No.227997

黒子……ですの。その7

tanakaさん

デート編、後篇ですの。
そして物語において一番重要な部分かな?

2011-07-14 23:40:02 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1726   閲覧ユーザー数:1658

 映画――ありきたりの恋愛映画。

 男と女が恋に落ち、目の前に立ち塞がる障害を越えていく物語。

 本当にベタな内容の恋愛映画。普段はこんな内容の映画なんて見ようとも思わないの

ですけれど、恋をすると人は変わるとうのは本当のことなんですね。

 好きな人と一緒に恋愛映画を見たい。

 映画の中の登場人物を自分達に当て嵌めて妄想をしたい。

 そんな風に思ってしまっているのですから――

 

 ですがまぁ、上条さんにとっては少々退屈だったのですかね。

「…………ぐぅ……ん」

 映画が始まってすぐに夢の世界に旅立った上条さん。デート中だというのに、相手を

無視して眠りにつくとは酷過ぎじゃありませんか?

 そんな酷い上条さんには少々お仕置きが必要かもしれませんね。

「ふふ……覚悟してくださいまし」

 ニヤける顔を隠しながら、上条さんの頬を突く。

「……ん、んぅ……っ」

 柔らかい頬の感触。プニプニとしていて気持ちがいい。

 それにしても全然、目を覚ます気配がありませんわね。まだ起きないのならば――

「もう少し大胆に動いても大丈夫ですよわね?」

 誰に聞いているのか分かりませんけど、つい聞いてしまいましたの。

 もう少し……もう少し、大胆に動いてもいいんですのよね?

「い、いきますの……」

 寝ている上条さんの唇に顔を近づけ――

 

「……んっ」

 ――触れるだけの軽い口づけ……キスをしてしまいましたの。

「はぁ……ぁ」

 男性との初めてのキス。唇と唇を合わせた口づけ。初めての体験。

 あぁ、どうしてこんなにも胸がドキドキするのでしょうか?

 上条さんとわたくしの唇。その二つが重なっただけだというのに……こんなにも幸せで

満たされた気持ちになる。

 これがキスの魔力……あぁ、わたくしは――白井黒子はもう一度、あなたに……

「……んぁ。ここ――は?」

「――っ!?」

「ん? 白井……か? 何をしているんだ?」

 もう一度キスをしようと顔を近づけた瞬間、目を覚ます上条さん。

 なんと言いますか、ほんとにタイミングの悪い……

「で、デート中に居眠りをするのはマナー違反ですのよ」

「――っ、わ、悪い……」

 素直に謝る上条さん。すいません。本当はこんなことを言いたかったわけではない

のですが、あなたがタイミング悪く起きてしまいますから、ですからこんな言い訳を――

 ほんとに、わたくしは悪い女ですの。ですが、もう少しだけ悪い女でいさせてくださいまし。

「ほら、上条さん。行きますわよ」

「お、おい白井? 映画はいいのか? まだ終わってないぞ」

「構いませんの。映画より、デートの途中で寝てしまう上条さんにお仕置きをする方が

先ですの」

 少々、悪戯っぽく微笑む。

「うげっ、マジかよ。あまりキツイのは勘弁して欲しいんだけどな」

「大丈夫ですの。特別キツイ罰を与えてあげますから」

「全然、大丈夫じゃねぇ」

「ふふ♪ 覚悟してくださいね♪」

 わたくしが上条さんに与える罰。とびきりのキツイ罰。それは――

 

「上条さん。わたくしにキスをして下さいな」

 人気の無い場所。そこに居るのはわたくしと上条さんの二人だけ。

 そこでわたくしは、上条さんに罰としてキスをするようにせがむ。

「き、キスって……そういうのは好きな相手とするもんだろ」

 罰でキスをさせることに納得がいってない様子の上条さん。まぁ、それもそうですわよね。

 普通、キスをしろと言われたらこんな反応をしてしまいますわよね。

 あぁ、もう仕方ありませんわね。こうなったら大人しく白状しますかね。

「上条さん。わたくし、あなたのことを好きになってしまいましたの」

「は……?」

「勿論、嘘や冗談なんかではありませんの。ほんとに、本当のほんとに、上条さんに恋を

してしまいましたの」

 自分の本当の気持ちを伝える。こんなタイミングで言うべきではないのは分かってます

が、もう我慢が出来ませんの。

「ですから、罰でキスをしろと言いましたが、本音としましては好きだからキスをして

欲しい。それだけなんです」

「し、白井……」

 困ったような困惑しているかのような表情の上条さん。

 まぁ、そうでしょうね。いきなり告白をしたんですもの。普通はこうなりますわよね。

「今すぐ返事が欲しいわけではありませんの。ですが、わたくしのこの気持ち。それだけは

心に留めておいて下さい」

 伝えることは全部伝えましたの。後は上条さんが判断を下すだけ。

「もし、わたくしと付き合っていただけるのでしたら、後日また連絡を――」

 そう言って、上条さんの頬にキスをする。

「――白井!?」

「ふふ、上条さんからの返事、期待して待っていますの♪」

 上条さんに頬笑み、その場からテレポートで消える。

 

 どんな判断が下されるのかは分かりません。ですが――わたくしにとっていい判断。

 それを下してくれることを祈っていますわ。

 


 
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