No.272161

どうしてこっちむいてくれないのかな  ― GINGA ―

以前に書いたギンガ→ゲンヤな一方通行片思いSSです  
お話の時期はストライカーズの前あたりで

2011-08-13 16:29:29 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1468   閲覧ユーザー数:1464

子供のころ 

朝に聞こえてきたのはトントントンとリズムを刻む包丁の音

漂ってきたのはお味噌汁の香り

それは母さんの証

 

そして今

朝の台所に立つのは私

包丁でリズムを刻み、お味噌汁の香りをたてる

 

 

 

お味噌汁をちょっと小皿に取り味を見る

「うん。 後はお魚が焼ければよし、っと」

朝ごはんの用意が一通り終わったので、ちょっと手を止め時計を見るとあと数分で七時になる

二人ともまだ起きてないようだ

そろそろ起きてきて欲しいんだけどな 

と、そのときスバルが台所に入ってきた

まだ眠いのかまぶたをぐしぐしこすっているし、それに寝巻き代わりのTシャツの首が伸びて右肩が出てて、そのうえ頭が寝癖で爆発してる

お寝坊さんスタイル三拍子揃い踏みだ

「おふぁやうぎんねえぇ・・・」

どうもろれつが回ってないようで何を言ってるのかわからない

「おはようスバル。 すごい顔してるよ? ほら、顔洗ってらっしゃい」

「あふぅ、ふぁい」

大きなあくびをして、洗面所に向かおうと回れ右をして台所を出て行こうとする

その後姿を見て思わず軽いため息が出る

パンツがずり落ちてスバルのかわいいおしりが丸見えになってるのだ

もう少し女の子らしくして欲しいんだけどな

まぁスバルらしいといえばらしいんだけどね

「きょわーっ!? なにこれ~」

鏡を見たんだろう、洗面所のほうからスバルの悲鳴が聞こえてきた

 

 

 

「あれ、父さんは?」

顔を洗い髪も整えたスバルが食卓につきながらそう言った

「うん、まだ起きてこないのよね」

「あたしが起こしに行ってこよっか?」

スバルがイスから腰を浮かしそんなことを言う

それはダメ、それは私の役目だ

「ううん、私が起こしてくるからいいよ。 スバルは朝ごはん食べちゃいなさい」

「はーい、いただきまーす」

スバルが丼を持って食べ始めた

そう”丼”

私もスバルもたくさん食べるのでお茶碗では追いつかないのだ

以前父さんの下にいた八神はやて一尉(今は三佐だっけ)がうちでごはんを食べたときにその丼に盛ったご飯を見て唖然としながら「もっそうめしや・・・」と言ったのだけどどういう意味なんだろう

それはともかく父さんを起こしに行ってきますか

 

 

 

二階の父さんの部屋の前で軽く深呼吸をする

落ち着いて、うん大丈夫

ドアをノックしてから声をかける

「父さん?」

返事が無い、まだ起きてないのかな

自分の鼓動が早くなっていくのがわかる

ドアノブにそっと手をかけ静かにドアを開けながらもう一度声をかける

「・・・父さーん?」

父さんは私がドアを開けても気がつかずにまだベッドで眠っていた

中に入ろうかどうしようかちょっとだけ逡巡する

もう一度軽く深呼吸をして覚悟を決めた

部屋の中に入り後ろ手でそっとドアを閉めベッドに近寄る

父さんは胸まで掛け布団をかけて静かに寝息をたてていた

父さんの匂いに満ちた部屋のなかでその寝顔を見つめる

呼吸をするたび胸の中いっぱいに父さんの匂いが満ちていく

鼓動がさらに早くなっていく

このままずっと見つめていたいけどそうもいかない、そろそろ起こさなくちゃ

「父さん、朝だよ」

声をかけるが寝息をたてたまま起きない、軽く肩をゆすってみても全然起きない

熟睡してるようだ

 

 

 

・・・顔が熱く頭がぽうっとしてくる

呼吸が荒くなってくる

鼓動が早い

我慢・・・ できない

「父さん、寝てるよね? 起きないよね?」

そんなことをつぶやきながらベッドの横で膝をついて顔を近づけていく

息を殺してゆっくりと・・・ 気づかれないようにゆっくりと

そのまま父さんの頬にくちびるを近づけて

そっと・・・ キスをした

触れるか触れないかのキスだけど、くちびるを通して温もりが伝わってきた

愛しさが体いっぱいに広がっていく

「父さん」

口が勝手に言葉を紡いでいく

「ゲンヤさん」

止められない

「・・・あなた」

その言葉が口から出たそのとき、父さんがふっと目を開けた

「ん・・・ クイント・・・?」

こっちを見た父さんの目が私の目を見つめてる、動けない

「あ・・・ と、父さん」

「え? あ・・・ ギンガか・・・ どうした、そんなところで」

やっとの思いで顔をそらす

気づかれちゃいけない、何をしたかなんて、何を言ったかなんて

「朝だよ、父さん。 朝ごはんできてるから早く降りてきてね」

返事も聞かずに父さんの部屋を飛び出した

 

 

 

階段を駆け下り洗面所に飛び込んで鏡で顔を見る

ひどい顔だ、耳まで真っ赤になってる

なんであんなことしちゃったんだろう

「ごめん・・・」

なんであんなこと言っちゃったんだろう

「ごめんなさい母さん・・・ でも、私・・・」

鏡に映る自分の顔がにじんでいく

一筋の涙が頬を流れていった

 

 

 

「んじゃ、いってきまーす!」

いつものようにあっというまにスバルが飛び出していった

きっと土煙を残しながらすごい勢いで走ってるんだろう

交差点に赤信号で突入して他所様の車を跳ね飛ばしたりしないことを願うばかりだ

食器を片付けながらそろそろ私も、と居間を見れば父さんがソファに座ってのんびり新聞を読んでたりする

「父さん、そろそろ時間よ。 新聞なんか読んでないで」

「ん? おぉ。 しかしなんだな」

ガサガサと新聞をたたみながら何か言いかける

「え? なに?」

「お前もすっかり母さんみたいになってきたな、とな」

「え・・・」

ギクッとする

もしかしてさっきのこと何か気がついて?

「これなら安心して嫁に出せる」

・・・ん? なんて?

「男親で育てたからどうなることかと思ってたけどな、どうにかなるもんだ」

「父さん・・・」

急に顔が熱くなってくる

さっきのとは違う熱さ、そうこれは・・・

「そろそろいい人でもいないのか? 俺もじいさんになる前に孫の顔が見てぇからな」

”頭に血が上る”熱さだ

こめかみの辺りのなにかが切れるような音が頭の中に響いた

「父さんの・・・」

「ん? どうしたギン・・・」

「父さんの・・・ バカァーッ!!」

窓ガラスがビリビリと震えるほどの大声で叫んでしまった

両耳を押さえて悶絶している父さんを横目に玄関に向かう

「まったく父さんたらっ! 人の気も知らないで」

そうよ、ほんとに人の気も知らないで・・・

スバルに負けない勢いで家を出る

その後、隊につくまで私の気は治まらなかった

 

 

 

「やれやれっと」

そのころゲンヤはギンガの音波兵器攻撃のダメージから立ち直っていた

あらためてソファに深く座りながらひとりごちる

「俺は父親だぞまったく、ああとでも言うしか無ぇじゃねえかよ。 しかし、まさかあんなこと言うなんてな」

そう、じつは気がついていたのだ

頬にキスをされる直前に目が覚めたのだが、起きるタイミングを逸してしまい起きるに起きれないまま”あの言葉”を聴いてしまう

「”あなた”か・・・ なあ、どうするよクイント?」

目の前にクイントの姿が浮かんだような気がする

しかしその姿は

「・・・なんでそんなにいい顔でグッと親指を立ててるんだおまえは?」

深い深いため息をつきながらゲンヤは悩み続けるのだった

 

 

end?


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
0
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択