No.284769

そらのおとしもの二次創作 ~エンジェロイド改造計画 シナプス編 Ver.2~

tkさん

『そらのおとしもの』の二次創作になります。
今回はカオスの扱いに挑戦。子供キャラは慣れていないせいか苦労します。

エンジェロイド改造計画シリーズ
シナプス編1 http://www.tinami.com/view/225446

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2011-08-25 22:32:16 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1386   閲覧ユーザー数:1356

 私はシナプスの迎撃用エンジェロイドタイプγ(ガンマー)、ハーピー。

 いや正確には私達、か。二体で一つとして扱われるのが私達という存在だから。

 そんな私達の創造主にしてマスターは、最近活き活きとしている。

 

「カオス、準備は出来たか?」

「うん! これでお兄ちゃんをびっくりさせられるかな?」

「当然だ。その為に用意したのだからな」

 マスターの前で満面の笑顔を浮かべているのはタイプε(イプシロン)、カオス。

 第二世代エンジェロイドとしてマスターの製造された最新型だ。

「今回、お前にほどこした新機能は画期的な物だ。それこそダイダロスの作品も凌駕するだろう」

「お姉さま達より凄い物なのね! 楽しみだなー」

 その様子はまるで親と子供そのものだけど、立派な作戦会議のハズだ。多分。

「さあ、サクライトモキと存分に楽しんでくるがいい!」

「はーい!」

 とてとて、と走って行くカオスはどう見てもこれから戦闘におもむくとは思えない。

「あのー。カオスにした改造って何なんですか?」

 どうしても気になったから思わず尋ねてしまった。もしかしたら怒られるかもしれない。

「分からんか?」

「はい、さっぱり…」

「まあ、分からんだろうな。クックック…」

 私達の回答に満足げに笑うマスター。今日はかなりご機嫌らしい。

 元々アルファー達に勝るとも劣らない性能を持つカオスに、これ以上何を加えたのだろう。

「なに、すぐに分かる。これでダイダロスの作った奴らも私にひれ伏すだろう」

「あのー、マスター。カオスの場合、性能の向上より感情制御を重視した方が良いのでは…」

 カオスはあの憎きサクライトモキに懐いてしまっている。まずはそこから改善するべきじゃないだろうか?

「貴様らエンジェロイドの感情、記憶操作は簡単ではない。些細な事で異常をきたしてしまう場合も多い」

「うっ」

 そういえばこの前、私達自身が酷い目にあったばかりだった。

「カオスはただでさえ精神面が成熟していない。現段階での修正は不可能に近いのだ」

 なるほど。カオスについてマスターなりに計画的な運用を考えているらしい。

 それならもう少し私達の待遇も改善して欲しいと思う。

 贅沢は言わないから個別の名前とかが欲しい。例えばハピ子とハピ実とかどうだろう。今度お願いしてみよう。

「さて、じっくりと見せてもらうとするか。サクライトモキの狼狽と苦悶をな。フフフ…」

 地上監視用モニターを見つめるマスターは本当に楽しそうだった。

 

 

 ~エンジェロイド改造計画 シナプス編 Ver.2~

 

 

 こんにちは、智樹です。

「お兄ちゃーん!」

「ん? ああ、カオスかおはようぼぁっ!」

 朝っぱらからカオスの強烈なタックルをみぞおちにくらいました。

 もう慣れましたけど、それでも痛いものは痛いです。

「イカロス、悪いけど朝飯をもう一人分増やせるか?」

「はい、問題ありません」

 カオスを加えて5人での朝食です。我が家もすっかり大所帯になりました。

「………」

「…むぐ」

 ただしカオスの登場によってニンフの機嫌は急降下。

 アストレアもカオスの様子をうかがいながらなので居心地が悪そうです。

「マスター、早く食べないと遅刻します」

「おう」

 イカロスは割とマイペース。

 我が家ではカオスの受け入れについて容認派と否定派が存在しています。

 僕とイカロスは容認派。ニンフは否定派。アストレアはどちらにも属していません。

 今は多数決によって、こうしてカオスが受け入れられてるのです。

 なんて考えている間に僕は朝食を食べ終わりました。

「よし、学校に行くぞー」

「あ、待ってお兄ちゃん」

「ん?」

「今日はね、お兄ちゃんに見せたいものがあるんだ」

「なんだ? それって急ぐのか?」

「うん! 今すぐ見てもらいたいの!」

 そう言いながらカオスが自分の修道服をポンポンと叩くと。

「うわっ!?」

 カオスの服が光を放ちながら形を変えて、あっという間に別の服になってしまいました。

 毎回シナプスの科学力には驚かされます。

「えへへー、どう? これならお兄ちゃんの言ってた学校って所にも行けるよね?」

「う、むう…」

 今やカオスの服は良い所の小学生が着ている様な立派な制服になっています。

 黒を基調にしたワンピースに白いインナー、その上に濃い紺のジャケット。

 これまでまっ黒な修道服しか着ていなかったカオスにこんなお洒落のセンスが?

「マスターが色々調べて準備してくれたんだー」

「ほほう…」

 シナプスのマスターか。

 あんちくしょうは一度ぶん殴ってやろうと思っていたけど、考えを改める必要があるかもしれない。

「あー、コホン。遅刻するわよ、トモキ?」

「げっ!?」

 ニンフに睨まれて時計を見ると、もうギリギリの時間でした。

 

 

「~~~♪」

 ご機嫌なカオスの鼻歌が教室に穏やかな雰囲気を作っていました。

 どうやら僕の膝の上がお気に入りみたいです。

 

「…サクライコロス」

「ああ、もう極刑しかねぇ」

「落ち付け、人気の無い夜道を狙うんだ」

 

 そしてクラスに満ちていく禍々しい殺気。男子達が鬼の様な形相で僕を睨んでいます。

 おかしいなぁ。僕って確かフラレテルビーイングのマイスターだよね?

 モテない男達の代表としてカップルと戦う聖なる戦士のハズだよね?

「…アルファー。そろそろトモキにはお仕置きと調教が必要だと思うの」

「…後者には賛成」

 おかしいなぁ。僕の味方であるハズの彼女達が真顔で物騒な事を話し合っているような気がするぞ?

「トモちゃん、このままじゃ論理的にもマズイと思うんだけど」

「やっぱりそうか?」

「うん、絶対」

 こっちを半眼で睨んでくるそはらの言う事はもっともだ。

 どうみても小学生なカオスを学校まで連れ回すとか、犯罪者にされても否定できない。

「なあカオス。満足したなら今日はこの辺で…」

「ねえお兄ちゃん、今日はプールってないのかな?」

「え? 午後からあるけど…」

「本当? じゃあこれ着て遊んでもいいよね?」

 そう言いながらカオスが再び自分の制服をポンポンと叩く。

「あ! おい!」

 止める間もなくカオスの服が光を放ちながら形を変えて、あっという間に別の服になって…うおぃ!?

「じゃーん! どう?」

 そこにはスクール水着に着替えたカオスの姿があった。

「どうじゃねぇっ!! さっさと元に戻せ!」

 ヤバい。何がヤバいって色々とヤバい。とにかくヤバい。

 特殊な性癖を持つ奴が見れば出血(鼻血)で死人が出るんじゃないか?

「えー」

「えー、じゃない! プールは午後からだからそれまで待て!」 

 

「………すまん皆。先に逝く」

「…ああ、俺も、すぐに後を追う」

 そうこうしている間に男子連中から出血多量者が出ていた。本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

 それとシナプスのマスターとは一度徹底的に話し合う必要があると思う。

 内容は常識面と趣味趣向について。前者は説教、後者は友として語り合いたい。

 

「…アルファー(バキッ)←鉛筆が折れる音」

「…分かってる(メキャッ)←筆箱が曲がる音」

 ああっ! 何故かニンフとイカロスからどす黒いオーラが!

 このままじゃカオスが危ない! ついでに俺の命も!

「トモちゃん、午後は保健室で休んでて。ね?(ミシミシ)←机が軋む音」

 追加オーダー入りました! そはらさんもですね、分かります!

「…バーカ」

 拗ねたようにそっぽを向くアストレアだけがクラスの良心だった。

 まさかこいつが一番常識的な行動をする日が来るとは思わなかった。

 

 

 同時刻、シナプス。

 

「クックック… 楽しませてくれる」

 地上のダウナー達の様子を見てマスターは愉悦で口を歪めた。

「いいぞカオス、そのままサクライトモキを誘惑するのだ」

「あの、マスター」

「なんだ?」

「十分に煽りましたし、そろそろカオスの新機能とやらで勝負を挑んではいかがでしょう?」

 マスターはサクライトモキの狼狽ぶりに満足して、当初の目的であるアルファー達の破壊を忘れている気がする。

 怒られるかもしれないけど、ここは進言しないと。

「…お前たちは何を見ていたのだ」

「え?」

 するとマスターは心底呆れた様子でため息をつきました。

「カオスの新機能はすでに稼働している」

「えーっと…」

 いくらモニターを見ても、映っているのはコロコロを服を変えるカオスとそれに振り回されるサクライトモキだけだ。

 それ以外に何があるというのだろう?

 そういえばさっきからアルファーやベータの様子がおかしい。カオスとサクライトモキの様子を見て奇怪な行動を続けている。

 これは、まさか新型の遠隔ハッキング機能?

 

「あの服装の瞬時更新こそ、今回私がほどこした新機能なのだ!」

 あ、やっぱりそうなんだ。

 できるだけ考えない様にしていたんだけどなぁ。

 

「アルファーを始めとしてダイダロス作のエンジェロイドどもは服装について無頓着な事が多いからな。特にお洒落というダウナーの趣味趣向には疎い傾向がある」

 それはそうだ。そもそも私達エンジェロイドは着飾る必要性が無いのだから。

「だが私は違う! ダウナーどもの趣向を研究し、カオスに実行させる事でダウナーを容易に籠絡する事を可能にしたのだ!」

 テラスから遙かな空を見据えて誇らしげに語るマスター。

 なんだろう、何故かマスターが遠い存在になっていく気がする。

「すでにサクライトモキはカオスに籠絡されかかっている。奴がカオスにかまけてアルファーどもに見向きもしなくなれば、破廉恥な地上のマスターである奴に幻滅し、私の所に戻ってくる事だろう。完璧な計略だ、フフフ…」

 そうかなぁ。

 サクライトモキが破廉恥な地上のダウナー(ゴミ虫)である事はアルファー達も分かってると思うんだけど。

 それでもああやって一緒に住んだり気を引こうとするんだから、愛ってやっぱり分からない。

『確かに悪くない作戦ね』

「なっ!? ダイダロス!?」

 マスターの隣にいきなり新しいモニターが出現した。どうやらまたダイダロスのハッキングらしい。

「…フン、貴様も心配で見ていたか。涙ぐましい事だな?」

 おお、マスターが珍しく余裕を取り戻した。いつもはダイダロスに散々煽られて癇癪を起しているのに。

『だけどその作戦には致命的な穴があるわよ?』

「なんだと?」

『トモくんがカオスにかまけてアルファー達を相手にしない。そしてアルファー達がシナプスに帰ってくる。そこまでは貴方の計画が正しい』

「当然だ。そこに何の穴がある?」

『でも、カオスは帰って来なくなるわよね?』

 それはそうだ。カオスはサクライトモキを籠絡してアルファー達への関心を失くす役割があるんだから。

 マスターだってそれくらい十分に理解して―

 

 

「………しまったあああぁぁぁ!」

 最近のマスターはサクライトモキに似てきている気がする。

 ああやって悶絶する所とか特に。

 

 

『昔から視野が狭いのよね、貴方は』

「うるさい黙れ! カオス! これ以上サクライトモキを誘惑するな! ええい、なぜ通信できん!」

 それはマスター自身がカオスの通信システムをロックしているからじゃないだろうか。

 カオスは隠し事が出来ないから、こっちの作戦が読まれない様にってマスター本人が言ってたのに。

『カオスがやり過ぎないか、アルファー達が反撃の狼煙をあげるか。とにかく祈るしかないわね』

「おのれサクライトモキィィィィ!」

 

 

 シナプスは今日も平和です。

 

 

 ~了 桜井家編そのに に続く~


 
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