No.296329

真・恋姫無双another 風ストーリー その終わり

ぴかさん

真恋姫無双の二次小説です。
風の視点で物語が進行していきます。

今回でこの話も終わりになります。
スッキリした終わりかたかどうか、人によって感じ方は違うかもしれません。

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2011-09-09 11:23:51 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:7247   閲覧ユーザー数:5472

 孫呉との戦いから数日。

あの時に話したとおり、孫策さんに対して使者を立てて改めて話し合いを持ちました。

孫尚香さんが上手く言ってくれていたのでしょう。

特に大きな問題もなく、順調に関係改善が行えました。

 

 桃香さんに対しても同じように使者を立て、話し合いを持ちました。

こちらは諸葛亮さんなので、特に気にはしていなかったのですがそれでもです。

こちらも、特に問題なく順調に関係改善が出来ました。

 

 結局、今回の騒ぎの首謀者は特定できませんでしたが、おそらく白装束の人だろうと結論付けました。

また何かをしてくるかもしれない。

そう思いつつ、今まで以上に定期的なやり取りを他国と行い、今回のような争いが起こらないようにしました。

 

 気持ちは戦いから発展へ……。

お兄さんの天の知識を取り入れ、平和な大陸へと推し進めていきます。

これからはこのまま争いもなく平和な世の中になる。

そう誰もが思いました。

ですが、ここでまた一つ大きな事件が発生しました。

 

 

 いつものように朝議を始める私達。

ですが、時間になってもお兄さんが来ません。

今までも時々ですが寝坊をしてくる事があったので、そのうち来るだろうと思っていたのですが、その日に限ってあまりにも遅すぎました。

 

「北郷は何をしているんだ」

「また寝坊ではないですか~?」

「あいつには、王としての自覚が足りないよな」

「なら、白蓮さんが起こしに行ったらどうですか~?」

「わ……私がか……。いや、さすがに……」

 

白蓮さんはなにやら恥ずかしがっています。

今更な気もしますが、これが白蓮さんの悪いところでもあり良いところでもあります。

白蓮さんは何やらブツブツ言いながら、モジモジとしています。

これでは、いつまで経ってもきりがありません。

私は、そばにいた侍女さんを呼びました。

 

「お兄さんを呼んできてもらえますか~?」

「分かりました」

 

侍女さんは、玉座の間を出ていきました。

白蓮さんは、侍女さんの行動を見て我を取り戻すと言いました。

 

「とにかく、北郷を待とう」

 

私は、寝坊のお兄さんにどんな嫌みを言おうか考えていました。

他の皆さんも似たような事を考えているようです。

これから少し楽しい時間になる。

そう思っていたのですが、予想外の事態が発生しました。

しばらくして、先ほどの侍女さんが走りながら戻ってきました。

 

「失礼します!! 北郷様がいらっしゃいません!!」

「何!? どういう事だ?」

「お部屋に入ったのですが、どなたもいらっしゃいませんでした」

「なんだと……」

 

お兄さんが行方不明になってしまいました。

 

 

 正直、まずい事になりました。

今の平和は、お兄さんを中心に成り立っているところがあります。

曹魏はもちろん、蜀も呉もお兄さんがいるからこそ協力的なのです。

そのお兄さんがいなくなったとなれば、まずいです。

 

「すぐに、全軍を上げて北郷を探しだそう!!」

「待って下さい~。それはまずいですよ~」

 

白蓮さんの宣言に、私は待ったをかけました。

 

「風、なぜだ?」

「お兄さんがいなくなった事を知られるのは、かなりまずいですよ~」

「そうだな。少数精鋭で事に当たるのがいいかもしれん」

「けれど、それだと、なかなか見つけられないのではないか?」

「そうでしょうね~。ですが、お兄さんがいなくなったと知られるよりはいいですよ~」

「うーん……」

 

白蓮さんは何やら考えています。

そして、顔を上げると言いました。

 

「そうだな。北郷の捜索は限られた人数で行おう。他の者はいつも通り過ごすことにする」

「それが良いですね~」

 

こうして、お兄さんの捜索が始まりました。

 

 

 あれから数日、お兄さんの行方は分かりません。

私は城に残り、情報の解析にあたっています。

詠さんやねねさんの力を借りながら行っていますが、芳しくありません。

というより、情報らしい情報がほとんど入ってきません。

やはり、国内にはいないのでしょうか。

他国に協力を求めるとなると、色々大変なのですが、そろそろ潮時かもしれません。

 

「やはり国内にはいないのでしょうね~」

「そうね。捜索範囲を大陸内に広げるべきだと思うわ」

「全く、あのち●こ人間は……」

 

ねねさんが憎まれ口を叩いていますが、その表情を見ると心配しているのが分かります。

 

「では、捜索範囲の拡大を白蓮さんに相談してきますね~」

 

私は白蓮さんの元へと行きました。

 

 白蓮さんは玉座の間でぐったりとしていました。

お兄さんがいない今、統括する立場の白蓮さんの苦労は、その地位にならないと分からないのでしょう。

 

「白蓮さん、大丈夫ですか~?」

「ああ、風か……。ここ数日は激務だがまだまだ」

「そうですか~」

「風、そんな事を言いに来たわけじゃないだろ?」

「はい~。実は……」

 

私は白蓮さんに、他国への協力を求めるように話をしました。

 

「やはりそうなるか。私も最近思い始めていたのだ」

「なら、話は簡単ですね~。各国に使者を立てて協力を求めましょう~」

「そうだな」

 

こうして、私達は各国に送る使者の選定作業に取りかかり始めました。

 

 

 各国に送る人はそれぞれの国と関わりのある人を送る事にしました。

 

「星ちゃん、お願いしますね~」

「私に任せよ」

「詠ちゃん、大丈夫?」

「ボクに任せれば万事上手くいくよ!!」

 

桃香さんの元には、星ちゃんと詠さんを向かわせる事にしました。

本当は、桃香さんと昔からの馴染みの白蓮さんがいいのかもしれませんが、白蓮さんは統括する立場なのでここを離れるわけにはいきません。

なので、星ちゃんにお願いする事にしました。

そして、星ちゃんだけではという事で、詠さんに同行をお願いしました。

この二人なら、上手くいくと思います。

 

 曹操さんの元には悩みましたが、この人にお願いする事にしました。

 

「華琳さんの相手が出来るのは、この中では袁家当主の私だけですわ!!」

 

そう、麗羽さんです。

当初は渋っていましたが、いつも通り持ち上げるように言った所に先ほどの発言です。

これで麗羽さん自身は大丈夫でしょう。

ですが、麗羽さんを送るという事自体に不安が残ります。

ここは、お供の人に頑張ってもらうしかありません。

 

「うちなんかで大丈夫なんか?」

「私達も頑張りますから……。ね、文ちゃん?」

「うん、アタイ達に任せてよ!!」

 

斗詩さん、猪々子さんに加え、霞さんにも同行をお願いしました。

何となくですが、霞さんは曹操さんに好かれそうな気がします。

軍師としてはちょっと不安ですが、曹魏には稟ちゃんもいますし何とかなると思います。

 

 孫策さんの元にはこの人です。

 

「妾が孫策にか?」

「はい~。孫策さんに話せるのは美羽さんを置いて他にはいませんよ~」

「そうじゃろ!! 妾は孫策の面倒を見ておったのじゃからな!!」

「さすがお嬢様!! 先ほどまで怖がっていたのが嘘のような笑顔です!!」

「そうじゃろ、七乃。もっと褒めるのじゃ!!」

 

美羽さんは何やら上機嫌です。

 

「恋さん、お願いしますね」

「……コク」

「ねねが一緒だから問題はないですぞ」

「なんじゃ、呂布とこのちんちくりんも一緒に来るのか?」

「ねねはちんちくりんじゃないですぞ!!」

 

呂布さんは念のための護衛です。

ねねさんは相変わらずですが……。

この皆さんなら、きっと大丈夫だと信じています。

あとは皆さんが朗報を持ってくるのを待つばかりです。

 

 

 各地から戻った使者さんの報告で、皆さん協力してくれることになったようです。

お兄さんがいなくても、意外と上手くやっていけるのでは。

そんな事を思ってしまいましたが、逆にお兄さんの事だから協力してくれるという側面もあるのかもしれません。

これで、お兄さんを見つけられる。

そう思ったのですが、事はそんなに簡単にはいかないようです。

 

 大陸中の国が協力してくれるようになってから数日。

未だお兄さんの行方はようとしてしれません。

大陸外にいるとなると、どうにもできません。

そうではないと祈りつつ、皆さんで探しています。

ただ、これだけ探しても見つからないとなると、もしかして天に帰ったのではという声も聞かれ始めました。

そんな事はない。

私は、お兄さんを信じ続けました。

その思いが通じたのか、意外な人物からお兄さんの行方についての情報を得る事が出来ました。

 

「ご主人様は西方の山の上にいるわ」

「貂蝉……」

 

そう、最近見かけなかった貂蝉さんです。

でも、なぜ貂蝉さんはお兄さんの居場所を知っているのでしょう。

 

「貂蝉、なぜ知っている?」

「それは漢女のひ・み・つよ」

「貂蝉、冗談を言っている場合では……」

「星ちゃん、冗談ではないわ。言ったところでみんなには理解できないでしょうし。それよりもご主人様を助けるのが先決じゃないの?」

「そうだったな」

 

確かにお兄さんを助けるのが先決です。

ここは貂蝉さんの言う事を信じて、お兄さんを救いに行きましょう。

 

「そうだわ。曹操ちゃんに劉備ちゃん、孫策ちゃんも呼んでみんなで行くのがいいと思うわ」

「そうなんですか~?」

「そうね。想いが強ければ強いほどいいの」

 

なんだかよく分かりませんが、貂蝉さんがそうするのがいいというのであればそうするのがいいのでしょう。

私は、貂蝉さんにお兄さんの居る場所を聞きました。

それを地図にして使者さんに渡して各国へ送りました。

これで、大丈夫でしょう。

私達は、貂蝉さんの案内に従いお兄さんがいるという西方の山に向かいました。

 

 

 そこは蜀よりもさらに西方。

未開の地と思われていた場所です。

道中はかなり険しいですが、お兄さんがいると思えばどうと言う事はありません。

案の定、麗羽さんや美羽さんは文句を言っていますが、歩みを止める事はありません。

 

 襄陽を出てからどれくらい経ったのでしょう。

目的地へ到着しました。

そこには大きな建物が建っていました。

大陸のどこに行っても見た事がないような様式で作られています。

大きな石の柱に支えられ、来る者を圧倒しています。

皆さんもその建物を見て、やはり驚いているようです。

 

「さあ、奥に行くわよ」

 

貂蝉さんに促され、建物内に入っていきます。

中は見た目以上に広く、そしてひんやりとしています。

そしてとても静かで私達の足音しか聞こえません。

ここに本当にお兄さんがいるのでしょうか。

 

「さあ、着いたわ。なんとか間に合ったみたいね」

 

貂蝉さんに案内されたそこは今まで歩いたどこよりも広く、そして明るい場所でした。

そのちょうど中央に見慣れた後ろ姿がありました。

 

「お兄さん!!」

「ほんまや!! 一刀!!」

 

皆さんが一斉に声をかけます。

しかし、お兄さんが反応する様子はありません。

 

「無駄だ。こいつは、操られている」

 

お兄さんのそばにいたのは、何度も邪魔をしてきた白装束の人です。

 

「全く……。私は、こんな事したくないと言ったんですけれどね」

「ふん。こうでもしないと、この世界を終わらせられないだろ!!」

「まあ、そうですね」

「本当は手っ取り早くこいつを始末して終わらせたかったんだがな」

「それは、あそこにいる人に言って欲しいですね」

 

そう言って指差されたのは貂蝉さん。

やっぱり貂蝉さんは白装束の人と知り合いのようです。

色々聞きたいですが、今は時間がないようです。

それに、先ほど白装束の人が話をしていた内容が気になります。

 

「あの、世界の終わりとかどういう事ですか?」

「ちょっと長い話になるわよ」

「そんな事より、早く主殿を助けよう!!」

「今は無理だわね。あいつらに操られている間は……」

「そうなのか」

 

ここには、大陸中の名だたる武将が揃っています。

にもかかわらず、お兄さんを助けに行く様子がありません。

というより、その雰囲気で無理だというのが分かるのでしょう。

 

 

「どうせ、もう終わる世界だ。その事くらいは知らせてやってもいいんじゃないか」

 

 白装束の人が言いました。

世界の終わりとは不吉な物言いです。

それが本当なら知っておく必要があるようです。

 

「貂蝉さん、どういう事なのですか~?」

「そうね、みんなには知ってもらう必要があるかもしれないわ。この世界……、これが幻だと知ったらみんなはどう思う?」

「幻? そんなわけ無いだろう。こうしてみんな生きておるではないか」

「そうね。でもそれは人の想いから作られたもの」

「想い……」

「世界は人々の想いによって作られる。こうしたいああしたいという想いから。そして、その想いが途切れると世界は消える。こうして何百……、いいえ何千何万という数の世界が作られたわ」

 

正直漠然としてよく分かりません。

 

「この世界もそんな中の一つだというのか?」

「そう。そんな人の想いで作られた世界を私達は『外史』と呼んだわ」

「外史……」

「そして、その想いを紡ぐ人達の居る世界を『正史』」

「正史と外史か」

「正史は常に一つ。外史は、さっき話をしたみたいに人の想いの数だけ作られるの」

「それが今の状況と何の関係がある?」

「ごく稀にだけど、外史が意志を持って正史のように振る舞う事があるの。そして、この世界もそうだった。その中心にいるのが……」

「お兄さんなんですね~」

「そうなの。ご主人様の存在がみんなの想いを一つにしてそして世界を幻から現実にしていく」

「あいつらは、それを防ぎたかった訳か」

「そう言う事。彼らはご主人様を殺す事によって、この世界も他の世界と同じように幻のままいつか消え去るようにしたかった」

「貂蝉はなぜ?」

「私は、外史がいくつもあるように正史だっていくつあってもいいと思ってる。だって、外史にいるみんなだって想いは持っているんだもの」

「なるほど。とにかく、あいつらに北郷を殺させなければいいんだな」

「ううん。もうそれは関係ないの。この世界は正史としてすでに動き出している」

「だったら……」

「だから、彼らはご主人様をここに連れてきた。ここは世界の終わり」

「終わりって……。もうダメなのか」

「いいえ。世界は終わりがあるように始まりもある。ここは世界の始まりでもあるの」

「意味が分からないのだが……」

「あの鏡。あれがこの世界の終わり。そして、始まりも意味するの」

「鏡が……か」

「鏡に触れる事で世界が終わりもするし始まりもする。そして、鏡に触れるのはその世界の鍵となる人物だわ」

「それがお兄さんという事ですか~」

「そうね」

「でも、なんであの人達はお兄さんを操ったのに鏡に触らせないのですか~?」

「鏡がまだ覚醒していないからよ。鏡が覚醒しないといくら触れてもそれはただの鏡よ」

「なら、その鏡が覚醒する前に、主殿を助ければいいのだな」

「そうなんだけれど、さっき話をしたみたいに術を解除しないと無理だわよ」

「術を解くにはそれを唱えている術者を倒せばいい。あいつでしょ、以前私を操ったのは」

 

曹操さんが言いました。

かなりの殺気をはらんでいます。

 

「きっとそうですよ」

「あの時のお礼をしないといけませんね」

 

曹操さんの言葉に夏侯惇さん、夏侯淵さんも反応します。

 

「鏡の覚醒までまだ時間がありますか……。それまではこの子達に相手を務めてもらいましょう」

 

そう言って、お兄さんを操っていると思われる白装束の人が手を合わせて力を入れたかと思うと、地面から人が姿を現しました。

それは、私達を散々邪魔してきたあの白装束の皆さんそのものです。

 

「時間稼ぎには適当でしょう」

「甘いわ」

 

一瞬にして曹操さんを囲んでいた白装束の皆さんが消滅します。

ですが、白装束の皆さんは次々と姿を現します。

 

「曹操、私達もやらせてもらうわよ。まるっきり無視されてちょっと頭にきているのよね」

「私達も」

「孫策、劉備……。そうね、私達の力魅せてあげましょ」

 

これが合図になったのでしょう。

全軍入り乱れての、戦いとなりました。

力は圧倒的にこちらが上ですが、向こうは数で押してきます。

決定打を打てないまま時間だけが過ぎていきます。

そして、例の鏡が突然光り出しました。

 

 

「よし!! 覚醒したぞ!!」

 

 白装束の人がそう言うと、お兄さんの体が鏡に向かって動き出します。

このままではまずいです。

 

「貂蝉さん、どうすれば?」

「みんなの想いをご主人様にぶつけるのよ。そして、世界の終わりではなく始まりを認識させるの」

「だが、主殿は操られているのでは?」

「それは、私が何とかするわ」

 

そう言って、貂蝉さんは飛び上がったかと思うと白装束の人の所に行きました。

そして、蹴りを繰り出します。

 

「貂蝉、どういうつもりですか?」

「やっぱりこの世界は、あの子達に任せるべきだと思うのよ」

「私達の役目は違うでしょう」

「こうやって無理矢理するという事も言われていないと思うけど」

 

貂蝉さんとその白装束の人がなにやら言い合っています。

そのせいで意識が薄れたのでしょう。

お兄さんが意識を取り戻します。

 

「あれ? ここは?」

「お兄さん~!!」

「風!! それにみんな!!」

「北郷一刀、その鏡に触れるのだ!!」

「お前は……」

「その鏡に触れなければ、ここにいる者全てが死ぬことになるぞ」

「何だって!!」

 

お兄さんは驚いて慌てて鏡に触れようとします。

 

「お兄さん~!! 騙されちゃダメですよ~!! その鏡に触れてしまったらこの世界は終わってします~!!」

「えっ、それってどういう……」

「ご主人様、その鏡に触れる時にこの世界の始まりを想像して欲しいのよ」

「貂蝉!! 邪魔をするな!!」

「始まり……」

「みんなでご主人様に想いを送るのよ!!」

 

想いを送る。

あまりにも抽象的すぎてよく分かりません。

ですが、今の気持ちを伝えればいいのでしょうか。

 

「お兄さん~!! まだ終わりじゃないですよ~!!」

「そうや!! 一刀にはまだまだ話すことがあるんや!!」

「北郷!!」

「主殿!!」

 

皆さん、口々にお兄さんを呼びます。

その言葉を聞いて、お兄さんは頷くと鏡に向かって歩き出しました。

 

「お兄さん~」

「風、みんな。大丈夫だよ」

 

そう言ってそのままお兄さんは鏡に触れました。

その瞬間、鏡から光が溢れ出して全てを取り囲みました。

 

 

「ふぅ……」

 

 私はひとつ大きな溜息をつくと筆を置きました。

気が付くとあれだけ大きかった蜀台の上の蝋燭が半分以上減っています。

かなり集中していたみたいです。

 

 ふいに私の体に触れるものがあったので見てみました。

少し離れた場所で寝ていたはずの娘が、すぐ横にまで来ています。

 

「相変わらず寝相が悪いですね~」

 

そうつぶやきながら、私は彼女の頭をなでました。

くすぐったかったのか、彼女は少し頭を振るとまた穏やかな寝息を立て始めました。

それを聞いて私は、彼女を抱きかかえ最初に寝ていた場所に寝かせると、大きくなりはじめたおなかをさすりました。

そうです、私のおなかの中には二人目の赤ちゃんがいます。

今度は男の子がいいなどと楽しそうに話したのを、昨日の事のように思い出します。

 

「片付けなければですね~」

 

私は出したままにしてある書と筆類を片付けようと、机のそばに戻りました。

と、ここでふいに戸が開きました。

 

「なんだ、風。まだ寝ていなかったのか?」

「はいなのです~。少し書物を書いていたらこんな時間に~」

「もう自分だけの体じゃないんだから、少しは自重しろよ」

「はい、お兄さん」

 

私がこう言うと、お兄さんはなにやら嫌そうな顔をしました。

 

「お兄さんって……。もうそういう関係じゃないだろ」

「じゃあ、なんて呼びますか~? 皇帝陛下?」

「それは他人行儀だし、その呼び方はどうもしっくりこないんだよね」

「じゃあ、あなた?」

「確かに間違いじゃないんだが……。って何でその呼び方を知っているんだ!?」

「それは秘密です~。それじゃなんて呼べばいいです~?」

「だからさ……」

 

お兄さんは照れ臭そうに言いました。

なんて呼んでほしいかは分かっていましたが、あえて意地悪をしてみました。

これ以上は可哀想なので、私はその呼び名で呼んであげました。

 

「一刀……」

 

そう言って私は目を瞑ります。

 

「風……」

 

私の前にお兄さんが近づいたのが分かります。

そして、お兄さんの唇と、私の唇が重なりました。

私達の間を涼しげな風が通り抜けていきました。

 

 

あとがき

 

 風ストーリーの最終章です。

なんとか終わらせることが出来ました。

ちゃんと終わってないような微妙な感じもしますが、とりあえずこれで終わりです。

この終わり方は、書き始めの頃から決まっていて実はある程度書き終えていました。

 

 こんな終わり方でしたが、どうでしょうか。

終わり方としては無印恋姫に近い形ですね。

一刀が何を思って鏡に触れたか。

その一端が、一番最後のページに書かれていますけど、あえて具体的には書きませんでした。

そこは、皆さんの想像に任せることにします。

風の視点だった理由も、最後のページで分かるかなと思います。

 

 次の作品は未定です。

過去作のリニューアルもちょっと考えています。

あとはちょっと構想をまとめてから書くのも必要かなと思っています。

私の作品を待っている人がいるのか判りませんけど、今しばらくお待ちいただけると幸いです。

 

 今回もご覧いただきありがとうございました。

また、次の作品もお願いしますね。


 
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