No.248611

鳳凰一双舞い上がるまで 第二章 4話

TAPEtさん

真・恋姫無双の雛里√です。
雛里ちゃんが嫌いな方及び韓国人のダサい文章を見ることが我慢ならないという方は戻るを押してください。
それでも我慢して読んで頂けるなら嬉しいです。
コメントは外史の作り手たちの心の安らぎ場です。

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2011-07-30 21:52:47 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:3025   閲覧ユーザー数:2612

<<また残されたもの>>

 

 

時は夜。

山での日のある時間はあまり長くないが、普通真っ暗になる頃には皆眠りにつく。

夜に外に居ることは非常に危険だ。増して塾の外に出ることは厳禁。

だが、僕はあの事件以来毎日この時間になると外に出る。

目的は『探しものをするため』。

 

「北郷さん?」

「!百合さん」

 

塾を出ようと後門に向かったら、そこに百合さんが居た。

 

「どうしてここに…」

「私は少々夜風を……北郷さんは?」

「自分は…少し探すものがあって外へ…」

「…こんな夜に…ですか?いくら北郷さんと言っても、夜に山に向かうことは危険と思いますが…」

「大丈夫です」

 

大体、この山にはもう危険になりうるものなんてない。

この山には、もう動物たちがあまり残ってない。

ここにいた狼の群れだって、獲物の不足のため他のところに行ってしまってもう何ヶ月。

もうこの森に残ってる狼なんて、アイツしかない。

 

そう、もちろん僕の探しものというのはアイツのことだ。

 

「毎晩やっていることです。先生も、雛里ちゃんも知っています」

「……雛里ちゃんは何も言わないのですか?」

「彼女は、自分が探しているものが何かわかっている故に…」

「その探すというのは……」

「……昔の友たちです」

 

・・・

 

・・

 

 

 

ヒューーーーーーー

 

雛里ちゃん曰く、彼は僕たちを塾にまで送った後、体を元のサイズに戻して森の中に戻ったと言った。

その後僕が何度かこいつを呼んだが、一度も姿を表したことがなかった。

でも、僕は毎晩奴を探すために山を探った(運動も兼ねて)

 

ヒューーーーーーー

 

口笛を吹いても、あいつはもう現われない。

でも、それでもずっと探した。

僕はアイツにお礼のひとつも言ってないのだ。

奴も新しい『僕』とは一切話をしていない。

 

なのに、どこへ行ってしまったという………

 

アウーーーーーー!!!

 

「!!」

 

この声は……アイツが!

 

鳴き声がした方へ向かって走った。

 

「……ここは…」

 

そこは、直線ルートで向かうと、そこは以前雛里ちゃんが初めて僕を見つけた場所とつながる下り道だった。

 

「……遠回りする時間はないか」

 

そのなな斜めな地面を滑り落ちて行った。

 

 

 

タッ

 

「……おい、ここにあるんだろ。出てこい」

 

いつか、僕はこの場で初めてアイツに会った。

なんだか、また来てみると不思議な感じがする。

そして、何だろう、この寒気は…少し今日は夜風が冷たい。

 

グルルーー

 

「!」

 

グルルー『来たか、人間』

 

そして、アイツはまた、暗闇の中で、あの時のように目を輝かせながら僕の前にまた姿を顕せた。

 

 

 

 

グルル『行かん』

 

「……あっさりだな」

 

僕たちの旅に付き合うか誘ってみたが、あっさり断られた。

 

「……今までどこに居た」

 

奴は何も言わなかった。

こいつには色々と説明して欲しいことが多かった。

どうしてあんな大きさになれるのか。

嫌、昔の森で長く住んだ狼や動物は森の主に決められ特した力を得ているという話は日本でも良くあった物語。

だが、実際に見てみると本当にそうなのかも確認したかった。

 

「消えたかと思って探してる時は姿も見せなかったくせに、今になってまた現れて、僕と一緖に行くためにかとおもいきや一緖に行かないとな?」

 

グルル『口が多くなったな、人間』

 

うむ、否定はしない。昔の『俺』だったらきっとこんなに愚痴らなかっただろう。でも、今の僕は違う。

言いたいことが言う。好きな人には愛してるというし、嫌な奴には散々嫌味言わせてもらう。それば『僕』だ。

 

「だってそうじゃないか。どう考えてもこの流れだと僕たちを一緖に来るのだろ?」

『……行けない。俺はこの森を守る主として、ここを長く出ているわけにはいかない…それに……』

「…それに?」

『……察しが良い貴様としては随分と鈍いことを言うな、人間』

「?」

 

どういうことだ?

 

『………今頃俺の部下の者共は良くやってるだろうか』

「…………」

 

何故いきなり話をそっちにそらす。

この森に来た時、ここの狼たちは飢えていた。

僕の恩返しがなければ奴らはとっくにこの森を去っていただろう。

でも、こいつ、狼たちのリーダーとして森の主だったこいつは自分だけここに残って、他の群れを信用できる奴に任せてこの森を離させた。

今になって考えると妙だ。

どうして、こいつは自分の群れを離れてきた?そう、今考えるとこいつは群れを離させたんじゃない、自分が群れから離れた。

つまりそれは……

 

「……!」

『……気づいたか、人間』

「……どれぐらい…残ってる」

『…今夜だ』

「何だと!?ふざけんな!そんなつもりなら何故今になって…」

「『お別れ』の言葉を告げるためじゃ。我が人生の最大の恩を着た人間によ…」

「……」

 

群れで生活する動物の中で個別が群れを離れるということ。それは2つの理由を持つ。

一つ、それが群れのリーダーで、権力争いで負けて追放される場合。だがこいつに対してそれは絶対にありえないだろう。

そして、もう一つは、

 

『俺はもう死ぬぞ、人間』

 

その個別の個体が残った寿命が短い時だ。

 

 

 

そう聞かれてからやっと僕は月光に映る奴の姿を見た。

老いぼれていた。

半年前に見たより遙かに老いて見えた。

 

「…僕たちを助けたせいで寿命が縮んだのだともいうのか?」

『……どうせ一年持たぬ体だった。群れが新しい居場所を探す頃にはもう老いぼれ。邪魔になるつもりはなかった。そして一人になってみると、色々と感覚が鋭くなっていてな。風邪から血の匂いがするのをみてお前の計画がうまくいかなかったことが分かった』

 

奴は淡々を話を続けた。

 

「森の主に選ばれたのはこの森に水鏡塾が建てられた頃だった。あの頃にこの山は全部俺の縄張りのようなものだったさ。そのせいもあって、山は俺を番犬として選んだ」

『で?』

『…もう生きるだけ生きた。貴様らがいう寿命は良く分からんが、貴様を助けたあの日以来、俺はどんどん弱くなった』

 

やはり…あの時森の主としての力を使い尽きたと?

 

『死ぬ日も近いと思って、貴様が呼ぶのも聞かずに隠れた所にこもって死ぬことだけ待っていたが…中々しぶとい命でな。今まで生きていた 」

「………」

『だが、もう終わりだ』

「案ずるな。いくらなんでも今夜というのは言い過ぎ…」

『人間とは違って狼は自分が死ぬ時が分かる。的確にな。今夜で間違いはない』

「………」

 

何でそうはっきり言えるんだ……ド畜生……

 

「お前も逝くのかよ……あぁ…」

 

腹立つ。

こういう時が一番腹立つ。

いくら足掻いても別れを避けられない時。

避けられないその別れに立ち向かわなくてはいかない時。

僕に得る気さえも失わせたその恐怖がまた僕を絶望へと誘うみたいだ。

 

「嫌…待て、まだ方法はあるはずだ」

 

そうだ、僕のあの力。

ここ数カ月使ったことはないけど、もしあの力がまだ残っているとしたら…

 

『貴様のその力は蘇った直後にしか使えん』

 

!!

 

『そして老いて死ぬことには通用せぬ』

「どうしてお前がそんなことを知っている」

『……森が教えてくれた…森は永遠の時をここにいた。貴様のような者を見たことがあるらしい』

「なんだと!?いつだ、それは」

『昔……貴様と俺には考えられないほど昔に……でも、森は覚えていた』

「……」

 

要するに……僕はまたも何もできないと……死から蘇る力さえもあるのに…僕が助けたい人はだれ一人助けられないというのか……

なら何のためにこんな力を得たのだ。人を、大切なものを救うために使えられぬと言うなら何のために……

 

『人間、森は貴様のことを恐れている』

「…僕はあの力を使うからか」

『そうだ。森は覚えている。あの鳥は凶鳥と成った』

「!」

『自分の相方を失った鳳凰は凶鳥となる。そして、この世の全てを燃えつくすだろう』

「………そんなことは、絶対にない。雛里ちゃんは僕が守る」

 

もう、ただ一人だけ、

一人だけ守れたらいい。

 

いや、あの子さえも守ることが出来なければ、この新しく得られた命さえも、僕にとっては死んでいるのとも同じだ。

裴元紹、そしてお前、誰も守れなかったとしよう。それはよしとしよう。

でも雛里ちゃんは?彼女以外は全て殺すとしてでも彼女だけは守る。

 

だがよ、おい。

そんなこと今関係あるのかよ。

あの娘は今元気してる。僕は保証する。

でも、貴様は今日死ぬってんだろうが……

 

『……俺はあそこで死ぬつもりだ』

 

奴は山で一番高いところに尖っている岩の方をさしながら言った。

 

『今朝俺の死体を見ると、俺の体を捌いて皮を持っていけ。他の部分はそのままほっとけば森の鳥たちが集まって片付けてくれるだろう』

「……皮でどうしろってんだ」

『…俺もお前の旅に連れていけ』

「……」

『貴様はもう俺の息子の皮で作った手袋をしているだろ。もうやり残したことはない。後は貴様と息子一緖世界を見まわることが出来りゃ……』

 

奴はそれ以上話を続けなかった。

奴はそのまま振り向いて歩き始めた。

 

『お別れだ、人間』

「………」

 

奴が振り向いた理由は明らかだっだった。

俺が醜く泣いていたからだ。

 

『………』

 

おい、そのまま帰るつもりか?

 

「吠えろ」

 

ピタッ

 

「最後の頼みだ。最後に、この森に響くように吠えてみろ」

『……人間』

「………もう我慢の限界だから黙って吠えろ」

 

こっちは辛くて叫びあげる寸前だ。

 

『…………』

 

アウウウウウウウーーーーー

 

ギリギリ啼き出した奴の声に、同じく叫び上がる僕の泣き声は上書きされた。

 

 

 

 

翌朝

 

カーカー

 

カー

 

「近づくんじゃねー!」

 

カー!

カー!

 

僕は投げた石は、岩の上で動かなくなった奴の死体を狙うカラス二匹に的確に当たった。

カラスは怒ったのかこっちを向いたが、直ぐに空の彼方の方へ逃げ出した。

 

「……一刀さん」

「…ごめん、ちょっと苛立ってるんだ、今」

「………はい」

 

朝早く雛里ちゃんと倉を連れて塾を出る時、どうかあいつが間違っていますようにと祈ったが、岩の上で動かなくなったあいつの屍が見えた時全てを諦めた。

あいつの言った通り、あいつは昨夜死んだ。

 

「倉、手伝ってくれ。雛里ちゃんは見ない方がいい」

「……うん」

「…はい」

 

雛里ちゃんを待たせて僕は倉を連れて奴が眠ってる岩の上に向かった。

 

「……」

「………一刀」

「…うん?」

「……どう会ったの?」

 

倉は目の前の奴のことを良く知らなかった。

会ったこともないし…あの孫策との戦いで暴走しているうち見たのが全部だ。

奴と倉との面識はないに等しい。

 

「僕が初めてこの世界に来た時、僕は傷で動けない状態だった。真夜中で、誰も居ない中口笛を吹いて通りすがる人がいたら助けを求めようとしたら、雛里ちゃんが現れた。そして、こいつの群れも………あの時こいつの群れは飢えていて、怪我をした僕たちをくおうとした、でもなんとか協商して帰らせた。それからこいつの群れにたまたま肉を渡してくれたけど…それでも足りなくてこいつは自分の群れを他の狼に任せて移住させた。それで…今はこいつ一人だけ」

「…独りで…死んだの?」

「……そうだな」

 

死ぬ時は皆独り……

誰も死の向こうまで付いていってあげる者はいない。

ただ、もう行ってしまった彼が残した体を見つめるだけ……

 

「……僕がこの世界に来て初めて出来た友だ」

「……雛里ちゃんは?」

「…範疇が違う」

「…そっか」

 

まぁ…狼を友と呼ぶ当たり…僕が正常な人間じゃないことは確かだな。

 

「本当に皮剥くの?友たちなのに?」

「奴の遺言だ。そうしてでも僕たちと一緖に行きたいとさ」

「……うん」

 

一緖に行こう。

一緖に世界を回ろう……

 

「……これからもよろしく頼む」

 

・・・

 

・・

 

 

皮を剥いた後、奴が言ってた通りに残ったものは鳥たちが食べるように放っておいた。

皮を匠に渡して手当をして例の店に任せた。

何にして欲しいかと聞かれたが、特に思い出せるものがなくて、出来るようにほし欲しいと言った。

そしたら店主が作ってくれたのは、僕が今している、あいつの息子で作ったような指の方は残した手袋一双と、他の皮を少し加えて革ジャケットを作ってきた。

手袋は倉にやって、ジャケットは僕が着ることになった。

この後さすがに服が似合わなくて他にに変えることになるけど、それはこれとは違う話……

 

あいつは良い狼だった。

誰もそれを疑ったり、否定できない。

でも僕にとってあいつはずるい奴だ。

あいつなら雛里ちゃんほど、僕の悲しみを知っていたはずだ。

なのに、あんな風に言ってしまうなんて……せめてそれから姿を表せなくて、そのまま僕たちが旅を始めたら僕もそのまま忘れたかもしれない。

でも、もう忘れることはできないだろう。

だって奴が残したものが、直ぐ僕の近くに残っているから……

 

・・・

 

・・

 

 


 
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