No.306809

真・恋姫†無双 外伝:風の流るるままに その2

一郎太さん

続かないはずが続いてしまったorz
書いてて収拾がつかなかったけど気にせず上げるぜ!

どぞ

2011-09-24 19:46:05 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:7414   閲覧ユーザー数:5335

 

 

 

4匹の猫を従え、1人の少女を乗せたキャリーケースを転がしながら走る姿は、それはもう異様なことこの上ないのだろう。すれ違う人が皆俺を見ているのがわかる。いつもの俺であれば、その視線を痛みを伴いながら受け止めるのだろうが、今の俺はそんな事よりも為すべき優先事項があった。

 

「お゙ぉ゙ぉ゙お゙ぉ゙………揺れるのです、おにーさん」

「黙ってないと舌噛むぞ」

 

電波ゆんゆんな少女が後ろで何かを言っているが、一刀のもと斬り捨てる。そんな事は知った事ではない。とにかく、この少女―――風を自宅まで送り届け、ご両親に投げつけなければいけないのだ。

住宅街を抜け、ちょっとした通りを横断し(信号待ちの車からも奇異の視線が飛んでくる)、再び別の住宅街へと突入する。遊びから帰る途中の小学生、帰宅途中のサラリーマン、買い物帰りの主婦たち………色々な人間の視線が突き刺さる中、俺はようやく一度だけ訪れた事のある家へと辿りついた。

 

「はぁっ……はぁ………着いた」

「おにーさんたら、そんなに興奮してしまって………そんなに風とあんな事やこんな事をしたいのですか?」

 

相変わらずな少女を無視して呼び鈴を鳴らせば、しばらくも経たないうちに玄関が開かれた。いつぞやの、風の母親だった。

 

「あら、貴方………その節はどうもー」

「へっ?あ、いえ…」

 

いきなり笑顔で頭を下げられ、気勢を削がれる。

 

「それで、今日はどういった………あら、風もいたのね、おかえりなさい」

「ただいまですー」

「あぁ、そういう事ですか。わざわざ結婚の御挨拶などしなくても構いませんのにー」

「違ぇよ!?」

 

この娘にしてこの母あり。削がれた気勢は、その勢いを衰えさ続けること留まらず。

 

 

 

 

 

 

気落ちしまくった俺は、母親の招きに従って家へと上がる。風はといえばキャリーケースから降りて猫の脚を玄関先で拭いていた。躾けてあるならうちでもしろよ。

そんな心の内の苦情などいざ知らず、リビングに通された俺の前に飲み物を置く母親。変な薬とか入ってないよな?

 

「いらっしゃい、一刀さん。そしてこの度は風を娶って下さってありがとうございます」

 

いきなり名前を言い当てられて驚くも、先日風を送り届けた際に名前だけは伝えていた事を思い出す。

そんな事より、開口一番このような事を言われて、何か言い返せる人間はいるだろうか。いや、俺は言い返して見せる。

 

「あー…奥さん?」

「いやですわー、奥さんだなんて他人行儀な。義母さんと呼んでくれていいのよー?」

「待てやコラ」

 

先も思ったが、風は母親似なのだろう。このゆったりとした口調といい、人の話を聞こうとしない性格といい。だが俺までそれに乗せられてしまっては、話もつけられない。何度か深呼吸して自身を落ち着かせると、俺はゆっくりと口を開いた。

 

「………いくつかお聞きしたい事があります」

「はいー」

「まず、どういった理由で娘さんの結婚を承諾したのか。次に、何故いきなりうちに放り込もうとしたのか。そして最後に、アンタらはアホなのかという事だ」

 

思わず本音が出る。

 

「一刀さんに助けてもらった日から、ずっと風が言っているんですよー。『風はあのおにーさんに惚れてしまいました。いつもおにーさんの夢を見るのです』ってー」

「百歩譲って風が俺に惚れたのはいいとしましょう。だが、いきなり婚姻届を出されて引かない方がおかしいだろ、オイ」

「でもぉ、風があんなに男の方に惚れ込むなんて初めてのことでしたしー、やっぱり最後まで面倒見て欲しいと思うのが親心なんですよー」

「だからって、然るべき手順と言うものがあるでしょうに」

「手順とはー?」

「いや、例えば両家の両親に挨拶に行くとか、彼女の父親に『ウチの娘はやらん』とか言って殴られるとか」

 

………あれ?

 

「大丈夫ですよー。うちの人も、一刀さんみたいな好青年だったら是非結婚してもらえ、って言ってますしー」

「だからっていきなり結婚というのもどうかと………」

 

言っている事がおかしい気がする。

 

「一刀さんは、風の事が嫌いですかー?」

「いや、別に嫌いという訳では…」

 

主に俺の。

 

「だったらいいじゃないですかー。風はああ見えて、家事は一通り出来るんですよー?ちゃんと躾けましたからー」

「そりゃ、一人暮らしの男としてはありがたいが」

「でしょー?」

「………」

 

あれ、何で俺が言いくるめられた雰囲気になってんの?どうやらこの空間に俺がいてはいけないらしい。僅かに残った理性的な部分が警鐘を鳴らす。と、そこに―――。

 

「ただいまー」

 

玄関の方から、男性の声が聞こえてきた。おそらく家主だろう。チャンスだ。この母親は俺の精神を狂わせる。なんとか父親に説明して風を引き取ってもらわなければ。

廊下から聞こえてくる足音が近づいてくる間、俺はどう説得するべきかを必死に考えた。

 

 

 

 

 

 

 

「お、一刀君、グラスが空いてるぞ。ほら」

「あぁ、ありがとうございます」

 

とくとくと音を鳴らしながら、俺のグラスにビールが注がれる。底から気泡が立ち昇り、瞬く間に表面に泡の層を作り出していった。

 

「お父さんのグラスも空です。風が入れてあげましょー」

「ありがとう、風。んくっ、んぐっ………ぷはぁ!やはり娘に入れて貰うビールは最高に美味いな」

「本当の事を言っても何も出て来ないのですよー」

「母さんや、娘が苛めるよぅ」

「はいはい。今日はもう1本いっても許してあげますよー」

 

父親が嘘泣きをしながら母親に抱き着き、母親はその頭を撫でながら新しい肴をテーブルに置く。

 

「一刀さんもたくさん食べてくださいねー」

「はい、いただいてます」

 

なんというアットホームな雰囲気。そしてなんという団欒。ここには幸福な家族というものがあった。俺もそんな家族の一員として迎えられ、久しく感じていなかった温もりというものを――――――

 

「………って、違ぇぇええええっ!!」

 

――――――感じている場合などではなかった。

 

「待て待て待てっ!なんでいきなり夕食が始まってんの!?俺の説教フェイズはどこに行ったんだ!?」

「おやおや、おにーさんも酔っぱらってしまったみたいですねー」

「なんだ、一刀君は酒が弱いのか?そんなんじゃ社会に出てから大変だぞ?」

 

そして起きる3人分の笑い声。どこからかHAHAHA!という感じのSEも聞こえて気がするが、断じて気のせいだ。俺の人生にアメリカナイズされた家族風景なんぞ必要ない。

 

「そもそも俺は―――」

「ご飯いる人ー」

「貰おうか」

「風も欲しいのです」

「一刀さんは?」

「あ、じゃぁ俺も……」

 

途端に勢いを殺される。義母さんはその口調からは想像もつかないほどテキパキと4つの茶碗に白米を準備し、2分と経たずに食卓まで運んできた。

 

「はい、一刀さんは若いんだから大盛りですよー」

「ありがとうございます」

 

自炊はしているが、やはり誰かが作ってくれる食事は美味い。箸も進むというものだ。

 

「いや、そうではなく―――」

「一刀さんはサラダにドレッシングと醤油のどっち派?」

「俺はシンプルに醤油ですね」

「はい、どうぞ」

「ども」

 

どうやらこの家でも派閥が分かれているらしい。義父さんは醤油派で、義母さんと風はドレッシング派のようだった。

 

「おっと、こんなところで価値観の違いが出てしまいましたねー。新婚生活最初の危機かもしれませんよ、おにーさん」

「安心しろ、風。父さんと母さんも違うが仲がいいだろう?」

「いやだわ、お父さんったらー………でも、本当の事よね」

『HAHAHAHA!』(←SE)

 

こうして、俺の新しい家族との食事は和やかに過ぎていくのだった。

 

………………………………って、あれ?

 

 

 

 

 

 

食器の片づけられたテーブルには、グラスが人数分置かれている。とはいえ中身はアルコール類ではなく冷たいお茶だった。食事中は雰囲気に流されて楽しんでしまったが、酔いもだいぶ収まって冷静になった俺は、ここしかチャンスはないと思い切って口を開いた。

 

「あの、お話があるん――――――」

「ふわぁぁ……」

 

途端、風の口から盛大な欠伸が漏れる。

 

「あらあら、風も今日は疲れちゃったみたいですねー。一刀さん、そろそろ帰るかしら?」

「え?……あ、あぁ、そうですね。そろそろお暇させてもらいます」

「そうか。今日は楽しかったよ、一刀君。またいつでもうちに来るといい」

「はい、ありがとうございます」

「風、貴女歩ける?」

「ふみゅぅ……おにーさんにおんぶして貰うので大丈夫です…」

 

まったく仕方がないな、風は。俺は立ち上がってテーブルを回り、風に背を向けて膝を曲げる。風も慣れたもので、よじよじと俺の背に乗って首に腕を回してきた。

 

「それでは風の事をよろしく頼むよ、一刀君」

「はい。それでは失礼します」

 

2人に見送られながら、俺は風の実家を後にする。背には風、片手にはキャリーケースを転がして。足下には4匹の猫がまとわりつきながらも歩行を邪魔するという程ではなく、それでいてしっかりと俺についてきていた。

 

 

 

………………………………………あれ?

 

 

 

 

「おにーさん…」

「なんだ、寝たんじゃないのか?」

 

街灯の照らしだす道を歩く。住宅街に入っている為、車の通りもない。そんな折、頭の後ろから聞こえる声に返事をする。

 

「どうでしたか、風のおとーさんとおかーさんは」

「いい人たちだったよ。流石、風の御両親だな」

「にゅふふ、そうなのですよー」

 

言った途端、またもや大きなあくび。

 

「いいよ、寝てな」

「はいー…」

 

俺の言葉にひとつ返事をすると、再び俺の首にぎゅっと抱き着いてくる。その温もりを感じながら、俺はゆっくりと歩を進めた。

 

 

 

………………………………………………………………あれ?

 

 

 

 

 

 

部屋に戻り、風をベッドに寝かせると、俺は押し入れの奥から畳んであった段ボールを取り出して、箱を作る。その底にバスタオルを敷いて、猫たちを順番に入れてやれば、もぞもぞと動きながらもいい体勢をそれぞれ見つけたのだろう。すぐに丸くなって4匹仲良く瞼を閉じた。

 

「………シャワーでも浴びるか」

 

風は相変わらずベッドで静かな寝息を立てている。俺は昼間かいた汗を流すべく、バスルームへと移動した。

 

 

シャワーを浴びて、酔いも完全に醒める。バスタオルで頭をがしがしと拭きながら、俺はひとつ大きく息を吸った。

 

「和んでんじゃねぇぇぇぇぇえぇぇええええぇぇっっ!!!!」

『こんな夜遅くに叫ぶんじゃねぇ!』

「すっ、すみません!?」

 

ドン!という鈍い音と共に壁が揺れた。

 

 

 

 

 

 

翌朝。

油の弾ける音と、いい匂いにひかれて俺は床の上で眼を覚ました。どうして俺は床で寝ていたんだ?そんな疑問も、台所に顔を向ける事で解消する。

 

「起きましたか、おにーさん?」

「あぁ、そっか……昨日は風がベッドを使ったんだったか………」

 

さすがに同衾するわけにもいかず、俺は床に毛布を敷いて寝たんだった。まだまだ夏場でよかった。

 

「朝食はパンですが、よかったですか?」

「何でもかまわないよ、風が作ってくれるならな」

「おにーさんたら、本当の事を言っちゃってー」

 

コンロの火を止めた風が、ほんの少しだけ頬を赤らめながら近づいてくる。そして、膝をついて上体を屈め、俺の頬に顔を近づけ――――――

 

「………って、待てやコラ」

「ふみゅっ?」

 

――――――接触する寸でのところでその顔を手で突き放した。

 

「言いたい事は山ほどあるが、その前にひとつだけ聞きたい事がある」

「なんでしょー」

 

鼻を抑えた風を横目に身体を起こし、俺は問いかけた――――――

 

「その恰好はなんだ?返答によっては俺が捕まる可能性もあるからよく考えて発言するように」

 

――――――制服姿にエプロンをつけた少女に。

 

「もちろん風の学校の制服です」

「なるほどな。どう見てもセーラー服にしか見えないんだが、俺は法に触れてはいないのか?」

「やですねー、おにーさん。こう見えても風は〇学生なので、倫理的には何の問題もないのです」

「なんだよ『〇学生』って。その伏せ字だと、2択しかない上に、制服姿じゃ誤魔化せないじゃねぇか」

「3択の可能性も―――」

「それだけは勘弁だっ」

「知らないのですか?〇学にも制服指定の学校もあるのですよ?」

「だからその言い方だと〇学か●学しかないじゃなんで俺の発言まで伏せ字なんだよ!?」

 

ガッデム!これもソフ倫の魔術か何かなのか!?

頭を抱える俺に、風はそっと耳打ちする。

 

「あまり大きな声で言わない方がいいですよ、おにーさん」

「………?」

「だってほら、窓の外に―――」

 

風の言葉に俺がばっと振り向けば、ベランダから飛び去る影。ほんの一瞬だが、俺は確かに見た。サングラスを掛けた黒スーツの男が、俺の方をじっと見ていたのを。

 

「あれが…まさか………」

「はい、ソフ倫の間者です、おにーさん」

「なんてこった………」

 

どうやら俺は裏の業界の人間に目をつけられてしまったらしい。再度頭を抱える俺を、優しく包み込む温もり。

 

「………風?」

「ご安心ください、おにーさん。おにーさんが風を〇学生と認めれば、あの回し者も手はだせませんのでー」

「そ…そうだよな。風は〇学生だもんな、うん。俺が忘れていただけだよな」

「それでいいのですよ、おにーさん」

 

風は一通り俺の頭を撫でると、朝食の準備に戻るべく立ち上がる。

 

トスッ。

 

と、そんな風のポケットから1冊の手帳のようなものが落ちる。

 

「おぉ、風の生徒手帳が落ちてしまいましたねー」

「普通の〇学は学生証だろ!やっぱ〇学生じゃねーか!?」

「おにーさん、ダメですっ」

 

俺の叫びに、風が慌てて止めに入る。だが時既に遅し。カラカラカラ…と背後でベランダと屋内を隔てるガラス戸が開く音がした。

振り返った瞬間、視界に入るは黒い影。

 

ここから先の記憶は、俺にはない。

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

『風の異議有(いぃゆぅ)旅行記 その2』

 

 

 

「なんですか、このビールの美味しさは。海も青すぎます」

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

前書きにも書いたけど、収拾がついてない。

暇つぶしにもなればありがたいぜ。

 

写真はニースでの1枚です。

周りはブルジョワたちがきゃっきゃうふふしてる中、デカい荷物を背負った男がビールで1杯。

 

この作品に関しては続くかわかりませんwww

 

 

ではまた次回お会いしましょう。

バイバイ。

 

 

 


 
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