No.226911

北郷一刀・帰還物語3

テスタさん

結構皆さんの反応がよくてテンション上がってるテスタです。
今回でタイトルの意味が判明します。
どうか最後までお付き合い下さい。

2011-07-08 06:48:17 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:6996   閲覧ユーザー数:5773

 

 

 

 

 

こっから外史に対して作者なりのかなりご都合というか勝手な解釈があります。

なんか嫌な予感がする人は見ないほうがいいかもしれません。

 

それから蓮華さんから本編が始まる前に一言あるらしいです↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと話しを進める前にいいかしら貂蝉」

 

「何?蓮華ちゃん」

 

「前回、冥琳が死んでいるなんて言ったけど、

そんなことはなかったわ。

それに袁家は喋ってないだけでちゃんと居るし、

白蓮もそこで空気になって座っているわ」

 

「お~けい。了解よん」

 

 

 

 

 

頭の中がグチャグチャだ。

何をどう整理したらいいのかが分からない。

いや、整理なんてしたくない。

してしまったら。今起こっていることを理解してしまったら。

そこには絶望しかないと分かっているから。

 

 

 

 

 

「大丈夫ご主人様」

 

「ちょ……せん」

 

「ご主人様が混乱するのはわかっているけど、

今は私たちの話しを聞いてくれるかしらぁん?」

 

聞きたくない。

そう言えたらどれだけ楽だろうか。

でも、ここまで来て聞かないなんて選択肢を選ぶことは出来ない。

 

俺は貂蝉に支えられ席につく。

魏のメンバーの顔はみれなかった。

特に、華琳の顔は……。

 

「じゃあまずは私たちの話しからしましょうか。

ご主人様、貴方が体験した話しを話してくれる?」

 

「わかった」

 

そう言ってもう一人の俺は語りだした。

 

それは、俺が体験したことと違う三国志の物語だった。

 

ある日の夜、フランチェスカの敷地内で銅鏡を盗んだ人物と対立した俺は、

謝ってその銅鏡を割ってしまう。

その事により気がつけば三国志の時代にいたらしい。

そこで関羽さんと張飛ちゃんに出会い、この俺は三人で立ち上がったらしい。

なんと、そこに劉備さんはいなかった。

そしてちゃくちゃくと仲間を集め、県令から一国の主へと成り上がった俺は、

いよいよ群雄割拠の時代へ突入する。

そこで現れた謎の白装束、左慈といった『外史』の管理者との戦い。

その中で打ち負かしていった魏・呉の二国。

どれも俺の知らない話しばかりだった。

ていうか何だよ俺。三国統一しちゃったのかよ。凄いな。

本当に俺なのか?

 

そして最終決戦。

外史の管理者たちとの決着。

そこで俺は皆といる幸せを願ったらしい。

するとこの時代に皆で来ていたということだ。

なんとも……何ともすがすがしいハッピーエンドだった。

 

「俺たちの物語はこんなもんかな」

 

「次はご主人様……貴方の話をしてくれないかしらぁん?」

 

「………わかった」

 

今度は俺の番だ。

 

俺は……暫く黙った後、ポツポツと語った。

外史の管理者なんか毛ほども出てこない、俺と彼女たちの物語を。

それでも一生懸命駆け抜けた、戦いの日々を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピリリリリリ……。

久しく聞くことの出来なかった電子音で俺は目を覚ました。

 

「ん……俺、いつの間にか寝てたのか…」

 

昨日、ベッドに入った時は色々考えて寝れないだろうなんて思ったもんだけど、

どうやらいつの間にか眠っていたみたいだ。

小心者だと思っていたけど案外俺も図太いのかもしれない。

 

いや…違うか。ただ単に疲れてただけだ。

ちょっと暴れちゃったしなぁ…。

 

コンコン…。

 

「あの、ごしゅ……北郷さん。起きてますか?」

 

ノックと共に一人の女の子が入ってくる。

メイド服に身をつつみ薄紫色の髪をした子、昨日俺にお茶を入れてくれた女の子だ。

 

「うん、今起きたところ。おはよう」

 

「はい、おはようございます」

 

「わざわざ起こしにきてくれたんだ、ありがとう」

 

「へぅ……メイドですから」

 

照れて顔を赤らめる姿が可愛らしい。

思わず笑みがこぼれていた。

 

「さて、じゃあ着替えるから出来れば出て行ってくれると嬉しいんだけど」

 

「いえ、お着替えお手伝いします」

 

「へ?い、いやいや一人で出来るって!」

 

「これもメイドの仕事です。

それに、ご主人様にいつもやっていることですから」

 

「………俺は君のご主人様じゃないよ?」

 

「それでも貴方は『北郷一刀』様です。

精一杯出来ることをしたいんです」

 

そう言って笑う彼女に、

俺は結局勝てず着替えを手伝ってもらった。

何だか子供のころに母親に手伝ってもらった時のことを思い出して、少し気恥ずかしかった。

 

「ご主人様より少し筋肉がついてるんですね」

 

「あっちは太守だったんだろ?

だったら政務で急がしくて体を動かす暇はあんまりなかったんじゃないか?

それに比べてこっちは警備隊長だからね。

毎日体だけはキチンと動かしてたからさ」

 

流石にそれだけはコッチが上だと思いたい。

決して楽ではなかったからなぁ警邏の仕事は…。

 

「大変でしたか?」

 

「そりゃそうさ。

でも、それ以上に充実した毎日だったよ」

 

「へぅ…ごめんなさい。

余計なことを聞いてしまいました」

 

俺が少しくらい表情をしてしまったせいだろう、

悲しい顔をして彼女が謝る。

まいったな…そんな顔をさせるつもりじゃなかったのに。

ここは話しを変えてみるか。

 

「それにしても驚いたよ。

まさかあの時の子が董卓だったなんて」

 

「え?北郷さんもあっちで私に会っていたんですか?」

 

「少しだけだけどね。洛陽を落として、先遣隊として突入した時に君ともう一人……賈駆さんに会ったんだ。

その時は君が董卓だなんて知らなくてさ、結局蜀の方が安全だろうってことで蜀の陣地へ行ってもらったんだ」

 

「そうだったんですか……。

あっちの私は勿体無いことをしましたね」

 

「勿体無い?」

 

「はい。北郷さんと仲良くなれなかったことです」

 

あまりにも屈託のない笑顔で言うものだから、

俺は一瞬だけ言葉に詰まってしまった。

 

「っ……そう、だね。

俺もあっちで君ともっと話せてたらって思うよ」

 

なんとかそれだけを返して、

胸の奥から出そうになった何か例えようもない気持ちを

必死に押さえ込んだ。

これ以上、吹き出ないように……。

 

 

 

 

「さて…と、じゃあそろそろ行こうか」

 

「はい」

 

「と、言っても此処はもう校舎内なんだけどね」

 

あれから朝食をとり一息つくと、

そろそろ学校が始まる時間になっていた。

 

昨日俺は校長室の隣にある部屋で寝たため、遅刻の心配はない。

 

「あいつには悪いことしちゃったな、今日一日部屋に押し込めることになっちゃって」

 

「ご主人様は気にしていませんでしたよ」

 

「それでもさ。窮屈なのは変わらないだろうし」

 

口を動かしながら久しく持つことのなかった学生カバンを持ち、

すれ違い様に董卓ちゃんの頭へ手を置いた。

 

「起こしに来てくれてありがとう。

学校…行ってくるよ」

 

それだけを言って俺は廊下へと出た。

 

 

 

 

「やっぱり貴方もご主人様……いえ、『北郷一刀』なんですね。

きっとあっちの世界の私も貴方をよく知っていれば貴方に……

本当に……こんな終わり方しかないのかなぁ」

 

そんな董卓ちゃんの呟きは部屋を後にした俺には聞こえなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外史とは可能性の世界。

よく分からない人のために言えばifの世界。

つまりは平行世界のようなもんだと思ってくれればいいだろう。

 

例えばご飯を食べる時に、まず味噌汁から飲んだ世界と、味噌汁ではなくおかずから食べた世界みたいに。

可能性は無限大なんて良くいうがその通りで、無数にある。

それも数え切れないくらいに。

つまり外史って奴も数え切れないくらい沢山存在しているってことだ。

 

 

 

 

 

「――郷くん?北郷くん!」

 

「……はひ?」

 

「はひ?じゃないですよ?

今は授業中です。ボーっとされては困ります」

 

「あ、……すいません」

 

「まったく……それにしても珍しいですね、

普段真面目な北郷くんが――」

 

何とか平謝りをし許して貰う。

危ない危ない。今は授業中だ。しっかりと授業を受けないと!

そう思い教科書に手を伸ばす。

なつかしい代物。もう、触れることはないと思っていたもの。

授業風景。

ただの一般人として、生徒として受ける授業。

向こうでは縁のなかったもの。

それまでは当たり前だった日常。

 

こっちをみてクスクス笑うクラスメイト。

もう、しっかりしなくちゃダメですわ。

なんてお嬢様言葉も懐かしい。

ごきげんよう。なんて挨拶も久しぶりに使った。

 

全部が全部、当たり前だった『北郷一刀』の日常がここにあった。

 

 

 

「かずぴー、どないしたんや?授業中ボーっとなんかして、

ひょっとしてかずぴーハーレムの子らと何かあったんか?」

 

「………」

 

「って聞いとんのか?」

 

「あ、いや……えと、及川……だよな?」

 

「はぁ?何当たり前のこと言っとんねん?

かずぴーの親友の及川やぞ」

 

「…だよな」

 

親友だったかはあやふやだったが、悪友だった及川。

うん、忘れてはいなかった。

だけどこうして久しぶりに見ると、こんな顔だったっけ?とか思ったりしなかったり。

ただ、記憶の中と変わらないこいつの態度は俺を落ち着かせてくれた。

 

「なぁ及川」

 

「なんやかずぴー」

 

「昼になったんだし飯でも食いにいこうぜ」

 

フランチェスカの食事……もとい現代の食事、これも懐かしい代物だ。

昨日は日本食が出てきて、これもおいしかった。

 

頷いた及川と共に売店へ行き、サンドウィッチとジュースと買って中庭にでる。

そこで適当な所に二人で座った。

 

「そういや今日はハーレムメンバーと飯は食わんのかいな?

ほんまに喧嘩でもしたんか?」

 

「いや、そんなことないさ」

 

ちなみにハーレムメンバーとは関羽さんたちのこと、

三国全員の女の子と関係もつって、魏の種馬なんて呼ばれてた俺もビックリだよ。

 

そんなことを思いながら買って来た炭酸入りのジュースを一口…

 

「……いたっ!?」

 

「どしたかずぴー?」

 

「いや、炭酸ってこんなに喉が痛くなるもんだったっけ?」

 

「へ?それそんなに炭酸強いジュースでもないはずやけど……」

 

炭酸がくれる喉の痛みなんてすっかり忘れていた。

ここ一年はお茶ばかり飲んでいて、少し今の俺には刺激が強すぎたみたいだ。

でも……

 

「痛みを感じるって……なんかいいよな」

 

「……うわぁドン引きやで、いきなりM発言て。

マジで今日のかずぴー様子おかしいで」

 

「いや、そういう意味じゃねぇよ」

 

なんてやり取りをしながら昼は過ぎ、

授業が終わり放課後になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『無数にある世界っていっても始まりはあるのよん。

つまり分岐点のこと。そこから枝分かれのように外史は増えていく。

まず、最終決戦でご主人様が願い鏡が割れたことにより出来た内の一つがこの世界。

そして、この世界からさらに分岐して出来た世界が貴方が落ちた世界ってことなのよ』

 

『………は?』

 

『ぶっちゃけちゃうとね、本物の『北郷一刀』っていう存在はもういないの。

鏡が割れ、外史が無数に生まれたことにより『北郷一刀』は消滅し、また無数の『北郷一刀』が生まれた。

つまりどの世界の『北郷一刀』も本物と言えるけど、それが決してオリジナルとは言えないってこと。

貴方もご主人様も外史によって生み出された『北郷一刀』であることには違いないのだから』

 

『その話しは俺たち全員知っているんだ。

だけど気にはしていない。

だって無数にある世界の一つであろうと、皆と共に居たいって願ったのは

まぎれもなく「俺」なんだから』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メェン!!」

 

気持ちのいい音を出し、俺の一振りが相手の面に決まる。

その後互いに元の位置に戻り礼をする。

そう、今は部活の時間である。

 

「どうしたんだよ北郷?」

 

「ん?何がだ?」

 

数少ない男性部員の一人……さっき俺と打ち合いをした人物が声をかけてくる。

 

「あのさ、お前昨日より強くなってないか?

いや、お前と仲のいい女の子たちが転校してきてからも強くなったって思ってたけど

今日のお前は段違いだぞ?」

 

「……練習の成果だよ」

 

どうやら武では俺の方が上らしい。

といっても自分と比べるってのもおかしな話だけど。

 

「そうかなぁ?……と、迎えが来たみたいだぜ?」

 

首を掲げた後何かに気づいたのかニヤニヤと俺を見る。

視線を移すと道場の隅に関羽さんが来ていた。

 

 

 

「迎えに来てくらたんですね。

ありがとう」

 

練習が終わり寮への帰り道を歩く。

寝泊りするのは昨日も寝た部屋だが、色々と話すこともあって

『俺』に会いに行くことになっている。

 

「その……出来れば敬語は止めて欲しいのですが。

ご主人様に敬語を使われているみたいで居心地が悪くて……」

 

「…なら、普通に話させてもらうよ」

 

「すいません。

それと昨日のことも…。その、いきなり斬りかかってしまって」

 

「いいよ別に。ちゃんと怪我もなく無事だったんだし。

それより関羽さんも出来れば敬語は止めて欲しいんだけど…。

堅苦しいのは苦手でさ」

 

「そ、そんなこと出来ません!

そのどうしても顔が一緒だとご主人様を意識してしまって……」

 

本当に愛されてるんだなぁ『俺』は。

こんなに顔を赤らめて。こりゃ可愛いや。

 

「知らなかったよ」

 

「な、何がですか?」

 

「関羽さんがこんなに可愛い女の子だったなんて」

 

「ななぁっ!!」

 

更に顔を赤くする関羽さん。

本当に可愛い人だ。

 

「……貴方は意地悪だ」

 

「はは、ゴメンね」

 

「そういう所はご主人様そっくりです。

謝られたら……なんでも許してしまいたくなります」

 

「一応俺も北郷一刀だからね」

 

それから暫く無言で道を歩く。

もしかしたら俺が劉備さんたちの傍に落ちた世界ってのもあるのかもしれないな。

それはそれで楽しかったのかもしれない。

 

まぁ俺は華琳の所に落ちて華琳に拾われて心底満足しているし、

こんなもしもは違う外史の俺に任せておけばいいだろう。

 

「それで……久しぶりの学園はどうでした?」

 

「そうだね。もう全部が懐かしいかったよ」

 

「ご主人様も始めはそう言ってました」

 

「だろうね。『俺』には感謝するよ。

今日は入れ替わってもらって」

 

ふと空を見上げる。

空は夕日が沈みかけ夜が顔を出していた。

うっすらと月が見えている。

 

「最後の思い出にはちょうど良かったよ」

 

「……北郷殿」

 

「後一週間で俺は『還』ることになるんだから……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さて、説明はこれくらいにして貴方の身に起きている現状を話しましょうか……。

でも、楽しい話しなんかじゃないわよん』

 

『は、はは…これ以上ショックなことがまだあるのか?』

 

『……さっきも言ったけど貴方の生まれた世界は

この世界から生まれた。それをふまえて聞いて頂戴ね』

 

『あ、ああ』

 

『本来、外史のファクターである北郷一刀がその外史から追い出されるなんて話し普通はないの。いえ、私はそう思っていたわん。

でも結果は貴方は世界から消え、この世界にやってきた。

私に分かるのは貴方がどうしてこの世界に来たのかってこと。

でもそもそも…貴方が貴方のままこの世界にくることはなかったのよ』

 

『どう……いうことだ?』

 

『貴方は世界から消えた。そして消えた貴方は意識体となり貴方を生んだ分岐点…つまり枝別れしている中心の北郷一刀の魂の一部として『還』ることになる筈だったのよ。

でもきっと、貴方のその外史への想いが強かったのでしょうね。

貴方は意識体にならずに貴方のままこの世界に来た。

だから同じ外史に「北郷一刀」が二人いるなんて事態が起こってしまったわけ』

 

『だったら…俺はこの後どうなるんだ』

 

『…言ったでしょ。枝分かれしている中心の北郷一刀の魂の一部として『還』ることになるって。貴方が貴方のままでいようがそれは変わらないわん。

今は確かに貴方は貴方のままで意識と体を保っているわ。

でも世界から切り離された魂は長くはその意識を持続なんてさせられない。

そうね…一週間程で今度こそ体は融け意識体へと代わり、北郷一刀の魂の一部に『還』ることになるわん。

つまり、ご主人様の中に貴方は『帰還』するのよ』

 

貂蝉の言葉に俺だけじゃなく、その場の全員が固まっていた。

後一週間で俺は目の前にいる俺の一部になってしまう。

この『北郷一刀』に『還』ることになるだなんて。

そんなこと、信じられなかったし信じたくなかった。

ただ貂蝉の真剣な目を見て、ああ本当なことなんだ。と虚ろな気持ちの中

そう思った。

 

華琳たちの世界から『天』へと帰還した俺は、

今度は『俺』へ帰還することになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く。

 

 

 

 

 

あとがき。

なんじゃこりゃ?

と自分で描きながら思ってしまいましたw

北郷一刀が北郷一刀に帰還するってネタを思いつき、

その理由づけを考えてたらなんかこんなことになっちまいました。

 

次回からは半ば空気だった無印一刀くんと、魏のメンバーが出しゃばってきます。

残り三話程度ですが、お付き合いくだされれば嬉しいです。

 

 

 

 
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