に気付いたのだと。

 

 

「次の一戦は、再度攻めるべきと存じます」

 

 

少し室内がざわつく。

今それを行う事の利点が思い付かない人間が多いのだから、当然だろう。

 

 

「大丈夫よ、我等に策あり、ってね」

 

 

どうだと言わんばかりに、口元を歪めた詠が笑った。

少し禍々しささえ感じるその笑みに、一刀でさえもやや引いてしまった。

 

 

「二人の言わんとしている事は分かったのです。

しかし、策とは一体?」

 

 

ねねが手を上げて発言する。

ずっと黙っていたが、流石に軍師。

最も不機嫌そうであるのは、自分も軍師なのに、二人に無視された事からだろう。

ねねにも両者の真意を見抜く事は出来たが、そこから先の策がどうにも思い浮かばないのだ。

 

 

「あ、そう言えばあんたもいたわね」

 

「ずっといたです!!」

 

「ちょ、ねね落ち着いて!」

 

 

今気付いたと言った様にポカンとしながら言われた言葉に、何時もの飛び蹴り体勢を取ろうとするねねを、真理が押し留める。

思わず笑いが起こった、朝議のそんな一幕。

 

 

 

そして、今。

 

袁紹軍を蹴散らしたあの時とは異なり、今回はしっかりと布陣する。

相手の錬度は、今までに見て来た如何な軍よりも優れているのは、確定事項なのだ。

皆の間にも相当な緊張が奔っている。

 

 

「一刀! 全員の武装の最終確認終わった! 不備無しだ!」

 

「よし、総員戦闘配備! 敵は待ってくれないぞ!」

 

『応ッ!!』

 

 

暫くし、陣が組まれる。

今回は攻撃だけでなく、護りも考え、魚鱗陣を選択した。

互いの軍は既に配置を終了。

後は、開戦を待つばかり。

 

皆は、思っていた。

かの曹孟徳ならば、開戦前に舌戦の一つでも仕掛けるのだろうと。

しかし。

 

 

「・・・? 動いている?」

 

 

葵の呟きが皆に聞こえた。

 

曹操軍がまるで一尾の蛇となったかの如く、するすると近付いている。

遠近感が先程とやや変わっている事に、気付いたのだ。

 

そしてその一瞬で、この場にいる者達は悟った。

考え違いをしていると。

 

まずい、と一刀は思い、叫ぶ。

 

 

「総員抜刀! 来るぞ!!」

 

 

 

一方のこちらは曹家軍。

一刀の叫びを聞き、現軍団長を務める華織はほくそ笑んだ。

 

 

「気付かれたか、しかし時は既に遅し。

騎馬は、動き出してから加速し突撃するまでが肝要。

此処まで近くに来させてしまい、どう挽回する気だ?」

 

 

華織は、右手に握り締めた鞭を振り上げ叫ぶ。

 

 

「空け共、雌伏の時は過ぎた!

鬨の声を上げよ!!

総員、突撃!!」

 

『ウオォォォォォォォォォッ!!!!!』

 

 

ピシャァン! と鞭が大地に振り下ろされ、甲高い破裂音が響いた。

それを皮切りに、兵士達が先程までの静かさが嘘の様に烈昂の呼気を上げる。

その光景は、まるで猛獣使いのそれだ。

 

兵士達が目に凄まじい気合を蓄え、一刀達に襲い掛かった。

 

 

 

 

第三十一話:了

 

 

 

 

 

後書きの様なもの

 

うん、またしても遅いんだ、申し訳ありません。

週刊→月刊→隔月とか・・・どっかのアルター使いに蹴飛ばされても仕方ありませんね・・・

 

コメ返し

 

 

・オレンジペペ様:これからですよ、これから!

 

・悠なるかな様:さぁ、どうなるかは次回以降、度肝を抜く展開! に出来るといいなあ・・・

 

・2828様:テンパった彼女にそんな事を考える余裕は無かった訳です。

 

・転生はりまえ$様:そうですね、血に関わらず氷柱は危険です。 真理は高順ですから、時々出てますよ、那美那は・・・その内出て来ます。

 

・nameneko様:危険ですね、ねねがすっ転びました。

 

・村主7様:旗が目印、実は元ネタは三国無双の四コマからだったりします。

 

・アロンアルファ様:麗羽は・・・駄目だ、先のネタバレに。 稟なら血の池地獄位余裕だと思っている自分がいますね。

 

・通り(ry の名無し様:いやしかし、皆稟の血の氷柱に突っ込むんですね、以外です。

 

・F97様:斗詩はメロメロ、そろそろ事態が動きます。

 

・欠陥製品様:うぅっ、その様なお言葉が一番身に沁みます。

 

・ロンロン様:どうでしょうね?

 

 

では、今回は此処までです。

次回は・・・一月以内に上げたいなぁ。

 

 


 
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