No.309131

真・恋姫†無双 ~夢の中で~ 第十話 『司馬』

レインさん

いじめ

ダメ、絶対

死んでもダメだよ

2011-09-28 19:52:08 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:2213   閲覧ユーザー数:2049

くすくすくすくす

 

くすくすくすくすくす

くすくすくすくすくすくす

 

ねぇ?あの子だよね?

 

うんうん。あの子だよ。

 

噂通り暗そうだねー。ネクラだよ絶対。

 

知ってる?…あの子、妄想癖があるらしいよ?

 

やだキモい!ふふふふふ!!

 

可哀そーう!!

 

 

 

(うるっさいなぁ…。)

 

毎日の通学のいつも通りの状況。ギリギリ聞こえる大きさの声で、今日も『お嬢様』達が言っている。

 

(飽きないのかな?…飽きないんだろうね。)

それとも、よっぽどヒマなんだろう。

 

そう詩織が考えていると『お嬢様』方の内から数名が近づいてきた。

 

『あらあら詩織さんごきげんよう。今日もいい天気ですわね。』

「…ごきげんよう。いい天気ですね。」

曇りだよ。

『気分が優れないのかしら?顔が青いですわよ?』

『何言ってらっしゃるの?詩織さんはいつもこの顔じゃないですかー!』

『あら御免なさい!!そうでしたわねー!』

あはははははははははははははははは!!!!

 

……うざ。

レベル低いし。イジメの。イジメですらないよ?これ。

しかし毎日こんな事が続けばイライラするのである。そういう意味ではレベルは高いのか?

 

『ねぇ、詩織さん。今日もあのお話を聞きたいのですけど…。』

『お姉様?あの話ってなんですの?』

『ほらほら、あれですわよ。詩織さん、言って下さいな?』

「…何の話ですか?」

 

 

 

『詩織さんのお兄様の話ですわよ。』

 

 

 

『私達も聞きたいですわぁ~!詩織さんのお兄様のお話!』

『私もぉ~!』

『うふふふふ!!』

『そういえば今日はお兄様はご一緒じゃないいんですのぉ?』

『そうですわ!いつもは詩織さんの隣にいらっしゃるのに~!』

『違いますわよ。私達には見えないけど詩織さんには見えるのですわよ!』

『あらぁ~残念ですわぁ~。私達も見てみたいのに~。』

 

 

 

 

あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

気がむいたらね

 

と言おうと思ったが、めんどくさいのでやめた。第一、言っても何の意味も無いだろうし。

 

 

無視して歩く。

歩くにつれて視界が黒くなる。

視界だけじゃなく、私の周りも黒くなっていく。

 

なのに声だけは聞こえる。

 

『詩織さぁん。話してくださいよぉ~お兄様のお話ぃ。』

『ほらほらこちらへ来てくださいよぉ。』

『そうですわよぉ。』

『ねぇ?』

ねぇ?

ねぇ?

ねぇ?

ねぇ?

ねぇ?

ねぇ?

ねぇ?

ねぇ?

ねぇ?

ねぇ?

ねぇ?

ねぇ?

ねぇ?

ねぇ?

ねぇ?

ねぇ?

ねぇ?

 

 

 

 

うるさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うるさい!!!

 

 

 

ねーねーねーねーうるさいのよ!!!!!!

あんた達そんなに暇か?それとも私のことがそんなに好き?

御免なさい。誠に申し訳ありませんが私は百合ではありませんしレズでもありません。

私が好きなのは!!!!!!

 

 

好きなのは!!!!!!

 

 

 

 

 

「お兄ちゃんに決まってんでしょーが!!」

そこで目が覚めた。

 

 

 

…………………………………………………………………………………………………………。

 

アレ?夢?夢なの?

「……うわぁ。」

 

 

とりあえず説明しよう。(説明しないといけない気が無性にする。)

 

私はかつて、いじめを受けていた。

あの世界でお兄ちゃんの存在自体が無くなったせいで、『あの世界の人間』にとって『北郷詩織には兄はいない』という認識になった。

そのおかげで『いない』兄を語る『私』は精神障害者とみなされたのだ。

 

周りの私への扱いは地に堕ち、それから私の生活は多忙を極めたのだった。

はい、解説終わり。

あんまり人に言いたいことじゃないんだよね、コレ。初対面の人に言ったら引かれるし。

 

 

最悪な夢を見た。あと目が覚めた時に叫んだ台詞が恥ずかしすぎる。周りに知り合いがいなくてよかった。

 

っていうか、アレ?

周りに人いないんだけど。

 

っていうか、アレ?

人どころか何もないんだけど。見渡す限りうす暗いんだけど。

 

 

まだ夢の続きなんだろうか?頬を抓ってみたが、痛い。

夢じゃない。

視界がうす暗いのは明かりが無いからだろう。完全に無いわけではない。ある事にはあるが、少し遠くに松明(たいまつ)があるだけで、モロに現代っ子である私にとっては無いに等しい。

 

ここはどこだろう?

 

純粋な疑問が頭に浮かんだ。だが、周りが見えないので推理すらできない。

手がかりといえば…。

「あの【男】かなぁ。」

 

ズガァァァン!!!

 

銃を【男】の眉間に突きつけ、そのまま撃ち抜こうと『した』。

 

 

【男】は私の首を木に押さえつけていた右手を離して、右手で額に突きつけられている銃身をずらした。

「ちっ!!」

弾丸は【男】には当たらず、【男】の後ろの木にめりこんだ。

押さえつけられていた手が離れ、自由になった私は、尚も向かってくる左手の手刀を避けながらダガーで【男】の腰から肩までを斬り裂いた。

「……。」

無言で後ろによろめく【男】を蹴り飛ばして、追い討ちで肩と腕を銃で撃つ!!

 

 

ズガン ズガァン!!

「……。」

2発共命中。

したのに【男】は痛がるそぶりも見せない。それどころか。

 

「血が出て、ない?」

肩と腕を撃ち抜いたはずなのに、【男】からは血が流れていない。一滴も。

「……。」

【男】は無言。構えも解いた。

「…あんた、何?」

【男】は喋らず、こっちをじーっと見つめてくる。

「答えてよ。」

お願いだから。

 

命あるものなら必ず血、つまり『体液』は存在する。

 

魚であっても

 

植物であっても

 

虫であっても

 

鳥であっても

 

馬であっても

 

もちろん人であっても

 

なのに

 

なのに目の前の【男】にはそれがない。

 

じゃあこいつは何なのだ?

生物じゃないのなら何なのだ?

得体の知れない『モノ』とどう戦えと?

しかもそれにどう勝てと?

 

 

                            無理だ。

絶対無理。

             殺される。

 

殺される。

 

死合い    

     敗ける

   

 

 

    ころ   

 

     

   さ    れ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  死

 

 

 

 

 

 

 

                 ぬ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭がまっ白になって、気がついたら【男】に抱えられていた。しかも体が麻痺したみたいに動かなかったから逃げることも出来なかった。

 

「そっから覚えていないんだよねぇ……。」

視界が歪んだと思ったら、即座に気を失った。

 

 

事情確認終了。

 

 

「……さて、どうしようか。」

確認したところで、早速脱出しなければならない。お兄ちゃんを連れて。

 

だんだん眼が慣れたから分かったのだが、ここは牢屋のようだ。見張りもいない。木でできた格子があるだけの牢屋。

足や手が鎖で繋がれているとかもなく、自由に動くことが可能だ。

……なんで拘束されていないんだろう?逃げる勇気すらないと思われたんだろうか?

 

違う。

逃げれない場所なんだろう。恐らく。

明かりが松明だけなところを見るに、ここは太陽の光が当たらない場所。つまり地下と考えられる。

そりゃ難しいだろう。

地下から出るための出口は一つだけ。そんなところを気付かれずに通る事は不可能なんだし。

 

「待つしかない、か。」

向こうから来るのを待つしか道は無い。

 

「………寝よっか。」

寝ることにした。

 

 

状況は悪い方へと進んでいた。

 

一つ,五胡が攻めてきた。その数50万。

二つ,鈴々が瀕死の重傷を負い、戦線を離脱。

三つ,蜀、我々の主である北郷一刀の実妹である北郷詩織が五胡によって拉致される。

四つ,北郷一刀も五胡によって拉致される。

 

 

それだけではない。

 

「……落ち着け…!!落ち着かんか…!!」

「はなせ!はなせ…!はなせと言っておろうが!!」

「黙れ!!おい愛紗!何か縛る物を持って来い!!!」

「わかった!」

星が責任を感じ、腹を切ろうとしている真っ最中だった。

「くぬっ…!!落、ち、着、け、と、言って、おろうに…!!お館とお(じょう)(詩織のこと)が攫われたのは貴様だけのせいではない!!」

腹を短刀で切ろうとする星を桔梗が必死で言い聞かせている。普段ならともかく、錯乱したように暴れるだけなら抑えることは容易い。

「ううぅ……!!」

 

「我らが気を抜きすぎたから…っ!自惚れすぎたから…っ!」

桔梗『も』涙を流しながら星を床に押さえつける。

「だがな!!それと貴様が死ぬこと別だ!我々の命はお館様と桃香様のもの。勝手に死ぬ事は許されておらんだろうが!!!!」

「っぅ…!」

ぴたりと星の動きが止まる。それから絞り出すようにして嗚咽を漏らし始める。

「だが…。」

「だが…止めれたのだ…!えぅぐっ…詩織様だけでも…ひぐっ…助けることが出来たのに……!私は…!出来、なかった…!!」

出来なかった、出来なかった…と泣きながら呟く。

 

全員が全員、己の怠慢、そして不甲斐なさや未熟を噛み締めながら涙を流し続ける。

 

 

「もう、大丈夫?」

桃香が星に語りかける。

「はい、心配をおかけして申し訳ありませんでした。」

泣きはらし目を赤くした星も加わり、軍議が始まった。

 

あれからなんとか星も皆も泣き止んだ。あの後再び一悶着あったのだがそれはまたの機会に。

 

「朱里ちゃん。」

「はい。…先程、放っていた密偵から報告がありました。」

「五胡?それとも黒い【男】に関してか?」

倒すべき敵は2つであり、片方だけ達成したとしても何の意味も無い。だからこその質問だった。

「……『両方』ですよ。」

「僥倖なのはあちらにとってだけではありません。」

淀みなき言葉で朱里の言葉を雛里が継ぐ。2人とも静かに燃えている証拠だった。

 

成都(ここ)から一番近い城がある方向に黒ずくめの【男】が数名の五胡の兵と向かって行くのが確認しました。」

「……そこまでの距離は、」

「十里(約40キロ)です。」

「ふむ。」

十里。むこうは馬など持ってなどいない。今から出発すれば間に合う。

「私から策があります。桃香様、聞いていただけますか?」

 

「暇ー。」

ひーまーだー

あれから頑張って寝ようとしたけど、自分から地面で寝そべって寝るのは嫌だった。女の子だもん。(←ここ重要。)

 

「鈴々ちゃん大丈夫かなぁ…。」

鈴々ちゃんの安否がすごく気になる。正史じゃ大丈夫(かな?)だけど、こっちはなんやかんやで古代中国だ。風邪とかでも『気合いで治せ!』とありそう。

 

不安だ。

この状況を切り抜けたとしても、私はこの世界で上手くやっていけるんだろうか。

 

詩織が悶々と考え事をしていた時。

 

 

コツ、コツ、コツ、コツ

 

 

「!!」

足音!?誰かが来る!!

 

コツ、コツ、コツ、コツ

 

階段を下ってきているようで、足音がだんだん大きくなっている。

 

(武器は…ある。ダガーも銃もある。いざとなったら戦えば…)

 

コツ、コツ、コツ。

 

「!!!」

私が閉じ込められている牢屋の格子の前に、あの【男】が立っていた。やはり【男】は無言で私を見下ろしている。

「一体何の用?ここから出してくれるの?」

恐怖が悟られないように、強気な姿勢で【男】に話しかけた。無論、何をされるか分からないので右手にダガーを握っている。

「……。」

【男】は黙ったままパチンと指を鳴らした。すると牢屋の扉が勝手に開き、【男】は牢屋から離れる。

「……。」

「……。」

【男】は無言。詩織は用心しながら扉をくぐった。

「……。」

「……。え?ほんとに出してくれるの?」

拍子抜けして詩織が言う。

【…ついてこい。】

「!!!しゃ」

べった!?

驚きの言葉を詩織は慌てて飲み込んだ。

【男】は踵をかえして歩いていく。その後を詩織も用心しながら歩いていった。

【男】の後ろをついて行って数分。

見たことの無い城の中を歩くうちに、ある部屋の前に着いた。

「……。」

【……入れ。中に待っている奴がいる。】

 

ここで逆らうのはまずい。何より、私じゃこの【男】にはかなわない。

そう思い、部屋の中に入ろうとした――が。

【…それは置いていけ。】

【男】がダガーを掴んで言う。

「……わかった。」

 

 

ガチャ

 

 

部屋の中は普通の談話室だった。桃香さん達にアルバムを見せた部屋と似ている。

その中で、ソファ(のような物)に1人の青年が座っていた。

 

「……ようこそ。北郷詩織様。」

その青年が言ってきた。

年齢は20前後だろう。服装は于吉が着ていた物とかなり似ている。

「どうしました?さあ、座ってください。…飲みますか?」

青年が紅茶を薦めてくる。…やめてよ、三国志の世界で紅茶なんて。イメージが潰れる。

「結構です。」

ソファ(らしきもの)に座り、紅茶を断る。

「そうですか?残念です。」

全く残念そうな顔で青年が紅茶を片付けた。詩織はこの青年を嫌いになろうと決めた。

「ふむ…。君の事は知っていたが…一刀君と似ているな。」

私の顔を見ながら青年が知ったように言う。馴れ馴れしい言い方をする青年にイラッとし、詩織は跳ね除ける様な声で言った。

「失礼ですが貴方のお名前は?名を名乗らずに人のことをいうのは無礼ですよ。」

青年は少し驚いたような顔をし、紅茶を置いた。

「…これは失礼。確かに貴女の言うとおり。では自己紹介をさせてもらいます。」

微笑みを浮かべたまま青年が言う。

 

 

 

 

 

 

「姓は司馬 名は() 字は仲達。」

 

 

 

「司馬仲達です。どうぞよろしくお願いします。」

 

 

〈続く〉


 
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