No.309174

恋姫のなにか 30

くらげさん

旅行準備編。あとオマケもあるよ!

2011-09-28 21:15:52 投稿 / 全15ページ    総閲覧数:13879   閲覧ユーザー数:7453

一刀一家の旅行準備編。オマケもあるよ!

夕暮れ時、ふんふんふ~ん。と機嫌良く鼻歌を歌いながら、あられもない下着姿で家中を闊歩する桃香。

いつもなら無駄と解っていながらも、凪や今日は珍しく早退してきた稟が一応は注意するのだが、今日だけはこの姉妹にそんな余裕は全く無かった。

 

「凪ちゃ~ん、アレ貸してよ」

「アレって何だ」

「ほら、こないだたっかい肌水買ってたじゃん」

「ほら」

「・・・なんで今日はそんなに優しいの?」

「当然下心有りだ。お前がこないだ買ってた薄い緑色のキャミソールかしてくれ」

「良いけど、アレは一枚だとブラ透けるよ?」

「お前ホントに人を愚弄するの得意だな」

「人より正直に生きてるだけですぅ~♪ って凪ちゃん、紐パンとフンドシは似て非なる物なんだよ?解ってる?」

「今ならお前の顔面ぶん殴っても誰も私を罰さないと思うんだ」

 

がるる!と唸りながらも桃香には目もくれずに部屋に置かれた鏡と睨めっこしながら髪型をチェックしては首を左右に可愛らしく傾げてニコッ♪と笑う練習をする凪。微笑ましい。

何時もならそんな仕草を魅せられてはムクムクと首を擡げるドS心の赴くままに只管おちょくる桃香様だったが、今日だけはそんな余裕は無かった。

お目当てのブツを手に取ると、んじゃ~ね~と凪の部屋を後にする桃香。

明日から弟と姉弟水入らずの温泉旅行。凪や他の姉妹宜しく、弟を悩殺するために用意出来る物(スケスケのおぱんつ様とかそんなの)は最大限準備しなければならない。

が、自室に戻った所で喉乾いたなーと踵を返して冷蔵庫から何か飲むもの取ってこよう。と階段をトントンと稟が羨む速度でかけ降りると、ご主人様の帰りを待つ忠犬宜しく玄関に座り込んでいる恋を発見した。

 

「恋ちゃん何してんの?」

「一刀まってる」

「朝からそこいたよね?」

「まってる」

「・・・ま、いいや。ちゃんと準備しなよー? 三日も四日も同じ服とかカズちゃんに嫌われるよ?」

「今日は一刀とお風呂入る」

「いやそれはアタシがやるから」

「恋」

「アタシ」

「恋」

「ア・タ・シ!!」

 

(`・ω・´)VS凸(゚Д゚#)ヤンノカゴルァ!! な睨み合いになる事数秒、何時もなら桃香のハイキックが恋の米神を襲うのだが、水を差すようにどんがらがっしゃーん!!と凄い音が響いてきた。

 

「なになに・・・」

「・・・稟がさっき這いずって行った」

「マジかよ・・・もー霞ねーさんいないのにー」

「ほっとく」

「いやカズちゃん帰ってくんのに放置は不味いっしょ。恋ちゃん手伝ってよ」

「めんどい」

「んじゃカズちゃんに後片付けさせるの?」

「しかたあるめぇ」

 

基本的にこの姉妹達、一刀さえいなければ互いに手を取り合えるのである。

「なーんで稟ちゃん余計な事ばっかすんのさー!」

「面目ない・・・」

「ねてろよ」

「恋も段々口が悪くなってきましたね・・・」

「ほらお前等、立ち上がった稟姉様のポンコツ具合は今に始まった事じゃないだろうが、あまりいじめてやるな。泣いたらめんどくさい」

「あっれ、凪すんごい殴りたい」

 

どこをどう持ってどう力を入れれば冷蔵庫が逆さを向くのか教えて欲しい。そんな気分になりながらも恋の馬鹿力で冷蔵庫を持ち上げて、凪と桃香はついでにと周囲を掃除して何とか事なきを得たお茶の間の空間。

 

「よっと! 凪ちゃんつかれたー! アタシアイスコーヒー」

「オレンジジュース」

「お前等は自分で淹れろ自分で・・・」

 

ブクツサ言いながらも甲斐甲斐しく二人の分を先に用意してあげる凪。

準備は万全、とは言い難いものの、もう準備は粗方終わったし直ぐ様席を外す事もないだろうと自分の分のお茶を淹れて桃香たちに続いて自分も席に付く。

 

「今日晩ご飯何食べるー?」

「確か出前取るという話でしたね?」

「凪ちゃんはー?何かリクエストないの?」

「特にはなぁ・・・ジャンクフードでなければの話だが」

「恋ちゃんは?」

「にく」

「焼肉のデリバリーってあったら流行るかな?」

「生肉とか衛生面からみて申請通らないんじゃないか?」

「焼いたの持ってくる?」

「冷めて油が白く固まった肉食べたいんですか貴方は。 レンジで温めるにしても味気ないと思いますよ」

「他に肉料理って何かあったっけ?」

「ステーキ?」「ハンバーグ」「・・・ジンギスカン」

「全部似たような内容だねぇ。一発当てれるかと思ったけどダメだこりゃ」

 

うぉー!と両腕を伸ばして大きく伸びをする桃香。むっちりと締め付けられた桃香の胸がそれでも揺れるのを見て、今更だが桃香のあられもない姿に気付く三人。

 

「桃香、風邪・・・は引かないですね、馬鹿ですもん」

「お前ってどの時点で頭のネジ落としたんだろうな」

「・・・子供の頃からこうだった」

「あんたら死にたいんならハッキリそう言ってくんない?」

「ま、桃香の馬鹿さ加減はどうしようもないとして―――可愛いブラですね」

「・・・・・・エロいな」

「やわらかそう」

「はっはっはー羨ましいか愚姉どもー」

 

両手で掬ってたゆんたゆんと弾ませる桃香。確かに五人の中で突出して大きいだけの事はあった。

 

「まぁウチじゃ一番大きいけどさー、こないだ来た・・・えーっと、シャオのお姉ちゃん。名前なんだっけ?」

「冥琳さんでは無くですか?」

「雪蓮さんの事か?」

「あーそうそう雪蓮さん。 まぁ冥琳さんもだけど、あの人らには負けるわ。もう完敗」

「雪蓮もおっぱいおおきい」

「あんだけデカいと男選び放題だろうねー」

「何故アンタは葉に絹着せるという事をしないんですか」

「別にいーじゃん、アタシらしかいないんだし」

「・・・まぁ、確かにプールに行った時は凄かったな。気が付けば声を掛けられていたと思う」

 

うーん。と記憶を探りながら当時の事を思い出す凪。恋も同じように首を傾げていたが、どれだけ脳をフル稼働させても思い出すのは弟の半裸だけだった。恋ねーちゃんはそれでいいよもう。

「でさ、どう思う?」

「いつも漠然としすぎなんだよお前の質問」

「だーかーらー!  カズちゃんと付き合うとかってなったら」

「私は反対ですね。 一刀と雪蓮さんでは合わないと思いますよ」

「いやまぁアタシもそうだけどさ、その理由とかを言えって」

「恋は雪蓮好き」

「・・・雪蓮さんは確かに良い人だったが、そういう理由なら私も反対だな。私は華琳さんとか、秋蘭のようなタイプが良いと思うんだが」

「へー、凪ちゃんが建設的な意見言うとか珍しいじゃん。その心は?」

 

確かに、と身体まで向けて凪の話を待つ稟と、時計の文字盤を見ながら左右に揺れる恋。だが癇癪起こさない所を見ると、弟の行く末は気になるのだろう。

 

「秋蘭は一刀と付き合いも長いし、その分操縦の仕方が上手だ。 華琳さんも上手く付き合っていってる様だった。というのが私の見解だ」

「それはどうでしょう、アレで一刀はプライド高いですよ。 良い様に操られてると勘違いしたら爆発すると思いますが」

「んじゃ稟お姉ちゃんのオススメは?」

「そうですね・・・社会的地位という話でなら冥琳さんは申し分ないですね。 弟を任せるのに信用十分といった所です」

「お金と幸せは別モンだと思うけど」

「そりゃそうです。 心情的には思春か桂花さん辺りとくっついて貰えないかと思いますね」

「桂花嫌い・・・」

「ありゃりゃ。恋ちゃんのダメだし入っちゃった」

 

ぷーと膨れる恋を苦笑いで見守る桃香たち。

厳しい様で甘い霞や、根本的に一刀に強く出る事をしない下の姉達と違って、桂花の一刀へのお説教は有難いやら傍迷惑やらといった所だった。

なんせ一刀の為に必要とあれば、この姉達にですら牙を向く桂花さんである。一番お姉ちゃんしてるなぁと言ったのは凪だったか、稟だったか。

 

「正直な所、桂花さんのお説教は身につまされる物がありますね」

「まーそれはそれ、コレはコレ。 カズちゃんは褒められて伸びるタイプだって」

「それこそ場合によりけりだとは思うが・・・まぁ霞姉様もただ甘やかしてばかりではないし」

「桂花嫌い・・・」

「それより桃香、アンタは誰か良さげな人はいないんですか?無論自分という答え以外で」

「アタシ? そーだなー、月ちゃんとか面白そうだよねぇ♪」

「アンタ、言うに事かいて・・・」

「だーいじょぶだってー、もう霞ねーさんも大人なんだし、過去のいざこざは水に流すってー」

「その心は?」

「二人が喧嘩になったら霞ねーさんを問答無用でぶん殴れるとか超美味しいです」

 

ぎゃはは。と高笑いする桃香。その背後、今しがた帰ってきた霞のピクピク動く眉を見ながらスーッと距離をとる三人。

 

「桃香、短い人生だったな、後悔は長くしろよ」「桃香? まぁ、良い奴でしたよ・・・」「桃香は人の話聞かないから・・・」

「・・・あれ、もしかしてアタシやらかした?」

「「「大丈夫だ、問題ない」」」(キリッ←凪 (キリッ!←稟 (`・ω・´)←言わずもがな

「桃香ー?ちょーっとお姉ちゃんと語り合おか?」

 

バキバキボキボキゴキゴキと擬音を三連発で叩き出した拳を開いて、むんずと桃香の頭を握り締める霞。

 

「あっれおかしいな。アタシ今話し合うって聞こえたんだけど何で頭掴まれてんのかな?」

「霞姉さん、一刀は一緒では?」

「あー、遅うなるらしいで、後で迎えに行ってくるわ」

「恋がいく」「いやここは私が」

「恋ー?お前なんで寝巻きのままなんやー? それと凪、お前今日道場ちゃうんか」

「恋たちなにも」「言ってません」

「隙有り戴きっ!!」

「っざかしいんじゃボケ!!」

 

頭を掴まれた状態から、それでも足掻いた桃香様。

しかし現実は非常である。頭を掴まれたまま全身を持ち上げられ、逆一本の要領でソファーにぶん投げられた。

ぶしゅーと頭から煙とタンコブを立ち上がらせてソファーに潰れる桃香。良い奴だったよ・・・

ぱんぱん。と手を払うマネをしてふんす!と気炎を吐き上げる霞。

ピロリロリーンとオシオキされた桃香の姿を写メに撮る凪。タイトルは『ザマァwww』

桃香がどうなろうがどうでもいい恋はお茶の間で素っ裸になってシャワーを浴びにいった。

腰を落ち着けた稟は我関せず。と旅行地のガイド本なんかを読んでいる。

 

「んで?仲良しこよしで何してたんや?」

「姉として一刀の彼女の品定めなんぞをしてましたよ」

「というよりは、一方的にコキ卸してただけだと思いますが・・・」

「あー、それで月の名前か・・・けったくそ悪い」

 

ドスン!と音を立てて床に直接座り込む霞に、クワバラクワバラと思いながらもお茶を運ぶ凪。

 

「お、ありがとうなー」

「もうこの際ですしお伺いしてみたいのですが、霞姉さんの知る範囲の方で結構ですので、霞姉さんのメガネに適った人なぞ聞かせて頂きたいのですが」

「ウチか? んなもん一刀の勝手やろ?」

「まぁそれはそうですけど、私達にも口出しする権利はあると思います」

 

大事な弟のことですから。と凪が真剣な眼で言うので、やれやれ。と思いながらもお茶を啜って口を湿らせる。

 

「そーやなー・・・桃香は聞いたけど、お前等は誰ぞおんのか?」

「私は思春を押しましたよ。次点で桂花さんと冥琳さんでしたか」

「私は一応、秋蘭なんていいんじゃないかなぁって」

「ほー、こらまた順当というか、意外と言うか」

「恋は雪蓮さんでしたっけ?」

「アイツの場合、自分と一刀がイチャイチャするのを邪魔する人でなければそれで良いと思いますけどね」

「まぁでも大きな進歩だと思いますよ」

「おーいって・・・んで、霞ねーさんは誰押しなのさ」

 

顔だけムクッと起き上がらせて、まだ涙目な桃香も話に混じる。

せやなぁ。と口を開きかけたところで、バスタオルを身体に巻きつけただけの恋が帰ってきた。

 

「気になる」

「なら話の腰を折るな馬鹿」

「ギャラリーも揃った事ですし、長女のお考えをどうぞ」

「と言われてもなぁ・・・まぁ春蘭と秋蘭は無いな。一刀甘やかしてアカンようにするんが目に浮かぶわ。

思春も一刀が強う出んやろで、二人で共倒れになりそうやし無い。

桂花に星もなぁ・・・まぁ桂花は上手い具合にやるかもしれんけど、お姉ちゃんとしてはああいうのが義妹になるんはちっとなぁ・・・可愛いがれへんやん。星は今後に期待やな。

んで雪蓮に月?ふざけんなや、あんな連中に弟任せられるかけったくそ悪い。

そのツレの―――冥琳と華琳も無いな。月のツレなんがマイナス一億点や」

(私達の採点って大甘だったんですね)

(いや、霞ねーさんのは単にヤキモチ焼いて厳しくなってるだけっしょ)

(霞頑固)

(というか人としてどうなんですかこの言いよう)

「秋蘭の後輩のガキ共もなぁ・・・詠ちゃんぐらいか?まともやったんは。せやけどほな任せられるか言うたらなぁ・・・

一刀はガキのまんまやし、やっぱある程度は人生経験積んどいて貰わんとこっちは安心できへんわ」

「ストップ、一回ストップ。 そーいうの言い出したらキリないじゃんか。

何となくで良いんだってこういうのは!何もアタシらだって今此処で決めちまおうとか思ってないって!」

「ふぃーりんぐ」

「今恋が良いこと言いました。 それに、月さんや彼女のお友達がダメと言いましたけど、それは霞ねーさんの禍根が原因であって直接的な理由にはなってないですよ」

「どないせぇっちゅうねん・・・ウチの考え話せ言うたんちゃーうんか」

「ですから、何となく『あーこの子のこういう所いいなぁ』とかの他愛ない話でいいんですよ」

「いや、せやから「ぶっちゃけさっきのはただの粗探しになってましたよ」

「ふぃーりんぐ」「今恋ちゃんが良いこと言った。大事な事なので二回言った」

「えーもーめんどくさいなぁ・・・」

 

むーん、と眉を潜めながらも、稟の言った通りさっきのアレはまさに陰口になってたなぁと反省する霞。

それでも労せずして各々の良い所、所謂アピールポイントは見つけ出せたので、なるほどそこからチョイスしていけば良いのかと納得するともう一度口を開いた。

「春蘭は・・・なぁ?どーする?アレと一刀が結婚したら」

「「「「いやそれはノーセンキュー」」」」

 

哀れ春蘭。まぁ、仕方ないね。

 

「秋蘭はまぁ、やることなすこと完璧やしなぁ。ちょっち何考えてるかワカランでえらい事しでかしそうやけど、そこに眼を瞑ったらまぁええ娘さんやね」

「目立った粗はないですよね。それこそ、先程霞姉様が仰っていた様な事ぐらいですか」

「本命としときましょうか」「オッズは1.1」「アタシは買わないなーその馬。ロマンがねぇよ」

 

チラシの裏にパーペキシュウランと名前を書き、その上に◎を付け足す稟。

更に恋が一刀ステークスと銘打ち、桃香が今世紀最大の大一番。と見出しを付けて「どうでしょ?」と霞に見せる。

霞はそれを受け取ると、パーペキシュウランの下に『本命。目立った粗無し』とコメントまで付けていく。

そうする内に定規を取りに行った凪が戻ってきて、本格的なレース表が作成される事になった。

 

「・・・こんなもんか? ほな次の馬やな」

「乗っておいてなんですが、酷い扱いですね」

「酒の肴にゃもって来いだねぇ」

「つぎは思春」

「思春は・・・大穴やろか? さっきはああ言うたけど、よー考えてみたら思春が一刀に逆らう姿が想像出来へんわ」

「そうすると対抗馬ですねぇ。それに、思春はああ見えて意外に思慮深いですよ。一刀の分も財布を握れば案外化けるかもしれません」

 

シシュンストーム。といまいちと言わざるを得ないネーミングセンスで名前をつける稟。名前の上には○が付け足された。

 

「私、稟姉様と来ましたし、次は恋牧場のオススメですか」

「恋は雪蓮」

「雪蓮さんかー、気さくだし別嬪さんだし、一見完璧くさいんだけど、私らの評判あんまよくないねぇ?」

「そういえば何故でしょうね? 特に何か仕出かしたという事もない筈ですが」

「・・・これは完全にウチの感やで、話半分に聞いてや? あの娘、男をアカンようにするオーラ持ってる気がするわ」

「・・・言いたい事はすんごく伝わった」「確かに・・・」「雪蓮、良い子」「いやそう言う意味では無くてです。確かに良い人ですが・・・」

「何やったっけ、あのーアレ。傾国の美女? そんな感じ」

「コレもアタシの感だけどさ。雪蓮さんってカズちゃんと付き合っても男遊びしてそうだよね。無論無意識的に、それまで含まれるとは知らずにの範囲でだけど」

 

例えば付き合いで合コン行くとか、男友達と二人っきりで会うとかそういうの。と桃香が付け足し全員がううん・・・と唸る。

それを一刀がどう思うかは当人のみぞ知る事だが、人によってはそれも浮気の範囲に入るだろうし。

 

「家事をしなさそうなイメージではありますね。 そしてそれを誰も不思議に思わず、結果文句も出ない」

「・・・家にいなさそう」

「悪女ですね、傍から聞いているだけだと」

 

全員でうーん。と唸りながら、雪蓮の良い所を出し合って行くのだが内容が彼女の容姿を褒める類の物ばかりで、一向にそれぞれが出した「何となくダメな原因」を払拭出来ない。

 

「雪蓮、ダメ?」

「いやダメってこたぁないんだけどさ・・・先に出てるのが秋蘭に思春でしょ?」

「まぁ、我々が雪蓮さんの事を深く知らないのがダメな訳で、実際雪蓮さんだって自宅では家事を率先して・・・」

「やっているイメージが湧かないんでしょう? だからこそのこの共通のイメージが出来上がっているんだと思いますよ」

 

うーん・・・と唸りながらも稟はチラシの裏にカットビシェレンと付け足す。

それを手渡された霞は『未知数。大化けの可能性有』と書いて気を取り直す様に声を上げる。

「つ、次は誰や?桃香の番やったか?」

「えーそうだなぁ・・・霞ねーさんの事置いとけば実際月ちゃんって良い子だったじゃん?お土産とかすんげー高いヤツ買ってきてくれたし」

「上品でしたね。いやまぁ別段親しくしている訳じゃないので実際どうかは知りませんが」

「・・・・・・・・・ちっちゃい」

「それは褒めたのか乏したのかどっちだ」

「お前等色々言うてるけど、アレ董家の跡継ぎやぞ」

「無いですね」「無い」「さっすがにそれはなぁ・・・」「?」

 

霞の一声に全言撤回する妹達。ただ一人ピンと来てない恋はへくち。とクシャミしてたけど。

 

「恋はなんぞ着てこい。 風邪引いたら旅行置いていくで」

「一刀はそんなことしないもん」

「いやあの子はやりますよ。『寝てなきゃ一生口利かない』ぐらいの事は平気で言います」

「服着てくる」

 

バスタオルを巻いて軽やかに部屋までダッシュする恋を見送ると、一同揃ってやれやれ。と肩を落とす。

 

「ほな桃香はどないすんねん。未出走でかまへんのか?」

「えーちょい待ってー・・・愛紗ちゃんは?」

「えーっと、確か霞姉様に喧嘩売った片割れだったか」

「何でアンタはトコトン霞姉さんに喧嘩売るんですか」

「違うって! ほら、そんだけ負い目があんならコッチからもアレやコレや口出しし易いじゃん?」

「そういや、確かにあの娘は一刀にベタ惚れって感じでしたね」

「不貞を犯す心配は無いということですか?」

「どやろなー。一時の感情でくっついたら一時の感情で終わるん違う?」

「んじゃ亞莎ちゃん。弄りがいは半端なくあったよ?」

「誰です?」「誰だその人は」

「うわめっちゃ聞いた事あるような・・・」

「カズちゃんがバイトしてた所の娘さんだってさ。ちょっとだけ会った事あるよ」

「あー!!思い出した。ちんまい可愛らしい子やったわ!!」

「おいてけぼりイクナイ」「会話に混ぜて貰えませんか」「?」

「お、恋戻ってったか! お前と一緒にカズのバイト先に行った事あるやろ?」

「うん」

「そん時におうた子の事覚えてるか?」

「―――ききょー?」

「なんでソコで桔梗さんやねん」

 

というか何故恋が桔梗の事を知っているのか。勝手に一刀の所に行かない様に厳重に見張っていた筈なのに。

霞の記憶では一刀と二人きりだった時に一回あっただけなのに、妹達も話に参加しだしたし。

 

「あー、桔梗さんなら覚えていますよ。そう言えば霞姉さんお酒貰ってましたね?」

「桔梗さんというと、あの人ですか、一刀が今もお世話になっているという」

「キャビアくれたし良い人だよねー。ちょっち『お母さん』っぽいし、カズちゃんが熟女好みならイケてるんじゃね?」

「いやいや桃香、そうなったら私達年上の妹を持つ事になるんだぞ?」

「ネタとしては最高です本当にありがとうございました!」

「―――お前等、何で桔梗に会った事あんねん。一刀のトコには勝手に行くな言うたな?」

「「「「やっべ」」」」

全員に拳骨の雨が降り注ぎ、涙目になって頭を抑えているのを横目で見てから霞は口を開く。

 

「桃香、お前亞莎ちゃんか?それとも桔梗さんか?」

「どっちもでいいよもう・・・」

「恋が余計な事言うからコッチまでとばっちりじゃないか」

「三人がアホなだけ」

「言い返せないのが悔しい・・・でも以下略」

「まぁ・・・皆良うしてもろとるみたいやし、義理立てて桔梗さんにしとこか」

 

キュキュキュとチラ裏にキキョウフタモジと書き足すと『末脚強烈。侮り難し』とコメントしていく霞。アーシェカワイソスの出番はあるのか。

 

「ほな最後はウチかー」

「何となく流れで秋蘭を本命にしてますけど、ぶっちゃけその人ですよね、大本命」

「何せ霞姉様の太鼓判貰える訳ですからね」

「ずるっこ」

「まー有利だよねー。皆軽で参加してんのに一人だけF1のマシン持ってくるみたいなモンだし」

「お前等なぁ・・・」

 

霞は悩む素振りを見せながらも、内心では翠の名前しか浮かばなかった。

あの日、一緒に行きたいと懇願する翠を突っぱね、独りにさせたのは自分だ。

けれど、翠と一刀の関係は危うい。今まで上がった名前の中で、一番危うい。

あの二人は互いが入れば、それだけで世界を完結させてしまう。それが、霞には不安なのだ。

 

「どーしたもんかなぁ・・・」

「まま、ちゃちゃっと選んで下さい。そろそろ時間も押してきそうですし」

「んー・・・月の事ほっぽったら華琳は優秀やね。色々面倒見てもらってるみたいやし」

「そなの?」

「アレでちゃーんと家事出来るみたいやで? しょっちゅう『こんなの出来ました~♪』ってメシの写メ添付されてくるさかいな」

 

まさかそれを一刀と食べているなど夢にも思わない霞は純粋に「人懷っこい子なんやなぁ」という微笑ましい感想だったのだが、バレたら直ぐ様『華琳逃げて!!』エンドまっしぐらである。

 

「自然に周囲の人に気を使えるというのは素晴らしい事だと思います」

「ふーん。家に来た時は抜けてるなーとしか思わなかったけど、やる事はやれんだね?」

「何気に恋の面倒まで見てましたからね。そういう意味じゃ最強ですね彼女」

「華琳きらい」

 

ぷーと膨れた恋は一人華琳を認めないが、それがヤキモチである事ぐらいは皆察しが付いている。

 

「どーせアレでしょ? カズちゃんと仲良すぎるー!とかでしょ?」

「そうだけど違う。 良すぎる気がする」

「具体的に言いなさい」

「どーせーとかしてる気がする」

 

恐ろしや、野性の第六感。華琳逃げて!!

が、野性の感が恋ほどは鋭くない他の面々はあっはっはと笑って一蹴する。

 

「一刀にんな度胸あらへんあらへん!」

「ぷっくく・・・恋の言う通り確かにもし同棲していたら大変な事ですね・・・ぷくく」

「アレだけキチンとした人が保護者の私達に断りも挨拶も無しにそんなだいそれた事するわけないだろうが」

「まーまー恋ちゃん、もしそうだったらアタシがボッコボコにしたげるよ」

 

一人正回にたどり着いてる恋の答えを全員で爆笑しながらスルーした。

 

「もししてたら霞どーする」

「はぁ? んな事しとったら今すぐ一刀に責任取らせるっちゅーねん」

「霞姉さん、恋が言っているのは『オトシマエ』の方だと思いますよ。弟を傷物にされた事に対する」

「お前の好きにしたらえーんちゃうかー?」

「本気でボコってみれば良いんじゃないかー?もしお前の馬鹿馬鹿しい妄想が本当だったらの話だけどな」

「アタシ後始末やったげるよー♪ ホントだったらだけどねー♪」

「何ならその後一刀とアンタをくっつけてあげますよ。ぷくく!」

「覚えたぞ」

「おー、きばりやー」

 

華琳逃げて!!絶対無理だけど遠くに逃げて!!一刀から出来るだけ距離取って!!

おまけ。もし一刀の引き取られた先が夏侯姉妹宅だったら。

ちなみに元ネタは姉しよ2のとある1シーンです。

 

 

「恋さんドアあけてー」

「らじゃー」

 

恋さん素直でいいなぁ。ウチの姉貴もこれぐらい素直だったらいいのになぁ。

 

「こんちわー」

「おぅカズ。お邪魔してんでー」

「こんにちわ。元気そうでなによりです」

「こ、こんにちわ!」「ちゃお~♪」

 

お隣さんの四姉妹+霞ねーさんが遊びに来た休日の昼下がり。一家の末弟にはお茶とお菓子なんぞ配膳する係りが仰せつけられているのです。

霞ねーさんが引き取られた所のお姉さん達はみんな良い人そうで、初期弟としては遊んでもらう度に「ねーさん盗られた」だなんてちょっぴりジェラシーなんぞを感じる今日この頃。

 

「うわっ?!」「むぎゅー」「おい?!」

「ちょ、恋さん危ない!てかあっちぃ!!」

「何をやっとるかお前は・・・」「あらあら、恋ちゃん大胆ねぇ」

「なんで俺が怒られるんだよ・・・」

 

片や俺を引き取ってくれたお家はぽやぽやの長女とむっちゃ厳しいクールビューティの次女の組み合わせ。

上の春蘭はもうなんか姉ちゃんっていうより手の掛かる年上の妹という認識です。

下はMFにて飼育するモンスターを過労死させる事に定評のある秋蘭。呼び捨てにすると顔面にグーパンぶっぱされます。

 

「一刀くん手、大丈夫?冷やして来たほうが良くない?」

「あ、ども・・・」

 

少し心配そうに眉を潜めながら、俺からコーヒーカップがしこたま乗ったトレイを受け取ってくれたのは癒やし系、斗詩さん。

これで彼氏いないってのが不思議でならんよ。嘘ですチャンス有りでめっちゃ嬉しいです。是非とも膝枕で甘やかして頂きたい。

 

「私がやっておくから、冷やしてきて」

「あー、すんません」

「すいませんね、落ち着きの無い妹で」

「もー恋ちゃんダメじゃん。ごめんね?」

「ごめんちゃい・・・」

 

(´・ω・`)とした顔で俯いて、しかし上目使いで俺の胸におっぱいを押し付けてくる恋さん。OK、許そう。

 

「だらしない顔してないでさっさと洗面所に行ってこい。あとコーヒー臭いから着替えてこいよ」

「いつか酷い事してやる・・・」

「あん?」「サーセン」

 

ギロッとメンチきられてすごすご退散する事にした。怒った時の霞ねーさんより恐いって歳頃の娘としてどうなの。

 

 

 

「す、すまん秋蘭・・・ウチのがいつも」

「問題ない。アレにはいい薬だ。いつも恋さんの胸の感触を楽しんでいるみたいだしなぁ」

「秋蘭ちゃん?そのうちカズちゃん胃に穴が空いちゃうからその目付きやめたげてっていつもお願いしてるわよね?」

「お前は何時も一刀を甘やかし過ぎるぞ姉よ。少し過保護すぎると思うが」

「いやいや秋蘭さんには負けるって」

 

桃香の言葉にうんうん。と頷くその場にいる者たち。

 

「先程凄い声量で『おい?!』って叫んでましたしね」

「何が起きたんかウチらがよー解ってへん時に真っ先に反応してたしなぁ」

「アレ、絶対人間の反射神経凌駕した反応速度ですよね」

「秋蘭は十分の一でいいから一刀くんにその胸に秘めた優しさを見せてあげるべきだと思うな、私」

手を冷やしている最中に背後から恋さんにぎゅっと抱きしめられ、ぐにゅぐにゅとおっぱいを押し付けられる度に発せられる「んっ・・・」という鼻に掛かった声を耳元で囁かれ続ける事数分。

何とか耐えきった俺はもっと評価されるべき。まぁそれを親にガン見されてたってのもあるけどな。

 

「お部屋、行こ?」

 

との誘惑を振り払う。この状況で姉貴にバレない道理がない。えぇヘタレですとも、恐いですとも。

皆のいるリビングに行くまでに恋さんに自制心その他諸々をガンガン削られながらも、何とか帰還したリビングは地獄でした。あと恋さん、ドア開けた時に聞こえた「チッ!!」って何。実はそんなキャラなの?

 

「何やってんの、姉貴」「ししるいるい」

「おー、帰ってったかー・・・此処等で止めとこか?」

「それがベストな様で・・・」

 

霞ねーさんと姉貴が力比べしてた。理由は知らない、知りたくない。

ぐるりと周りを見渡せば俯せで伸びてる斗詩さんにソファーの背もたれにこれまた俯せで乗っかってる稟さん。

春蘭は耳をふさいでガタガタ震えながら「ごめんなさい」を連呼している。正直何時もの光景すぎて何も言葉が出ない。

凪さんの体勢はアレか、ダイイングメッセージを残そうとしてるのか。犯人分かりきってるけど。

桃香さんは大の字でぶっ倒れてる。あ、ラッキーパンツ見える。

 

「みちゃだめ」

 

恋さんに後ろから手で両目を塞がれた。第三の眼、KAIGAN!!

 

「一刀、お前しばらく外に出てろ」

「は?」

「こっちの話が終わったら連絡するから、それまで帰ってくるな」

「絶対いつか復讐してやる・・・」

「ほぉ楽しみだ。一撃で殺せよ、仕留め損なったら百倍返しだ」

 

もうやだこの暴君、斗詩さん癒して。

 

「恋の部屋行く?」

「おっと、恋さんはこっちです」「やー!!」

「はいはい暴れんなー。今日お泊りしてもーたらええがな」

 

しっし。と手で追い払う仕草までプレゼンツされ、傷心の俺は部屋に財布を取りにもどるのだった。ついでに姉貴の部屋を荒らす事も忘れない。パンツとブラを大氾濫に追い込んでやる。

若さって何だ?姉貴の恐怖をテンションで忘れることさ!!

 

 

「という訳で癒やしが欲しいんだが」

「死ねば?」「かずにー、も一個アイス」

「お前等に包容力求めた俺がアホだったわ」

 

とりあえず星を呼んでみた。呼べばホイホイ来るあたりお手軽時間潰しの友なんだが、財布を携帯してない辺り強かに育っている。

家を出る所を見つけたらしい思春も参加。基本インドアなのにこういう時だけは無駄に行動力あるなコイツ。

 

「星、俺の手持ちギリギリなんだぞ」

「飛んでみろよ。ほれジャンプ」「小銭もってんちゃうんかー」

「何なのこの不良ども。おらみさらせ俺の財布の中身」

「うっわ・・・」「レシートすら入ってないねー」

 

自分でやって泣きそうになるよ。とーちゃんもかーちゃんも小遣いくれるけど、その内の8割を秋蘭に簒奪される。何なのあの悪魔。

 

「あれ、あんじゃん」「おー諭吉さんだー、ありがたやー」

「え?うっそ!どこ?」

 

予期せぬ思春の言葉に反応すると、思春の指に挟まれたのは綺麗に折り畳まれた諭吉様のお姿。

 

「あっれ・・・?」

「アタシクレープね」「ボクもー♪」

「ちょい待てやお前等!!」

「まーまー、後で良いコトしたげるからさー」「OK許そう」「死ねドスケベ」

 

おもっくそ脛を蹴られて蹲る俺を尻目に、元気いっぱいでウエイトレスのお姉さんを呼ぶ星の声。呼ぶの桂花にしとくんだった。

それは兎も角、何で諭吉さんが隠されてたのやら。春蘭辺りがこっそり仕込んでくれてたのかな。帰ったらお礼言って置こう。

「お見合いですか」「へー、あるとこには有るんだねー」「かっこいい」

「それで、どんな人なんや?」「お見合い写真的な物はないのか?」

「まぁまぁ皆落ち着いて。今持ってきますからねー」

 

るんるん。とスキップで部屋にお見合い写真を取りにいく春蘭。だがしかし、お見合いするのは妹だということを忘れてはいけない。

 

「なんか、自分がお見合いするテンションだったねお姉さん・・・」

「何考えてるのかイマイチ解らん姉だ」

 

ズズッと冷めたコーヒーをチビチビ飲んで、春蘭を待つ秋蘭。その表情は何時もと変わらぬポーカーフェイスだったが、気分は最悪だった。

 

「何時合うの?」「さぁ。無いなら断って良いとの事だ。此方からお願いした話でもないしな」

「秋蘭は相手見たんやろ?どんなんや」

「いえ、今日初めて見ます」

「はーい、お披露目ですよー」

 

両手でお見合い写真を抱えて帰ってきた春蘭を早く!と急かしてテーブルに置くと、当人である秋蘭が代表して開く。

 

「ほへー、イケメンだねぇ」「俳優系かな」「年上?」

「みたいですねぇ。御曹司さんらしいですよ」「ちょい春蘭、そのメモかしぃ」

「どれどれ・・・ほぉ、周家グループの幹部ですか」「エリートオーラも出てますね」

 

確かに良い男だった。十人中九人はお見合いするとなっても悪い気はしないであろう経歴。しかも相手から是非に。との要望である。

受ければほぼ間違いなく一生安泰。何処にも欠点らしき欠点は見当たらない。そんな話だった。

 

「で、どうするんですか?」

「・・・確かにイケメンだとは思うが、私の好みじゃないな。断る」

「えぇ?!ホントに?」「いや一回会って話してみるのもええんちゃうんか?」

「これといった欠点は見当たらない人物だと思いますが」

「欠点その1。少し顔がくどい。一刀みたいにもう少し抜けた感じが欲しい。

 欠点その2。髪が一刀より硬そう。良い匂いもしなさそう。

 欠点その3。普段から身嗜みもキッチリしてそうで、一刀みたいに世話の焼きがいがない。

 欠点その4――」

(((((((ブラコン・・・)))))))

 

指を立ててツラツラと、まるで予め決めていたかのようにすんなりとダメ出しを行う秋蘭に内心が一致する面々。

ある程度言い終わってスッキリして今自分が何を宣ったのかに気付いた秋蘭は、頬を赤く染めながら咳払いして気を取り直す。

「と、とにかく、この話は無かったという事で両親に伝えてくる」

「そっかー、秋蘭はとにかく一刀くんがいいかー♪」

「ダメ出しポイントが全部『一刀と違うトコ』やもんなー。そら好きな人おったら比べてまうわなー」

「秋蘭が一刀の髪の毛の匂いまで知ってるのは驚きだな。そんなスキンシップはないように思えたが」

「そこの所どうなんですか?」

「毎日寝てる所に侵入してクンカクンカしてますよ?」

「春蘭のはきいてない」

「いや私じゃなくて」

「ふーん?」「へーぇ?」「ほーぉ?」「あーそー?」「なるほどー♪」(・∀・)ニヤニヤ

「・・・おい」

「秋蘭ちゃんはいつもカズちゃんが淹れたお茶はじーーーっくり味わいながらチビチビ飲むんですよねー?」

「それでは、冷めてしまって味が落ちるのでは?」

「そうなんですよー♪ でもでも、淹れ直してあげようとするとすっごい怒るんですよー?『勝手な事するな!!』ってー♪」

「ふーん?」「へーぇ?」「ほーぉ?」「あーそー?」「なるほどー♪」(・∀・)ニヤニヤ

「いつもカズちゃんのお小遣い貯金してあげてますよねー♪全部使っちゃって困る前にって。そのくせカズちゃんがお小遣い使っちゃったらこっそり財布にお金入れてあげてるんですよねー?」

「過保護やねぇ。ウチでもそんなんせぇへんで」

「それとは別に自分で弟用の通帳作ってそうですね」

「秋蘭さー、その愛情の百分の一でいいから一刀くんに見せてあげたらー?そしたら一刀くんだって二人で買い物に行くのも嫌がらないって」

「斗詩ちゃんったらー、そんなの無理に決まってるじゃないですかー。秋蘭ちゃんすっごいヤキモチ焼きさんなんだからー」

「「「「「「く・わ・し・く!」」」」」」

「カズちゃんがちょーっと他の女の子の事見ただけで頬っぺたぎゅーー!って抓って拗ねるんですよー?」

「もうホントなんで秋蘭が一刀に厳しくするのかが解らないんですが、理由はあるんですか?」

「ここまで来ると弟の躾の為って嘘だよねー」「なんで?」

「それはキレちゃったカズちゃんに襲われたいっていぶっ?!」

 

密着した状態から、拳を添えた状態で春蘭を気絶させた秋蘭。堪忍袋の切れる音は、鍵がガチャッと締まる音でした。

 

「お前等全員の記憶を飛ばせば私の勝ち―――」

 

パチン。と電気が落ち、明るい筈の外の光が入り込まない事で漸く、秋蘭が黙っていた訳が解った。

遮光カーテンを締め、ホンの一瞬の暗闇を生み出す為だけに、この時を恥辱に耐えて待っていた。

 

「―――私を潰せばお前等の勝ちと定める」

 

それでも深夜の様な暗闇は訪れず、直ぐ様目が慣れて当たりを確認出来る様になると、そこには斗詩と桃香の頭を片手にそれぞれ持った夜叉が立つ。

投げ飛ばされた桃香を蹴り飛ばし、臨戦態勢になる恋。その間に凪が潰された。何をどうやったかは知らない、解らない。

ただ一つ分かっているのは、「忘れろ、記憶を消せ」と言いながらダウンした相手に追い打ちを掛ける秋蘭の容赦の無さ。

 

「一個だけ、聞いてええか? 何で此処までやる?」

「そんなの―――バレたら恥ずかしいからに決まってるじゃないですか!!」

 

もうそれ以上、言葉はいらないっ(キリッ

「あ、姉貴からメールだ・・・死にさらせあの糞姉」

「なになになんだってー?」「『○×屋のケーキ買ってこい。ダッシュで。30分で帰って来なかったら部屋のエロ本全部捨てる』一刀ざまぁ」

「まだ下にあるよー?  えっと、『追伸、勝手に部屋に入ったから帰って来らぶん殴る』だってー」

 

ケラケラ笑う星とナムーと拝む思春に一発づつ蹴りを入れると、ケータイを操作して桂花に電話を掛ける。

 

「もしもし桂花? 今日泊めてくんね?」

『今度は何やらかしたの』

「姉貴と絶賛喧嘩中」

『くだんねー事に巻き込むな』

「ちょいまち待ってマジでお願い、このまま顔合わせたらマジで殺される」

『はいはい、わーったわよ。そんかし献上品持ってきな』

「コンソメパンチでいい?」

『うす塩舐めんな』

 

交渉成立。あのくっそ高いケーキと比べるまでもない。

満足してケータイを切ると、二人でコソコソ話し合う演技をしているバカ共の痛い視線が突き刺さる。

 

「聞きまして?思春さん。かずにーったらふじゅんいせーこーゆーおっぱじめる気ですわよ」

「まぁイヤらしい」

「じゃーな。払いは自分らで宜しく」

「「OK話し合おう兄弟」」

「てめぇの財布持って来てないのによく喫茶店入ろうだなんて思ったなお前等。尊敬するわそのバカさ加減」

「褒めるなよ、照れるじゃないか」

「やだー褒め殺しー?かずにーったらテクニシャーン」

「マジで帰るぞ俺」

「とりあえず諭吉さんだけ置いてけよ、な?」「何この子カツアゲしだした」

「ボクはかずにーも好きだよー」「喜んじゃいけないって解ってるけどでも嬉しい」

 

家に帰るにしても桂花のトコに逃げ込むにしても、そろそろ潮時だな。

 

 

「んじゃアタシ先帰るから」

「お前ホント協調性ないね」「思春つめたーい」

「ネトゲがアタシを呼んでるんだよ。じゃーな、あと今日はゴチ」

「じゃーな」「ばいば~い♪」

 

一応は女の子と言うことで、思春と星を送ってからコンビニに寄って桂花への貢物を用意する事にしたんだけど、協調性ゼロの思春は年下の星を送るのも面倒らしい。ダメだコイツ。

ホントに先に帰るつもりなのか、さっさと歩きだした思春を見送っていると、星にクイクイと袖を引っ張られた。

 

「どした?」

「ねぇねぇ、そう言えば『良いコト』したげてなかったね?」

「なんだ、胸揉ませてくれんのか?」

「やだよーだスケベ!」

 

いー!と怒って見せる星の頭をクシャクシャ撫でると、行くかーと促して星の自宅へ向かう。

が、星は俺の服の袖を掴んだまま、動こうとしない。

 

「なんだよ、帰るぞ?」

「・・・・・・屈んで」

「あぁ?」

 

声が聞こえ辛かったから腰を屈めて耳を近づけると、今度はちゃんと「屈んで」と言う声が聞こえた。

 

「なんだよ?」

「・・・・・・」

 

星は左右を忙しなく確認すると―――飛びついてキスしてきた。狙ったのかそうでないのかは解らないけど、唇に。

 

「は―――?」

「・・・ふぁーすとキス」

「お前、今」

「今日のお礼だけど、でもでもちゃんとボクかずにーの事好きだよ?」

「いや、そうじゃなくて。えっとだな?」

「ううぅぅううう・・・恥ずかしいから帰る!!ばいばい!!」

 

キスされた?星に?なんで?いつフラグたったの?と混乱する頭が疑問で埋めつくされて行きながらも、まさか誰かに見られてやしないかと辺りを見回そうとして―――

 

「マジかよ・・・」

 

先に帰った筈の、見送った筈の思春が、俺と恐らくは星を、そして事の一部始終を見ていた。

反省。色々忙しかったんです。孫市さん二枚引いたりとかで大変だったんです。

 

今回は旅行出発編。という名の姉’sトーク回。一応姉妹にはそれぞれ気に入った子がいますよ~という回でした。

一応言い訳しておくと、私に登場人物をとぼす気は一切ありません。

此処で書いてあったか即ちその子のルート消去なんてありません。演出だったと納得して頂ければ幸いです。

 

あと『なにかシリーズを30回続けられた』という自己満足で、長いオマケなんぞつけてみました。

ツンデレというか、厳しいお姉ちゃんを登場させたくって秋蘭にやって貰いました。

このルートだと華琳様とはお見合いで知り合い、彼女の紹介でセレブ組と出会うといった流れになります。登場考えたのは華琳様だけですががが。

 

幼馴染たちに軽く説明いれると、歩んできた工程が違うので思春が人見知りじゃありません。根暗なのは変わってませんが。

あと星の好感度ウナギ登りであがってます。おそるべし秋蘭ブロック。

 

次回は旅行到着編か華琳&冥琳のお宅訪問。もしくは雪蓮&月のお宅訪問になるかと思います。

半挿し伝はチビチビ書いてます、もう此処まで期間開けたら、完結させてから一気上げの方がいいかなぁと思ってます。怠け者ですんません。

 

では、次からはお礼返信です。いつもありがとうございます。

MiTi様  その発想は無かった!! 明命が巨乳のお姉ちゃんになったらマジドストライクなんですけど公式様!!

 

叢 剣様  こうやって人は大人になっていくんだよ。

 

信号様  おねーちゃんは強いんです。

 

320i様  びば!霞ねーさん!あの髪型大好きです。

 

裕様   慣れって恐ろしいね・・・

 

zero様  片付ける時についつい気になって中を見ちゃう華琳様マジ天使。

 

付和雷同様  何を我慢する事がある!!お前は今泣いていい・・・泣いていいんだっ!!

 

Nao.様   傍若無人な甘えん坊。それが当方の桃香様スタイルです。

 

happy envrem様   束さんが一刀を気に入って妹ととっかえっこする所までは妄想済です。

 

azu様   焦らしちゃうぞー。 あ、今回一刀登場すらしてねーや。

 

ちゃあ様   みーんな可愛い乙女です。決して変換しそこなって漢女にしちゃいけやせんぜ。

 

リッチー様  恋ねーちゃんはどうしても顔文字使いたくなります。ふにゃんって感じを出すのがむずい。

 

Ocean様   皆さんのコメントみて初めて冥琳が一刀のツボストライクだと気付きました。何やってんだ俺。

 

ルーデル様  Mっぽい冥琳先輩は半挿し伝をおたのしみに。

 

よーぜふ様  一刀にはこのまま大きくなっていただきたい。

 

絢風 悠様  やっべぇ冥琳無双が始まる。

 

黒助様    生まれ持ったポテンシャルが他と違いすぎる・・・これが王者か・・・

 

ちきゅさん様   (゚д゚ )        ( ゚д゚ )

 

アロンアルファ様  まぁ・・・普通は考えもしないですよね・・・

 

ハセヲ様    ウチのかーちゃんは畳の下に隠した本ですら暴き出した猛者です。やだ、死にたい・・・

 

悠なるかな様   やだ・・・良い男・・・

 

通りすがりの名無し様  自力で気づけるか、それが大問題です。

 

月野様      ホントネー

 

山県阿波守景勝様   彼も色々溜まってるんすよきっと。

 

samidare様    まぁ確実に家出はしますわなwww

 

mkm様    そろそろ明命とか弄らないと書き方忘れそうです。星はリハビリがてら書いてみました。

 

黄昏時の文鳥様   一刀wwwマジカワイソスwww

 

ノワール様    まぁ玉砕したぐらいのダメージは負いますよね・・・

 

nameneko様    女所帯の男の立場なんてこんなもんです。

 

達様      えーっと・・・さーせんマジで。マジでさーせん・・・

 

萌香様    だけど、涙が出ちゃう・・・だって男の子だもん・・・

 

cuphole様   ついカッとなってやってしまった。後悔はしている。

 

2828様     優しい嘘。私はあると思います。

 

quarter様   知っているか・・・この世には姉にエロ本を姉の女友達に貸し出しされた弟がおってだな・・・

 

大ちゃん様   いや、うん、その・・・めんご


 
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