No.222905

真・恋姫無双~君を忘れない~ 二十五話

マスターさん

第二十五話の投稿です。
久しぶりの焔耶登場。構成は出来あがっていたものの、いざそれを文章にすると、ああでもない、こうでもないと何度も書き直す羽目に。
相変わらずの駄作です。言い訳はあとがきにて。あとがきで言い訳するのも恒例となっているこの頃、言い訳をする必要がない作品を執筆できるように頑張ります。

コメントしてくれた方、支援してくれた方、ありがとうございます!

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2011-06-15 22:34:15 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:10927   閲覧ユーザー数:8438

焔耶視点

 

「ハァ……」

 

 私は溜息を吐きながら、広州の城内を見回っていた。どうも最近調子が悪い。原因は自分でも分かっている。諸悪の根源はあの北郷一刀である。

 

「どうして、私があんな男でこんなに悩まないといけないんだ……」

 

 地面に落ちていた小石を蹴り飛ばした。小石は私を嘲笑うように、小気味よく地面を転がっていった。それが私の心をさらにざわつかせた。

 

 あいつが気に入らないわけではない。むしろ、反乱軍を率いて、劉璋の正規軍を撃退する姿は、まさしく天の御遣いで、兵も民もあいつのことを大いに認めたことだろう。

 

 私もあいつのことを改めて見直した。ここに来たときは軟弱なだけの優男で、全く頼りにならない男だったのに、今ではあの桔梗様すら認める男になっている。

 

 しかし、あいつが側にいると心が落ち着かない。仕事にも集中できない。心がどこかに行ってしまうのだ。ぼぉっとしてしまうのだ。部下にこんな情けない姿を見せるわけにはいかない。

 

「何なのだ、この気持ちは……」

 

 そう呟いても、誰も答えなんか教えてくれない。そもそもこの問いに明確な解答があるかどうか疑問なのだ。

 

 いつの間にか、市場まで来ていたようで、私の周りには民で溢れていた。広州を制圧してから、まだそんなに時間は経っていないのだが、徐々に活気を取り戻しつつある。

 

 良かった。北郷が来る前の惨状を考えると、民の顔には生気が満ち溢れ、悲哀ではなく歓喜が、絶望ではなく希望が、不安ではなく期待が、その表情に見られた。

 

 私には桔梗様や紫苑様のような立派な志があるわけではなかった。確かにこの益州の地が安らかになる事はとても良い事なのは分かっている。しかし、そのために何をすれば良いのか、具体的な話になると、話についていくことが出来なくなってしまうのだ。

 

 難しい話は分からない。ただ私は桔梗様の刃となって、桔梗様のためにこの武を振るえば良い。桔梗様の喜びこそが私の喜びなのだから。それがあの人への恩返しなのだから。

 

 ただ、この広州は私が生まれ育った場所。そこが平和になり、民の表情が明るくなるのはとても嬉しい事だった。自然と私の顔にも笑顔が戻った。

 

 フフ……これも皆、一刀のおかげなのだがな。

 

「あ! 焔耶、やっと見つけたぞ!」

 

「うひゃぁ!!」

 

「うぉっ!」

 

 不意に後ろから声をかけられ、私は驚きのあまり大声を発してしまい、話しかけた相手まで驚かせてしまったようだ。

 

「か、一刀ではないか!? こんな所で何をしておるっ!」

 

 相手は一刀だった。民の笑顔を見て、少しだけ自分の悩みを忘れかけていたのに、思い切り思いだしてしまい。声が上ずってしまった。

 

「ん? 何って、お前を探していたんだよ。良かったぁ、結構あちこち探してたんだよ」

 

 そう言って、普段通りの、あの太陽のような優しくて心がポカポカする笑顔を見せてくれた。しかし、それは気のせいなのだろうか、いつもよりも弱々しく感じられた。

 

 まるで、何を隠しているのかのように、そして、それを耐え忍んでいるかのように。

 

「よし! じゃあ、行くぞ!」

 

「い、行くってどこに? それに私は、今、警邏中なの……うわっ!」

 

 私の言葉を無視して、私の腕を掴んで歩きだす一刀。私は仕方なく、一刀に付いて行くことにした。

 

 

 どんな用件なのだろうと、疑問に思っていると、最初に訪れたのはとある農家の畑だった。

 

「おーい、お待たせ」

 

「おぉ、御遣い様、わざわざ済まんのぅ」

 

「いいよ。気にしないで。それじゃ早速始めるよ」

 

「お願いしますじゃ」

 

 完全に話についていけなかった。一刀は私を探していたのだから、私に用事があったはずなのに、なぜこの農家に会いに来たのだろう?

 

「一刀、これは……?」

 

「あぁ、このお爺さん、腰を痛めてしまったみたいでね。それでその手伝いに来たんだよ」

 

 そう説明しながら、私に鍬を渡した。ということは、私を探していたのは、畑仕事を手伝ってもらうため? 

 

「よし、じゃあやろうか?」

 

 …………。

 

 そんな笑顔で言われたら断れるわけないじゃないか。

 

 ずるいよ、お前は。

 

 そんな感じで、私は農作業の手伝いをすることになった。

 

「ふぅ……。こんな感じで大丈夫かな?」

 

 そこまで広い畑ではなかったから、意外に時間もかからずに耕す事が出来た。

 

「ありがとうございますじゃ。お礼とまではいきませんが、婆さんが昼食を作ったので、一緒にどうです?」

 

「えぇ! 本当ですか? ありがとうございます! いただきます!」

 

 結局、私までご馳走になる事になった。食事中、一刀はその農家の老夫婦と、彼らの暮らしや作物についてなど他愛のない話をしていた。

 

 私は本当に何のために呼ばれたのだろうか? 農作業の手伝いなど、別に私でなくても平気なのだろうに。一体、私は一刀にとって何なのだろうか?

 

 そんなことを考え始めてしまったので、私は終始無言のままでいた。そして、そのまま食事は終わり、私は虚しい気持ちのまま仕事に戻るのだろう。

 

「さて、次に行くか」

 

「え? 次って……」

 

 そのまま私は一刀に半ば無理やり市街を連れ回された。基本的には一刀が民たちのために手伝いをし、私がさらに一刀を手伝うという事。それは夕方近くまで続いた。

 

 夕日が山々の間に消えゆくの見つめながら、私の心に残るしこりのようの悩みが、またズキズキとざわめきだした。

 

「いやぁ、焔耶、今日はありがとうな。おかげで助かったよ」

 

「…………」

 

「焔耶? どうしたんだ?」

 

「お前は私に用があったのではないのか? だから、私も自分の仕事を抜けてまで、お前に付いてきたのに……。民の手伝いなら、私ではなくても良かったではないか! どうして私なのだ!? 私はお前にとって一体何なのだ!?」

 

 感情が堰を切ったかのように溢れだした。一刀にこんなことを言ってもどうしようもないのに。止める事が出来なかった。

 

 ほら見てみろ、一刀があんな困った顔をしているではないか。最低だ、本当に最低だよ、私は。

 

 自分の醜悪さに、言ってしまった言葉に、自分が恥ずかしくなった。もう後悔したって遅いのに。もはや、取り繕っても何にもならない。こんな姿を一刀には見せたくなかった。

 

「……ごめんな。俺、焔耶のために……」

 

 顔を伏せながらそう呟いた一刀の身体が急にふらつきだした。足元が覚束なくなり、そして、そのまま膝から崩れ落ちてしまったのだ。

 

 

「か、一刀!? おい! どうしたんだ! おい!」

 

 私の呼びかけにも一刀は応じなかった。身体はぴくりとも動かなかった。途端に、私の目の前が真っ白になった。

 

 一刀の身体を担いで、急いで城に戻り、医者を呼んだ。騒ぎに気付いた桔梗様や紫苑様もやって来て、一刀の部屋の前が騒然となっている。

 

 一刀、無事なんだろうな?

 

 どうせお前の事だ、すぐにいつもの笑顔で私たちの前に出てくれるんだろう?

 

 大丈夫だよな?

 

 必死に自分にそう言い聞かせるが、一刀の倒れる場面が脳裡に焼きついて私を離してくれなかった。

 

 一刀の部屋の前で、膝を抱えて座り、そこに頭を埋める。

 

 その時、一刀の部屋が開き、中から医者が出てきた。

 

「北……お館様の病状は!?」

 

 桔梗様が医者に掴みかからん勢いで詰め寄った。

 

「なぁに、心配は要らんよ。ただの過労じゃろう。今日一日ゆっくり休んでおれば、明日には回復するて」

 

 医者はそれだけを告げ、帰って行き、入れ替わるように、私たちが一刀の部屋に入った。

 

 一刀は寝台の上で、すやすやと穏やかな表情で寝ていた。

 

 私のせいだ。私があんな酷い事を言ってしまったから。

 

 自分のことしか考えず、あいつを傷つけてしまった。

 

 なんて卑しい。

 

 なんて浅ましい。

 

 自分を責めた。そんなことをしても、一刀の病状が良くなる事がないのは承知だが、せずにはいられなかった。

 

「全く、心配をかけよって……」

 

 桔梗さんが溜息交じりに呟いた。しかし、その顔は安堵に包まれていた。

 

「一刀くん、かなり無理していたみたいよ。自分にできる事で、何か私たちを喜ばせる方法を探していたみたいだし」

 

「そういえば、儂も北郷の手作りの酒をもらったの。焔耶、お主も何か心当たりはあろう? 今朝早く儂のところへ来て、お主が喜びそうなことを聞いておったからの」

 

 え? それはどういうことだ? 私が喜ぶ事を探していた?

 

「お主ならば、何をされても、相手が北郷なら喜ぶぞ、と教えてやったのだが、納得できぬようであったから、広州の民を喜ばせてやれと言ってやったわ」

 

 民の喜ぶ姿を私に見せる?

 

 その瞬間、一刀の行動が、どうして私を呼んでまで、民の手助けをしていたのかが理解出来た。

 

「まぁ、北郷が大事ないようで安心したわ。ここは焔耶、お主に任せるぞ。儂らも仕事の途中であったからの」

 

 そう言って、桔梗様と紫苑様は部屋を後にした。

 

 部屋の中には、寝台に横たわる一刀と、私だけになった。

 

 

 お前は馬鹿者だ。大馬鹿者だよ。

 

「そして、私はもっと馬鹿者だ」

 

 一刀の寝台の横の椅子に腰かけながら、私は独りそう呟いた。

 

 一刀はきっと私を喜ばせようとしたのだ。桔梗様から私が広州の民が喜ぶ姿を見たいのだと聞いて、自らが民を手伝う事で、その笑顔を私に見せようとしたのだ。

 

 私は軍に入る前、ここら一帯で、無暗に拳を振るい、人々を傷つけてきた。桔梗様に出会い、心を入れ替えてから、それまでやってきた自分の行いをひどく恥じた。

 

 そして、少しでも広州の民が安らかに過ごせるように、笑顔になってもらえるように、少しでも役に立ちたいと思っていた。罪滅ぼしがしたいと思っていた。

 

 広州の民の笑顔が当時の私の原動力でもあったのだ。劉璋の圧政に、ひどい仕打ちに、義憤を溜めこみながら、時が来たるのを待っていたのだ。

 

 桔梗様はそんな私のために、一刀にその事を教えたのだろう。

 

 そんなことも気付かず、民の喜ぶ姿すら目に入れず、私は自分の事しか考えていなかった。他のことなど考えようとすらしていなかった。

 

 それでも、私のために、こんな愚かな私のために、疲れて倒れるまで一刀は必死になってくれたのだ。最初に一刀の笑顔に感じた違和感は、きっと疲労を隠して、気丈に振舞っていたからなのだろう。

 

「本当に……お前ってやつは」

 

 私は一刀の髪を優しく撫でた。

 

「ん……」

 

 どんな夢を見ているのだか分からないが、一刀は何だか幸せそうに顔を綻ばせた。

 

「焔耶……」

 

「え?」

 

 急に名前を呼ばれてドキッとしたが、まだ眠ったままのようだ。

 

「寝言か。でも一刀は……」

 

 私のために何かをしようとしてくれた。もちろん、桔梗様や紫苑様にも同様に何かをしたのだろうけど、その中に私もいれてくれたのだ。喜ばせたいと思う人間の中に、私の名前も連なっていたのだ。

 

 心臓が大きな音を立てていた。

 

 頬が熱くなるのを感じた。

 

 私はどうしてしまったのだろう。

 

 どうしてこんなに胸が苦しいのだろう? どうしてこんなに胸が締め付けられるのだろう? そして、どうしてこんなに嬉しいのだろう?

 

「一刀……」

 

 お前なら答えくれるのかな? 私の胸にあるこの悩みを。

 

 気付いたら、一刀の顔を覗き込むようにしていた。こいつの顔をこんなに近くで見た事などなかった。

 

 どうしよう。自分で何をしているか分からない。

 

 一刀の頬に触れる。

 

 そのままゆっくりと一刀の顔に自分の顔を寄せた。

 

 

「うん……?」

 

 そして一刀は目を覚ました。

 

 ほとんど無に等しい距離で私と目が会った。

 

「うわぁッ!」

 

「うわぁッ!」

 

「お前、何やってんだ!?」

 

「私、何やってんだ!?」

 

 私たちはほぼ同時に同じ言葉を口にしていた。

 

 というか、本当に私は何をしているんだ!? ほとんど無意識による行動だった。自分がやろうとしていた行為を思い出して、顔から火が出る程の恥ずかしさが今頃やって来た。

 

「い、いや! 違うんだ! 今のは……その、そう! お前があまりにも気持ち良さそうに寝ていたから、少し悪戯でもしようと!」

 

 必死に言い訳を言うが、我ながらなんとも馬鹿らしいことを。

 

「そ、そうなのか? んん? というか、俺はどうしてこんなところで寝ているんだ?」

 

「な、何だ、覚えていないのか?」

 

「焔耶と一緒にみんなの手伝いをしていて……ダメだ。そこからは思いだせないや」

 

 私は一刀が倒れたこと、私が城に運び、医者に診てもらったこと、そして、今日一日はしっかり休むことを伝えた。

 

「そういうことか。ごめんな、焔耶。今日はお前を……」

 

「もう分かっているよ。私の方こそすまん。お前の気持ちなんて知らずに、酷いことを言ってしまった」

 

「ん? 俺、何か焔耶に言われたっけ?」

 

「それすらも覚えていないのか?」

 

「うん」

 

「まぁいい。それよりも今日はしっかり休んでおくのだぞ。明日は私も非番だからな」

 

「え?」

 

「民の手伝い、どうせまだ困っている人はたくさんいるのだろう?」

 

「いいのか? せっかくの非番を俺なんかと使って」

 

「お、お前のためじゃない! 私は民の笑顔が好きなのだ」

 

「そっか」

 

「そうだ」

 

「じゃあ、明日迎えに行くよ」

 

 私と会った時と同じ笑顔を見せてくれた。何も違和感などない、温かい笑みだった。

 

 私は民の笑顔が好き。だけど、きっと一刀の笑顔も好きなのだろう。

 

 そう思った時、胸にあった悩みが消えていくような感じがした。スーッと気分が楽になったような気がした。

 

 結局、悩みの答えなんか出なかったけど、それはそれで良い。

 

 一刀は少なくとも、私のことを喜ばせたいと思ってくれたのだから。

 

 それで十分ではないか。

 

あとがき

 

第二十五話をお送りしました。

 

さて、作者には拠点を書くセンスが皆無なのだと分かりました。

 

そもそも、文章力がほとんどないのだから、本編自体も駄作なのですけど。

 

それ以上に、拠点は書けないですね。

 

他の作者様のようにニヤニヤ出来る作品を書けるようになりたいものです。

 

さて、今回は焔耶にスポットを当てて、彼女の苦悩を描いてみました。

 

少しずつ、自分の一刀への想いに気付けたのではないでしょうか。

 

キャラ崩壊も甚だしいですが。

 

これは本当に焔耶なのだろうか? そんな感じです。

 

駄作ですいません。本当にすいません。

 

さて、これからはしばらく本編を進めることに専念したいと思います。

 

二十五話にして、物語はほとんど進んでないですからね。

 

次回もなるべく早めに更新できるように頑張りたいと思います。

 

誰か一人でも面白いと思ってくれたら嬉しいです。


 
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