No.282530

郷愁・強襲・共修中!其之参(第2回恋姫同人祭り参加作品)

投稿64作品目になりました。
タイトルの通り、前回に引き続いて恋姫同人祭りに参加させていただきました。
時間軸的には萌将伝の美以達の帰郷話『里帰りなのにゃ!の巻』の後日談。
続き物ですので、そこんとこ宜しく。

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2011-08-23 03:02:12 投稿 / 全13ページ    総閲覧数:7673   閲覧ユーザー数:6685

 

 

歴史とは、一つの即興劇である。

 

 

脚本はなく、各々が最善とする行為が即ち演技。

 

 

喜劇とするも悲劇とするも、役者次第。

 

 

誰もが役者であり、誰もが主人公足りうる。

 

 

 

 

 

――――――そう、『正史においては』。

 

 

 

 

 

 

「家族が恋しいか、一刀?」

 

あまりに唐突な質問に、驚愕を覚えざるを得なかった。

見れば隣の、後の世において神医とすら呼ばれる男は、何処か申し訳なさそうに頭を掻いて、言う。

 

「普通ならもっと遠まわしに訊くものなんだろうが、俺はそういうのは性に合わないからな、単刀直入に訊くぞ。一刀、お前は懐郷病じゃないか?」

 

「懐郷病、か……」

 

確か、ホームシックの同意語だ。

成程、今の自分を正確に表して―――

 

「いや、少し違うな……」

 

「……何?」

 

「天の事を、俺の故郷の事を考えてるって点では、確かに当たってる。……でもな、今の俺は『帰りたい』って思ってるわけじゃないんだ。それが、むしろ気持ち悪くてさ」

 

「……ちょっと待ってくれ。どういう意味だ?」

 

予想外の返答に、華佗は若干の混乱の体を示す。

紡がれる言葉も、何処か矛盾しているような。

 

「『帰りたい』と思ってない事が気持ち悪い?一刀、つまりお前は『帰りたい』と思っていないのか?」

 

「……あぁ、突然この大陸に放り込まれて、これだけ長い時間を過ごして尚、ね」

 

もう、何度目の苦笑だろうか?

そして、一刀は語りだす。

その胸の内。

そして、

 

 

 

―――気付いた、自分の中に存在する違和感の正体を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

一人、歩いていた。

 

「……誰にも、言わない積もりだったんだけどなぁ」

 

一人、呟いていた。

 

「何で、話しちまったんだろう……?」

 

一人、悩んでいた。

 

「話しても、どうしようもない事なのに……」

 

一人、抱えていた。

 

「あ、あの、一刀様っ!?」

 

「?……あぁ、凪。それに、沙和と真桜も」

 

「こんにちはなのっ、隊長!!」

 

「なんや、真昼間からしけた面しとんなぁ、隊長?」

 

「ははっ、そうか?」

 

笑い飛ばすように、しかし実際には弱々しい笑顔。

何処か力ないその表情は、姦しい三羽烏でさえも思わず口を噤んでしまうほどで、

 

(……アカン、前より酷なってない?)

 

(ここまでとは予想以上なの。早い所、連れ出すの)

 

「あ、あのですねっ、隊長?今から、ですね、その、我々と、街へ行きませんか?」

 

((凪(ちゃん)、緊張しすぎ(や/なの)……))

 

「ん?今日って、午後から警邏だったっけ?」

 

「はぁ……凪も凪なら、隊長も隊長やわ」

 

「今日、沙和達はお休み貰ってるの!!で、一緒に街に行こうって言ってるの!!これだけ言えば解るの!?」

 

「……あぁ、そういう事か」

 

流石の彼も、そこまでは鈍くない。

 

「ん。行こうか、デート」

 

「あ、は、はいっ!!宜しくお願いします!!」

 

「たははっ、凪ぃ……ホンマに可愛ぇなぁ」

 

「やったの~!!今日は阿蘇阿蘇に載ってたお店梯子してぱーっと散財しちゃうの~!!」

 

了承した途端、我先にと進む三人を一歩退いた形で、ふと、進みかけた足を止める。

城壁で華佗に、何故か胸の内を打ち明けてからは若干、曇天模様は晴れた気もする。

やはりカウンセリングというか、話す事の影響は大きなものであるらしい。

少し、ほんの少し、ずっと引き摺っていた荷物が磨り減ったような、そんな程度でこそあったけれども。

 

「……なぁ、神様」

 

天を仰いで。

 

「もし、本当にいるのなら―――」

 

天を睨んで。

 

「た~いちょ~!?何やっとるん~!?」

 

「早く行くの~!!」

 

「……あぁ、今行くよ!」

 

 

 

―――――ほんの少し、俺はアンタを恨むよ。

 

 

 

天に、吐き捨てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

城壁の上、微動だにしない影が一つ。

華佗であった。

思い返すのはつい先刻。

交わした言葉に見た、一刀の真意。

そして、彼の病。

……否、今や病と呼ぶ事は叶わない。

 

「……馬鹿な。それは、あまりにも、」

 

しかし、可能性がないとは言えなかった。

否定しきる事が出来なかった。

なぜなら、それは、

 

「あまりにも、惨すぎる……」

 

「……あら、もう話は終わったの、華佗?」

 

「ど、どうでした、華佗さん?何か、御主人様の事、解りましたか?」

 

聞こえた声に振り向けば、三人の王達がこちらを窺っていた。

 

「……一体、どうしたのかしら?顔色があまり良くないようだけれど?」

 

いち早く、華琳が気付く。

彼の躊躇、困惑、そして、憤慨。

 

「……いや、自分自身の無力さに腹が立っているだけだ」

 

『?』

 

眉根を顰める。

首を傾げる。

各々の示す疑問の表情を尻目に、

 

「三人とも、一刀の故郷の、そうだな……音楽や料理を再現する事は出来るか?」

 

「音楽ねぇ……だったら、『あの娘達』に頼むのが適任でしょうし、料理だったら色々と一刀から聞いてるわよ?確か今は、華琳が『にほんしゅ』だったかしら、米から作るっていう一刀の国のお酒を再現しようとしてたわよね?」

 

「えぇ。大分近づいて来てると、本人からもお墨付きを貰えたわ。それがどうかして……あぁ、一刀に食べさせるのね?」

 

「あぁ。恐らく今一番、アイツに効く薬だろう」

 

「あ、だったら、前みたいに『ぱーてぃ』にしませんか?また中庭に机並べて、沢山お料理作って、皆で集まって」

 

「良いわね、賛成!!」

 

「アンタはお酒が飲みたいだけでしょう、雪蓮?」

 

「それじゃ、早速皆に報せて来なきゃ!!華佗さん、有難う御座いました!!」

 

言うや否や、それだけ述べて走り出す桃香。

苦笑を浮かべつつも、華琳と雪蓮もまた後に続く。

そして、

 

「…………」

 

三人の背中を見送る華佗。

その表情は何処か歪んでいるようにも見えて、

 

 

 

「一刀、お前が言うなと言うのなら俺は言わん。今のお前は俺の患者であって、患者の意思を尊重するのが医者だからな」

 

 

 

「……だがな、お前があまりに見てられなくなったその時は、俺の判断で動かさせてもらうぞ?」

 

 

 

「俺は医者だ。医者は、人を癒し、生かすものだ。お前の為と判断したなら、俺はお前の意思すら捻じ曲げる。それだけは、覚えておけよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~っ、新作の靴が出てるの~!!見に行ってくるの~!!」

 

「うわっ、絡繰夏候惇・巣駆水(すくみず)ば~じょんやんか!!防水・防塵仕様の限定生産でもう手に入らん思うてたのにぃ~♪」

 

「さ、沙和、真桜!!勝手に行動するなと……も、申し訳ありません、隊長」

 

「ははっ、いいさ。あれだけ楽しそうな顔を見ると、邪魔する方が却って野暮ってもんだろう?」

 

「はぁ、有難う御座います。……まったく、何の為に隊長を連れ出してきたと思ってるんだ」

 

「ん?何か言ったか?よく聞こえなかったんだが?」

 

本日二度目の洛陽の街並みは屋台街の喧騒ではなく、市場の賑わいで満たされていた。

三人の先導のままに、通り過ぎていく人の群れの中を、ただひたすら歩き続ける。

新たに興味を惹くものを見つける度、子供のように表情を輝かせる二人と、それを諫めるように頬を膨らませる凪。

そんないつもの光景を眺めている方が、幾分かではあるものの、確かにマシだった。

 

と、そんな時だった。

 

「―――ぉぉぉぃ!」

 

「……ん?」

 

「どうされましたか、隊長?」

 

「今、誰か呼んでなかったか?」

 

「はい?」

 

凪が首を傾げた直後、

 

「おおおおおい、一刀~!!凪~!!」

 

「……あれ、霞か?」

 

「そうみたいですね」

 

勇ましく振り回す瓢箪は間違いなく彼女のもので、それが近づく度に揺れる紫紺の外套と袴はもう間違えようがなかった。

 

「ここにおったか。散々探し回ったで」

 

「どうしたんだ?城で何かあったのか?」

 

「あ、いや、何かあったっちゃあったんやけど……用があるんはそっちの三人なんよ」

 

「はい?」「ふぇ?」「ほ?」

 

予想外だったのか、三人は何処か呆けたような表情を浮かべ、

 

「ほれ。三人とも耳貸しぃ。あんな、華琳がな―――」

 

明らかにこちらに思わせぶりな視線を送りながら頭を寄せ合う四人。

相槌を打つ三羽烏の表情が時間が経つに連れて徐々に、微かではあるものの明るくなっていっている所から、どうやら悪い企みではないらしい。

ならば、とわざとらしく背を向け耳を塞ぎ、終わりを待つことにした。

やがて、

 

「ほな、頼んだで~♪」

 

「解ったの~!!」

 

「任しとき~!!」

 

「了解しました!!」

 

三人、実に良い返答で戻っていく霞を見送った。

そして、

 

「それじゃ、た~いちょ♪」

 

「日が暮れるまでゆ~っくり、ウチ等の買い物に付き合って貰うで~♪」

 

「…………へ?」

 

両腕を完全ホールドされ、

 

「では、行きましょう」

 

「ちょ、待ってくれ、また説明なしに連行されんの!?流石にそろそろ事情を聞かせて―――のおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

 

本日、三度目の絶叫が洛陽の空に響き渡ったそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

…………一方、その頃。

 

 

 

 

 

 

 

『立食ぱーてい?』

 

玉座の間に集められた恋姫達は一様に首を傾げ、視線を三人の王達に注ぎ、

 

「そう!!でもね、ただのぱーていじゃないんだ!!出す料理は天の、御主人様の故郷のお料理ばかりなの!!」

 

「一刀殿の?……成程、懐郷病にはうってつけかもしれませんね」

 

「今まで一刀から得た情報から、私達でも再現可能な料理は多々あるわ。今回はそれを出し惜しみなく、ありったけ作って食べさせようって訳ね」

 

「そして、ここからが本題なのだけれど……今回の料理は、皆で作る事にしたわ」

 

『……はい?』

 

「聞こえなかったかしら?ここにいる皆で、一刀に振るまう料理を作る、と言ってるのよ」

 

 

 

 

『え、えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?』

 

 

 

 

姦しく続く会議。

 

 

 

 

しかし、彼女達は知らない。

 

 

 

 

この世でたった二人が知る、その異変を真実を。

 

 

 

 

 

 

……なぁ、華佗。俺ってさ、天の御遣いとしてこの大陸に呼ばれたんだよな?

 

 

 

―――なんだ、いきなり?……まぁ、今の世間じゃ誰もがそう思っていると思うぞ?

 

 

 

俺自身はそう思っちゃいなかったし、今でもそれは変わらない。神代の奇跡なんて不可能だし、そもそもが一人の人間でしかない。……そんな俺なんかがさ、どうして選ばれたんだろう、って、今でも偶に思う。

 

 

 

―――……それで?

 

 

 

もし、『俺でなければならない理由』があったとして、それで『俺を選んだ人』がいたとして、その人が困る事って、何だと思う?難しく考えずに、単純に考えてみてくれないか?

 

 

 

―――……一刀が、何も成さずに終わってしまう事、か?

 

 

 

あぁ、俺もそう思う。死ぬか、帰るか、何らかの方法で、何かを成す前にこの大陸からいなくなる事。……じゃあさ、そうならない為には、どうすると思う?

 

 

 

―――そうならない、為に?

 

 

 

……なぁ、華佗。

 

 

 

―――……何だ?

 

 

 

人一人を異世界に飛ばす、そんな芸当が出来る奴がいたとするなら、さ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――人の記憶を操る事が出来る奴がいたって、おかしくないと思わないか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(続)

 

後書きです、ハイ。

 

あぁ、これ多分期間内には無理だ!!

 

走り書きなのは勘弁して下さい、時間ないんです!!とれないんです!!

 

もう何か書く事思いつかないんで、今回はここまで!!

 

んじゃ、次の更新で間違いなく終わりますので!!

 

でわでわノシ!!

 

 

 

 

…………え?魏メンバーばっかじゃないかって?細けぇこたぁいいんだよ!!


 
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