No.279964

真・恋姫†無双 ~死んでも俺は叫び続ける~ EPISODE 07『曹操』

futureさん

久しぶりに来て見たら、サイトがリニューアルされてて戸惑った。
うっひょおおおおおおお! ルビ機能すげえええええええ!
まあ使う機会無いんだけどね。

話は変わるが、作品投稿欄で直接作品を記入していて、次のステップに進んだら何故かエラーでデータが全てアボーン・・・・・。

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2011-08-20 19:49:56 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:3056   閲覧ユーザー数:2601

幕舎の幕が上がる。と同時に何か肌寒いものが身を襲う。

視線の先で足を組んで大胆不敵にこちらを見下ろすのは曹操(そうそう)。見た目こそ美少女であるものの、その風格は覇王そのものであった。

 

一刀(かずと)「・・・貴女が曹操ですね。ご高名は兼々」

 

曹操「あら、世辞が上手いのね。でもこんな真夜中に何の用かしら? 下僕なら間に合っているわよ」

 

・・・これだ。相手の心を見透かしたような発言。俺が最も苦手とするタイプの人間だ。こういう人間は大抵分かっていてワザと分からないフリをする。

 

一刀「・・・分かっているなら話は早い。お前に聞きたい事が―――」

 

早くも本題に入ろうとする俺を、腕で押し止めた者が一人。馬超(ばちょう)だ。無言ではあったが、なんとなく言いたい事が分かったので、彼女にバトンを渡した。

 

馬超「曹操。馬騰(ばとう)の事を覚えているか?」

 

曹操「もちろん覚えているわよ、馬超。彼は立派な武将だったわ」

 

馬超「そうか。私はその立派な武将を殺したのは、曹操。お前だって聞いているんだけど・・・・本当にお前なのか?」

 

態度こそ冷静であるものの、その言葉には強い怒りが込められていた。

対する曹操は押し黙り、言葉を濁していたかと思うと―――――――――

 

曹操「・・・・そうよ。私が、馬騰を、殺したわ」

 

―――我慢の限界だった。

馬超は十字槍を握りしめ、吸い込まれるように曹操に突撃していった。

 

 

 

 

『お前、何か隠し事をしているな?』

 

父ちゃん。

 

『武術というのは正直なものだ。心にやましいところが有れば、それが気の濁りとなって表れる』

 

父ちゃん。

 

『お前も修行を続けていれば、いずれ気持ちが読めるようになる』

 

父ちゃん。

 

『彼は立派な武将だったわ』

 

コイツに殺された、父ちゃん。

 

『私が、馬騰を、殺したわ』

 

憎い。目の前の女がたまらなく憎い。殺してやりたい。その身を八つ裂きにしてやりたい。

 

もうすぐだ。もうすぐそれが叶う。だから、だから、だから、

 

馬超「さっさと倒れろよぉ――――――――――――――――――ッ!!!」

 

咆哮と共に、大きなクレーターが作られた。

 

 

 

 

パラパラと砂塵が舞う。それでも馬超は攻撃の手を緩めない。怒りが、憎しみが、馬超の力となって、彼女自身を突き動かす。目の前の敵を葬らんが為に。

しかし彼女は気づかない。どの攻撃も、決して敵に届く事が無い事に。

何が壊れようとお構い無しに武器を振り回し続ける馬超を尻目に、曹操は全ての攻撃を必要最小限の動きで避けていた。

それもそのはず。馬超自身が冷静さを欠いてしまっている為に、攻撃に“キレ”が無いのだ。曹操にとっては、間近で大道芸を見ているのと同じだろう。

この時間が長く続くと思われた頃、曹操は激しい攻撃の合間を縫って、鋭い蹴りを放つ。

ドスッという重い音と共に、馬超は腹を抑えてその場にうずくまる。今までただ傍観を続けていただけの俺はすぐに駆け寄るが、馬超は苦しげな表情で何か呟いていた。

 

馬超「・・・んで・・・・・・だよ・・・。・・・・で・・・たおれ・・・だよ・・・・・」

 

馬超は頬を涙で濡らし、曹操はこちらへと歩を進めてくる。

忘れかけてはいたが、こちらは不法侵入者という立場なのだ。首を獲られる理由は十分にある。馬超を背負いながらも抵抗しようとするが、予想とは裏腹に、曹操は何かを語り始めた。

 

曹操「・・・・昔の話よ。肉屋から大将軍へと成り上がった女が、各地の有力者を集めて宴会を行った事があったわ」

 

 

 

 

その有力者の中にね、一人の男と一人の美少女がいたわ。

宴もたけなわという頃。大将軍はその少女に武芸の腕を見せて欲しいと言ったわ。当然、少女に断る理由は無かった。そこで、大将軍は私の相手にと、その男を選んだ。その男も大将軍がお望みならばと勇んで席を立ったのだけれど、相当飲んでいたのね。男は見るも明らかに酔っていたわ。少女は止めたのだけれど、男も頑固でね。これぐらい酔ったうちに入らないって・・・・。案の定、男はまともに立つことも出来ず、尻餅をついてしまった。周りの連中は笑っていたわ。男は恥をさらしてしまった事を忘れようと、宴が終わるまで、浴びるように酒を飲んでいた。・・・・・それがいけなかった。

 

帰り道。男は前後を忘れてしまう程、フラフラな状態にも関わらず、供もつけずに一人で帰った。その道中で・・・・馬から落ちた。

たまたま洛陽の町を警邏していた少女の部下たちが見つけたのだけど、既に虫の息だった。息も絶え絶えな状態で、男は言葉を遺したわ。馬から落ちて死んだとなれば、武門の恥。どうか、この事は内密に・・・・・と。

 

少女は尊敬する男の遺言を守り、部下たちにはしっかりと口止めをして、世間にひとつの情報を流した。

 

自分が宴で恥をかいた腹いせに、馬騰を殺した。と。

 

 

 

 

幕舎内が、シンと静まり返る。なんて事だ。今の話が現実のものであり、本当のことならば・・・・馬騰は・・・・・・

 

馬超「私の父ちゃんが・・・・馬から落ちて死んだ・・・・?」

 

曹操は何も答えない。つまりそれは肯定の意を表しているということだ。

 

馬超「う・・・・嘘だ・・・・っ!! 私を納得させようと、嘘をついてるんだ・・・・!!」

 

曹操「あら、この私を嘘つき呼ばわりするつもり?」

 

そう言い、彼女は愛用の鎌「絶」を手に取る。

 

曹操「流石に今のは頭に来たわ。この私を嘘つきだなんて・・・・・・。外に出ましょう? 貴女の得意な武芸で、相手をしてあげるわ」

 

馬超「・・・・・望むところだ・・・!!」

 

一刀「お・・・おい!」

 

馬超「北郷は黙っていてくれ。これは私とアイツの問題なんだ」

 

目を見る。俺はこの目を幾つも見てきた・・・・。何を言っても無駄か・・・・・。

 

一刀「・・・・分かった。無理だけはするなよ」

 

馬超「ん」

 

短く返し、彼女たちは出て行く。もう朝近くのはずなのに、外は真っ暗だった。

 

 

 

 

風が冷たいな。寒いのは嫌いなんだ。

しかし何だ。いつまで経っても私は大人になりきれないな。感情の赴くままに行動して、私を心配してくれていた北郷にさえ冷たく当たってしまった。

だからいつも、未熟者って呼ばれていたのかもな。

 

曹操「どうしたのかしら? この期に及んで考え事?」

 

馬超「う、五月蠅(うるさ)いな・・・」

 

しかし・・・こいつの構えは何だ。一見無防備に立っているように見えるが、それは違う。隙が一切見当たらないんだ。

 

馬超(どこから攻めればいい・・・? 正面から突くか? 不意を突いて攻めるか?)

 

駄目だ。悩むばかりで攻略が出来ない。そんな私の心情を知ってか知らずか、曹操は一切構えを崩さない。

間違いない。こいつは今の自分に絶対的な信頼を置いているんだ。だからこそ構えに迷いが生じない。

 

『武術というのは正直なものだ』

 

・・・・!!

 

『心にやましいところが有れば、それが気の濁りとなって表れる』

 

馬超「あ・・・・あ・・・・・!!」

 

『・・・・それじゃあ』

『ああ。お前の構えには心気の曇りが感じられた』

 

馬超「う・・・・・うぁ・・・・・・」

 

槍がカタカタと震えだす。そうだ。それが私とアイツの決定的な違い。アイツの気には濁りが無い。それは・・・・つまり・・・・

 

馬超「わ・・・・私の父ちゃんは・・・・・本当に・・・・・」

 

曹操「・・・・・」

 

無言肯定。決まった。すぐそこにあった真実から目を背け続けた少女。その涙は土に溶け、叫びは空へと消えていった。

 

 

 

 

後日。

人気の無い分かれ道に、四人の少女が立っていた。

 

愛紗(あいしゃ)「それでは、ここでお別れだ」

 

鈴々(りんりん)「せっかく友達になれたのに。残念なのだ・・・・・」

 

(せい)「やはり、西涼へと戻るのか?」

 

馬超「ああ。故郷の奴らにも、本当の事を教えてやら無いとな」

 

答えたのは馬超。吹っ切れたのか、いつもの様な堂々とした態度で会話に応じていた。

 

愛紗「そういえば馬超殿。先程から一刀殿の姿が見えぬのだが」

 

馬超「ああ。アイツは今――――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏侯惇(かこうとん)華琳(かりん)様。此処を出る準備が出来ました。後は華琳様のご指示を待つのみ」

 

曹操「有り難う春蘭(しゅんらん)。・・・・・・・・・・すぐに行くから待っていて頂戴」

 

夏侯惇が去り、元々陣が立っていた大地に曹操一人が残る。

 

曹操「・・・・いい加減出てきたら? 御使(みつか)いさん」

 

一刀「・・・・・上手く隠れてたつもりなんだけどな。いつから気づいてた?」

 

曹操「此処を出る準備が~~あたりからかしら?」

 

一刀「ついさっきだな。自慢じゃないが、かくれんぼは得意な方なんでね」

 

曹操「見つけてあげなかったのよ。男臭(おとこくさ)すぎて、逆に見えなかったの。分かる?」

 

それにしても奇妙な光景だ。彼女の命を狙った女の手助けをした男と、そのターゲットが肩を並べて会話をしているのだ。傍から見ると、酷く滑稽だ。

 

一刀「・・・・今日は詫びに来た」

 

曹操「あら。貴方が謝ることでもないと思うのだけれど?」

 

一刀「勘違いだったとはいえ、事をややこしくした事に変わりは無いからな。その謝罪分だ。それと、ほら」

 

そう言って一刀は、手に持っていた酒瓶を渡す。

 

曹操「いいのかしら? でも感謝するわ。有り難う。夜にでもゆっくり飲むとするわ」

 

一刀「意外とあっさりなんだな。もうちょっと疑ったりしないのか? 毒が入っているんじゃないのか・・・・とか」

 

曹操「貴方にそんな度胸があるとは思えないのだけれど。私は」

 

一刀「・・・・・・・・・言ってくれるじゃないの」

 

目の前に広がる軍勢。優秀な軍師に優秀な武将。さらに優秀な君主と来たもんだ。一糸乱れぬ隊列を魅せる軍勢は、それを如実に表していた。

 

一刀「俺たちも今日出発する。もしまた会うようなことがあれば――――」

 

曹操「よろしく。とでも言いたいのかしら? そうねぇ。関羽が私の下僕になるって言うなら考えてあげるわよ」

 

一刀「下僕は間に合っているんじゃないのか? まぁどうしてもっていうなら、俺が下僕になってやっても良いぞ?」

 

曹操「残念。男の募集は締め切ってるわ。募集すらしてないけど」

 

こうやってただ会話をしているだけなら、可愛い少女なのにな。この世界の少女は、皆損している気がするんだよな・・・・・・。俺だけか?

 

曹操「自分で言うのもなんだけど、良く私を信じる気になったわね。私はただ昔話をしただけよ?」

 

一刀「矛盾って知ってるか? 言動不一致の事だ」

 

曹操「・・・・・・・・・言ってくれるわね」

 

彼女は口ではそう言いつつも、しっかりと酒瓶を持ち、上機嫌そうに部下たちの元へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

TO BE CONTINUED

 


 
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