No.309081

真説・恋姫†演義 北朝伝 幕間の十八

狭乃 狼さん

ども。狭乃狼です。

今回の幕間は輝里と命がメイン。

どんなお話かは見てのお楽しみw

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2011-09-28 18:07:18 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:16337   閲覧ユーザー数:10656

 事の発端は、洛陽への援軍として李儒らが許昌の地を離れる、その数日前であった。

 

 「さ~て。そろそろ頼んでおいた本が入荷している頃じゃの。この日のために給金を貯めて置いた、その甲斐のある物じゃと良いがの~」

 

 許昌の街の大通りを、一人上機嫌で歩く仮面のメイド李儒こと、命。と、普段ならそう書くところであるが、この日は珍しく仮面もメイド服も身に付けておらず、素顔をさらし、青いシャツにプリーツスカートと言う出で立ちで居た。この許昌の地であれば、洛陽や長安よりも、嘗ての自分を知る者はほとんど居ない筈なので、万が一位の確立でしか、自分の素性がばれる心配は無いと、彼女はそう思っているわけである。

 

 「おっと。ここじゃここじゃ。さ~て、目当ての本は届いて居るかの~?」

 

 目的の場所であるその書店に着いた李儒は、鼻歌交じりで店内へと入る。この時代、いまだ希少である紙でできた本が所狭しと並ぶ中、彼女は目当ての本を探して店の棚を物色していく。そうしてとある類の本が並ぶ棚に来たとき。

 

 「……輝里?」

 「ほえ?命……さま?」

 

 ばったりと。同じく書棚を漁り、その手に大量の、真新しい書籍を抱えこんだ徐庶と出くわした。

 

 「奇遇じゃの輝里。お主も新書の物色か?」

 「え、ええ、まあ……そんな感じですね……あ、あははは……」

 「?何をそんなに引きつった顔をしとるのだ?……もしや、その大量に抱え込んで居るのは……」

 「ぎく」

 「……全部、艶本なのじゃろう!?どれ!どんなものかちょっと見せい!」

 「ちょ!だ、駄目です命さま!お願いです!後生ですから勘弁してください!!」

 「ほっほっほ。いやよいやよも好きのうちと言うではないか!恥ずかしいのは最初だけじゃ!ほれ!」

 「それ使いどころが違います!って、あっーーー!!」

 

 ばさばさばさ、と。徐庶がその手に抱えていた本が、二人がもみ合っているうちにその腕から落ち、床に広がってしまう。

 

 「……好機!……ひょいっと」

 「あっー!駄目です!お願い!見ないで下さい~!!」

 「……え?え?え?な、な、な!なんじゃこりゃあ~~~~~~~!!」

 「はにゃ、はにゃにゃ……!!」

 「か、輝里!お、お主はな、なんという物を読んどるのだ!!ご、ご先祖様が、高祖さまが、こ、ここ、項羽とこんな事やあんな事を……!!は、ははは破廉恥とか言う代物ではないぞこれは!よりによって男性同士でこの様な……!!」

 

 ま、要するに。徐庶が大量に抱えていたのは所謂(いわゆる)八百一本と言う奴だったわけで、しかも、よりにもよってその対象となっているのが、李儒にとっては尊敬なんて言う言葉では言い表せないほど偉大な先祖である劉邦その人と、その良きライバルであった項羽なものであったのだから、彼女の頭の中は一瞬にして大パニックに陥って、顔を真っ赤にしながらその場に散らばった本を拾い集めている徐庶に対し、早口で不潔だの何だのとまくし立て始め、いつしかそれは罵倒にも似た言葉へと変わって行った。

 

 「大体じゃ!こんな不埒なものを好む事自体、頭がどうかしてるとしか思えぬわ!何が悲しゅうて男同士の恋路などを読まねばならんのだ?!」

 「(かちん)……今のは聞き捨てなりませんね。ではお尋ねしますが、男性同士の恋愛の何処がいけないと言うんですか?!異性間での恋愛と違い、決して越えられない壁だからこそ!そこに燃えるのだと言うことを命様はお分かりになりませんか?!」

 「なりとう無いわそんなもの!大体、男同士では子を為す事すらできまい!それこそ不毛と言う奴じゃ!同じ意味では女子同士もそうじゃ!非生産的なその行いの何処に意味があると言うのだ!?」

 「私も女同士でなんかには興味ありません!私がこの道に燃えるのは、決して許されない禁断の領域でありながらも、それ故に真の愛があると思う故です!」

 「真の愛であればそれこそ男女間にこそ芽生えるものじゃろうが!それとも何か?!お主の言う愛とやらは、一刀相手でも決して芽生えぬとでも言うつもりか?!」

 「そ!それは……!!」

 

 当初の八百一の不毛さに関する言い争いから、何故か一刀との関係に関する話へと、何時の間にか話題が摩り替わっている二人の口論。

 

 「であるならば、一刀の正妻の座は妾のものじゃな♪なんせ誰かさんは、一刀にそういう想いを持つ事がない、と。そう言っているわけじゃしの♪」

 「そんなことはありません!私は本気で一刀さんを……!!」

 「であるならば証拠を見せい。……今夜……で……じゃからして……ごにょごにょ……」

 「……いいですよ。受けて立とうじゃあないですか」

 

 にやり、と。互いに口の端を吊り上げて笑う徐庶と李儒。一方その頃、二人がそんなことになってると知らない一刀はというと。

 

 「……へっくしっ!!」

 「……風邪ですか?一刀さん」

 「じつは輝里が、太守さまに飽きたとか言う話でもしているのかも♪」

 「……命はんとどっちがカズの正妻になるかとか、大喧嘩でもしていたりして」

 「でもって今夜辺り、その勝負のために一刀の閨に二人して忍び込んだり……とか?」

 「……あの。それ、ほんとにありえそうで笑えないんですけど」

 「……多分に一刀さんの自業自得だとおもいますが」

 

 といった会話を、執務室内でしていたりした。……まさかそれが、ほんとに現実になるとは露とも思わず。

 

 

 

 でもってその日の深夜。一日の仕事を無事に終え、夜の食事を済ませて部屋に戻り、ベッドで安らかな眠りについてから暫くして、一刀は体に何か重みを感じて目を覚ました。で、そこにあった光景はと言うと。

 

 「……え~……っと。命……さん?輝里……さん?これは一体、何の真似でございましょうか?」

 「ん?無論夜這いじゃ♪」

 「夜這いですけど何か?」

 「ああ、なるほど。冗談が本当になったわけだ……じゃなくて!その行為自体は嬉しいけど、なんでそれで俺の両手両足を縛る必要があるの?!」

 

 月明かりに照らされた美少女二人の、そのなんとも悩ましい姿。白い清楚な下着をつけた健康的な色気をかもし出している徐庶。そのたわわに実ったふくらみを、黒い色気満点の下着で包んで妖艶な色気を漂わせる李儒。状況が状況でなければ、この世に抵抗できる男が居るはずもないその状況ながらも、寝台の四隅に布切れでもって縛られた自身の両手両足のことを指摘しつつ、一刀は理性を総動員して、下着姿でいる二人にその行為の理由を聞いた。

 

 「そんなの簡単じゃ。お主に攻められたら勝負にならんからの」

 「そうです。一刀さんてば一旦ことを始めると獣になりますから」

 「今日の所は受身で居ってくれねば困るのだ。なにせ」

 「どっちがより、一刀さんを満足させられたかが、勝負の方法なので」

 「……えっと。一応聞くけど、一体何の勝負なんでしょう……?」

 『もちろん、どっちが一刀さんの正妻かを決めることです(じゃ)♪」

 「そこに俺の意思は?」

 「もちろん無しじゃ♪」

 「というわけで、覚悟をしてくださいね?」

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 注:この部分は閲覧により削除されました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 実際。そんなことで本当に勝負がつくはずも無く、翌朝、干からびかけた一刀の隣で、安らかに、且つ、幸せそうに寝息を立てている徐庶と李儒がいたりした。でもって、中々朝議に来ない彼を起こしに来た、伊籍にその光景を目撃されたことで、一刀が理不尽な目にあったことは、まあ、言わずもがなと言う奴である。 

 

 しかし。

 

 今回の事はこれだけで終わった訳ではなかった。一刀がそうして理不尽な目にあった日の午前。一刀の執務室にて、主である一刀と李儒、伊籍、司馬懿、そして珍しく姜維と徐晃の二人も揃っての、政務の真っ最中に居たとき、それは届けられた。

 

 「失礼いたします。徐元直様宛に荷が届いておりますが、如何いたしましょうか」

 「輝里宛てに?だったら何もここに持ってこなくても、本人の部屋に運べば」

 「いえ。最初はそうしようとしたのですが、徐元直さまのお部屋には鍵がかかっておりまして。ご本人もお姿が見えないものですから、どうしたものかと思いまして」

 

 城仕えの女官の一人が、徐庶宛ての荷の処理に困り、仕方なくそれを一刀の下に運んできたと言った。

 

 「だったらそこにおいて置けばよい。なに、本人ならすぐに戻って来よる」

 「は。では、申し訳ございませんが、こちらに置かせていただきます。失礼いたしました」

 「ふむ。輝里宛ての荷とは珍しい事もあるものじゃ。どれ、差出人は……っ!なんじゃと?」

 「命?どうかしたのか?」 

 「まさかそんな……差出人が、諸葛孔明に龐士元……じゃと?」

 「朱里と雛里……ですか?」

 

 諸葛孔明、そして龐士元。両名とも、蜀の劉玄徳に仕える軍師の名である。その二人から徐庶宛てに送られて来た荷物。確かに、徐庶も先の二人同様水鏡塾出身であるのだから、繋がりの無い事の方が不思議であるし。一刀にしてみても、徐庶と諸葛孔明、そして龐士元の三人が友人である事は良く分かっている事。だから例の二人から個人的に荷が届いたとしても、なんら不思議ではないのだが。

 

 「……まさか輝里さん。蜀と密かに繋がっている……とか」

 「まさか!輝里に限ってそんなこと!!」

 「うちもそれは無いと思うで?あの輝里が、カズを裏切るなんて絶対ありえへんて」

 「そうだぞ、瑠里。いくらなんでもそれは邪推という物だぞ?」

 「……じゃが、万が一と言うこともある。念のため、中を確認しておくかの」

 「ちょ!命まずいって!人の荷を勝手に……!!」

 

 と、李儒が徐庶宛ての荷を解き始めたのを、慌てて一刀が制しようとするものの、李儒は随分手馴れた手つきであっという間に荷を解いてしまい、その中身が一同の眼前に晒された。

  

 「こ、これは……!!」

 「あっちゃ~……“これ”だったんだ、あの二人からの荷って」

 「こ、これはまた、なんと言っていいか」

 「あいつ……なんてものを」

 「……私。子供だから良く分からないです……」

 

 荷が解かれ、皆の前に晒されたそれら。それは数冊の書物だった。ただし、表紙にはっきりと、劉邦×項羽とタイトルとともに明記された、『八百一本』ばかりだったりしたが。で。さらに間の悪い時というのはあるもので。ちょうどそこに、その当人が戻って来たりするわけである。

 

 「一刀さん。只今戻りました……って、何やってるんです?」

 「か、輝里!いや、これはその!」

 「どうしたんですか?そんなに慌てて……って。な、な、な、なななな、何してんですか!こ、これ私宛の荷物じゃ……!!……見たんですね?中身」

 

 ごごごごごご、と。そんな効果音が何処からとも無く聞こえてくるような、そんな大迫力な何かを背中に背負いつつ、一同を睨む徐庶。

 

 「いや、見たと言うかなんと言うか」

 「……まあ、趣味は人それぞれっちゅうことで」

 「……や、やっぱり、怒って……る?」

 「……う、う、う、ひぐっ」

 『へ?』

 

 

 

 「……うあああああああああああああああああああああああああああん!!見られたああああああああああああああああっっっっ!!他はともかく、一刀さんに見られたーーーーーーーーっっ!!幻滅されちゃうーーーーーーっ!!嫌われちゃうーーーーーーーーっっっ!!ふええええええええええんんっっっっ!!」

 

 号泣。予想だにしていなかった徐庶のその行動に、どう対応していいか分からずおろおろする一刀たち。割と付き合いの長い姜維と徐晃も、彼女がここまで大泣きするのを見るのは始めてであったし、一刀や司馬懿もそれは同様。自称徐庶の真の恋人こと伊籍は、徐庶のそんな姿を見るのは始めての事では無いらしいが、彼女を慰めようとしてと抱きしめたその瞬間、脳天に鉄拳を食らって気絶した。

 

 で、結局そんな彼女を慰め、落ち着かせたのはと言うと、意外なことに李儒の一言であった。

 

 「……え~い!いつまで泣いて居る!輝里よ!お主の愛した北郷一刀と言う男は、この程度の趣味を知ったぐらいで、お主を嫌いになるような、そんな狭量な男だと本気で思って居るのか!!」

 「ぐずっ……ふえ?」

 「お主のその趣味、確かに妾も理解に苦しむものではあるが、だからと言ってそれがそのままお主の全てを現しておるわけではなかろうが!」

 「そ、そんなの当たりま」

 「だったら!趣味の一つや二つが露見したぐらいで、惚れた男に嫌われるなどと思うでない!逆に、己のことをまた一つ知ってもらえたと、喜ぶぐらいの事をしてみせい!その位の気概が無くば、正妻争いは妾がいただくからの!!」

 「……命、さま……」

 

 ふんっ、と。それだけ早口でまくし立てた後、李儒はその顔を徐庶から背けた。おそらくは、らしくない事を言ってしまったと、照れて真っ赤になっている顔を見られないためと思われる。

 

 「……なんちゅう慰めの仕方やねん」

 「強引というかなんというか」

 「ま、命さんらしいと言えば、らしいですけど」

 「えーと。……なあ、輝里?確かに命の言ったとおり、俺は別に人の趣味云々をとやかく言ったりしないよ。そんなことよりも、勝手に荷の中身を見ちゃったこと、ほんと、ごめん」

 「あ、いえ!わ、わたしこそ、みんなの前で醜態を晒してしまって、恥ずかしいです……」

 「……じゃあ、それで両成敗ってことで、良い……かな?」

 「はい/////」

 

 ということで、その時はそれで終わったわけだが、それから数日後、一刀は少々後悔の念に駆られることとなる。

 

 「……あの時せめて、俺を題材にしないようにとだけでも、釘をさしておくべきだったかな……はあ」

  

 最近巷で話題だと言うそれを、何故か出入りの商人から渡されて、その内容に頭を真っ白にして脱力している一刀であった。

 

 ちなみにそのタイトルは、『性別逆転!?男だらけの大陸演義!!』。そしてその著者の名は『単福(ぜんふく)』だったそうである(笑。

 

 「よーし!みんなからも認知された事だし、ますます創作意欲が湧いてきたわよー!目指すは水鏡先生越え!大陸一の八百一作家よー!あーっはっはっはー!!」

 

 ~終わり~

 

 

 

 北朝伝の幕間シリーズ、これが最後の幕間でほんとにいいのかなー?とか思ったりした作者ですww

 

 輝里の八百一趣味がみんなにばれる、そのシーンを書きたかったので、こんなお話を書いてみましたが、ただばれて終わりじゃあ味気ないので、ああいう感じに命を絡ませてみました。

 

 で、毎度毎度そうなんですが、八百一ネタを書くと必ずと言っていいほど、あれに対する否定のコメがガンガン来るんですよねー。いや、もちろん作者自身もBLは嫌いです。てか、何が楽しいのか良く分かりません。

 

 唯一つだけぶっちゃけると、作者もそういうのを読んでいたことが無いとは、いいません。といっても、昔よく買っていた聖闘○○矢のアンソロに、大概そういうのも一緒になって掲載されていたので、否応なく目に入ったと申しますか。

 

 「男同士?!おえ、気持ち悪っ!でもストーリーと絵は良く出来てるし、とりあえずそのシーンだけ飛ばして見ればいいか」

 

 てな感じで見てました。BLふぁんのみなさん。もしこれを見ていたらごめんなさい。

 

 さて。

 

 先にも述べたとおり、これにて北朝伝の幕間は最後となります。

 

 次回からはいよいよ最終章。映画化もされた例の超有名な戦いへと、物語は進んでいきます。

 

 その先に一刀たち華北連合を待ち受ける未来は一体、どんなものなのか?

 

 いまだ物語には深く関ってこない、蜀と呉はいったいどんな形で絡んでくるのか?

 

 そして裏で様々な画策をする劉協は、その最後をどんな形で迎えるのか?

 

 一刀が物語の最後に示す、大陸の、漢土の形とはどんなものになるのか?

 

 結末まであと少し。ゆっくり温かい目で見守ってくださいませ。

 

 

 それではみなさん、再見~( ゜∀゜)o彡゜   

 


 
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