No.239772

真・恋姫無双 黒天編 第8章 「本城急襲」後編

sulfaさん

どうもお久しぶりです。はじめましての方ははじめまして
第8章後編です。

2011-07-28 14:16:36 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:2048   閲覧ユーザー数:1739

真・恋姫無双 黒天編 裏切りの*** 第8章「本城急襲」後編 激突

 

 

白帝城 執務室

 

そこには詠と張三姉妹の天和、地和、人和がいる。

 

地和は部屋の中心で坐禅を組んでおり、なにかブツブツと唱えていた。

 

それを囲むように他の三人が立っていた。

 

三人はジッと地和の様子を眺めている。

 

そこへ、お茶を持った月が扉を開けて中へ入ってきた。

 

「詠ちゃん・・・お仕事は進んでる?」

 

扉を閉めた後、月は張三姉妹が部屋の中に居ることに気づいた。

 

「あっ・・・皆さん、いらっしゃったんですね。すぐにお茶を持ってきます」

 

「月、今はいいからちょっと見てて」

 

お茶を机の上において部屋から出て行こうとした月を詠は引き止める。

 

月は詠の方を見ると、詠は執務室にある鏡の方を指差した。

 

「・・・・・・映すわよ・・・」

 

何かを唱えていた地和がそう言うと、今まで鏡に写っていた執務室の光景がゆっくりと歪んでいく。

 

そして徐々に執務室とは違う風景を映し出す。

 

そこには漆黒の軍団と三国の軍が映し出された。

 

鏡は鳥瞰図のような見え方をしている。

 

「すごいですね。鏡から外の風景が・・・・・・鳥さんになったみたいですね」

 

月は鏡を凝視しながらその風景を眺めている。

 

「こんなもんでいいでしょ」

 

目を閉じ、坐禅を組みながらも地和は上々の手ごたえを感じていた。

 

「もっと、近くに寄れないの?」

 

「近く?ちょっと待って・・・」

 

地和は再び目を閉じ静かに念じ始める。

 

すると、鏡に映された景色は徐々に地面へと近づいていく。

 

そして、一定の高さになるとそこから風景が動かなくなった。

 

「・・・・・・・・・、ふぅ~~~、これ以上はダメ。近づけないわ」

 

地和は額に浮かべていた汗を拭う。

 

ただ座っているようにしか見えないが、かなりの妖力を使うようだ。

 

「まだ詳しい状況が見えないじゃない」

 

「そんなこといったって仕方ないじゃん。鳥がここまでしか近づこうとしないんだから」

 

「鳥が?」

 

詠はいまいち地和の言っている意味が分からず首をかしげている。

 

「この風景はね。間違いなく鳥の見ている風景なの。それを私の妖術で鏡に映し出しているだけ。ある程度行動に干渉はできるけど、いくら今の私でも完全に操れないわ」

 

つまり、空に飛んでいる鳥の視覚を妖術により支配して、鏡に映しているのである

 

「ち-ちゃんが難しいこと言ってる~」

 

「あんまり融通きかないわね。妖術も・・・」

 

「なによ~~~。つーか、いつもの私ならこんなことさえできないんだからね!ちょっとは感謝しなさい!!!」

 

詠がさらに鏡に近づいてそこに映し出された様子を眺めている。

 

「人間の視点からは見えないの?」

 

「無茶言わないでよ。だから、何度も言うようにいつもの私ならこんなこともできないんだってば!!まぁ、妖術の修行をした人ならできちゃうんだろうけど・・・」

 

「これ、小さいけど、愛紗さんじゃないですか?」

 

月が詠の隣へ近づいて、鏡のある一点を指差す。

 

三国側の軍の先頭に兜を着けていない黒髪の人間がいた。

 

その髪型はサイドポニーに見えなくもない。

 

「なんかそれっぽいわね・・・。やっぱりもう少し近づけて!!」

 

「もう!!人をカラクリみたいに扱って・・・ちょっと待っててよ。やってみるから・・・」

 

文句を言いながらもまた地和が精神を集中させていく。

 

「あっ!軍が動き出します!!」

 

人和の言葉を受けて詠はすぐに太陽の位置を確認する。

 

太陽は高々と空の一番高い所で輝いていた。

 

「時間もぴったりね。いよいよ始まるわよ」

 

三国側の兵士たちが一気に漆黒の集団に突撃していった。

 

                       (1)

 

 

 

 

 

戦闘最前線 中央

 

あちこちで雄たけびが聞こえ、同時に痛々しい叫び声も響いている。

 

果敢に立ち向かっていく者もいれば、その場を逃げ出す者、傷つけられ動けない者もいる。

 

様々な者が戦場にいる。

 

しかし、逃げ出す者のほうが多いように思える。

 

黒い兜を外し、武器を捨て、ただただ逃げ出している。

 

なぜか?

 

そこに鬼神がいたから

 

「でええええぇぇぇぇぇぇぇぇいぃぃぃぃぃぃぃぃッッッッッッ!!!!!!!」

 

愛紗は目の前にいる敵に向かって偃月刀を振るう。

 

その範囲内の敵の下半身と上半身が分かれてさよならする。

 

そして、その近くにいた敵も風圧で吹き飛ばされた。

 

愛紗は再び偃月刀を構えなおし、身近にいた敵を睨みつける。

 

「ひっ・・・あっ・・・」

 

睨みつけられた敵はその威圧に戦意を喪失し、手に持っていた武器を落とす。

 

そして、一目散に逃げ出していった。

 

愛紗の恐ろしい気迫もあるだろうが、恐れというものは伝染するもので一人が逃げ出すとその隣にいた者も逃げ出していく。

 

それが徐々に広がっていき、結局愛紗の周りには敵兵は誰もいなくなった。

 

「その程度の覚悟で戦に参加すること事態が間違っている・・・」

 

愛紗率いる部隊も徐々に敵を駆逐しており、戦線を押し上げていた。

 

「皆の者!!このまま押し進む!!!我に続け!!!!」

 

三国側の兵士たちは武器を高々と空へ掲げて、愛紗の言葉に答える。

 

そして、勢いのついた愛紗の隊はどんどん戦線を押し上げていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

少し進むとまた敵の軍隊がこちらに向かって突撃してくるのが分かった。

 

愛紗の隊もそれに気づき、がっちり迎撃体勢を整えた。

 

そして再び、その場は激烈な戦いの空気に包まれた。

 

しかし、愛紗のやることには変わりはない。

 

愛紗が一度偃月刀を振るえば数人の人間が飛んでいく。

 

まさに先ほどと同じ光景が繰り返されていた。

 

「ハァァァァァァァァァアッァァァァァァッッ!!」

 

気合の入った愛紗の斬撃が敵の隊列を崩し、吹き飛ばす。

 

しかし、その隊の中に一つの人影が残っていた。

 

今までの兵士とは違う雰囲気を身に纏っており、愛紗の身長の1.5倍はある大男だった。

 

その手には人間一人分の大きさ、重さはある大斧があった。

 

「フッ~ッ~~フッ~~~ッ~~フッフ~~~ッ」

 

大きく息を吸っては吐いてを繰り返し、眼もかなり血走っている。

 

一目でこいつはヤバイと感じる男だった。

 

「ふっ・・・、何かと思えばただのブタではないか・・・、すぐに終わらせてやる。ハァッ!!!」

 

愛紗は地面を蹴ってすぐさまその大男の懐に入ろうとした。

 

しかし、その動きは愛紗の目の前に何かが飛んできたため中断される。

 

少し間合いを取り、飛んで来た物を確認するとそこには小刀が刺さっていた。

 

愛紗は再び目線を大男に移すと、大男の左横に今度は愛紗の身長半分ぐらいの小さな男が立っていた。

 

                     (2)

 

 

 

 

「へへへっ~~~、よく避わしたな」

 

小さな男はお手玉の要領で4本の小刀を器用に操っていた。

 

「あんたはここで死んでもらう!!!」

 

大男は小男の言葉を合図に愛紗に向かって突進してきた。

 

そしてその勢いを活かして、大斧を一気に振り下ろす。

 

しかし、大振りなその攻撃は愛紗をとらえることなく空を切る。

 

空ぶったその攻撃は地面にぶつかると大きな音を立ててあたりに砂塵を巻き起こす。

 

「力だけは少しあるようだな・・・」

 

辺りには砂埃が舞い、視界が悪くなっていたのだが何かキラッと光ったように愛紗は感じた。

 

すると、光った部分から先ほどの小さな男が持っていた小刀がこちらに向かって数本飛んでくる。

 

愛紗はその小刀を偃月刀で丁寧に難なく打ち落としていく。

 

最後に顔に向かってきた小刀を打ち落とそうとしたそのとき、砂埃の中から先ほどの大男が突然現れる。

 

そして、今度はなぎ払うように大斧を振るってきた。

 

愛紗は小刀を打ち落とすのを止めて最小限の動きで小刀を避けた後、大斧を偃月刀で受けとめる。

 

偃月刀と大斧が交差すると、愛紗に予想以上の衝撃が伝わってきた。

 

愛紗は大斧の威力を利用して大きく後ろに飛び退き、相手と少し距離を置いた。

 

「ちっ・・・、なかなか・・・」

 

着地した後、愛紗はすぐさま体勢を整えなおす。

 

いままで周りに舞っていた砂埃もしだいに晴れてくる。

 

大男と小男の姿もくっきり見えるようになった。

 

「フッ~~フッフ~~~・・・コロス・・・」

 

「ケケケケケッ」

 

大男は先ほどよりもさらに興奮しており、小男は気味の悪い笑い声をあげていた。

 

「気色の悪い連中だな。早く終わらせるか・・・ここで時間を使うわけにもいかんのでな」

 

「ケケケッ、なにを余裕ぶっこいてるんだよ!お前はここで死ぬんだ!殺れ!!」

 

大男はまた小男の命令を受けて愛紗に向かって一直線に突進してくる。

 

大斧を大きく振りかぶり、愛紗の頭部をめがけて振り下ろされる。

 

「やったか!?」

 

小男は大男の影で愛紗がどうなっているかが見えていない。

 

だが、避けた様子もないし、武器同士が重なり合う時の甲高い金属音も聞こえてこない。

 

あの関羽を仕留められた。

 

小男はそう思ってニタッと笑みをこぼす。

 

しかし、その考えはすぐに改めなければならなくなった。

 

「どうした?もっと力を入れんと私を殺せんぞ?」

 

不意に大男の体の向こう側から女の声が聞こえてきた。

 

「なっ!!」

 

その声に驚いた小男はいったいどうなっているのかと思い、二人の様子が見える位置まで移動する。

 

そこにはとんでもない光景があった。

 

愛紗は大男の斧を片手で掴んで受け止めていたのだ。

 

小男はその光景を見て女の細腕のどこにそんな力があるのかと驚愕するしかなかった。

 

大男はそこから押し切ろうとすべての力を振り絞っているように見える。

 

しかし、そこからピクリとも動く気配はない。

 

大男はそんな様子なのに愛紗の表情はとても涼しげであった。

 

「遊びは終わりだ」

 

そういって愛紗は斧を掴んでいる左手に力を込めていく。

 

斧からはピキピキと異様な音が聞こえてきて、しだいにヒビがはいっていく。

 

そして最後に愛紗が少し力を加えると斧の刃はバラバラに握りつぶされた。

 

武器をなくした大男は目の前の出来事を頭の中で処理できないでいた。

 

その間に愛紗は次の行動に入っていた。

 

偃月刀を構えて大男の腹めがけて一気に突き刺す。

 

「ブッ・・・ハッ・・・」

 

大男の背中からは偃月刀が生えており、そこから鮮血がふきだした。

 

愛紗は大男の体から偃月刀を引き抜くと、支えをなくした巨体は背中からズシンと重い音をたてて倒れていった。

 

「あ・・・握力で斧を・・・、それにアイツを一発で・・・」

 

小男は目の前の光景を信じることができず、すこし呆然としていた。

 

「さて、待たせたな。次はお前だ」

 

そこに軍神からの死の宣告がなされる。

 

「わっ・・・わぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」

 

小男はその恐怖に耐えられなくなって混乱し、手に持っていた小刀をめちゃくちゃに投げ始めた。

 

愛紗は自分にあたる物だけを選別して弾き落とし、徐々に小男に近づいていく。

 

「く・・・来るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

小男は恐怖を紛らわすために大声を上げながら、小刀を投げ続ける。

 

しかし、いっこうに愛紗に当たる気配はない。

 

そして小男は手持ちの小刀をすべて投げつくしてしまう。

 

結局、一本も愛紗にあたることはなかった。

 

愛紗は小男の目の前で歩みを止める。

 

「あっ・・・・ああっ・・・・・あああッ・・・・・・・・」

 

小男の顔は恐怖で引きつっており、脚もワナワナと震えて動くことも出来ないようだった。

 

愛紗は左の拳を握りしめて、相手の鳩尾にその拳を抉りこむ。

 

「ガハッ・・・」

 

鉄拳の威力に小男の体は宙に浮き上がる。

 

そして、地面に背中から落ちた時には口から泡を吹いていた。

 

「行くか・・・」

 

地面に伏した二人の男を置いて、愛紗は再び進軍を開始した。

 

「へへへっ~~~、よく避わしたな」

 

小さな男はお手玉の要領で4本の小刀を器用に操っていた。

 

「あんたはここで死んでもらう!!!」

 

大男は小男の言葉を合図に愛紗に向かって突進してきた。

 

そしてその勢いを活かして、大斧を一気に振り下ろす。

 

しかし、大振りなその攻撃は愛紗をとらえることなく空を切る。

 

空ぶったその攻撃は地面にぶつかると大きな音を立ててあたりに砂塵を巻き起こす。

 

「力だけは少しあるようだな・・・」

 

辺りには砂埃が舞い、視界が悪くなっていたのだが何かキラッと光ったように愛紗は感じた。

 

すると、光った部分から先ほどの小さな男が持っていた小刀がこちらに向かって数本飛んでくる。

 

愛紗はその小刀を偃月刀で丁寧に難なく打ち落としていく。

 

最後に顔に向かってきた小刀を打ち落とそうとしたそのとき、砂埃の中から先ほどの大男が突然現れる。

 

そして、今度はなぎ払うように大斧を振るってきた。

 

愛紗は小刀を打ち落とすのを止めて最小限の動きで小刀を避けた後、大斧を偃月刀で受けとめる。

 

偃月刀と大斧が交差すると、愛紗に予想以上の衝撃が伝わってきた。

 

愛紗は大斧の威力を利用して大きく後ろに飛び退き、相手と少し距離を置いた。

 

「ちっ・・・、なかなか・・・」

 

着地した後、愛紗はすぐさま体勢を整えなおす。

 

いままで周りに舞っていた砂埃もしだいに晴れてくる。

 

大男と小男の姿もくっきり見えるようになった。

 

「フッ~~フッフ~~~・・・コロス・・・」

 

「ケケケケケッ」

 

大男は先ほどよりもさらに興奮しており、小男は気味の悪い笑い声をあげていた。

 

「気色の悪い連中だな。早く終わらせるか・・・ここで時間を使うわけにもいかんのでな」

 

「ケケケッ、なにを余裕ぶっこいてるんだよ!お前はここで死ぬんだ!殺れ!!」

 

大男はまた小男の命令を受けて愛紗に向かって一直線に突進してくる。

 

大斧を大きく振りかぶり、愛紗の頭部をめがけて振り下ろされる。

 

「やったか!?」

 

小男は大男の影で愛紗がどうなっているかが見えていない。

 

だが、避けた様子もないし、武器同士が重なり合う時の甲高い金属音も聞こえてこない。

 

あの関羽を仕留められた。

 

小男はそう思ってニタッと笑みをこぼす。

 

しかし、その考えはすぐに改めなければならなくなった。

 

「どうした?もっと力を入れんと私を殺せんぞ?」

 

不意に大男の体の向こう側から女の声が聞こえてきた。

 

「なっ!!」

 

その声に驚いた小男はいったいどうなっているのかと思い、二人の様子が見える位置まで移動する。

 

そこにはとんでもない光景があった。

 

愛紗は大男の斧を片手で掴んで受け止めていたのだ。

 

小男はその光景を見て女の細腕のどこにそんな力があるのかと驚愕するしかなかった。

 

大男はそこから押し切ろうとすべての力を振り絞っているように見える。

 

しかし、そこからピクリとも動く気配はない。

 

大男はそんな様子なのに愛紗の表情はとても涼しげであった。

 

「遊びは終わりだ」

 

そういって愛紗は斧を掴んでいる左手に力を込めていく。

 

斧からはピキピキと異様な音が聞こえてきて、しだいにヒビがはいっていく。

 

そして最後に愛紗が少し力を加えると斧の刃はバラバラに握りつぶされた。

 

武器をなくした大男は目の前の出来事を頭の中で処理できないでいた。

 

その間に愛紗は次の行動に入っていた。

 

偃月刀を構えて大男の腹めがけて一気に突き刺す。

 

「ブッ・・・ハッ・・・」

 

大男の背中からは偃月刀が生えており、そこから鮮血がふきだした。

 

愛紗は大男の体から偃月刀を引き抜くと、支えをなくした巨体は背中からズシンと重い音をたてて倒れていった。

 

「あ・・・握力で斧を・・・、それにアイツを一発で・・・」

 

小男は目の前の光景を信じることができず、すこし呆然としていた。

 

「さて、待たせたな。次はお前だ」

 

そこに軍神からの死の宣告がなされる。

 

「わっ・・・わぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」

 

小男はその恐怖に耐えられなくなって混乱し、手に持っていた小刀をめちゃくちゃに投げ始めた。

 

愛紗は自分にあたる物だけを選別して弾き落とし、徐々に小男に近づいていく。

 

「く・・・来るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

小男は恐怖を紛らわすために大声を上げながら、小刀を投げ続ける。

 

しかし、いっこうに愛紗に当たる気配はない。

 

そして小男は手持ちの小刀をすべて投げつくしてしまう。

 

結局、一本も愛紗にあたることはなかった。

 

愛紗は小男の目の前で歩みを止める。

 

「あっ・・・・ああっ・・・・・あああッ・・・・・・・・」

 

小男の顔は恐怖で引きつっており、脚もワナワナと震えて動くことも出来ないようだった。

 

愛紗は左の拳を握りしめて、相手の鳩尾にその拳を抉りこむ。

 

「ガハッ・・・」

 

鉄拳の威力に小男の体は宙に浮き上がる。

 

そして、地面に背中から落ちた時には口から泡を吹いていた。

 

「行くか・・・」

 

地面に伏した二人の男を置いて、愛紗は再び進軍を開始した。

 

                      (3)

 

 

 

 

先頭最前線 右翼

 

右翼は主に魏の部隊が主力として構成されている。

 

率いるのは“魏武の大剣”春蘭、副将として虎痴と称される季衣がついていた。

 

戦況は三国側有利に進んでおり、被害も極めて軽微である。

 

しかし、敵兵の数が多いため戦線を押し上げることまではできていなかった。

 

「季衣、状況はどうだ?」

 

春蘭は敵数十人を相手にしながら、後ろにいる季衣に話しかける。

 

季衣は季衣で敵数人と目下戦闘中である。

 

「敵兵が多いですよ~。あまり進めてません。どうしますか?春蘭様?」

 

二人は会話しながらも楽々と敵を撃破していく。

 

春蘭の背中を切りつけようとした兵士は切りつける前に吹き飛ばされていた。

 

二人がかりで襲ってみたが、まるで効果はなく、返り討ちにされていた。

 

「むぅ~~~・・・、おっ、そうだ」

 

敵を切り伏せながら春蘭は何か思いついたらしく、七星餓狼を構える。

 

「何するんですか?」

 

「いや、雪蓮と戦った時に使ったあの技を使ってみようかと思ってな」

 

「ええぇ~~、大丈夫ですか?」

 

「分からんが…たぶん大丈夫だろう。季衣、すまんがそれまで辺りの敵を頼む」

 

「は~~い」

 

季衣はすぐに春蘭の元へと近づいていき、春蘭を中心に自分の武器の岩打武反魔(いわだむはんまー)をぐるぐると回し始める。

 

その範囲内にいた敵兵たちは巻き込まれて次々に吹き飛ばされていく。

 

範囲外にいた者もあまりに危険すぎて近づくことができないでいた。

 

「はぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

春蘭はジッと七星餓狼を構えながら、気を溜めていた。

 

しだいに七星餓狼に紫っぽい色をした気が纏い、甲高い音が当たりに鳴り響いている。

 

そして形が変わっていき、大きさもしだいに大きくなっていく。

 

大きく・・・大きく・・・

 

「春蘭様・・・でかすぎじゃありませんか?」

 

七星餓狼に纏う気の大きさは、しだいに空を突き破りそうなぐらい大きくなっていた。

 

「季衣・・・、これはどうやって制御するのだ?」

 

「そんなの僕に聞かないでくださいよ!!」

 

「雪蓮と戦った時よりも何か氣の集まり方がすごいぞ!!」

 

「それ・・・爆発したりしませんよね」

 

「そんなの私も知らん!!」

 

「しゅんらんさま~~~~~~~」

 

季衣は潤んだ目で春蘭の顔を見上げていた。

 

「そろそろきつくなってきたし、ちょっとやってみるか。季衣、離れてろよ!!」

 

「言われなくても逃げますよッ!」

 

季衣は春蘭の背後に回って巻き込まれないように少し離れる。

 

「行くぞ!!乾坤一擲!!!夏侯元譲の放つ一撃!!!!でぇぇぇいぃぃぃぃやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

春蘭は敵が大勢いる場所目掛けて馬鹿でかい気を纏った七星餓狼を縦に振り放った。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!

 

まるで天高くそびえ立っていた塔がだんだん敵陣に向かって倒れていっているようだった。

 

紫色の気が神々しい光を放ち、溢れんばかりに舞い散って、大地は地走りを起こしながら敵陣に向かっていく。

 

この大陸全土を半分に分けてしてしまうんじゃないかと感じるほどだった。

 

そして敵陣にぶつかった瞬間、目が眩むほどの光が辺りを照らして目の前が真っ白になった。

 

「「「「「ぎゃああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」」」」」

 

真っ白で辺りの様子は分からないが、兵士たちの断末魔は聞こえてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして白い光が収まり、春蘭と季衣は顔を覆っていた手をどけ、そして目をゆっくりと開ける。

 

目の前には春蘭が放った気が通ったであろう跡が一直線に残されていた。

 

その一直線には人はおろか草木、岩なども何もない不毛の地と化している。

 

近くにいた味方兵士もその様子にただ呆然とするしかない。

 

ピカッと何かが光ったと思って目を閉じ、そして次に目を開けたときには目の前にいた多くの敵兵たちが姿を消し、さらに環境すらも変わっていたのだ。

 

比較的近くにいた季衣でも状況が分かっていない。

 

それどころか技を放った春蘭も自分がしたことなのかと少し戸惑っていた。

 

「・・・・・・・・・・・・、春蘭さま?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・、何だ・・・・・・季衣・・・」

 

「やりすぎたんじゃないですか!?てゆうか!!味方まで巻き込んでませんよね!?」

 

「目の前の敵にむかって放ったからな・・・たぶんいないだろ・・・たぶん・・・・・・」

 

辺りにちょっとした沈黙が流れる。

 

春蘭も心の中で“ちょっとやりすぎちゃったかな~”と思っていた。

 

一方、少し離れた位置から見ていた敵兵は“あれに巻き込まれたらたまらない”と一目散に退散していた。

 

「まぁ、とりあえず・・・敵を殲滅できただけで良しとしよう!!全軍!!進め!!進めー!!!」

 

「ちょ!!それでいいんですか!?」

 

「いいんだ!」

 

「あの技、もう絶対使わないでくださいよ!!危なっかしすぎて見てられません!!華琳様にも報告しますからねっ!!!」

 

二人はそんな会話をしながらも先へ進んでいった。

 

                     (4)

 

 

 

 

戦闘最前線 左翼

 

ここでも虐殺といってもいいくらいの圧倒的な戦いが繰り広げられていた。

 

辺りは敵兵の死体で埋め尽くされて、地面が見えない。

 

そんな状況を作り出していたのは小覇王孫策だった。

 

あたり一面にさっきを振りまいて、敵を容赦なく叩ききっている。

 

味方の兵士も本当にこの人が敵でなくて良かったと安堵していた。

 

今も数十人いた敵小隊を雪蓮が一人で壊滅状態にして、残り二人となっていた。

 

雪蓮はそのうちの一人を情け容赦なく切り伏せる。

 

最後に残った男はその隊の隊長格にある者だった。

 

雪蓮はわざと地位の高そうな者を残して戦っていたのである。

 

雪蓮は男にジリジリと近づいていく。

 

隊長格の男は雪蓮の殺気に当てられて動きをとることができなかった。

 

雪蓮は顔が触れそうになるまで近づくと男の胸倉を掴みあげる。

 

そして、片腕でその体を持ち上げてしまう。

 

「あなたが死んじゃう前に教えて欲しいことがあるんだけど」

 

雪蓮は冷徹な笑みを浮かべながら男に尋ねる。

 

「あなたの仲間に弓を使う“女”がいるでしょ?この戦にいる?」

 

胸倉を掴まれているため男は声を上げることができない。

 

「ああ、ごめんなさい。気が利かなくて」

 

雪蓮がそのことに気づくと男を無造作に放り投げる。

 

「かはっ・・・、お・・・オレは知らない・・・頼む!!助けてくれ!!!」

 

男は地面に座りながら懇願するように雪蓮の顔を見上げていた。

 

「ほんとに?」

 

「本当だ!頼む、オレを助け・・・」

 

「そう、残念だわ。じゃあね」

 

男の命乞いの最中に雪蓮は別れの言葉を述べて首元に南海覇王を突き刺した。

 

南海覇王を引き抜くと男の死体は前のめりになって息絶えた。

 

「あの女はいないのかしら・・・これで7人目なんだけどな・・・」

 

雪蓮は辺りに散らばっている死体の数々を見ながら一人で愚痴る。

 

すると、右翼の方からなにやら紫色の気が空に向かって伸びながら輝いているのが見えた。

 

「何あれ?でかいわね・・・右翼っていったら春蘭たちだったかしら?」

 

そういいながら考えていると後方から自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。

 

振り返ってみると亞莎が雪蓮の名を呼びながらこちらに向かってきていた。

 

「雪蓮様、大丈夫ですか?」

 

「ええっ、今のところは余裕ね。それより、全体的な戦況はどうなってるの?」

 

「はい、それの報告に来ました。中央、右翼は戦線を押し上げています。我らが圧倒的に有利です」

 

「あら、私の隊が今一番遅れてるのね。ちょっと雑魚を斬りすぎたかしら」

 

「それが気になって様子を見て来いと冥琳様に言われて来たというのもあるのですが」

 

「そう。迷惑をかけちゃってるみたいね。それじゃあ、亞莎も手伝ってくれる?」

 

「はい!もちろんです!!」

 

「なら、一気に追いつくわよ!!全軍、進軍開始!!」

 

雪蓮の威厳のある言葉の後、左翼も一気に戦線を押し上げていった。

 

                       (5)

 

 

 

 

三国軍 本陣

 

本営には華琳と蓮華をはじめ、冥琳と稟が控えていた。

 

「左翼の様子はどうなの?冥琳?」

 

「亞莎を向かわせました。もうじき、報告が来ると思います」

 

先ほどから落ち着きのない蓮華をなだめるように冥琳はそういう。

 

「蓮華、さっきからどうしたの?落ちかないわね」

 

「別に・・・、ただ姉様が心配で・・・」

 

「あの雪蓮がそう簡単に死ぬわけないでしょ?それはあなたが一番よく理解してるんじゃないの?」

 

この華琳の言葉に蓮華は素直に返事を返すことができなかった。

 

すると、本営に流琉が入ってきた。

 

華琳、蓮華の前で肩膝をついて報告を始める。

 

「報告します。左翼も戦線を押し上げ始めました。敵側からは逃亡兵、投降兵も出てきてます」

 

「そう、わが軍が圧倒的に有利というわけね」

 

「特に右翼の春蘭様の隊の進攻が速いですね。敵軍もほぼ壊滅状態ということです」

 

「姉様は無事だった?」

 

「はい!亞莎さんから先ほど伝令がありました」

 

「そう・・・よかった」

 

蓮華はその報告を聞いてホッと胸をなでおろす。

 

「華琳様、そろそろさらに兵を増員して、一気に決着をつけられてはどうでしょうか」

 

「うむ、私もそれに賛成だ。勢いも流れも我らにある。この流れのまま敵を押しつぶせるだろう」

 

「そうね、そうしましょう。具体的にはどうするの?」

 

「中央には星と翠の隊を、右翼には流琉の隊を、左翼には亞莎の隊が向かったからそれで良いだろう」

 

「分かった。蓮華もそれでいいかしら?」

 

「ああ、問題ない。冥琳、稟もその手はずで頼む」

 

「「御意」」

 

「流琉も行きなさい。頼むわよ」

 

「はい!」

 

3人はすぐさま命令を遂行するため本営から出て行った。

 

すると、当然のことながら華琳と蓮華が残される形となった。

 

「ねぇ、蓮華。あなたはこの戦いをどう見てるの?」

 

「??どういう意味?」

 

「なんかひっかかるのよね。あちらから攻め込んできたのに実力がこの程度だなんて・・・」

 

「そうだな・・・」

 

「その他にも気になることがあるから話し合いが必要だと思うの。それと、一刀の件も含めてね」

 

                       (6)

 

 

 

 

戦闘最前線

 

本陣から第2軍が投入されたことにより、戦況がさらに圧倒的になる。

 

敵兵はもはや戦意を喪失している者が多く、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑っていた。

 

春蘭、雪蓮、愛紗の隊も徐々に敵本陣と思われる隊に集結しつつあった。

 

敵本陣近くでは愛紗が獅子奮迅の活躍を見せていた。

 

一薙ぎすれば数十人の体が吹き飛ばされるというのはもはや味方、敵問わずに見飽きるほどの光景になっていた。

 

「愛紗――――――――――――――――!!」

 

その声に愛紗は後ろを振り返ると、そこには春蘭と季衣がいた。

 

「春蘭か、お前がここにいるということはもうそろそろこの戦も終わりそうだな」

 

「敵はもはや壊滅状態だ。このまま一気に敵総大将の首をとる!」

 

「最後まで気は抜くなよ。まだ奴が出てきていない」

 

「白髪の男か?」

 

愛紗はコクリと縦に首を振る。

 

「まあ、出て来た時はそのときだ!私が相手をしてやる!!行くぞ!!!愛紗!!!季衣!!!」

 

「あっ!!待って下さいよ~春蘭様~~!!」

 

春蘭が馬を走らせた後、それを追うように季衣がついていった。

 

愛紗はやっぱり相変わらずだなと思いながら二人の後を追いかけていった。

 

 

 

 

 

 

 

それから、三人は敵を蹴散らしながら敵本陣に兵を引き連れて突入を開始した。

 

しかし、突入した時にはすでに三国軍と敵軍との戦いは始まっていた。

 

どうやら雪蓮たちの隊がすでに入っていたようだった。

 

「くそっ!雪蓮に先を越されたか!!我らも続くぞ!!!」

 

春蘭の言葉を合図に率いられた兵士たちは一気に突撃を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

襲い掛かってくる敵を払いながら春蘭、季衣、愛紗は敵本陣の中央へ目指していく。

 

「ああッ!!あれ!!雪蓮様じゃないですか!?」

 

季衣が指差す方向を見ると、そこには雪蓮と亞莎が敵に囲まれていた。

 

「大変ですよッ!!早く救援に行かないと!!」

 

「いや・・・問題ないだろう」

 

季衣の後ろにいた愛紗がそう言いながら、近づいてきた敵の体を偃月刀で貫いていた。

 

「えっ!でも・・・」

 

予想外の返事に驚いて季衣は愛紗の顔を見上げる。

 

「ほら、もう終わっているではないか」

 

「えっ?」

 

その言葉の後、季衣は再び自分が指差していた雪蓮がいた所を見やる。

 

すると、雪蓮と亞莎を囲んでいた敵兵たちがいなくなっていた。

 

いや、いなくなったのではなくそのほとんどの者が地面に伏していた。

 

そのすべてを雪蓮と亞莎が倒してしまっていた。

 

「あっ・・・ほんとだ」

 

「とりあえず、行ってみよう。春蘭は・・・まぁ大丈夫だろう」

 

季衣と愛紗は突撃していった春蘭の様子を気にしながらも、二人は雪蓮たちのほうへ近づいていった。

 

 

 

 

 

「あら、愛紗に季衣じゃない。遅かったわね」

 

「さすがは小覇王殿。ところで、敵の頭(かしら)は?」

 

「まだ見つかってないわ。ここにいると思ったんだけど、いなかったしね」

 

「はい、もしかしてすでに逃げ出した後かもしれません」

 

亞莎と季衣は戦場をぐるりと見回しながらそれらしき人物を探す。

 

「おおっ、お前達ここにいたのか!!」

 

後ろの方から春蘭の声が聞こえ一同は振り返る。

 

「春蘭、首謀者らしき奴はいたか?」

 

「みんな同じ雑魚ばっかりだからな。分からん」

 

「とりあえず、ここの敵を掃討しましょう。何人か捕縛して聞きだすのもありだと思います」

 

「亞莎の言うとおりね。さっさと追っ払いましょう」

 

その場にいた5人は一緒にコクッと頷いた後、各自散らばって敵兵掃討を開始した。

 

                    (7)

 

 

 

 

その後、第2陣も最前線へと合流し、さらに戦を優位に進めていく。

 

猛将達の活躍により黒兜の兵たちは敗走

 

見事、戦は三国側の勝利に終わった。

 

しかし、首謀者らしき人物の確保や愛紗の言う白髪の男“ツルギ”は結局出てこなかった・・・

 

 

                     (8)

 

 

 

 

その日の戦闘が終了した夜

 

軍師たちによって軍師会議が開催されることになった。

 

また、軍師の他にも華琳と蓮華、雪蓮が参加することになっている。

 

「あとは華琳だけね・・・」

 

会議がおこなわれる王座の間にはすでに大体の人数が集まっていた。

 

「それにしても、姉様が遅刻しないで会議に参加するなんて珍しいですね」

 

「そうかしら?」

 

「それだけ、雪蓮も興味があるってことだな。いつもなら間違いなく遅刻している」

 

「冥琳ひ~ど~い~」

 

雪蓮は机をバンバン叩きながら抗議している。

 

「詠ちゃん。私も居ていいの?」

 

「ええ、朱里と雛里、桃香も居ないから頼れるのは月だけなのよ。お願いね」

 

「うん♪」

 

各自がそれぞれの会話をしていると

 

「ごめんなさい。遅くなってしまって」

 

白帝城王座の間に華琳が入ってくる。

 

その後を稟、秋蘭と続く。

 

華琳が席に座ると会議参加者全員が集合した。

 

「みんな集まったわね」

 

詠が周りを見渡して再度確認する。

 

「それではこれより三国会議を始めるわ」

 

END

 

 

 

 

 

あとがき

 

どうもです。

 

いかがだったでしょうか?

 

忙しいのは6月までのはずだったのに、あまりの忙しさで同僚数人がダウン・・・

 

無駄に元気な私・・・

 

6月終わりに上司から「すまんけど、まだやってくれるやんな?」というお願いという名の強制・・・

 

結局、9月近くまで忙しくなる予定になってしまいました。

 

なので、不定期更新がまだ続きそうです。

 

気長に待ってくださるとうれしいです。

 

更新を続ける意欲だけはありますので!!

 

あと、ちょっと見ていない間のTINAMIの変わりように少しビックリしました。

 

 

では、タイトルだけの次回予告を

 

次回 真・恋姫無双 黒天編 第9章「第2回三国会議」前編 情報整理

 

では、これで失礼します。

 

 

 

 

 

 

 


 
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