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真・恋姫†無双 真公孫伝 ~雲と蓮と御遣いと~ 1―8

真・恋姫†無双 真公孫伝 ~雲と蓮と御遣いと~ 1―8
更新させていただきます。

今回は、あとがきにアンケートを載せました。
「答えてやってもいいぞ」という心優しい方は、そちらもよろしくお願い致します。

2011-07-24 10:59:39 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:9520   閲覧ユーザー数:7110

 

 

 

 

この作品は恋姫無双の二次創作です。

 

三国志の二次創作である恋姫無双に、さらに作者が創作を加えたものであるため

 

人物設定の違いや時系列の違い。時代背景的な変更もありますので

 

その辺りは、なにとぞご容赦をお願いいたします。

 

上記をご理解の上、興味をお持ちの方は 次へ をクリックし、先にお進みください。

 

 

 

 

 

 

 

相手を信頼しているはずなのに恥ずかしくて行動に移れない者。

相手を信頼しているからこそ、強制もできず、ましてや文化の違いから、それを求めることの出来ない者。

 

そんな二人の、すれ違い。

先に殻を破るのは、どちらか―――

 

 

 

 

 

 

 

幽州、公孫賛の居城。

この何の変哲もない普通の城に最近、ある噂が立っていた。

 

 

「幽霊? いるわけないだろそんなの。天の御遣いの占い以上に当てにならないよ」

 

「いや、しかし現に聞いた者がいるらしいのですよ。というか白蓮殿、あの占いは当たりました」

 

両手の上にどっさりと山積みになった竹簡を星は恨めしげに見ながら、隣を歩いていた公孫賛に話を振る。が、それを公孫賛は一笑に付した。

 

怪談。

どこの世界にも一つや二つある類いの話。

学校のトイレ。墓地。病院などetc…..。

様々な時と場所に関わる怪談話。

それはこの世界、この時代に置いても例外ではなかったらしく、今や城内はその噂で持ち切りだった。

 

「噂だけなら私の耳にも入ってるよ。場所は確か……修練場の裏手だったか」

 

「えぇ、その修練場の裏手から、シュッ…、シュッ…と風を切っているような音がするらしく、時には奇声まで聞こえてくるとか」

 

「修練場の裏手って時点で信憑性低いだろ。誰かがこっそり修練してるんだよ。幽霊なんてありえないありえない」

 

と、首を左右に振って、私は幽霊なんて全然信じてませんよー、とアピールする公孫賛。

しかし、常山の昇り龍の眼はごまかせない。

 

「……白蓮殿。鳥肌が」

 

「……っ! なななななにを言ってるんだ星。幽霊なんてい、いるわけないだろ!? いやーちょっと冷えてきたかなーあはははー(棒読み)」

 

自分の腕を必死に擦りながら前後左右に首を振り続ける。その腕にはあからさまなほどにチッキン肌が浮かびあがっていた。

その首を動かし続ける様子はまるで、自分の身の回りの安全を確認するかのよう。

事実、確認だったのだろう。しばらくするとそれも収まり、ふぅ……と息を吐いて、ワタシゼンゼンダイジョブデスヨ?みたいなガチガチの表情を作った。

 

「ふむ……、それもそうですな。公孫伯珪ともあろうお方が幽霊などに屈していてはいい笑い物だ」

 

「そ、そうだ! その通り! 私はぜんぜん怖くないぞ、ちっともだ! 」

 

ニヤニヤと笑みながら言う星に対して、大げさすぎるくらいに頭を上下させ、応える。

星の言った台詞が、幽霊の存在を認めていることにも気付かない。

 

「そうですか。なら、確かめてこられるといい」

 

「あぁ、確かめる確かめ―――――なにを? 」

 

「いや、ですから幽霊がいるかいないかを」

 

「……はぁ!? ななななっなに言ってんだー! 」

 

星からの提案に公孫賛は驚愕の声で応えた。

もうここまでくれば、滅多なことでは流れは変わらない。

公孫賛が説得という名の誘導尋問に屈するのは時間の問題である。

 

 

 

 

「―――ということなんだ。燕璃、一緒に行かないか? 」

 

「嫌です」

 

一蹴。

君主としてのプライドを賭けた一戦は、開始から三秒でゴングが鳴った。

もちろん、公孫賛の1ラウンドKO負けである。

 

「頼むよー! この通り! 」

 

「嫌です」

 

最早、君主でもなんでもない一人の女の子、公孫賛はなりふり構わず、手を合わせてお願いしていた。

ここは城内にある燕璃の部屋。数日前、舞流と燕璃の仕官が決まった折に用意された個室である。椅子に座って早速あてがわれた仕事を黙々とこなしている燕璃に対し、公孫賛は机の前に立ってこれでもかというぐらい強く手を合わせていた。

 

「ふぅ……公孫殿。とりあえず普通にしてください。私は一武将で貴女は君主です。その辺りの立場を明確にしないと、勢力は崩壊します」

 

「あ、あぁ……」

 

一息ついて筆を置くと同時に、真っ直ぐに公孫賛を見つめて、はっきりと物申す燕璃。

そんな燕璃の毅然とした態度に気圧されて、公孫賛は居住まいを正す。

 

「ま、私も人のことは言えませんか。君主にこのような口の聞き方をしているのですから」

 

「いや、私としてはそういう堅苦しいのは公の場だけにしたいんだよ。普段から気を張っているといざという時に、さ」

 

「……そうですね。正直、本音を言えば私も堅苦しいのは好きではありません。それどころか、公孫殿の元に仕官できてよかったとさえ思っています」

 

「そ、そうなのか?」

 

予想外な燕璃の発言に、公孫賛の声に喜びの色が混じる。

しかし、それも次の言葉を聞くまで、だった。

 

「少なくとも袁紹のところよりかは、ですが」

 

「少なくともって……ん? というか燕璃たちは麗羽……じゃなかった、袁紹のとこに居たのか? 」

 

少なくとも、という言葉のニュアンスに落ち込み掛けた公孫賛だったが、耳慣れた名前、袁紹という目の上のたんこぶの名前に反応する。

 

「いえ、仕官していたというわけでは。ただ、舞流と二人で仕官しようと城まで行ったのですが……門前払いされました。ぞんざいで横柄な対応に舞流がキレかけたのですが、たまたま出てきたおかっぱの……そう、顔良殿といいましたか。顔良殿が無礼を詫びてきたので事なきを得たんですよ。顔良殿がいなければ、おそらく舞流は大暴れ。私たちは袁紹の領でお尋ね物になっていたかもしれませんね」

 

しみじみと語る燕璃を見ながら、

(斗詩がいなくなったら麗羽のところはどうなるんだろうな?)

とか思いつつ、ある意味門前払いをしてくれてよかった、と顔も知らない袁紹の門番に心の中でお礼を言う公孫賛だった。

 

 

 

 

「おっと、話が逸れてしまいましたね。えぇと……幽霊騒ぎでしたか? 」

 

「そ、そうなんだよ。今夜一緒に行かないか? 」

 

公孫賛としては毅然とした態度をとったつもりなのだろうが、傍から見ていると、必死に震えを抑えている怖がりな女の子にしか見えない。

そういう所こそ、男は可愛いと思うのだろうが、残念ながらこの部屋に居るのは燕璃と公孫賛のみ、客観的な意見は入る余地が無かった。

 

「そもそも、言い出しっぺの趙雲さんはどうしたんですか?あの人なら嬉々として着いていきそうなものですけど」

 

「子龍は―――」

 

「あぁ、確か起こした事件の罰として、倉庫の奥にあった竹簡の仕分け仕事中でしたね。いや、大変だー」

 

明らかに緊張感の無い台詞後半の棒読み。

初見でやったことを考えれば当然と言えなくもないが、心底星を嫌っているという発言ではなかった。本当に嫌いならそもそも気に掛けさえしないだろう。

 

 

「……まぁ、そうなんだよ。他に連れて行くやつがいなくてさー……」

 

「なら北郷さんは? あの人なら断ったりしないで……あぁ、あの人も確か竹簡の仕分け仕事中でしたね。趙雲さんの仕事を半分受け持つとは、もの好きというかなんというか」

 

燕璃の言った通り、一刀も目下竹簡の仕分け中。

『星の手綱を握れなかった俺の責任でもあるから』

と言って聞かず。結果的に星に割り当てられた仕事の半分を受け持っている。

その時、星は涙を流して喜んだとか。……まぁ、嘘だけど。

 

「子龍も駄目、北郷も駄目。舞流は夜、子龍に稽古をつけてもらうらしいから駄目。かといって他のやつらには立場的に頼めない……だから、燕璃しかいないんだよ」

 

目の前の机に両手を突いてうなだれる公孫賛。

はっきり言うが、他の一般人には見せられない有様だ。

特に、民には。

 

「……分かりました。お供させていただきます」

 

「本当か!? よかった~……断られたらどうしようかと思った」

 

「いえ、構いません。……私も…霊……体を……眠……(ボソボソ)」

 

同行者ができたことを喜び、舞い上がっている公孫賛を尻目に、燕璃はボソボソと何かを呟いていた。

 

「ん? 燕璃、何か言ったかー? 」

 

「なにも言ってません。今夜ですね。時間になったら私から公孫殿を呼びに行きますので」

 

そう言って竹簡から顔を上げた燕璃の目は、真っ赤とはいかないまでも充血していた。

ここ、燕璃の部屋のちょうど裏手が、問題の修練場だった。

 

 

 

 

そして時はあっという間に過ぎ、夜。

草木も眠る丑三つ時……なんてことは無いが、それに近い刻限。

修練場に続いている廊下を歩く二つの影があった。

言うまでも無く、公孫賛と燕璃である。

 

「なぁ燕璃~……やっぱりもう一人ぐらい誘った方が良かったんじゃないかぁ……? 」

 

「情けない声を上げないでください。あと、蝋燭をそちらにばかり持っていかないでいただけると助かるのですが」

 

そんなことを言いながらも燕璃は公孫賛の腕にしがみついている。

可愛い女の子が二人、お互いの腕にしがみついているというありそうでなさそうな光景。

他人が見れば微笑ましいとも思えるのだろうが、もちろん周りに人の気配は無し。

それがさらに彼女らの恐怖心を増幅させているのだろう。ひとつしかない蝋燭を、左に右にと行ったり来たりさせていた。

 

「そそ、そんなこと言われてもしょうがないじゃないか。……怖いんだし」

 

「なにを今さら……生きている人間の方がよっぽど怖いでしょう」

 

「そんなこと言って……燕璃も足震えてないか? 」

 

「震えてません」

 

「……ホントに? 」

 

「くどいです! だいたい公孫殿が着いてきてほしいというから――――!? 」

 

突然喋るのを止め、周りに視線を走らせ始める燕璃。

目が充血しているせいもあって、傍から見ればノイローゼ一歩手前の人に見える。

 

「ど、どうしたんだ? 急に黙って」

 

「……い、今、何か聞こえませんでしたか? 」

 

こころなしか燕璃の顔は青ざめ、口調もどこかおかしい。

燕璃の言葉に、公孫賛は耳を澄ませた。

すると

 

『シュッ……シュッ……シュッ……』

 

修練場にむかう廊下の奥。

おそらく発信源は修練場付近だろう。風切り音のような音が聞こえてきた。

その音は規則正しく一定の間を置いて鳴り続ける。

 

「ほほ、ほんとうに聞こえてきた……! 」

 

「ここ、この音がなんだというのですか! こんなものただの―――!? 」

 

『――――トー!!! 』

 

「うひぃ!? 」

 

音ごときになにを驚いているのか、と言おうとした矢先に、噂通りの奇声が響いてくる。

その奇声を聞いて、普段鉄面皮な彼女からは想像もつかない叫び声が喉から絞り出された。

そして沈黙。なにも聞こえなくなったことに彼女らは安心しかける。

だがしかし

 

『コツ……コツ……』

 

今度は足音が響いてくる。

しかも、公孫賛と燕璃が立ち止まっている廊下の先から。

暗がりで廊下の先は見渡せない。蝋燭を持っていたのがあだとなり、二人とも暗闇に目が慣れていなかったのだ。そして得体の知れないもの、得体の知れない状況という物は恐怖を助長させる。

 

「公孫殿すみませんもう無理です」

 

先にギブアップしたのは燕璃だった。

早口で公孫賛に謝罪したかと思うと、持っていた蝋燭皿を押し付け、脱兎のごとく来た道を引き返して行った。

後に公孫賛は言う。

 

――あの時の逃げ足は、神速の張遼を超えていた――と。

 

あっけにとられた公孫賛は、その場で尻もちを突いてしまう。

手に持った蝋燭皿を落とさなかったのは正に奇跡と言えよう。

 

『コツ…コツ…』

 

先ほどより近づいてきているのだろう。

足音の間隔がさっきより短く、そして音は大きくなっている。

公孫賛に廊下の先を見据えるという選択肢はなかったらしく、その場で覚悟を決めたかのように、ぐっ…!と目を閉じた。そして懺悔する。

 

「ごめんなさいごめんなさい目立ちたいとか言ってごめんなさいもう言いません普通でいいです地味でいいです分不相応なこといってすいませんでした反省してます―――」

 

そんな、聞いているだけでネガティブになりそうな台詞をエンドレス。

 

 

そして、無慈悲にも足音が目の前で止まった。

 

 

しかし、よく考えてほしい。

これは怪談の類である。つまり、話の主人公は幽霊、もしくは妖怪。

噂が噂を呼んだのだろうが、幽霊という存在のことだけははっきりと伝わっている噂話。

なら、話は単純明快。世間一般では幽霊には足が無いらしい。

じゃあなぜ―――足音が聞こえてくるのだろうか?

 

「なにしてんの? 伯珪さん」

 

「……えっ?」

 

公孫賛はおそるおそる目を開ける。

目の前には、木刀を肩に担いだ天の御遣い、北郷一刀が立っていた。

 

 

 

 

 

「あはははは!! なるほどね、そういうことかぁ! 」

 

「わ、笑うなよぉ! しょうがないだろ、怖いもんは怖いんだから! 」

 

修練場の壁にもたれかかり笑い声を上げる一刀に、公孫賛は頬を膨らませて抗議する。

二人の手にはお茶が。一刀が厨房に行って淹れてきたものだ。

 

「いやいやごめんごめん。あの怪談って修練場のことだったんだ」

 

「知らなかったのか? 」

 

「うん。俺が知ってたのは幽霊が出るってとこまで。場所までは知らなかったなぁ」

 

まさか俺が噂の幽霊だったとは、と一刀は苦笑する。

 

一刀の話によると、しばらく前から夜中にここで修練に励んでいるらしい。

星に負けてからというもの、用事のある日以外はほぼ毎日だそうだ。

時たま気合いが入りすぎて『チェストー!!! 』と叫んでいたところを誰かが聞いたらしく、それを奇声と誤認したようだった。

いや、少なくとも意味を知らない人にとっては奇声以外の何物でもないが。

 

「こんな夜中になぁ……。その服は? 初めて見る服だな」

 

夜空を見上げながら何かに思いを馳せた後、公孫賛が一刀の着ている服を指差す。

上は白い羽織。下は袴。

見る人が見れば、剣道の服に似ていることに気付いただろう。

しかし、ここは大陸。しかも一刀が居た時代より千年ぐらい前の時代。

あまり羽織や袴は一般には知られていないのかもしれない。

……まぁ、公孫賛の履いているものがスカートそのものである辺り、パラレルしまくりのパラレルワールドだとは思う。

 

「これ? これは俺が現代……天の世界に居た時に鍛錬で使ってた服。服の様式は覚えてたから、街の服屋で作ってもらったんだよ」

 

他にも色々あるよ、と一刀は付け足し、笑う。

 

「天の世界の服かぁ……なんかカッコいいな」

 

「ありがとう。そんな伯珪さんは可愛いと思うよ?怖がりなところとか」

 

「その話はもういいだろー!? 勘弁してくれよ~……」

 

笑いを含んだ一刀の言葉に、自分の腕に顔をうずめる公孫賛。

しかし、お茶は意地でもこぼさない。

 

「冗談だよ。でも、可愛いっていうのは冗談じゃないからさ」

 

「……」

 

さきほどとは違う意味で公孫賛は腕に顔をうずめる。

隠れていない耳は、両方とも真っ赤に染まっていた。

 

 

 

 

 

 

「さーてと! そろそろ戻ろうか? 睡眠時間が無くなっちまう。ほい、伯珪さん」

 

「んー? 」

 

公孫賛が顔を上げると、目の前に一刀の手が。

一拍遅れて、その手が自分に差しだされていることを認識する。

 

「んー? じゃなくて。ほら、手」

 

「あ、あぁ……」

 

「しょっ…!と…」

 

自分の手に重ねられた女の子特有の柔らかな手。

その感触を感じながら座っていた公孫賛を引き上げ、そして手を離した。

 

「よし、じゃあ戻ろう! 部屋まで送ってくよ」

 

そう言って一刀は歩きだす。もちろんお茶の湯呑を乗せたお盆を手に持って。

刹那、その背中に

 

「かっ、一刀っ! 」

 

公孫賛の決死の声が掛けられた。

 

数秒遅れて一刀が振り向く。

その顔は驚きというより、なにを言われたか分からないような怪訝な表情だった。

しかし、さらに数秒後には納得したような表情になる。

 

「あぁ、俺のことか。……いや、伯珪さんいつも北郷って呼んでたから、ちょっと驚いた」

 

「い、嫌…か? 」

 

「全然。むしろ嬉しいかな?名前で呼んでもいいって言ったのに、伯珪さんはずっと北郷だったから」

 

そう言いながら一刀は微笑む。心底嬉しそうに。

その一刀の笑顔を見て、再び公孫賛は赤面する。

先ほどと違うのは、腕に顔をうずめず、真っ直ぐに一刀の目を見据えたことだろう。

そして、覚悟を決めたように一回頷き、口を開いた。

 

「そ、そっか。……わ、わたしだけが一刀の真名を呼ぶのは不公平だから、これからは私のことも真名で呼んでくれ」

 

「えっ? 」

 

「聞き返すなよぉ! はいっ、て返事すればいいんだ! 」

 

「は、はい! 」

 

顔を真っ赤に染めた白蓮が吠える。

その迫力に押されて、条件反射的に首を縦に振る一刀。

一瞬の沈黙があり、一刀の顔になぜか安堵の表情が広がる。

 

「な、なに笑ってんだよ……」

 

「いや、笑ってないって。嬉しいだけだよ、白蓮さん」

 

「さん付けも禁止だ! というか分かっててやったろ! 」

 

「あ、ばれた? さん付け禁止か……分かったよ、白蓮」

 

白蓮は少しムスッとした顔で。

一刀は少しだけ幸せそうな顔で。

お互いを見つめ、数瞬後にはどちらが先か分からないぐらい同時に

 

「ぷっ……! 」

「ぷっ……! 」

 

相手のおかしな顔を見て吹き出していた。

明るく快活な笑い声が響く。深夜にもかかわらず、その笑い声はしばらく止むことはなかった。

 

 

 

「…うっし、今度こそ戻ろっか。白蓮」

「そうだな。…一刀」

 

 

今までお互いの大切な名前を呼ばず、一歩踏み出せなかった二人。

どちらも相手を尊重するが故の擦れ違い。

その壁は今夜、あっさりと打ち砕かれた。

ここから二人の話はどう進んでいくのか、まだ誰にも分からない。

ただ、一つだけ確かなのは、二人の距離がほんの一歩だけ縮まった。

ただ、それだけ。

 

 

二人はまだ気付かない。自分の胸に飛来した小さな一欠片の気持ち。

自覚するまでは分からない、その気持ちの正体に―――

 

 

「……男に真名を許したのって…初めてだな」

 

 

 

 

 

 

後日談。

数日後には新しい怪談が城内に広まっていた。

なんでも、場所はやはり修練場の辺りで、男女の笑い声が夜な夜な響いているとか。

あそこは昔、首切り場だっただの、死体が埋められているだの、根も葉もない噂ばかり。

人の噂は七十五日と言うが、まだまだ怪談話は止みそうにない。

誰かが言っていたらしいが、言い得て妙だと思う。

この時代、生きている者の方がよっぽど怖い、という言葉が。

少なくとも、この新しい怪談の正体を知っているのは、俺と白蓮だけである。

……それが少し、嬉しい。

―――北郷一刀の手記より―――

 

 

 

 

 

【あとがき】

 

真・恋姫†無双 真公孫伝 ~雲と蓮と御遣いと~ 1―8

[ 幽霊?いいえ、御遣いです。]

更新させていただきました。

 

 

疲れました。それはもうめちゃくちゃ疲れました。

夏はなんでこんなに暑いんでしょうか。

知っている方、教えてください。ついでに対処法なんかも。

 

さて、今回は白蓮さんメインのお話でした。

真・公孫伝なので当たり前と言えば当たり前なのですが。

夏まっさかりということもあり怪談系にしてみましたが、改めて見直してみると、薄っぺらいな~と思いつつ、自分の限界を垣間見た気が致します。

そして次か、そのまた次ぐらいには黄巾党編に入りたいと思います。

未だに黄巾党編に入っていないとなると、終わりはいつになるやら……ですね。

 

 

 

 

 

 

余談ですが、この間知人に「白蓮√も良いけど、他の√は書けないの?」と言われました。

なので、少しアンケート的なものを取りたいと思います。

 

【私、作者がもう一つ書くとするなら、どの√がいいか?】

 

というアンケートです。

あくまでアンケートですので、御答えは自由にしてもらって構いません。強制ではないです。

 

 

例えば、【 呉√の雪蓮√ 】など、細かくても良いです。

 

 

 

コメント欄にお願い致します。

もちろん、今すぐ書く気など毛頭ございません。

というか、これ一つで手一杯ですので、不可能です。

おそらく書くとしても終盤に近付いてきてからです。

それどころか書かないかもしれません。

もう一度書きますが、コメント欄に個人の自由で、お書き下さい。

強制は致しません。

作者の意識向上のため、何卒よろしくお願い致します。

 


 
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