No.279276

【銀英伝】赤金小話

まふゆさん

Twitterのお題系で『額を付けて熱をはかっているキルヒアイス』の絵を描きましょう!と出たので、イラストを描こうと思ったところ小話のネタが出来たので、小説もどきな小話です。

2011-08-20 01:54:53 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3730   閲覧ユーザー数:3729

「ラインハルト様」

部屋のドアが開く音と共に赤毛の友人が声をかけてくる。

掛けられた羽毛布団からチラリと顔を出し、キルヒアイスの姿を確認する。

まだ熱があるらしく、目元がうるんでおり、顔も赤い。

「気分はどうですか?」

「……最悪だ」

ここ最近、オーディンは気温差が激しい日が続き、珍しい事に内勤が続いていたラインハルトは体調を崩し、そのまま高熱を出して寝込んでいた。

サイドボードに持ってきた水と薬、それと冷却用ゲルの氷枕を置くと、ラインハルトの背中を支えてやりながら上半身を起こしてやり、薬と水を手渡す。

ラインハルトが渡された薬を飲んでいる間にキルヒアイスは枕の上ですっかりぬるくなってしまった氷枕を新しい氷枕に取り替えた。

水をもう一口飲んで一息ついているラインハルトの手からコップを受け取ると、空いている手でラインハルトの前髪をかきあげ、キルヒアイスは自分の額をコツンと押し当てる。

「まだ大分熱が有りますね……」

額を重ねていた間閉じていた瞳を開け、赤く火照ったラインハルトの顔を間近で見る。

「やはり、もう少しお休みになったほうが良さそうですね。幸い、ここ最近は戦局も落ち着いていますし、今すぐ大きな会戦があるとは思えません」

顔を離すと、起こした時と同様にラインハルトの背中を支え、ベッドへ体を横たわらせる。

「こんな時に大きな会戦があってたまるか!」

熱のせいで少しかすれた声だが、ラインハルトは出せる限りの大声でそう叫んだ。

「武勲をあげるチャンスにベッドの中に縛り付けられるなんて、まっぴらごめんだ」

「そう思っていらっしゃるなら早く治してください。私もラインハルト様の我儘を聞けない日々なんて退屈でしょうがないんですよ」

ニコニコ笑いながらそう言うキルヒアイスに対して、俺は我儘なんて言っていないと言いたげにラインハルトはキルヒアイスを睨みつけた。が、熱のせいで潤んでいる瞳で睨みつけたところで、それは抗議にすらもならなかった。

 

「何か食べられそうなものは有りますか?」

部屋を出る前にキルヒアイスはラインハルトに問いかけた。

寝込んでほぼ丸一日、栄養ドリンク類は口にしているものの、固形物的な食べ物は一切口にしていない。

口に出来そうな物があれば、下宿先のフーバー夫人に作ってもらおうと思い、このようなことを聞いたが、ラインハルトの口からは、今の二人にはそう簡単に手にすることがてきない物を要求された。

「……姉上の手料理」

「ラインハルト様……」

少し困った笑顔を向ける赤毛の友人を見てラインハルトは、顔まで布団をかぶり、冗談だと呟く。

それを聞いたキルヒアイスは笑顔は崩さず、ほんの少しため息を着くと、再びドアノブに手をかけ、部屋の外へと体を移動させる。

電気を消し、ドアを閉める。

完全にドアを締め切る前に再度ベッドへ視線を向けるが、そこには先ほど向けられた視線はなく、布団を頭までかぶったままのラインハルトがいる。

「おやすみなさいませ」

そう声をかけ、キルヒアイスはドアを閉めた。

 

 

 


 
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