No.289937

真・恋姫†無双 ~夢の中で~ 第五話 『取り戻すために』

レインさん

畜生!PS3が!!PS3が壊れたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!




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2011-09-01 00:22:15 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:1819   閲覧ユーザー数:1592

高いところからは色んなものが見える。

特に夜には。

 

高層ビルの中から漏れ出す光。

道路を走る車のヘッドライト。

脇にある街灯。

走っている電車の光。

帰宅中の人々が持つケータイの光。

 

その人々の中には当然子連れ夫婦もいる。

それを見るといつも‘私’は胸の奥が苦しくなる。

胸の奥に何かがあるような不快感。

頭の中が抉られるような感覚。

 

お父さんとお母さん。

 

私が10歳のときに――ちょうど6年前に――他界した。

 

私が喉から手を伸ばして、伸ばして伸ばして、伸ばして伸ばして伸ばして、伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして伸ばして

それでも二度と手に入らない。いや、戻ってこないものだ。

 

私の両親は交通事故で死んだ。

 

――事故だった。

――偶然だった。

――どうしようもなかった。

両親の死はそんな言葉だけで済まされた。

 

だから泣いた。

辛かった。悲しかった。兄にしがみついて、二人で一緒に泣いた。

 

何度も死のうと思った。お父さんとお母さんに会いに行こうと思った。

本気で自殺を考えた。

 

でもやめた。

 

なんでって?

お父さんはお母さんと。お母さんはお父さんと。一緒にいられるから。

 

 

 

それなら、

 

 

それならば、

 

 

 

――私には何があるのだろう?

 

 

 

 

 

 

そんな事決まってる。お兄ちゃんがいる。

 

 

 

 

私にはお兄ちゃんがいる。

 

 

それだけでいいという事に気づいた。

 

 

「いないけど。」

高層ビルの上で‘私’は呟く。

あれから私はずいぶん成長した。

 

訂正。

 

『お兄ちゃんがいなくなってからの四年間で、』私は変わった。

四年前、お兄ちゃんが消えた。

14歳、私が中二の時で、お兄ちゃんが18歳で高三の時だ。

いつも私とお兄ちゃんは学校から帰るとき、一緒に帰っていた。

私の方が部活が終わるのは早い。だからいつも校門で待つ。お兄ちゃんが剣道部が終わるのを

ずっと待っていた。

6時を越えて、7時を過ぎて、「先に帰っちゃったのかな。」と思った。

そして私も帰って、家に入って感じた。

『違和感』を。

 

『何かが足りない』という感覚。

 

それはすぐに判明した。

 

お兄ちゃんの『物』が全て消えていた。

 

お兄ちゃんが使っているお箸、お茶碗、服。

お兄ちゃんの部屋があったはずの場所には『何も無かった。』

扉さえも。ただの壁になっていた。

 

【お兄ちゃん!?お兄ちゃん!?ねぇ!?どこ!?ねぇ!?】

家の中を探し回って、家の外に出て。

ずっとずっと走り回った。

探して探して、探し続けた。

 

でも、見つからなかった。

 

家に戻り私を待っていたのは、さらなる衝撃だった。

 

【う…そ…でしょ…。こんな事って…。】

私の部屋のベッドの脇に置いてある『写真』。

まだ両親が生きていた頃に旅行に行った時に撮った、『家族四人』で撮った写真。

 

『それ』を震える手で掴む。

 

その写真に、一刀は映っていなかった。

 

【いっ…いやああああああああああああああ!!!!!!!】

ガシャアン!!

思いっきり写真を床に叩きつける。

結果、カラフルな額が砕け散る。

【はぁ、はぁ、】

震えが止まらない。

一体何が起きてるの?

わたし、私はどうしたら……

ピンポーン

 

【!!】

唐突に鳴ったチャイムに思わず体が跳ね上がる。

 

【は、はい。北郷です。】

【詩織ちゃん?どうかしたの?今すごい悲鳴が聞こえたんだけど…。】

出てきたのは50歳ぐらいのおばさん。両親が死んで、何かと世話をしてくれる人だ。

【す、すみません。ちょっとゴキブリが出ちゃって。】

【まぁそうなの?駄目じゃない。掃除はこまめにしなきゃ。】

【ごめんなさい。…あ、あの。】

【ん?どうかした?】

【お兄ちゃん、どこにいったか知りませんか?】

【?詩織ちゃん、何を言っているの?】

【え…】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【詩織ちゃんは一人っ子でしょう?】

 

 

わけが分からなかった。

『あの』及川先輩もお兄ちゃんの事を【知らない】と言った。

 

お兄ちゃんは『存在しない』事になっていた。

 

誰も覚えていない。お兄ちゃんの事を。

それどころか、逆に心配されるほどだ。

――私がおかしいのだろうか?

――私が壊れたのだろうか?

――両親が死んだショックで『兄がいる』という妄想をしたのか?

 

初めからいないのだ。兄など。私が創りあげた幻想――

 

じゃあ死のう。

 

私が生きる理由が無くなった。

 

首を吊ろう。

 

迷いは無かった。

適当に遺書を書いた。

さて何で首を吊ろうか。

 

マンガみたいに都合よくロープがあるわけでもなく。

何で吊ろうか。

そうだ。別に天井に吊られる必要なんか無い。

要は窒息さえすればいいんだから。

髪を結んでいるゴムで首をドアノブに引っ掛けよう。

そして頭の後ろに手をやって、シュシュを取って、

――あれ?なんだろ?何かが。

 

考えろ。今しかない。今思い出さなければ絶対に思い出せない。

思い出す?何を?何を忘れて

気づいた。

 

このシュシュは誰が買ってくれた物だ?

 

 

 

お兄ちゃん。

 

 

 

お兄ちゃんの私物は消えた。写真にも。籍も。メールの受信履歴も。

でもこのシュシュは『私の』だ。お兄ちゃんの物じゃない。

 

私は急いで机の中を探した。あった。見つけた。

お兄ちゃんが私に誕生日プレゼントの時に書いてくれた手紙を。

 

【ぅぅぅ…ううううっ…ううううううううううっっっっ…】

涙がぽろぽろとこぼれる。

お兄ちゃんの字だ。間違える訳が無い。

 

 

いた。お兄ちゃんは確かに【いた】。

私と一緒に。

ずっと。

ずっと。

ずっと。

 

 

 

シュシュを握り締め、胸に抱く。

お兄ちゃんのいた証。

私とお兄ちゃんを繋ぐモノ。

【お、にぃ、ちゃん…おにぃ、ちゃん…お兄、ちゃん…お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん。】

何度も呼ぶ。

【お兄ちゃん!、お兄ちゃん!!、お兄ちゃん!!!、お兄ちゃぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!】

そして四年の時が過ぎた。

当然、髪は『あの』シュシュで結んでいる。私の宝物だ。

今年でフランチェスカを卒業する。大学?行くわけが無いじゃない。

そんな事より私にはやるべき事がある。

 

無論、『お兄ちゃんのところに行くこと』だ。

 

あれからいくつか推論を立てた。

 

一つ、お兄ちゃんは確かにこの世界に【いた】。でも今は【いない】つまり【他の世界にいる】。

二つ、何故お兄ちゃんなのか?恐らくお兄ちゃんには何らかの【力】があるのだろう。

   そして、【役割】があった。だから他の世界に飛ばされた。

三つ、私にはその【力】とやらはあるのだろうか?おそらくあるのだろう。同じ血が流れているのだ。できないはずがない。

 

 

そして得た結論。

同じ血を持つ私ならば、お兄ちゃんと同じ世界へ【行く】ことができるという事だ。

 

根拠がない推論だが、十中八九正解だろう。

現に――。

 

「現に『貴方達』が目の前にいるもの。」

そう、今私の目の前には五人の人間がいた。

とても現代の人間が着る格好ではない。そして、ただならぬ気配を見せている。

 

「ほう、儂らを見て驚かんとはな。」

褌一枚に上着を羽織っている筋肉達磨。

「驚いてるわよ。でも少しだけ予想してただけ。」

「中々賢いようですね。」

眼鏡を上げながら言う青年。

「生意気なだけだろう。」

金髪の青年。

「さぁすがご主人様の妹さんねぇ。」

ビンゴ。やっぱり。

「やっぱり…。」

「ええ、あなたのお兄さんは【います】よ。」

私の言葉を先に言う女性。フードを被っているから顔が分からないが、70歳ぐらいだろうか。

相当高齢だろう。

 

「…お兄ちゃんは、あなたたちの【世界】いるのね?」

「ええ、います。『天の御使い』として。」

「『天の御使い』?」

「乱世を終わらせる為の存在です。あなたのお兄さんはここでいう、『三国志』に飛ばされたのです。」

「え…ちょ、ちょっと待って。三国志!?過去の世界に行ったの!?お兄ちゃんは!?」

頭が痛くなってきた。

「違うな。『三国志』の話を基にした世界だ。」

金髪が言う。

「基にした?どういうこと?ただタイムスリップしたわけじゃないの…?」

「ここの世界の『三国志』を基にして少しだけ改良の加えられた、それでいて全く別の世界よ。」

ビキニ達磨がくねくねしながら言う。

「つまりは」

「パラレルワールドって事ね。」

なるほどね。だいたいわかった。

あれ?締めを言おうとしていた眼鏡君が金髪君にしがみついている。なんでだろう?

…あ、蹴られた。

 

だいたい理解した。

 

 

「随分と勝手なのね。」

「「「「・・・」」」」

「貴女には随分と迷惑を・・・」

「私じゃないわ。」

「え・・・」

 

「お兄ちゃんよ。」

 

「「「「「!!!!!」」」」」

「勝手にわけわかんない世界に飛ばされて、右も分からない、左も分からない、ただの人間なのに『天の御使い』??乱世を終わらせる??ふざけないで!!!!!」

 

どれだけ不安だったか。どれだけ怖かったか。平和な日本で生きる人間がいきなり戦争に突っ込まれる。

想像するだけでも恐ろしい。

 

「死んだらどうするつもりだったの。」

「それは・・・」

「死なない保障なんてある?ないわよね?あるはずがないわ!」

「っ・・・」

「文明が発達している世界の人間がその知識を過去で使えば、当然被害はすくなくなるよ。でも

だからって・・・」

 

「すまなかった。」

「許さないよ。」

「謝る。」

「許さないよ。」

「申し訳ありませんでした。」

「許さないよ。」

「許してとは言わないわ・・・」

「当然よ。」

「御免なさい・・・」

「許さないよ。」

 

許すものか。許してなるものか。あの悲しみを。忘れることなど。できはしない。

 

「今、あなたのお兄さんに危機が訪れています。」

「なんですって?」

ちょっと間が空いて、フードの女性が言った。

「私と左慈が作ったモノを真似した『呪具』のせいです」

「『呪具』?それはどういったものなの?」

呪具、とやらの存在についてはスルーしよう。そこらを気にしたら負けだ。

「人の思いを増幅させるモノです。」

 

 

なによそれ。

 

 

「私を連れていきなさい。」

「もちろんです。我々はその為に来たのですから。」

話は全部聞いた。

とんでもない事になってるわね。

しっかりしてよ。お兄ちゃん。情けない。

「もうこの世界には戻ってこれないわよん。」

「構わないよ。」

「未練はねぇのか?」

「・・・・・あるよ。あるに決まってる。18年生きてきた世界。楽しい事も、辛いこともたくさんあった。」

「・・・・・・・」

「でも行く。またお父さんとお母さんと、私と、お兄ちゃんの四人に戻るために。」

エナメルバッグを抱えながら言う。

その中には色んなものが詰まっている。

アルバム、写真、旅行に行ったときに買った物、お父さんとお母さんの結婚指輪。他にも沢山。

『あの写真』だけじゃない、他の写真からもお兄ちゃんは映っていない。

お兄ちゃんがいる世界に行けば、四人に戻るはず。

 

五人手を掲げる。すると空間が歪みはじめ、扉が出てきた。

 

「さぁ行きなさい。北郷詩織。」

 

「うん。」

 

足を踏み出す。一歩一歩がこの世界との別れの音。

 

さっきも言ったが、未練はある。

 

それでも。

 

やらなきゃいけない。

 

 

「行くよ。私。」

 

 

待ってて。お兄ちゃん。

 

 

 

 

 

〈続く〉


 
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