No.283252

真・恋姫†無双 萌将伝的昔話:桃太郎・璃々ちゃんと愉快な仲間達

葉月さん

ギリギリの投稿になってしまいましたがなんとか完成しました。

この作品はリクエストで頂いたものです。

注意:かなり私の偏見が入っているのでイメージと違うかもしれませんがご了承ください。

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2011-08-23 23:55:21 投稿 / 全17ページ    総閲覧数:9361   閲覧ユーザー数:6668

第2回同人恋姫祭り作品

 

 

 

 

 

【真・恋姫†無双 萌将伝的昔話:桃太郎・璃々ちゃんと愉快な仲間達】

 

《一刀視点》

 

「さあ、璃々。もう寝る時間よ」

 

「え~。まだごしゅじんさまとあそびたいよぉ」

 

「ダメですよ。ご主人様もお疲れなんですから。わがままを言ってはダメよ」

 

「や~だ~っ!ごしゅじんさまとあそぶの~!ね、いいでしょごしゅじんさま~」

 

璃々ちゃんは服の袖を引っ張っておねだりして来た。

 

「こら璃々!いい加減にしないとお母さん怒るわよ?」

 

「ふぇ……さって、さいきんごしゅじんさまとあそんでないから……だから」

 

紫苑に怒られて涙目になる璃々ちゃん。

 

「まあまあ、紫苑。よし、それじゃ今日は一緒に寝ようか」

 

璃々ちゃんの目の前に屈んで頭を撫でながら微笑む。

 

「うん!璃々、ごしゅじんさまと一緒にねるー!」

 

「おっと!ははは。そうかそうか」

 

「もう……申し訳ございませんご主人様。璃々のわがままに」

 

「別にいいんだよ。最近政務が忙しくて遊んであげられなかったのも事実なんだし。偶には璃々ちゃんのわがままを聞いてあげないとね」

 

「ご主人様は璃々を甘やかしすぎですよ」

 

「そんな事無いさ。ねー璃々ちゃん」

 

「ね~♪」

 

「もう……」

 

呆れた声を出す紫苑だったけど何処か微笑んでいるようにも見えた。

 

「それじゃ、着替えを持ってくるから待っててね」

 

「ご主人様。着替えならこちらにありますわ」

 

そう言うと男物の寝間着を差し出す紫苑。

 

「なんでここに男物が?」

 

「ふふふ。嫌ですわ。そんなこと聞かなくてもおわかりでしょ?」

 

「~~~っ!!は、ははは……あ、ありがたく使わせてもらうよ」

 

紫苑の笑顔に何故か背筋が寒くなった。

 

「もう、こんな事だったら。今日、お風呂の日にしなければ良かったわ」

 

あ、あの紫苑さん?とても危ない発言をされていますよ?

 

「おかあさん!璃々もきがえる!」

 

「はいはい。それじゃ着替えましょうね」

 

テキパキと璃々を着替えさせる紫苑。流石、慣れたものだな。

 

「はい。これでいいわよ」

 

「おかあさんありがとう!」

 

「どういたしまして。あの、ご主人様」

 

「ん?どうかした?」

 

「着替えたいのですが」

 

「ああ。いいよ」

 

「ふふっ♪」

 

「ん?なに?」

 

「ご主人様はわたくしの着替える姿をご所望のようですね」

 

「っ!ご、ごめん!外で待ってるから!」

 

「あらあら。別に良いのですよ?今更恥ずかしがらなくても」

 

紫苑はそう言うと行き成り目の前で着替え始めてしまった。

 

「わー!わー!」

 

「ふふふっ」

 

慌てて後ろを向く俺を紫苑はくすくすと笑ってみていた。

 

(しゅる、しゅる)

 

うぅ……服を脱ぐ音がいやに艶めかしい……

 

「ご主人様?」

 

「はいっ!?」

 

「そこで立っているのもなんですから。先に璃々と寝台に行っていてください」

 

「そ、そうだな!り、璃々ちゃん!行こうか」

 

「はーい!それじゃおかあさん、早くきてね!」

 

「わかったわ」

 

そして、俺と璃々ちゃんは先にベットへと向かった。

 

「ねえねえ。ごしゅじんさま」

 

「ん?どうした?」

 

「なにかお話して」

 

「話か……」

 

璃々ちゃんに聞かせられるような話……あっ。昔話とかいいかもな。

 

「それじゃ、俺の国の昔話を聞かせてあげようか」

 

「ごしゅじんさまのむかしばなし?ききたい!璃々、そのお話ききたい!」

 

「よし。それじゃ布団に入ってお話してあげるね」

 

「はーい!」

 

「あらあら。何をそんなに喜んでいるのかしら?」

 

着替え終わった紫苑が部屋入ってくると璃々ちゃんの嬉しそうな声を聞いて聞いてきた。

 

「あのね!ごしゅじんさまがお話してくれるの!」

 

「そう。それは良かったわね」

 

紫苑は微笑みながらベットの淵に腰掛けた。

 

「ごしゅじんさま!どんなお話なの?」

 

「それじゃ、桃太郎なんてどうかな?」

 

「ももたろう?」

 

「そう。桃から生まれて鬼を退治するお話だよ」

 

「それがいい!」

 

「よし。それじゃ、桃太郎の始まり始まる」

 

「わーい!」

 

喜ぶ璃々ちゃんに俺は話し始めた。

 

「昔々、あるところに。仲の良いおじいさんとおばあさんが居ました」

 

「おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯をしに行きました」

 

………………

 

…………

 

……

 

昔話を始めて数分。璃々ちゃんの瞼が落ちてきていた。

 

「もう、おねむかな?」

 

「やー。まだ……おはなし……きく、の」

 

璃々ちゃんに話しかけると少しではあったが反応があった。

 

「璃々、また明日お話してもらいましょ」

 

「今ききたいの……ごしゅじん、さま……おねが、い」

 

紫苑の提案に首を振って否定する璃々ちゃん。

 

「よし。それじゃ話と続きだ」

 

そして、俺はまた話し出した。

 

………………

 

…………

 

……

 

「こうして、おじいさんとおばあさんは桃太郎と仲良く暮らしましたとさ。めでたしめでたし」

 

「くー、くー」

 

「ははっ。寝ちゃったか」

 

「ええ。鬼退治の辺りまでは起きていたのですがそこが限界だったようで」

 

「そっか」

 

「ふふっ。それにしても天の世界には面白い話があるのですね。桃から男の子が生まれてくるなんて」

 

「まあ、昔話と言っても童話。作り話だからね」

 

璃々ちゃんを挟み紫苑と話す。

 

「う……ん~」

 

「おっと、少し声が大きかったかな」

 

「そうですね。それにしても、可愛らしい寝顔ですわ」

 

「ああ。この寝顔を見てるだけで疲れが無くなるよ」

 

璃々ちゃんの天使の様な寝顔に俺は心癒されていた。

 

「それにしてもどんな夢を見てるのかな」

 

「きっと楽しい夢ですわ。でなければこんな良い寝顔なわけがありません」

 

「そうだね。それじゃ俺達も寝ようか紫苑」

 

「はい。ふふっ。これではまるで家族の様ですわね」

 

「ん?ははっ。確かにね」

 

璃々ちゃんを挟み川の字でベットに横になる俺と紫苑。

 

「お休みなさいませ。ご主人様」

 

「ああ、お休み。紫苑……ちゅ」

 

「あっ」

 

俺は不意をついて紫苑の唇に軽くキスをした。

 

「お休みの挨拶だよ」

 

「もう、ご主人様ったら」

 

紫苑は少し頬を赤くして恥ずかしそうにしていた。

 

そして、俺達は眠りについた。

 

《璃々視点》

 

『昔々あるところに』

 

あ、あれ?ここどこ?まっくらでなにもみえないよ。

 

『仲の良い夫婦が居ました』

 

この声、どこからきこえてくるのかな?

 

『男は山へ芝刈りに、女は川へ洗濯をしに行きました』

 

おかあさんどこ?ごしゅじんさまー。

 

『女が川で洗濯していると大きな桃がどんぶらこー、どんぶらこーと流れてきました』

 

『あらあら。なんて大きな桃でしょう。家に持ち帰って食べる事にしましょう』

 

わわっ!ゆれる~。おかあさんたすけて~

 

『おおっおおっ!凄い立派な桃だな』

 

『ええ。ですから二人で食べようと思う持ち帰ってきました』

 

『よし。では早速切ってみよう』

 

(さくっ)

 

「うぅ。まぶしいよ」

 

「ん?」

 

「あらあら」

 

「え?ごしゅじんさまにおかあさん?」

 

「あらあら。わたくしあなたのお母さんなの?」

 

「ご、ご主人様って俺のことか?」

 

「あれ?あれ?違うの?」

 

う~ん。なんだかいつものおかあさんとちがうき気がするけどちがわない気もする。

 

「あなたのお名前は?」

 

「璃々はね。璃々っていうの!」

 

「あらあら。可愛らしい名前ね。わたくしの名前は紫苑。よろしくね璃々」

 

「俺は一刀。よろしくね璃々ちゃん」

 

あ。やっぱりいつものおかあさんとごしゅじんさまだ!

 

「うん!よろしくおねがいします!」

 

「あらあら。とても礼儀がいい子ね。ねえ、あなた」

 

「ああ。わかってるよ紫苑。ねえ璃々ちゃん」

 

「?」

 

「璃々ちゃんは今日から俺と紫苑の子供になるけどいいかな?」

 

「……うん!」

 

璃々はごしゅじんさまのことばに頷いた。

 

「ふふふっ。これからよろしくね璃々。わたくしの事はお母さんと呼んでいいのよ」

 

「俺はお父さんかな」

 

「おかあさんにおとうさん……~~っ!!おかあさんっ!」

 

「あらあら。甘えん坊さんね」

 

「えへへ♪おかあさん!」

 

「はいはい。なんですか」

 

「呼んでみただけ!」

 

「あらあら」

 

おかあさんはうれしそうに微笑んでくれました。

 

「えっと……お、おとうさん」

 

「ん?なんだ璃々ちゃん」

 

「えへへ……おとうさん!」

 

「おっと!今度こっちか!よしよし」

 

ごしゅじんさまのおとうさんは笑いながら璃々の頭をやさしくなでてくれました。

 

『こうして、桃から生まれた子は璃々と名づけられ家族三人での暮らしが始まりました』

 

『それから数年たったある日』

 

わわっ!急に暗くなったと思ったら明るく……あ、あれ?

 

いつの間にか私の目線がお母さんと同じ目線になっていた。

 

「璃々。ごはんよ」

 

「あ、はーい!何か手伝う事ある。お母さん?」

 

「大丈夫よ。あなたは座って待っていなさい」

 

「はーい!」

 

「今帰ったぞ」

 

「お父さん!お帰りなさい!」

 

「おっと!璃々は大きくなっても甘えん坊だな」

 

「えへへ♪だって、大好きなんだもん!」

 

「あらあら。あなた?まさか、娘にまで手を出してるわけじゃないですよね?」

 

「当たり前だろ!?だ、だからその包丁をこっちに向けないでくれ!」

 

「ふふふっ。璃々?それじゃお父さんが動けないから離れて座っていなさい」

 

「は~い!それじゃ、早く来てねお父さん!」

 

私はお父さんから離れて囲炉裏の前に座った。

 

「はい。出来たわよ」

 

「おおっ!今日も美味しそうだ」

 

「ダメだよお父さん!ちゃんと頂きますしないと!」

 

「すまんすまん。美味しそうだったからつい、な」

 

私に怒られて苦笑いを浮かべるお父さん。

 

「それじゃ、頂きます」

 

「「頂きます」」

 

「そう言えば」

 

お父さんとお母さん、三人で夜ご飯を食べていると、急にお父さんが話し出してきました。

 

「どうしたのあなた?」

 

「街で聞いた話なんだが、なんでも鬼が出て若い女子を連れ去っているそうだ」

 

「あらあら。大変ね。私たちも気をつけないとね」

 

「私たちも?」

 

「あらあら、あなた?何か言いたそうな目ですわね」

 

「っ!い、いやなんでもないぞ!そうだな!気をつけるんだぞ二人とも!二人とも可愛いんだから!」

 

「あらあらふふふ♪」

 

「……」

 

「璃々?どうしたんだ?」

 

「え?な、なにお父さん」

 

「いや。ぼーっとしてるから」

 

「……お父さん、お母さん」

 

「ん?どうした」

 

「私……鬼退治に行く!」

 

「な、何言い出すんだ行き成り!」

 

「っ!」

 

お父さんの怒鳴り声に思わず身を竦めてしまった。

 

「そんなこと出来るわけが無いだろ!危険すぎる!」

 

「でも、見過ごせないよ!それにお母さんに教えてもらって弓も覚えたし!」

 

「し、紫苑!?」

 

「あらあら、お父さんには内緒って言ったのに」

 

お母さんは頬に手を当てて少し困った顔をしていた。

 

「お願いお父さん!」

 

「……っ!先に寝る!」

 

「あ、お父さん!」

 

お父さんは立ち上がると扉を開けて寝室へと行ってしまった。

 

「……」

 

「お父さんの気持ちもわかってあげなさい。あなたの事を大事に思っているからなのよ」

 

「うん。それはわかってるけど……」

 

「大丈夫。お父さんも璃々の気持ちをわかっているわ。だから今はそっとしておいてあげて」

 

「……うん」

 

微笑むお母さんに私は頷く事しか出来なかった。

 

「ん~~~っ!いい朝!」

 

翌朝、外に出て伸びをして体を解す。

 

「璃々」

 

「あ……お父さん、おはようございます」

 

「おはよう。ちょっとこっちに来なさい」

 

「は、はい」

 

お父さんに呼ばれて家へと戻る。

 

なんだろ。お父さん凄く怖い顔してた……

 

「其処に座りなさい」

 

「はい」

 

お父さんに言われて目の前に座る。その横ではお母さんも真剣な顔をしていた。

 

「璃々。気持ちは変わってないんだな」

 

「……うん。私、鬼を退治しに行きたい。困っている人が居るんだから助けてあげないと!」

 

「……はぁ。わかった。俺の負けだ。流石は紫苑の娘だよ」

 

お父さんは溜め息を一つ吐くと苦笑いを浮かべていた。

 

「お父さん……大好き!」

 

「おっと!でも、これだけは約束だ。必ず無事に戻ってきてくれ。璃々は大事な一人娘なんだからな」

 

そう言うとさっきまで険しかったお父さんの顔はとても優しい顔をして私の頭を撫でてくれました。

 

「うん!うん!約束する!」

 

「よかったわね璃々」

 

「お母さんもありがとう!」

 

「ふふふっ。それじゃ、あなたが無事に戻ってこれるようにこれを渡しておくわ」

 

「こ、これってお母さんの颶鵬。くれるの?」

 

「いいえ。これは貸すだけよ。だから無事に戻ってきて返して頂戴ね」

 

お母さんから颶鵬を受け取る。

 

「それと、はいこれ」

 

「?何これ?」

 

「袋の中にキビ団子を入れておいたわ。お腹が空いたら食べて頂戴ね」

 

「よし。それじゃ俺からはこれを渡そう」

 

お父さんはそう言うと一着の服を取り出してきた。

 

「本当は璃々が誕生日の時に渡そうと思ったんだけどな」

 

「わー!かわいい!ありがとうお父さん!」

 

「あらあら。良かったわね璃々……あなた?わたくしには無いのかしら?」

 

「そ、そのうちな」

 

「ふふふっ。楽しみだわ」

 

「お父さん!着替えてみてもいいかな!」

 

「ああ」

 

私はお父さんから貰った服を抱きしめて、お父さん達が見えないところで着替え始めた。

 

「お父さん……」

 

首だけを出してお父さんに声を掛けた。

 

「ん?着替え終わったのか?」

 

「うん……ど、どうかな?」

 

おずおずとお父さんとお母さんの前に出る。

 

「可愛いよ。昔の紫苑みたいだ。可愛いよ」

 

「あらあらあなた?褒めても何も出ませんよ。でもホント可愛いわね」

 

「えへへ♪」

 

お父さんとお母さんに褒められて照れる私。

 

「璃々。鬼は鬼ヶ島と言う島で暮らしている。まずは海を目指しなさい」

 

「はい。お父さん!」

 

「気をつけるのよ。体には気をつけてね」

 

「うん。きっと無事に戻ってくるからねお母さん。それじゃ、行って来ます!」

 

「行ってらっしゃい」

 

「無事に帰ってくるんだよ!」

 

「は~~っ!」

 

見送るお父さんとお母さんに元気良く手を振った。

 

そして、お母さんから借りた颶鵬と袋に一杯のキビ団子を持って旅立ちました。

 

「まずは、海を目指さないと。船とかの心配は着いてから考えればいいよね」

 

お父さんに言われた通りに海を目指す。

 

「鬼ってどんな姿してるのかな?」

 

歩きながら考えてみる。

 

ん~。やっぱり、恐れられてるって事は怖い顔してるんだろうな。

 

それで太刀打ちできないって事はきっと強くて体も大きいのかな?

 

「うぅ。想像しただけで怖そうだよ……(ぶんぶん!)大丈夫!私にはお母さんから借りた得物があるんだから!」

 

弱気になりそうになり首を振ってその考えを頭から追いやった。

 

「よし!がんばるぞー!おーっ!」

 

「もし、そこのものよ」

 

「え?」

 

拳を振り上げて気合を入れたときだった。何処からとも無く声が聞こえてきた。

 

「こちらだ」

 

「わっ!わんちゃんだ」

 

下を見ると黒くて綺麗な毛並みのわんちゃんが話しかけてきました。

 

「どうしたのわんちゃん」

 

「申し訳ない。お腹が空いて動けないのだ。あなたの腰から下げている袋から良い匂いがする。出きれば分けていただけないだろうか」

 

「え。でもこれはお母さんが鬼退治に行く私にってくれた奴だから……」

 

「そうでしたか。では、無理に頂くわけにも行きませんね」

 

「ごめんね……あっ!そうだ!」

 

「なにか?」

 

「それじゃ、私のお願い聞いてくれる?」

 

「お願い、ですか?」

 

「うん!お母さんが作ってくれたキビ団子を一個あげるか一緒に鬼退治に着いてきてくれるかな」

 

「お安い御用です。必ずやお役に立ちましょう」

 

「それじゃ……はい。どうぞ!」

 

わんちゃんにキビ団子を一つ上げた。

 

「ふむ……これは中々……美味ですね」

 

「でしょ!お母さん料理上手なんだよ!あ、わんちゃんのお名前はなんていうの?私は璃々っていうの」

 

「我が名は愛紗。璃々殿よ。共に鬼を退治しましょう!」

 

こうしてわんちゃんの愛紗さんが仲間になりました。

 

「ところで愛紗さんはなんであんな所で倒れていたの?」

 

「お恥ずかしながら路銀を落としてしまい。お腹も空き、途方に暮れていました」

 

「大変だったんだね」

 

「本当にかたじけない。このご恩、必ずや鬼退治でお返しいたします!」

 

「うん。頼りにしてるね!」

 

「まずはどちらへ向われるのですか?」

 

「うんとね。鬼ヶ島は海の向こうにあるらしいんだ。だからまずは海を目指しているの」

 

「そうでしたか……おや?」

 

「ん?どうかしたの?」

 

「あそこに猿が……」

 

「お猿さん?……あ、本当だ」

 

愛紗さんが言ったように私たちが進む先にお猿さんが居ました。

 

「は、はわわ」

 

「どうしたのお猿さん。何か困ってるの?」

 

「はわわっ!だ、誰でしゅか!」

 

「私は璃々!それでこっちのわんちゃんが」

 

「愛紗だ」

 

「それでどうしたの?」

 

怯えるお猿さんに笑顔で答える。

 

「そ、その……道に迷ってお腹が空いてしまって」

 

(くぅ~)

 

お腹を押さえるお猿さんから可愛い音が聞こえてきた。

 

「はわわ。恥ずかしいです」

 

「主よ。この者にもキビ団子を分けてはあげられないであろうか」

 

「え?う~ん……」

 

「はわわ……」

 

「うん!それじゃお願い聞いてくれたらあげるよ」

 

「お願いですか?」

 

「私たち、今から鬼ヶ島に鬼を退治しに行くの。お猿さんも一緒に力を合わせてくれるならこのキビ団子をあげるよ」

 

「そ、そういうことでしたら、私の知恵をお貸しします!一緒に鬼退治にいかせてくだじゃい!」

 

「うん。よろしくねお猿さん。私は璃々。それでわんちゃんが」

 

「我が名は愛紗だ。ともに鬼を退治しようではないか」

 

「私のことは朱里とおよび下さい!」

 

「うん!朱里さん、これからよろしくお願いします」

 

「こちらこそ。足手まといにならないようにがんばります」

 

こうしてお猿さんの朱里さんが仲間になりました。

 

「う~ん。でしたらやはり小船を借りて鬼ヶ島に向かったほうが良いでしょうね」

 

「私もそれに同意見です」

 

「う~ん。でも、お金持ってないんだよね。貸してくれるかな?」

 

「そ、そうですね……流石に難しいですね」

 

「「「う~ん」」」

 

「はーはっはっはっ!お困りのようだな!」

 

その時でした。行きなり笑い声が聞こえてきました。

 

「誰だ!姿を見せろ!」

 

「私なら先ほどからここにいるぞ!」

 

「なにっ!」

 

「あそこです!璃々さん」

 

「わわっ!あんな高いところに!」

 

「とうっ!」

 

(すたっ)

 

「あんな高いところから飛び降りた!」

 

「ふっ……私には造作も無いこと!この雉にはな!」

 

「……雉といいながらなぜ蝶の仮面をしているのだ」

 

「細かいことを言うな。犬よ。それではいい男にめぐり合えぬぞ」

 

「煩い!それより何のようだ!まさか我らの主である璃々の邪魔をしに来たのか!」

 

「はわわっ!お、鬼さんの刺客でしゅか!?」

 

「え!そ、そうなの!?そ、それなら!」

 

私は慌ててお母さんから借りた颶鵬を構えた。

 

「そうせぐな。船が無くて困っているのだろ?」

 

「っ!ど、どうしてそれを!」

 

「先ほどそんな話をしていたではないか。そこで提案があるのだが……乗ってみるかな?」

 

「危険です璃々!罠かもしれません!」

 

「で、でも。このままじゃ鬼ヶ島にいけないし……」

 

「ですが!」

 

「なに。三人にだけ危険なことをさせるつもりはない。一つ願いがあるのだが……」

 

「なんでしょうか?」

 

「その腰にぶら下げているキビ団子を一つ分けてくれ。ここ一週間何も口に入れていないの、だ……」

 

(バタリッ)

 

「「「……」」」

 

「えっ……えーーーーっ!!!だ、大丈夫ですか雉さん!」

 

行き成り蝶々の仮面を掛けた雉さんはフラリと揺れてそのまま倒れてしまいました。

 

「かたじけない。空腹で目眩がしただけだ。それで私の話に乗ってくれるのかな?」

 

「乗ります!乗りますから!このキビ団子を食べてください!」

 

「ありがたい……はむっ!もぐもぐ……これは……中々の美味」

 

「はい!お母さんの手作りですから!あ、私は璃々です」

 

「そうか……いや。助かった。私の名前はせ……ごほん。星華鳥とでも読んでもらう」

 

「雉なのに蝶なんですね」

 

「字が違うぞ。私は鳥なのだから『蝶』ではなく『鳥』だ。そこを間違えてもらっては困る」

 

「は、はぁ」

 

なんだか朱里さんは曖昧な返事をしていました。

 

「それで良い案とはなんだ」

 

「そうせぐな。まずはこれを犬と猿に飲んで貰おう」

 

「それはなんですか?」

 

星華鳥さんは羽の中から一本の徳利を取り出しました。

 

「これは人化鳥獣酒と言う名でなんと!動物が人間になれるというすばらしいお酒なのだ!」

 

「そんな胡散臭いもの飲めるか!ガルルッ!」

 

「ま、まあまあ愛紗さん落ち着いて」

 

毛を逆立てて威嚇すら愛紗さんを宥める。

 

「ふむ。信用できないと?」

 

「出来るか!ならお前が最初に呑んで見れば良いだろ星華鳥よ!」

 

「ふむ……それも一理あるな。どれ……ごくん」

 

「「「……」」」

 

「何も起きないではないか。やはり我々を騙そうと!」

 

「はわわっ!ま、待ってください!星華鳥さんの体が!」

 

「わーっ!光りだした」

 

「おおっ!これはっ!!」

 

星華鳥さんは光りに包まれて見えなくなってしまった。

 

「うっ!」

 

「はわわっ!」

 

「わっ!まぶしい!」

 

目も明けていられなくくらいまばゆい光りに包まれた。

 

「うぅ……収まった?」

 

「そのようですね……星華鳥はどこに?」

 

「はわわっ!だ、だれでしゅか!?」

 

「え?」

 

いつの間にか目の前に白い着物を着た女の人が立っていました。あれ?でもこの仮面……

 

「もしかして星華鳥さんですか?」

 

「左様。我が名は星華鳥!悪を懲らしめ弱きものを助ける正義の使者!」

 

「ほ、本当に人間なった……だと!?」

 

「はわわっ!すごいでしゅ!」

 

「さぁ。おぬしらも呑むのだ!」

 

「な、そんな無理やり流し込むなっ!……ごくん」

 

「はわわっ!……ごくん」

 

「ふぅ。やれやれ……」

 

「わわっ!二人とも光出した!」

 

暫くすると愛紗さんと朱里さんも輝きだした。

 

「うっ!」

 

二人分の明るさにまたも目を閉じてしまった。

 

「おおっ!人間になっているぞ!」

 

「はわわっ!すごいでしゅ!」

 

「わ~!愛紗さんの髪の毛。艶々ですね。綺麗……」

 

「そ、そんな褒めるな。恥ずかしいではないか」

 

「はぅ~。人間になれましたが目線が余り変わらないです」

 

朱里さんはなんだか少し残念そうにしていました。

 

「それにしてもそのお酒凄いね……私が飲んだらどうなるのかな?」

 

そう思い私は徳利を手に取り呑んでみることにした。

 

「なっ!お止めくだされ!人間である璃々が呑んだらどうなるか分からないのですぞ!」

 

「ごくん……え?」

 

「「「……あっ」」」

 

「え、えーーーっ!?私どうなっちゃうの!?わわっ!光りだしちゃったよ!」

 

慌てる私に容赦なく光りは増していった。

 

「わーーーーっ!!」

 

………………

 

…………

 

……

 

「うっ……」

 

「大丈夫ですか!璃々」

 

「う、うん璃々はだじょうぶ……あれ?」

 

「はわわーっ!り、璃々さんの体がっ!」

 

「なんと……」

 

あ、あれ?みんなのめせんが璃々よりも上に……でも、朱里さんとはおなじめせん……あれ?

 

「わーーっ!璃々、子供になっちゃってる!」

 

「お、おい!元に戻らないのか!?」

 

「う、うむ……」

 

「どうなのだ!」

 

「いやそれがな。あの一本が最後だったのだ」

 

「最後?ま、まさか」

 

「ああ。もう無い。璃々が全て呑んでしまった」

 

「そんな……では我々はこれかだどうすれば……」

 

「そんなの決まってるよ!鬼さんをたいじにいかないと!」

 

「で、ですが璃々がこの体では」

 

「だいじょうぶ!璃々はだれにもまけないんだから!それで星華鳥さん、このあとはどうするの?」

 

「あ、ああ……まずは浜辺についてから説明しょう」

 

「はーい!それじゃ海に向かってしゅっぱーつ!」

 

「はわわ……大丈夫なんでしょうか」

 

「わからん。とにかく行って見るしかあるまい。それにもしかしたら時が経てば元に戻るやもしれん」

 

「そうですね」

 

「みんなーっ!早くしないとおいてっちゃうよ!」

 

「お待ちください!一人では危険です璃々!」

 

「~♪」

 

「あんなにはしゃいでおられるとは……璃々もまんざらではないのではないか?」

 

「そ、そうなんでしょうか?」

 

えへへ♪このすがたでおうちにもどったらお母さんとお父さんビックリするかな?

 

璃々はまたお父さんに肩車してもらいたいな♪

 

そんなことを思いながら璃々は海をめざしました。

 

《ナレーション》

 

「鬼さん鬼さん、鬼たいじ~♪」

 

璃々は腕を元気良く振り歌を歌ながら歩いていた。

 

「り、璃々よ。その歌は何なのだ?」

 

「うんとね。璃々がつくったお歌!」

 

「そ、そうか……」

 

犬の愛紗は楽しそうに歌う璃々を見て苦笑いを浮かべていた。

 

「鬼さんたいじで~みんな~しあわせ~♪」

 

「あはは。璃々ちゃん楽しそうですね」

 

猿の朱里は楽しそうに歌う璃々を微笑みながら見ていた。

 

「いや。今から鬼を退治しに行くのだから少しは緊張感を持ったほうが良いと思うのだが」

 

「まあ固いことを言うな犬よ。璃々はあれくらいが丁度良いのだ」

 

「……その仮面は何とかならんのか鳥よ。なんというか……それを見ているとイライラしてくるのだが」

 

「なんと!これは私の大事なものだ!これが無ければ私では無くなってしまうではないか!」

 

「わ、わかった……だからその顔を私に近づけないでくれ」

 

愛紗は鳥の星華鳥の顔を押して遠ざけた。

 

「この仮面の良さが分からぬとは!……むっ!猿よ。お前にはこの仮面の良さがわかるか!」

 

「はわわ!そ、そんなことは!」

 

「いいや!お前の目が私に語りかけている!お前にはこの仮面がふさわしい!」

 

「はわわーーーっ!しょ、しょんなのいらないでしゅよ~~~~っ!!」

 

「あーっ!まってよ猿のお姉ちゃんに鳥のお姉ちゃん!かけっこなら璃々、まけないよ~っ!」

 

「……はぁ。本当にこれで鬼を退治出来るのだろうか。お待ちください璃々!そんなに走ると転びますよ!」

 

愛紗は一人溜息を吐き、璃々たちを追いかけていった。

 

………………

 

…………

 

……

 

「わ~~~っ!おっきな水たまりだ~~~~っ!!」

 

「璃々ちゃん。これが海ですよ」

 

「すご~い!璃々、はじめてみた!猿のお姉ちゃん、なんでもしってるんだね!」

 

「えへへ。それほどでもないですよ」

 

「……朱里よ。いい加減その仮面を外したらどうだ?」

 

「はわわ……これをとると星華鳥さんが怒るんですよぉ」

 

「星華鳥よ……?星華鳥は何処に行った?」

 

「星華鳥のお姉ちゃんならあっちにいったよ?」

 

璃々は星華鳥が向かった方に指をさしていた。

 

「あ、あそこに漁師が居るみたいですね。なにやら話しているようです」

 

「……あの仮面をつけて、不審者として見られないのか?」

 

「ど、どうなんでしょうね……」

 

苦笑いを浮かべる朱里。

 

「あっ!星華鳥のお姉ちゃん戻ってきたよ!お~!星華鳥のお姉ちゃ~~~~~んっ!!」

 

璃々は大きく手を振り星華鳥に合図を送った。

 

「……あっ!星華鳥のお姉ちゃん、てをふってくれたよ!」

 

「よかったね。璃々ちゃん」

 

「うん♪」

 

「待たせたな。漁師と話をつけてきた。船を一艘貸してくれるそうだ」

 

「わーっ!すごいね。星華鳥のお姉ちゃん!」

 

「はっはっはっ!だから言ったであろう?私に任せておけと」

 

「うん!」

 

「愛紗よ。ちょっと来てくれるか」

 

「?なんだ。ここではダメなのか?」

 

「ああ。少々子供には聞かせられないのでな」

 

「はわわっ!わ、私はこどもじゃありません!」

 

「まあ、少々璃々と遊んでいてくれ」

 

「はぅ~……璃々ちゃん。お姉ちゃんとあっちで少し遊ぼうか」

 

「は~い!」

 

璃々は手を上げて嬉しそうに朱里の後を着いていった。

 

「それでなんなのだ?」

 

「うむ。まずはこれを着てもらおうか」

 

「……なんだこれは?」

 

「それを着て漁師の前で踊ってきて欲しいのだ」

 

「ああ。なるほどな。私がこれを着て踊ればいいのだな」

 

「そうだ」

 

「……な、なに!?それはどういうことだ!」

 

星華鳥の説明から数秒の沈黙の後、愛紗は驚きの声を上げた。

 

「いや。お主がこれを着て踊ることが船を貸してくれる条件なのだ」

 

「な、なぜ私なのだ!お前でも良いでは無いか!」

 

「それでは面白く、いや。国を助けるためだ」

 

「今面白いと言っただろ!面白いと!」

 

「気のせいだ。さあ、着替えて踊ってきてもらおうか」

 

「ちょ!何だその手は!こ、これ以上近づくなこの変態め!」

 

「なに。この服は少々着替えるのが大変なのでな手伝ってやろうと思ったまでだ」

 

「け、結構だ!だからこれ以上近づくな!」

 

「そう遠慮するな。さあ、さあ、さあ!」

 

「や、やめ、やめろーーーーーーっ!!」

 

「今戻ったぞ」

 

「あっ!おかえりなさい。お姉ちゃん!」

 

「あ、ああ」

 

「?愛紗お姉ちゃんどうしたの?」

 

「い、いや!なんでもないぞ!さあ、これで船も手に入ったのだ!これで鬼ヶ島へ迎えるぞ」

 

「愛紗さん……お疲れ様です」

 

「ああ。ありがとう朱里よ……」

 

朱里はおおよその見当がついたのか愛紗に労いの言葉をかけていた。

 

「それじゃおにがしまにしゅっぱーーーっ!」

 

そんな事があったとは知らず璃々は元気よく船に乗り込んだ。

 

………………

 

…………

 

……

 

「わ~~っ!おさかなさんがおよいでるよ!」

 

「うむ。塩焼きにしたら美味しそうだな。だが、メンマには勝てぬだろうがな」

 

「お空には鳥さんが飛んでるよ!」

 

「うむ。焼き鳥にしたらおいしいであろうな。だが、メンマには勝てぬだろうがな」

 

「……ほ、星華鳥よ」

 

「どうかしたか?腰振り愛紗よ」

 

「それを言うな!あんな恥ずかしいことはもうごめんだ!」

 

「?愛紗お姉ちゃんなにかあったの?」

 

「いや。なんでもないぞ!うん……なんでもないんだ……なんでも」

 

愛紗は船を漕ぎながら空を仰ぎ見て何をか耐えるようにしていた。

 

「あ、あはは……あ!見えてきましたよ!あれが多分鬼ヶ島です」

 

朱里は船の先頭に座りある島を指差していた。

 

「おお。確かに鬼のような島ですな。まさに鬼ヶ島と言う名に相応しい」

 

「わー!しまにつのがはえてるよ!すご~い!」

 

「なんと禍々しい。鬼め、この私が根絶やしにしてくれよう!」

 

星華鳥は船の上に仁王立ちをして腕を組み感心しているのか何度も頷いていた。

 

その足元の下では璃々が嬉しそうにはしゃいでいた。

 

「それでは璃々よ。船を島につけますよ」

 

「うん!」

 

愛紗は慎重に漕ぎ始めて島へと接岸した。

 

「わ~!おっきなもんだね!」

 

島へ接岸し島に下りると目の前に大きな門があった。

 

「これでは中の様子が窺えませんね。どうしましょう」

 

朱里は門を見上げて困り果てていた。

 

「星華鳥よ」

 

「無理だ」

 

「まだ何も言ってはいないではないか!」

 

「どうせ。空を飛び中の様子を探って来い言いたいのだろ?」

 

「その通りだ」

 

「だから無理だ」

 

「なぜだ!お前は鳥であろう!鳥なら空を飛ぶことくら、い……」

 

愛紗は星華鳥の腕に指を指しながら叫んでいたがあることに気がついてその語尾を弱めていった。

 

「見ての通り人の姿なのでな。飛ぶことは出来ないぞ。ちなみに犬であるお前の自慢の嗅覚も人並みになっている」

 

「な、なに!?……くんくん……な、何も匂わない」

 

愛紗は花を引くつかせて匂いを嗅いでいたが何も感じることが出来なくなっていた。

 

「こ、これでは犬としての立場が……」

 

「まあ、そう落ち込むな。まずはこの門をどう開けるかだが……璃々?」

 

門を見てどうしようかと考えていた星華鳥だったが璃々が近くに居ないことに気がついた。

 

「璃々は何処へ行った!」

 

「はわわっ!そ、そう言えば居ませんね!」

 

「な、なに!?まさか、鬼にさらわれてしまったのか!」

 

(コンコン)

 

「「「え?」」」

 

慌てる三人の耳に何かを叩く音が聞こえてきた。

 

「すいませ~ん。おにさん居ますか~?」

 

「「「……なーーーーっ!!」」」

 

なんと璃々は門の前に立ち。あろうことか門を叩いていたのだ。

 

「な、何をしているのですか璃々!」

 

「え?だれかいるかなとおもって、もんをたたいてみたの」

 

「はわわ。お、鬼がそんなことで門を開けてくれるとは思えませんが」

 

「た、確かにそうだな。人をさらうのだ。そんなことで開けてくれるはずが……」

 

(ガチャ)

 

「「「え?」」」

 

「ほ~い。ここは鬼の住む鬼ヶ島やで。なんか用事かいな」

 

「うん!おにのえらいひとにあいたいの!」

 

「こんな小さい子供が遠いところからよう着てくれはったな。ほな、案内したるわ。ついてきぃや」

 

「は~い!お姉ちゃんたちいこっ!」

 

「「「……」」」

 

璃々の無邪気な笑い顔に三人は黙ってついていくしかなかった。

 

「よく来てくれたわね。小さき勇気あるものよ。私がこの鬼ヶ島の主。華琳よ」

 

多くの鬼を従えて華琳と名乗った鬼の大将は威風堂々と椅子に座って璃々たちを見下ろしていた。

 

「こんにちは!璃々のなまえは璃々っていうの!よろしくおねがいします!」

 

「あら。礼儀の良い子ね。あなたみたいな子、嫌いじゃないわよ」

 

「えへへ。おかあさんがね。はじめてあったひとにはちゃんとあいさつしなさいっていわれてるの!」

 

「そう。良い母親ね」

 

「うん!」

 

「「「……」」」

 

嬉しそうにしている璃々の後ろで愛紗たち三人は呆気にとられていた。

 

「……星華鳥よ」

 

「……なんだ愛紗よ」

 

「……話に着いて行けないのだが」

 

「大丈夫だ。私も着いて行けていない。お前はどうだ朱里よ」

 

「はわわ。私もですぅ」

 

「それで。後ろの三人は誰なのかしら?まさか、こんな小さな子が挨拶できるのにあなた達は出来ない、なんてことはないでしょうね?」

 

「無論だ!私は犬の愛紗!訳あって璃々の目的に協力するために同行している!」

 

鬼である華琳に挑戦的に言われ愛紗は叫びながらこたえた。

 

「は、はわわ。私は朱里っていいましゅ。あぅ、噛んじゃいました」

 

「私は愛と正義の使者。人呼んで華鳥仮面!以後お見知りおきを」

 

「ふむ。それで?あなた達が私に何のようなのかしら?」

 

「くだらない用事ならこの私、赤鬼の春蘭が叩ききってくれよう!」

 

「姉者。少しは落ち着くのだ。そんな威嚇しては話せるものも離せなくなってしまうだろ」

 

「うぅ……だがな。秋蘭、ここはまず強く出たほうがいいと思うのだが……」

 

「少し黙っていてくれ姉者」

 

「うぅ~。か、華琳様~」

 

「ふふ。少し黙っていてね春蘭」

 

「は、はい……」

 

シュンとおとなしくなる赤鬼の春蘭。

 

「我が姉がすまなかったな。私は青鬼の秋蘭だ。それで、何をしにこの島へきたのだ?」

 

「うんとね。つれさった人たちをおうちにかえしてあげてほしいの」

 

「それは出来ない相談ね」

 

「どうして?」

 

「それは私が連れ去った子達が気に入っていたからよ。だからあなたの願いは聞けないわね」

 

「どうしてもダメ?」

 

「ええ。こればかりはね。ほかの事なら別に構わないわよ?」

 

「き、貴様!人を攫っておいて何を言っているのだ!」

 

華琳の発言に言葉を荒げる愛紗。

 

「少しは落ち着け。愛紗よ」

 

「しかしだな!」

 

「そうです。ここで怒りを見せては相手の思う壺です。見てください璃々ちゃんを」

 

「なに?」

 

「う~ん。う~ん」

 

璃々は何かを考えているのかしきりに唸っていた。

 

「あっ!そうだ!ねえねえ華琳お姉ちゃん!」

 

「何かしら?」

 

「それじゃ。しょうぶをしてかったら、みんなかえしてくれる?」

 

「勝負?いいわよ。あなた達が勝ったら連れ去った娘達を解放してあげるわ」

 

「ホント!?わ~い!」

 

喜ぶ璃々に華琳はにやりと笑っていた。

 

「ただし!私たちが勝ったらそこの犬を貰うわよ」

 

「わ、私だと!なぜ私がそんなっもがもがっ!」

 

「落ち着け愛紗よ。勝てばよいだけの話ではないか」

 

怒りを見せる愛紗に星華鳥は愛紗の口を押さえて宥めさせた。

 

「た、確かにそうだが……」

 

「大丈夫だ。璃々が不利な勝負を仕掛けるわけが無いであろう?」

 

「た、確かにそうだな……よし!その勝負必ず勝ってみせる!そして、攫われた人々を助け出すのだ!」

 

「ふふっ。決定ね。それで勝負の方法はどううするのかしら?」

 

「うんとね……だるまさんがころんだ!」

 

「「「「……え?」」」」

 

璃々の発言に愛紗たちだけではなく鬼達も動きを止めてしまった。

 

「ど、どうしてだるまさんが転んだなのかしら?」

 

「えっとね。璃々。こんなにいっぱいのひとたちとあそんだことがないから!」

 

「……ふっ」

 

顔をひくつかせる華琳は何かを叫ぼうとしていた。

 

「ダメ?」

 

そこで璃々は悲しそうに華琳を見つめていた。

 

「っ!い、いいわ。その勝負受けてたとうじゃない!」

 

「ホント!?わーい!わーい!」

 

「か、華琳様!?」

 

「し、仕方ないじゃない!あんな顔で言われたら拒否できないわよ」

 

こうして、鬼と桃太郎による『だるまさんが転んだ』対決が幕を開けるのだった。

 

「それじゃ璃々からいくね!」

 

「ええ。いつでもいいわよ」

 

璃々は大きな岩の前に立ち背を向けた。

 

「だ~……」

 

「ぬぉぉぉおおおおっ!!!」

 

「るまさんがころんだ!」

 

「な、なにっ!?」

 

「赤鬼の春蘭お姉ちゃん!」

 

「うぐっ!」

 

「何あの馬鹿。そんな勢いで走れば急に止まれないのは当たり前じゃない。やっぱり猪ね」

 

毒舌を吐くのは鬼の桂花だった。

 

「うぅ。華琳様。申し訳ありません」

 

「ふふ。流石は春蘭ね。見事なまでの突進だったわ」

 

「か、華琳様に褒められたぞ!」

 

「いや。どう見てもあれは馬鹿にされたのでは?」

 

「本人が喜んでいるのだ。黙っているのが大人と言うものだぞ愛紗」

 

喜ぶ春蘭を実ながら愛紗たちは哀れんでみていた。

 

「それじ、行くよ~。だ~~~る~~~まさ~~~ん~~~が~~~~……」

 

「春蘭様の仇ーーーっ!!」

 

「あ、季衣だめっ!」

 

慌てて止める流琉だったが一足遅かった。

 

「ころんだっ!」

 

「うにゃっ!」

 

(ドシンッ!)

 

「季衣お姉ちゃん!」

 

季衣は盛大に転んでしまい。璃々に見つかってしまった。

 

「うぅ~。まさか転ぶとは思わなかったな~。ごめんなさい春蘭様。仇取れませんでした」

 

「気にするな!きっと華琳様が私達の無念を晴らしてくれるだろう!」

 

「そうですよね!よ~し!がんばれーーっ!流琉~~~っ!!」

 

「もう、季衣ったら調子がいいんだから」

 

「勝負はまだまだ序盤だ。気を抜くなよ流流」

 

「はい!」

 

気合を入れる流琉だったが。

 

………………

 

…………

 

……

 

「転んだっ!」

 

「な、なんやてっ!」

 

「なのっ!」

 

「真桜お姉ちゃんと沙和お姉ちゃんが動いた!」

 

………………

 

…………

 

……

 

「さんが~~~~~こ~~~~ろんだ!」

 

「な、なに!?」

 

「ちょ!いきなりそらないで!」

 

「あー。動いてしまいましたねーー。困った困った」

 

「凪お姉ちゃんに霞お姉ちゃん!それと風お姉ちゃんも動いた!

 

こうして璃々の巧みな言葉運びに次々と居なくなる鬼たち。

 

そして勝負は進み。残す相手は一人となった。

 

「ふふ。ここまでやるとは思わなかったわよ」

 

「えへへ♪」

 

「でも、最後に勝つのは私よ」

 

場に残ったのは華琳。彼女は慎重に事を運んでいたため生き残っていたのだ。だがそのせいであまり距離は稼げていなかった。

 

「いっくよ~!だ~~……」

 

「このままでは埒が明かない、か……ここは勝負に出てみるか!」

 

そう言うと華琳は地面を蹴り駆け出し。

 

「る~まさ~~んが~~~~……」

 

「そろそろ止まったほうがいいかしらね」

 

「ころんだっ!」

 

「っ!」

 

「わーっ!華琳お姉ちゃんすごい!こんなにちかくまできてる!」

 

「ふふ。これくらい出来て当然よ。さあ、次で仕舞いよ。あなたを捕まえるわ」

 

「よ~し!璃々のとっておきつかっちゃうんだから!」

 

「とっておき?一体何をするつもり?」

 

「えへへ。見てからのお楽しみだよ。だ~」

 

璃々はそう言うと華琳に背を向けた。

 

「はったりか?いや。こんな子供がそんなことをするわけが……」

 

「る~~~~ま~~~~さ~~」

 

「考えている暇はないわね。ここは一気に勝負をかける!」

 

そして華琳は駆け出した。

 

「ん~~が~~~ころん~~」

 

「今っ!」

 

「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

 

「な、なに!まだですって!これは誘っている?いいでしょう!その誘い乗ってあげるわ」

 

一度は立ち止まった華琳だったが一向に降り向かい璃々に華琳は歩みを進めてしまった。

 

「だっ!」

 

そして華琳が動き出そうとした瞬間だった璃々は最後の言葉を言い振り向いたのだった。

 

「なっ!」

 

歩き出していた華琳はその歩みを止める事ができずに動いてしまった。

 

「わーい!璃々のかちーーーっ!」

 

「くっ!私としたことが勝機を焦ったか!」

 

両手を挙げて喜ぶ璃々の横で華琳は悔しそうに握りこぶしを握っていた。

 

「……朱里よ」

 

「は、はい。なんでしょうか」

 

「我らは必要だったのだろうか?」

 

「は、はわわっ!そ、それは……」

 

「なに。武力で事を治めるのではなく。遊びで治めたのだ。結果だれも傷つかずに済みよかったではないか」

 

「そ、それはそうなのだが……」

 

納得出来ない愛紗はただただ璃々を見ていることしか出来なかった。

 

「それじゃ次は華琳お姉ちゃんの番だよ!」

 

「……え?」

 

璃々はそう言うと華琳から離れてさっきまで鬼達が立っていたところに向かっていった。

 

「愛紗お姉ちゃんも朱里お姉ちゃんも星華鳥お姉ちゃんもはやくはやく!」

 

「な、何をしているのですか璃々」

 

「はわわ!ま、まさか……」

 

「ああ。そのまさかであろうな。愛紗よ。やっと活躍できる場面が出来たではないか」

 

「は?……え?ま、まさか。我々も『だるまさんが転んだ』をやれと!?」

 

「それ以外あるまい。さあ行くぞ。この星華鳥の実力、特と見せてやろうではないか!はーっはっはっはっ!」

 

高笑いをしながら星華鳥は璃々の下へと歩いていった。

 

「と、取り合えず行きませんか愛紗さん」

 

「そ、そうだな……」

 

苦笑いを浮かべる朱里は愛紗をつれて璃々の下へと向かって行った。

 

「華琳様ーーーっ!我らの無念をお晴らしください!」

 

「ええ。任せておきなさい!こんな子供の遊びに負ける私では無いわ!」

 

「……大人気ないですね」

 

「なに。何事にも全力でぶつかっていくのがあの者のやり方なのだろう」

 

「い、いや。しかしだな、それにしては大げさすぎでは無いか?」

 

そんなやり取りを遠くから眺めている三人であった。

 

「それじゃ行くわよ!」

 

「は~い!」

 

今度は、華琳の攻撃が始まった。

 

「だ~……」

 

「よし!」

 

「はわわっ!」

 

「ふむ。では行くとするか」

 

璃々たちは華琳が背を向けたと同時に歩き出した。

 

「るまさんがころんだ!」

 

「なっ!」

 

華琳の不意の攻撃に愛紗は止まることが出来ずに動いてしまった。

 

「ふふっ。動いたわね犬!」

 

「くっ!不覚!」

 

「……出オチか愛紗よ」

 

「で、出オチとか言うなーーーっ!!」

 

「ま、まあまあ。愛紗さん落ち着いてください」

 

「ふん。慰めはいいから名前を呼ばれた愛紗は早くそこから退きなさい」

 

「ぐっ!言われなくても!朱里よ。私の分も頑張ってくれよ!」

 

「は、はい!がんばってみましゅ!」

 

と、頑張る朱里であったが……

 

「だるま~~~さん!」

 

「はわっ!?」

 

「がころんだ!」

 

「はわわーーーっ!!」

 

「次!猿動いたわよ!」

 

華琳の巧みな言葉遣いにあえなく朱里も退場するのだった。

 

「はぅ~。ごめんなさい璃々ちゃん」

 

「も~!愛紗お姉ちゃんも朱里お姉ちゃんもはやすぎ~!」

 

「うぅ。面目ない」

 

「ごめんなさい」

 

「ふふ。この私に勝てるわけが無いのよ!」

 

「むーっ!まだ璃々と星華鳥お姉ちゃんがいるもん!」

 

腰に手を当てて威張る華琳に璃々は頬を膨らませて文句を言っていた。

 

「ふん。それも時間の問題よ。さぁ、続きを始めるわよ!」

 

そう言うと華琳は振り向き遊びを再開した。

 

「だるまさ~~~んが~~~~」

 

「ころんだ!」

 

「っ!」

 

「……なかなかやるわね」

 

振り向くが璃々も星華鳥も動いていなかった。

 

「さぁ。次ぎ行くわよ!だるまささんが~~……」

 

こうしてしばらく璃々も星華鳥も抜けずに遊びは続いた。

 

………………

 

…………

 

……

 

「だるまさんがこ~~~~~」

 

「むっ。もう少し進めるか。ならばっ!」

 

なかなか振り向かない華琳に星華鳥は勝負に出た。

 

「ろんだ!」

 

「なんと!」

 

「ふふ。掛かったわね。そら、鳥!早くそこから退きなさい」

 

「私は鳥ではない!愛と正義の使者。星か」

 

「はいはい。いいからそこから早く居なくなりなさい。春蘭」

 

「はっ!さあ。こっちに来るんだ!」

 

「な!まだ名乗っている途中ではないか!」

 

「よくわからんが。私は華琳様の命にしか従わないのだ!」

 

星華鳥は春蘭に引き摺られて広場から退場させられてしまった。

 

「さあ。あとはあなただけよ。どう?降参したら?」

 

「むっー!璃々はまだ負けてないもん!」

 

「あらそう。なら続けるわよ。だるま~~」

 

「璃々、まけないんだから!」

 

こうして大将同士の最後の一騎打ちが始まった。

 

「だ~るまさんが~~~ころんだっ!」

 

「っ!」

 

「だるまさ~~んがころんだっ!」

 

「っ!」

 

「くっ!なかなかやるじゃない。ならこれならどう!だ~るまさ~~~~んがころ~~~ん!だ!」

 

「っ!」

 

華琳の引っ掛けにも動じず璃々は着々と華琳の前へと向かっていた。

 

そして……

 

「くっ!この私としたことが……」

 

「えへへ~♪」

 

なんと璃々は等々華琳の目の前にまで来てしまっていた。

 

距離から言えば子供の歩幅で二歩ほど。この時点で華琳の勝ちは既に無くなっていた。

 

「はぁ。私の負けよ。約束通り、捕らえた娘達は解放するわ」

 

「わ~い!璃々がかった~~~♪」

 

「お見事です璃々!等々やりましたね!」

 

「凄いです璃々ちゃん!」

 

「ああ。一番最初に抜けた何処かの犬とは大違いだな」

 

「ぐっ!か、返す言葉も無い……」

 

星華鳥の言葉に愛紗は悔しそうにうな垂れた。

 

「それで?私達をどうするのかしら?」

 

いつの間にか負けた鬼達は璃々の前に集まってきていた。

 

「うんとね。みんなにごめんなさいってあやまって、もうわるいことしないならゆるしてあげる!」

 

「そ、そんなことでいいのかしら?」

 

璃々の言葉に呆気に取られる華琳。

 

「うん!おかあさんがね。わるいことしたらちゃんとごめんなさい。しなさいっていつも言ってるの。それでね、あやまるとおかあさんがゆるしてくれるの!」

 

「……わかったわ。これから攫ってきたものたちに謝り。もうこれ以上悪いことはしないわ。それとこれを受け取って頂戴」

 

そう言うと華琳は大きなつづりの箱を目の前に置いた。

 

「これはあなた達へのせめてもの詫びよ。受け取って頂戴」

 

「いいの?」

 

「ええ。貰ってくれるとうれしいわ」

 

「ありがとう。華琳お姉ちゃん!」

 

「ええ。またいつでも来なさい。次に勝つのは私たちですからね」

 

「うん!また遊んでね!」

 

璃々は大きく手を振って鬼ヶ島を離れ家へと戻っていた。

 

「ふぅ。これで終わったな」

 

「そうですね」

 

「ああ。だが、まだ大きな問題が残っているぞ」

 

そう言うと星華鳥は璃々に目をやった。

 

「ど、どうすれば戻るんでしょうね?」

 

「うむ。あの酒はなかなか手に入らないからな。それにまた呑んだことによって元に戻るとは限らんしな」

 

「とにかくここは正直に璃々のご両親に告げたほうがよいのではないだろうか?」

 

「それがいいでしょうね」

 

こうして愛紗たちはどう言い訳しようかと考えながら璃々の家へと向かうのであった。

 

………………

 

…………

 

……

 

「おかあさんただいま~~~っ!」

 

璃々の家が見えてくると璃々は大きな声を出して家へと駆け出して行った。

 

「璃々?あなた。璃々が帰ってきたわよ!」

 

「おおっ!璃々!おかえ、り?」

 

「り、璃々?」

 

「ただいま!おとうさん。おかあさん!」

 

戸を開けて璃々を出迎えた一刀と紫苑だったが、璃々の姿を見て動きを止めてしまった。

 

「り、璃々なのか?」

 

「うん!璃々だよ!」

 

「あらあら。子供に戻っちゃったわね。それに後ろに居るあの人たちは誰なのかしら?」

 

紫苑は驚きながらも後ろに居る三人に目配せをした。

 

「も、申し送れました。我が名は愛紗。訳あって人間の姿をしていますが犬です」

 

「は、はい?」

 

「はわわ。わ、わたしゅ、私は朱里といいます。えっと猿です」

 

「あらあら」

 

「そして最後に私は愛と正義のっ」

 

「彼女は星華鳥です。一応、鳥です」

 

「むっ!愛紗よ。私の見せ場を!」

 

「時間が掛かりそうだったのでな。申し訳ない。実はこやつの奇妙な酒を飲んでしまってご息女である璃々を子供の姿にしてしまったのだ」

 

「あらあら。そうだったの?」

 

「ああ。まことにすまないことをした」

 

「いいのよ。なってしまったものは仕方ないのだから。ね、あなた」

 

「よ~し!璃々!高い高いだ~~!」

 

「わ~い!おとうさんもっともっと!」

 

紫苑は一刀に話を振るといつの間にか一刀は璃々と遊んでいた。

 

「ふふ。まあ、ああいうことだから気にしないで頂戴」

 

「は、はぁ」

 

気の抜けた返事をする愛紗。

 

「ところでさきほど、犬とか猿とか言っていたと思うのだけれど」

 

「ああ。実は璃々の呑んだ酒は動物を人間にしてしまう仙酒でしてな。動物が呑むと人間になれるのです」

 

「あらあら。それであなた達はこれからどうするのかしら?なんだったらうちに居てもいいのよ?璃々も懐いているようだし」

 

「いえ。家族水入らずを邪魔するわけにはまいりません。我らはこれにてお暇させていただきます。あ、それとこれを」

 

そう言うと愛紗は大きなつづりを紫苑に渡した。

 

「これは?」

 

「鬼から頂いたものです。どうぞ」

 

「あらいいの?」

 

「はい。これは璃々が勝ち取ったものです。私達には必要の無いものです。そうですよね愛紗さん」

 

「ああ。お前もそうだろ星華鳥よ」

 

「うむ。私は皆が愛と正義に目覚めこのかめっ」

 

「では参ろうか。璃々よ。また近いうちに会いに来るぞ」

 

またも星華鳥の言葉を遮り愛紗は話し出した。

 

「うん!また遊んでね。愛紗お姉ちゃん、朱里お姉ちゃん、星華鳥お姉ちゃん!」

 

「はい!また遊びましょうね璃々ちゃん」

 

「むぅ。そろそろ私もいじけるぞ?……んんっ!璃々よまた会える日を楽しみにしているぞ。ではさらばだ!はーっはっはっはっ!」

 

「あ!待ってくださいよ星華鳥さーーん!そ、それでは私もこれで失礼しますね。ま、まってくださーーーい!」

 

朱里はお辞儀をして走っていった星華鳥を追いかけていった。

 

「まったく。最後まで騒々しい奴だ……では。私もこれにて」

 

「うん!またね愛紗お姉ちゃん!」

 

「いつでも遊びにいらっしゃ」

 

「璃々と一緒に待ってるよ」

 

璃々たち親子は愛紗に別れの挨拶をした。

 

「ええ。では!」

 

そして愛紗もまた先に駆け出した二人を追いかけて行った。

 

こうして、鬼から攫われた娘たちを救った璃々は無事に家に帰り、一刀に紫苑。三人仲良く末永く幸せに暮らしましたとさ。

 

《璃々視点》

 

「……り」

 

だれかが璃々をよんでる。

 

「も……あ…………よ………………い」

 

璃々のだいすきなやさしい声……

 

「ほ…………りちゃん」

 

この声もだいすきなひとの声……

 

そっかもうあさなんだね。おきないと……

 

「ん……」

 

「やっと起きたわね。おはよう璃々」

 

めをあけるとめのまえにわらったおかあさんのかんがあった。

 

「おかあさん。おはよう」

 

「おはよう璃々ちゃん。よく眠れたかな?」

 

それからごしゅじんさまも璃々のかおをみてわらってた。

 

「うん。あのね。璃々、すごくたのしいゆめみたの」

 

「へー。どんな夢だったんだい?」

 

「う~んとね?う~んと……わすれちゃった」

 

「あらあら」

 

「そっか。それは残念だったね」

 

「また見れるかな?」

 

「きっとまた見れるよ。ほら!今日もいい天気だよ。顔を洗って朝餉を食べに行こうか」

 

「うん!たべにいくー!」

 

「あらあら。ダメよ。先に顔を洗ってからね」

 

おかあさんはわらいながら璃々の手をとってかおをあらいにいきました。

 

「は~い♪おとうさんはここでまっててね!ちゅ」

 

「え?」

 

璃々はごしゅじんさまのほっぺにくちづけをしておかあさんとかおをあらいにいきました。

 

《END...》

葉月「な、なんとか恋姫祭りに間に合ったーーーーーっ!!」

 

紫苑「あらあら。ギリギリですわね」

 

葉月「もう。仕事が忙しくて書く暇も無かったんですよ。だから、かなり話がぐちゃぐちゃになっちゃってます。ホントすいません」

 

紫苑「あら?でも確か誰かのリクエストではなかったかしら?」

 

葉月「はい。大体、一ヶ月前くらいにリクエスト頂いたんですけど。中々これだ!っていうのが無くて」

 

紫苑「それで夢オチですか」

 

葉月「はい。ホントすいません」

 

紫苑「まあ。わたくしが言いたいことはひとつだけです」

 

葉月「なんですか?」

 

紫苑「なぜ、わたくしとご主人様との愛の営みが無いのですか?」

 

葉月「えっと……それはですね」

 

紫苑「ふふふ。正直に答えていただきますわよ。でなければどうなるか……おわかりですわね?」

 

葉月「ひ、ひえ~~っ!そ、それはですね!今回は璃々が主役であってですね!そう言うのは無しの方向で考えたわけで!」

 

紫苑「あらそうでしたの。わたくしったらてっきり、年増はお呼びで無いのかと思いましたは」

 

葉月「そ、そんなわけ無いじゃないですか!紫苑はまだまだお若いですよ!よ!美少女!」

 

紫苑「あらあら。そう言われますと照れますわね。あら?もう終わりの時間ですか?」

 

葉月「た、助かった」

 

紫苑「何か言いまして?」

 

葉月「イイエナニモ!で、では皆さん。またお会いしましょう!」

 

紫苑「ごきげんよう」


 
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