No.222853

コードネームはセーラーアン【後編】

※過去に僕が別のSNSサイトで投稿した二次創作作品の転載です。(一部修正を加えています。)魔界樹編のアンが好きすぎてこうゆう作品を作りました。別のサイトで最初に書いた時は五回に分けて投稿したのですが、ここでは前後編に分けています。こちらは後編です。※まだ前編を読んでいない方は、先に前編からお読みになる事をおすすめします。前編はこちらです→ https://www.tinami.com/view/222849

2011-06-15 17:50:45 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:1450   閲覧ユーザー数:1444

ここは愛野美奈子の通う芝中学の近くにある『芝中央ワイワイ通り』。

最近この通りは、近隣の学校の不良達の溜まり場になりつつあり、あちこちで不良同士の喧嘩が絶えない。

警察もいくら取り締まっても一向に更生する気配の無い彼らには手を焼いているようだ。

 

今日も通りの一角で他校同士の不良二人が胸ぐらをつかみ合いながらの喧嘩を始めた。

「ガンとばしたろコラ!やんのかぁ?おお!!?」

「あぁ!?上等じゃねえか!かかってこいやぁ!!」

やがて他の不良達も騒ぎを聞きつけ次々に集まりだし、団体戦の大混戦に発展した。

今やワイワイ通りは別の意味でワイワイ状態である。

 

「オ~ッホッホッホッホッ!!!!」

 

その時突然聞えてきた大きなバカ笑い!・・・いや失礼、高笑い。

「おい!見ろあれ!!」

喧嘩の手を止めた不良の一人がビルの屋上を指差す。

案の定、そこにはあの偽セーラーVがポーズを決めながら立っていた。

「ツッパる事が男の勲章だと思いこんでるヤンキーな皆さま!!ご近所迷惑なあなた方には、

 このセーラーVがまとめてお灸をすえて差し上げます事よ!!!」

ビル屋上から不良達を指差しながら高らかに宣言する偽セーラーVことアン。

 

その様子を通りの建物のカゲから見ていた集団がいた。

月野うさぎ達、セーラー戦士である。

(出たわ!あれが偽者ね!)

(やはり不良を懲らしめて、安心して駆け寄って来る人からエナジーを奪うつもりみたいね。)

(亜美ちゃんってばすごーい!ずばり的中じゃん!

 …それにしてもあのセーラーV、どっかで見た事あるような気がするなぁ?)

うさぎは偽セーラーVの顔や髪型、それに声と喋り方に引っかかりを感じていた。

自分の知ってる誰かと似ているような・・・。

(どうする?今すぐとっちめるかい?)

まことの問いに亜美が言った。

(もう少し様子を見た方がいいわ。不良達を痛めつけた後、誰かに対しておかしな動きをしたら

 変身して飛び出しましょう。)

 

 

 

ドカ! バキ! グシャ! ズドン!

 

「ひぃ~勘弁してくれ~!!」

「もうここじゃ暴れませぇ~ん!!!」

たった一人の相手、しかも女の子にさんざん痛めつけられ、

ほうほうの身体で不良達はワイワイ通りから逃げ出していった。

不良がいなくなりセーラーVの下に多くの住民が駆け寄っていく。

「ありがとうセーラーV!」

「もうビクビクしないでこの通りを歩けるんだね!」

「セーラーV!握手して。」

一人の小さな女の子が手を差し出す。

「・・・うふふ・・・」

ニッコリ微笑みながらセーラーVはその手を握る。

手と手を通じて女の子のエナジーを吸収するのだ。

「・・・セーラーV、ちょっと痛いよ・・・。」

女の子は少し顔を歪める。だがセーラーVは力を緩めようとしない。

そしてアイマスクの奥にある瞳が妖しく輝きだす。

 

様子を伺っていたうさぎ達はすぐに直感した。

(((((!!)))))

(あいつ、はじめやがった!)

(・・・許せない!あんな小さな女の子のエナジーまで奪うなんて!!

 皆!変身よッ!!)

美奈子に促され、全員はそれぞれの変身アイテムを取り出し叫ぶ。

 

「ムーン・クリスタルパワー!メーイク、アーップ!!」

「マーキュリー・パワー!メーイク、アーップ!!」

「マーズ・パワー!メーイク、アーップ!!」

「ジュピター・パワー!メーイク、アーップ!!」

 

「ムーン・パワー!トランスフォーーーム!!」

 

偽セーラーV・・・いや、アンは女の子の手をまだ離そうとしない。

「せ、セーラーV・・・も、もう、いい・・・よぅ・・・。」

女の子の目はうつろになっている。今にも倒れてしまいそうだ。

(ふふふ・・・今日もこのままお邪魔虫さえ現れなければ、

 大量のエナジーを手に入れる事ができますわ・・・)

アンは心の中で邪悪な笑みを浮かべていた。

だが、その時!!

 

「待ちなさい!!それ以上はさせないわよ!!!」

「!? だ、誰ですの!!?」

驚く民衆と一緒にリアクションをとるアン。

本当は声の主が誰なのかとっくにわかっているのだが、それでもお約束なのである。

(い、忌々しい!!心に思った途端これですわッ!!!)

 

通りの向こうから五人の美少女戦士が歩いてきた。

「純粋なファンの心を踏みにじり、私利私欲にエナジーを奪う偽りの正義!!

 平和を愛するセーラー戦士の顔に泥を塗るようなマネは、絶対に許さない!

 

 愛と正義のセーラー服美少女戦士!

 

 セーラームーン!!!

 

 月に代わって・・・お仕置きよッ!!!!」

 

セーラームーンがお馴染みのポーズと決め台詞。

そして、他の四人の戦士の一人も・・・

 

「・・・正義のセーラー服美人戦士・・・コードネーム、セーラーV!!

 セーラームーン達と共に、ただいま参上!!!

 

 やいやいこの偽者!!私の名を語って、多くの人々のエナジーを奪い苦しめたその罪!!

 例え変装の名人、怪人二十面相が許しても、このセーラーVは、ぜぇ~ったいに!許さないわよッ!!!」

 

もう一人現れたセーラーVに、周りの人々はざわめきだした。

(セーラーVがふたり!?)

(どーなってんだろねこりゃ)

それをよそにセーラームーン達と偽セーラーVは互いににらみ合う。

 

(セーラーVはもう活動していないんじゃなかったんですの!?

 しかもなぜセーラー戦士達と一緒に・・・あら?そういえば

 セーラー戦士がいつもより一人足りないような・・・?気のせいかしら・・・。)

そんな苛立ちと疑問を抱く偽セーラーVことアンであった。

(・・・メイ・ジン。聞こえるかしら?・・・メイ・ジン!!)

アンはテレパシーで違う場所で待機しているカーディアンメイ・ジンに話しかける。

しかしメイ・ジンはなかなか返事をしない。

(メイ・ジン!!何をしてますの!?)

苛立ちがつのるアン。やがて繋がった。

(もしもし!メイ・ジンです!いやぁ申し訳ありません。

 人間の町で面白い物を見つけてしまいましたもので。

 ついつい夢中になって通信に気づきませんでしたよ、ハハハ)

どうやらメイ・ジンはそこで偶然発見した何かに気をとられていたらしい。

(のん気な事してる場合じゃなくてよ!?今わたくしの前にセーラー戦士が

 現れたんですのよ!!約束通りお前の力を存分に発揮していただきますわよ!)

(ハッ!わかりました!すぐに準備しますんで!・・・え~っと、アン様の身体に

 コントロール先をセットするコマンドを入力して・・・と。準備完了です!)

(わかりましたわ。くれぐれも頼みますわよ。)

 

頭の中でのやり取りを終えると、偽セーラーVは口を開いた。

「・・・ふ、うふふ。バレてしまっては仕方ありませんわねぇ。

 でも町の人たちがお間抜けさんばかりなおかげで随分とたくさんのエナジーを

 いただけましたわ。感謝しますわよ。それに正義の味方ごっこというのも、

 案外悪いものではありませんわね。なかなか面白い娯楽でしたわぁ。オホホホ・・・!!」

その言葉に、周囲の人間はかなりの衝撃を受けた様で、言葉を失ってしまっている。

先ほどの女の子など、裏切られたショックで今にも泣き出しそうだ。

セーラーVやセーラームーン達は憤りの表情をあらわにする。そしてセーラーVが叫んだ。

「あんただけは・・・絶対に許さない!!」

セーラーVは偽者めがけて猛然とダッシュ!!顔面にキックをお見舞い・・・とはいかず、

偽者・・・ここからはアンと表記しよう。アンはセーラーVの蹴りを余裕でかわし、

カウンターでセーラーVのボディに鋭いパンチ!

「あうっ!!・・・」

その威力にセーラーVは思わずうずくまる。

「Vちゃん!!」

セーラームーン達がVを助けようとアンに攻撃しようとする。しかし、

「来ないでっ!!」

セーラーVは叫んだ。それに驚いたセーラームーン達は思わず足を止める。

「・・・こいつは私が倒す・・・私が倒さなくちゃいけないのよ・・・!」

「Vちゃん・・・」

なんとか立ち上がるセーラーV。アンはそんな彼女を嘲笑った。

「オホホ。やせ我慢せずにお仲間に助けていただいたら?」

「黙りなさいッ!!」

怒りに燃えるVはアンに連打を放つ。しかしアンはすべてそれを受け流し、

さらに的確に反撃を加えてくるのだった。これもメイ・ジンの神業によるものだった。

(こ、こいつ・・・強い!!)

Vに言われただ見守るしかできないセーラームーン達。

押され気味のVに仲間達はいてもたってもいられない。

「どーしよ~このままじゃVちゃんがやられちゃうよぉ~」

弱気になるセーラームーン。ジュピターは我慢できなくなったのか

「もう見ちゃいられないぜ!!」

飛び出そうとするが、それをマーズが制止する。

「ダメよ!!今手を出したら・・・Vはきっと私たちを恨むわ。

 ・・・私も本当は助けたいけど・・・とにかく今は信じて見守るのよ!」

そう言うマーズの顔は悔しそうだった。

その隣で、マーキュリーはゴーグルを使って二人の戦いを冷静に観察していた。

それによってある事に気づいた。

「偽者の身体に、どこからか特殊なエナジーが流れ込んで来ているわ!」

「なんですって!?」

「恐らく、何者かが別の場所からパワーを送って、偽者の戦闘力を増大させているんだわ。」

「それじゃそいつをやっつければ、偽者もやっつけられるかもしれないって事?」

セーラー戦士達の目に希望の火が灯る。肉弾戦を続けるVに向かってマーキュリーが叫んだ。

「セーラーV!その偽者に誰かが特殊なエナジーを送り込んでるわ!偽者の強さの秘密は間違いなく

 それよ!」

「なんですって・・・。あんた、とことん卑怯ね!!」

セーラーVはアンを睨みつける。からくりがばれたためか少し動揺するアン。

「・・・ふん!それがわかったからどうしようというんですの?」

「もちろん・・・そいつをぶっとばしに行くに決まってんだろ!」

ジュピターが叫ぶ。つづけてセーラームーンも言う。

「Vちゃん!偽者を強くしてる奴は私たちが見つけてやっつけてくるから!

 それまでなんとかがんばって!!」

「わかったわ!頼んだわよみんな!!」

セーラームーン達は駆け出して行った。

「お、お待ちなさい!!」

あわてて後を追いかけようとするアンをVが止める。

「待つのはあんたよ!絶対逃がさないんだから!!」

「キィイ!忌々しい!!」

猿のような金きり声を上げて再びアンはセーラーVに襲いかかった。

その闘いをその場にいる人々が固唾をのんで見守る。

本物のセーラーVが逆転勝利する事を願いながら・・・。

セーラー戦士はマーキュリーのゴーグルとポケコンを駆使してエナジーの発信源を追う。

そしてある場所にたどり着いた。

「ゲームセンタークラウン・・・ここからだわ!」

セーラー戦士達はクラウンに足を踏み入れた。

突然店に現れた実物のセーラー戦士に驚く店員や客達。セーラームーンがバイト店員の元基に話しかける。

「元基さ~ん♥じゃなかった・・・あの~今ここに怪しそうな人っていませんかぁ?」

「あ、怪しそうな人・・・?・・・ひょっとして、あのお客さんの事・・・?」

そう言って元基が指差した先には、筐体機の椅子に座り、なにやらひたすら手に持った

コントローラーのボタンを連打しまくる上半身裸の男がいた。メイ・ジンだ。

その姿にセーラームーンは引いてしまった。

「うげっ・・・なにあいつ・・・。」

「あれはカーディアンだわ!あいつがエナジーを送っているのよ!」

「今回のカーディアンは2体か・・・世話が焼けるわねまったく!!」

セーラー戦士に気づいたメイ・ジンは、コントローラーを操作したまま彼女達の方へ向き直る。

「むむむ!!君たちがセーラー戦士か!!こんなとこまでわざわざご苦労さんだね。

 君たちのおかげでせっかくハイスコアを出したのにゲームを中断せざるおえなくなったのだよ!」

よく見るとメイ・ジンが座っていた筐体は、なんと「セーラーV」のゲームだった。

「ちょっとちょっと!カーディアンのあんたがそのゲームをやるなんてご法度よ!!

 しかもハイスコアを出したですって!?・・・うぅ、私なんてまだ5万点も稼げないのに・・・

 く、くやしぃいい~~!!」

ゲーム画面に表示された100万点のスコアを見てセーラームーンは泣き出してしまった。

そんな彼女に呆れる他の戦士達・・・

「とにかく!これ以上仲間にエナジーを送るのはやめてもらおうかしら!?」

「お~っとそうはいかないよ!止めたければ力づくでかかってきなよ!!ここまでおいで~!」

そう言うとメイ・ジンは颯爽と店の外へと飛び出していった。

「あ!待ちなさい!」

セーラー戦士達はその後を追う。しかしセーラームーンは筐体の画面を見つめたまま、まだ泣いている。

「こぉら!!いつまで泣いてんのよ!!早く来なさいッ!!!」

マーズに怒鳴られセーラームーンもあわてて店を飛び出していった。

 

走るに走ってようやくメイ・ジンに追いついたセーラー戦士達。場所は誰もいない公園だった。

「ふむ。さすがだね。僕の足についてくるとは。」

メイ・ジンは敵に感心している様子だ。

セーラームーンはそんなのん気なメイ・ジンに対して本日二度目となる見得きりをはる。

 

「セーラーVちゃんの偽者作戦に加担して、

 さらに私よりも先にVちゃんゲームのハイスコアを叩き出し、

 そして!!そのいかにも『ハ○ソ○』関係者のようないでたち!!

 セーラームーンに関わって良いのは『バ○ダ○』か『エ○ジ○ル』ぐらいなのよ!

 それなのに関係ない、むしろ私のスポンサーの競合相手のキャラみたいな格好で私達の前に現れるなんて!!

 この!愛と正義の!セーラー服美少女戦士!!セーラームーンが!!

 

 スポンサー『○ン○イ』様にかわって!お仕置きよッ!!!!」

 

その口上を、メイ・ジンだけでなく、他のセーラー戦士達も唖然として聞いていた。

「えっと・・・セーラームーン・・・あんた、何の話をしてるわけ・・・?」

汗をかきながらマーズがつっこむ。それにハッと我に返ったセーラームーンは・・・

「え!?あ、あれ・・・あたしってばなにわけわかんないこと言ってんだろ!?アハ!アハハ・・・」

 

・・・・・

 

(※どうしても入れたかったメタ系のネタでした。ホントにわけがわかんなかったらゴメンナサイッ。 by作者)

 

「・・・ま、とにかく!邪魔をするんだったら、こちらもその挑戦を受けよう!行くぞ!!」

不意にメイ・ジンが襲い掛かってきた。片手には石斧が握られていた。

「それっ!!」

メイ・ジンは手の石斧を物凄い勢いで投げた。だがなんと石斧はメイ・ジンの手から無限に

放たれ、セーラー戦士達めがけて次々に飛んでくる!!

「ひょえぇえええ~!!?」

あわててそれをかわすセーラームーンと、サッとジャンプしてかわす他の戦士達。

「まだまだ行くぞ!それそれぇ!!!」

メイ・ジンは手を休めない。どんどん石斧を投げつけてくる。

「ちょっとちょっとタンマァア~~!!!」

泣きながら必死に、飛んでくる石斧からひたすら逃げるセーラームーン。

「ファイヤーソウルバード!!」

「シュープリームサンダードラゴン!!」

マーズとジュピターが背後からメイ・ジンを攻める!

「なんのっ!!」

素早く振り向いたメイ・ジンは右手の親指、光輝く『ゴールドフィンガー』をつき出すと、

その指で目にも止まらぬ速さで連打を繰り出す。

「あたたたたたたたたたたたたたたたたッ!!!!」

なんとその指の連打に二人の技はかき消されてしまった!

「見たか!これが僕の必殺技!『ゴールドフィンガー32連射』の力だぁ!!」

得意げなメイ・ジンとは逆に、マーズとジュピターは愕然。

「う、うそだろ・・・」

「なんてやつなの!?」

その頃、セーラーVとアンの戦いは続いていた。

だが先ほどまで完全に優勢だったアンは、セーラーVの気迫に若干押されつつあった。

「くっ・・・さっきまで劣勢でしたのに、どうして急に持ち直して・・・!?」

「私を応援してくれる人達がいるからよ!あんたの耳には聞こえないの?この声が!」

そう。セーラーVの勝利を願うファンの人々の声援が、セーラーVの力になっていたのだ。

 

「セーラーV~!俺がついてるぞぉ~!!」

「そんな偽物に負けるなぁ!Vちゃ~ん!!!」

「がんばれ~!!セーラーV~!!!」

 

「きぃ~!!うるさい!!!あなたを倒したら次はあの下等生物共を黙らせてやりますわ!」

「そうはさせないわ!みんなも私のためにがんばってくれてる!私もがんばらなくちゃ!!

 偽者覚悟っ!!」

ここで一気にVは攻めた。そして渾身の膝蹴りがアンの顔面にヒットした!

 

ガッ!!

 

「あぶっ」

はじめて攻撃をまともに受けたアンは顔をおさえ、その足はよろめいた。

思わぬ苦戦とダメージにかなり動揺しているようだ。

セーラーVは勢いに乗り始めた。同時に見守る人々からも歓声が上がる。

「チャンス!一気にたたみかける!!」

「・・・!!こしゃくな!!!」

 

一方、メイ・ジンに大苦戦を強いられているセーラー戦士。

だがその時メイ・ジンの頭にアンからのテレパシーが届いた。

(メイ・ジン!!なにをしていますの!ちゃんとお前が操作しないから、わたくしの

 美しい顔に傷がつきましたわ!!・・わ!あぶなっ!!)

(なんと!僕は戦いながらもちゃんと的確に遠隔操作を続けているのに・・・

 本物のセーラーVはなかなかのつわもののようですな・・・おっと!)

(感心すなッ!!この調子で攻められ続けてはやられかねませんわ!なんとかなさい!!)

(なんとか・・・う~ん・・・最大の力を一瞬で発揮できるとっておきの秘密のコマンドがあるのですが・・・

 僕としては卑怯な気がしてあまり使いたくはないのです・・・)

(卑怯もなにもこんな時に出し惜しみしてる場合じゃありませんでしょッ!!!

 なんでもいいから早くそのコマンドとやらを実行するのよ!!!)

(はぁ・・・わかりました。では、いきますッ!)

するとメイ・ジンはコントローラー『ジョイフダー』のボタンを、ある順番に押した。

 

 

 

すると・・・!?

 

「!!?な、なに!?」

アンと戦っていたセーラーVは驚愕の声を上げた。

突然偽者の身体が不思議な光に包まれたかと思うと、

その周りに謎の光の玉が四つ出現したのだ。これは一体・・・

 

(これぞ秘中の秘・・・『○ナミコマンド』!!!

 一瞬にしてコントロール先の人間をフルパワーにする恐るべきコマンドなのだッ byメイ・ジン)

 

「おぉ・・・こ、これは・・・全身から力がみなぎってきますわ・・・。

 ・・・これなら、絶対勝てる!!覚悟おしっ!セーラーV!!」

アンは両手を前にかざすと、その両手と周りの光の球体から、

強力なレーザー光線を嵐のように撃ち放った!!

 

「クレッセント・ギャラクシア・リップルイレイザァー!!!!」

 

ババババババババババババババババババババ!!!!!!!

 

「きゃああああああああ!!?」

 

思わぬ攻撃をまともに受けたセーラーVは吹っ飛ばされてしまった!

「あぁっ」と人々は息をのむ。

 

「う・・・くっ・・・そ、そんなの、反則じゃない・・・」

「反則でも勝負は勝てばいいんですのよ!!オーッホッホッホッ!!!」

勝ち誇ったように、冷酷な目で傷つき倒れたセーラーVを見下すアン・・・・・

セーラーV、絶体絶命!!

アンはレーザー光線を雨あられと容赦なく撃ちこんでくる。

その猛攻に反撃もままならないセーラーVは、もう体中ボロボロである。

 

「うぅう・・・」

もはやセーラーVは気力だけで立ち上がり、偽者に立ち向かっていた。

「こうなったら・・・正義の光線を受けてみなさい!!」

そう叫ぶと懐から三日月形のコンパクトを取り出し、開いて偽者に向ける。

「クレッセント・スーパービィーム!シャワー!!!」

コンパクトの内側の鏡から凄まじい光が放たれる!

その光は偽者の身体を瞬く間に包み込んだ。

(やった・・・?)

これで相手が倒れてくれる事を祈るセーラーVだったが・・・しかし。

「・・・うそ。」

絶望の声を上げる。

偽者はいたって平気な顔をしてそこに立っていた。

よく見ると偽者の身体は、さきほど謎のパワーアップをした直後と

同じ様な不思議な光をまとっている。

「まさか・・・バリヤー!?」

「オホホホホ!フォースフィールドですわ!痛くもなぁ~んともありませんことよ!」

セーラーVは下唇を噛締める。

(く、悔しい・・・!!このまま偽者にいいようにやられるしかないの!?)

「さぁ!反撃といきましょう!」

偽者…アンは目にも止まらぬ素早い動きでセーラーVを翻弄し、一発一発重い打撃を与えていく。

 

ドカッ!ガシッ!バキッ!ドゴッ!ガスッ!

 

「あああぁああぁ!!!」

「オホホホホ!!!もう諦めて降参なさってはいかが?命だけは見逃してあげますわよ!!」

この光景を前にセーラーVを応援する人々の顔はどんどん青ざめていった。

目に涙を浮かべる子供もいる。・・・セーラーVが、負ける・・・?

セーラーVの意識はどんどん薄れていく・・・もうここまでなのだろうか・・・?

 

遠く離れた無人の公園でも、セーラー戦士の苦戦が続いていた。

カーディアンメイ・ジンはその凄まじい戦闘力を発揮して

セーラームーン達の体力を確実に奪っていた。

「止めだくらえぇ!!直にゴールドフィンガー32連射!!!」

セーラームーンの頭めがけてメイ・ジンが親指を前に突き出して突進してくる。

「きゃああああ!!?」

メイ・ジンの指をセーラームーンは間一髪でかわした。

 

ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!

 

セーラームーンの後ろにあった巨大遊具にメイ・ジンの指が突き刺さり、

そのまま激しい指の連打を受けた遊具は粉々に砕け、土煙をあげながら崩れ落ちた。

それを目の当たりにし、恐怖のあまりセーラームーンはとうとう泣き出してしまう。

「ひぃぃ!!こんなの喰らったら死んじゃうよぉ~!!あぁ~ん!もういやぁあ!!!」

必殺技も通じない相手に、セーラー戦士達も万事休す。だがその時、

メイジンの手をかすめて何かが飛んできた。手にダメージを受けたメイ・ジンは思わず

コントローラー「ジョイフダー」を落としてしまう。

飛んできた物はメイ・ジンの足下に突き刺さっていた。それは白い薔薇の花・・・。

「いたた・・・誰だい?勝負の最中に乱入なんてしてきたのは!?」

怪我した手をおさえながらメイ・ジンは辺りを見回す。薔薇を投げた主は公園中央にある

街灯の上に立っていた。

「月影の騎士様ッ!!!!」

セーラームーンが歓喜の声を上げた。いつもセーラー戦士のピンチを救ってくれる

給食当番もとい月光仮面・・・じゃない。白ずくめの謎のヒーロー、月影の騎士が現れたのだ。

月影の騎士は街灯の上から静かにつぶやく。

 

「ゲームは一日一時間。

 言いつけまもり極めれば、

 悪を砕く力にかわる・・・。

 

 月影の騎士、参上・・・。」

 

その頃・・・、セーラーVとアンの戦いには変化が起きていた。

「・・・?」

突然偽者の動きが止まった。一体どうしたのだろうと思っていると

「あら?ちょっと・・・急に身体が動かなくなりましたわよ・・・。ちょ、これ!

 どうなってますの!!?メイ・ジン!!なにをしてるの!!早く操作しなさいよ!!!!」

焦りの声を上げるアン。メイ・ジンがジョイフダーを手離してしまったため、

ボタン操作をする者が一時的にいなくなり、アンの身体は不自由になってしまった。この場合、

ジョイフダーで身体のコントロールを管理されている間、コントロールされる側は

自分から動く事はできないのだ。メイ・ジンや代わりに操作する者がいない限り、

もしくはコマンドを入力してコントロールを解除したり別の人間にコントロール先を切り替えなければ、

操作される人間は身動きが取れなくなるのである。

「セーラームーン達がやってくれたのね・・・!よぉし!今までのお返しをさせてもらうわよ!!」

チャンスとばかりにセーラーVは突進!それに気づいたアンはさらに焦る。

「え!?あ!?ちょっと!!まって!?ちょっとぉっ!!!」

思わぬ敵の増援に焦ったメイ・ジンは、パンツから携帯電話のようなものを取り出し、

番号を打ち始めた。

「? なにしてるんだろっ?」

「仲間を呼ぶつもりじゃないかしら。」

「その通り!!僕にはとっておきの強い味方がいるのさ!!彼女と合体すれば

 超絶なパワーが発揮されて、お前達なんか5秒で全滅だ!!覚悟しとけよぉ!!・・・あ!

 もしもし!アニーちゃん!?僕だ!メイ・ジンだ!頼む!!至急応援に来てくれ!!」

 

(メイ・ジン?あはは、ごめんねぇ~!あたし今友達とショッピングにいってるのォ。

 だから今はちょっと手が離せないから、また今度ね♥ ばいば~い♪)

 

プツッ・・・ツー ツー ツー・・・

 

「・・・そ、そりゃあないよぉ~アニーちゃん・・・;;」

携帯を持ったまま涙目で立ちつくすメイ・ジンと、それを見てボーゼンとするセーラー戦士・・・

だが、すかさず月影の騎士がセーラームーンを促した。

「今だセーラームーン!」

「あ!ハイッ!!」

 

 

           「ムーンプリンセース!ハレーショォオーーン!!!」

 

 

セーラームーンのキューティ・ムーンロッドから眩い光が放たれた。

それを浴びたメイ・ジンは苦しみだす。

 

「ぐぅおおおおおお!!!・・・ら・・・来年の・・・キャラバンも、待ってるぞぉおおおお!!!」

 

 

                ク レ ン ジ ン グ !!!!

 

 

意味不明な断末魔を残し、メイ・ジンは消滅。カードになり、

黒い煙が立ち込めてカードは真っ黒になり使い物にならなくなった。

 

「やったぁ!!」

「これで偽者を倒す事ができるわ!!」

抱き合って喜ぶセーラー戦士達。それを見届けた月影の騎士は、

 

「友のため

 戦う乙女は

 美しい・・・

 

 さぁ、仲間のもとへ急ぐのだ。セーラー戦士達よ。

 私はこれで・・・アデュー。」

 

いつものように句を残して去っていった。

「よぉし!早くセーラーVのところへ戻ろうぜ!」

急いでセーラーVを助ける為に走り出すセーラー戦士。

しかし公園を出る直前、セーラームーンはメイ・ジンが使っていた

ジョイフダーが落ちているのを見つけ、それを拾い上げた。

「これ・・・あのカーディアンが持ってた装置・・・。

 これで偽者にパワーを送ってたのかな?

 ・・・アハッ♪でもなんだかこれ、ファミ○ンのコントローラーみたい♪」

ゲーム好きなセーラームーンは、拾ったジョイフダーのボタンを

無邪気適当にカチャカチャ押しながらマーズ達の後を追うのだった。

ジョイフダーを手にしたセーラームーンと、セーラー戦士が

Vのところに駆けつけた時、彼女達が見たのは、

さっきまでとは反対に、一方的に偽者を痛めつけているセーラーV、

されるがままな偽者、そしてエキサイトするVファン達だった。

「うえぇ~ん!もう許してくださいましぃ~;;」

反撃できない偽者はなんとベソをかいていた。それでもVは攻撃を止めようとしない。

「お黙り!!アンタに痛めつけられた分はまだまだ残ってんのよ!!!」

 

「いいぞ~!やっちまえセーラーV!!」

「そんな奴に遠慮するな~!俺が許すッ!!!」

「偽者、ざまぁwwwwwwww」

 

Vもファン(主に大きいお友達)の目も少しイってしまってるように見える。

サディスト全開なその様子に仲間達は引いた。

「い、今のVちゃん、とってもこわいっ・・・;」

「・・・あ!皆!」

こちらに気づいたセーラーVは途端に笑顔になり嬉しそうな声を上げる。

「セーラーV!そいつにエナジーを送っていたカーディアンはやっつけてきたわよ!」

「本当!?皆ありがとう!!・・・あとはこいつをとことんぶちのめすだけねっ!!」

Vは偽者を睨みつける。その形相にアンは一瞬恐怖と身の危険を感じた。

「も、もうしません!!だ、だから命だけは助けてくださいませぇ!!」

思うように動かせないのに加え、全身傷の痛みが走る無理な身体ながら

必死に土下座を繰り返すアン。

「問答無用!!!クレッセントビーム!!!」

Vの指先から放たれたビームがアンの顔を直撃!

 

ッバアァァァァン!!!!

 

「きゃあああああ!!!!」

悲鳴を上げながら吹っ飛ばされるアン。倒れた偽者を見た瞬間セーラー戦士達は驚きの声を上げた。

「あぁ!?アン!!!」

「へ・・・!?あっ!!」

セーラー戦士に名前を呼ばれ、自分の姿を目視確認したアンは絶句する。

さっきの攻撃のショックで変身が解けてしまい、緑がかった色白肌に尖った耳、

水色のメッシュが入ったピンクの長髪に赤い全身タイツ風の本来の姿を晒してしまっていた。

「偽セーラーVの正体はあんただったのね!?」

セーラームーンが手に持ったジョイフダーのボタンを無意識に押しながら叫んだ。

「こいつめ!生け捕りにしてNASAにでも売り飛ばしてやらぁ!!」

ジュピターは両拳の指関節を鳴らしながらじわじわとアンに詰め寄る。

しかしアンはもはやヤケクソだ。

「・・・あなたたち、許しませんわよ・・・!!

 わたくしをここまでもて遊び、愚弄した罪!!今ココで償わせて・・・え?」

そこまで言いかけたアンはまたまた言葉を失った。

セーラーVの身体が突然輝きだしたのだ。しかも先ほどまで自分の周りを

浮遊していた四つの光の玉まで現れた・・・。

「ぶ、Vちゃん!一体どうしたの!?」

「わ、私にもわからないわよ!

 でも、体中から不思議な力が湧き上がってくる・・・。」

「・・・セーラームーン!それ・・・。」

マーキュリーがセーラームーンの持っている

ジョイフダーを指差す。それを見たアンが悲鳴を上げた。

「な、なんでそれを持ってますの!?」

ジョイフダーをゴーグルで解析したマーキュリーが真相を述べた。

「どうやらセーラームーンが無意識の内にこの装置を動かして、

 セーラーVにパワーを送るようにしたみたいね。」

そう。セーラームーンが無意識に押したボタンの順番は偶然にも

コントロール先の人間を切り替えるコマンドで、

コントロールがアンからセーラーVの身体にセットされたのだ。

これもまた偶然。

 

さらにこれも偶然な事に、直後にセーラームーンはあるコマンドも無意識に入力していた。

 

↑ 

 

 

先ほどメイ・ジンがアンに向けて入力した「○ナミコマンド」とは逆の順番。

なんとこれは、セーラーVこと愛野美奈子のみに絶大なる力を与える秘密のコマンド、

 

『ミナコマンド』だったのである!!!(なんじゃそりゃ)

 

「えっ?あたしがVちゃんを自由に動かせるってこと!?

 すっごーい!!生セーラーVゲームだぁ!!」

事態がきちんと呑み込めてないものの、喜ぶセーラームーン。

だがセーラーVはすぐに状況を理解しセーラームーンに言う。

「ゲームの様には甘くは無いわ!十分気を引き締めて、頼むわよセーラームーン!」

「OK!任せといて!」

アンの顔が一気に青ざめ、汗だくになった。 ・・・本気でヤバイ。逃げなければッ

身体の自由は取り戻したものの、さんざん痛めつけられて身体もプライドもボロボロになり

逃げようにもいつものテレポートを使えるだけの体力は残っていなかった。

「ま、待ちなさいよォ!そんなの反則・・・」

「お前が言うな!!!喰らいなさい!!!クレッセントビームシャワー、フルパワァー!!!!」

渾身の力をこめてVが叫ぶと、無数の光線がアンにめがけて襲い掛かった!!!

その瞬間、アンは自分の目の前にこんな文字が浮かび上がったような錯覚を覚えた。

 

 

               GAME OVER

 

 

         ドゴオオオォォォォォォォーーン!!!!!!!!

 

 

「あぁ~~~れぇえええ~~~~~!!!!!!」

 

 

芝中央ワイワイ通りに爆音とアンの断末魔のような悲鳴が響き渡った。

 

・・・この後、セーラー戦士から袋叩きにあいズダボロにされたアンが

怒りに燃えるセーラーVファンの人々によってさらに袋叩きにされた事は

言うまでもないッ。

・・・かくして偽セーラーV騒動は解決した。

エナジーを奪われ体調を崩していた人間たちも元気を取りもどしていった。

数日後、美奈子、うさぎ、退院したひかると天野の四人が学校帰りに土手を歩いていた。

ひかると天野は美奈子達から偽者騒動のあらましを聞かされた。

「そっかー・・・あのセーラーVは悪者が化けた偽者だったのね・・・。」

ひかるは残念そうにつぶやく。

天野は偽セーラーVのサイン持ってただそれを黙って見つめていた。

しかしやがてうつむいていた顔を上げると、サインを土手の川に投げ捨ててしまった。

サインは川に流されていきやがて見えなくなった。

「天野・・・」

天野の行動に驚く美奈子。

「・・・いいんです。これで。偽者のサインなんて、なんの価値もありませんから。」

天野は努めて笑ってみせた。しかしすぐに暗い顔になり、空を仰いだ。

「・・・あれ以来、本物のセーラーVはどこに行ってしまったんでしょうか・・・?」

「そうね・・・もう会えないのかしら・・・?」

もう本物のセーラーVには会えないのだろうかと、二人の心は寂しく切なかった。

するとうさぎが脳天気に二人に語りかける。

「あはは!大丈夫大丈夫!!セーラーVちゃんならすぐ目のま・・・むぐぐ!!」

あわててうさぎの口を塞ぐ美奈子。

うさぎの口封じをした美奈子はひかると天野に笑顔でこう言った。

「大丈夫。きっとまた本物に会える日がくるわよ。日本じゃなくて、どこか

 遠くの国で戦っていても、セーラーVはみんなが呼べばきっと助けに来てくれるわ!

 だってセーラーVは、みんなの、正義の味方だもの!」

 

 

 

・・・ここからは時間を遡り、アンがセーラー戦士と一般人にリンチされてから数時間後の事である。

 

 

エイルは魔界樹を眺めながらほくそえんでいた。

「いいぞ、この調子でエナジーを集めていけば、魔界樹が簡単に枯れる心配はなくなる・・・

 アンも随分がんばってくれているようだ。」

そんな独り言をつぶやいていると、背後から弱弱しい涙まじりの声が聞こえてきた。

「・・・えぃるぅ・・・」

驚いて振り向くと、そこには全身包帯、絆創膏だらけの

ボロボロになったアンの姿があった。命からがらなんとか帰ってこれた様子だ。

「ア、アンッ!!?」

「ああぁ~ん!!!エイルゥ~~~!!!痛いよぉ~恐かったよぉ~~!!」

アンは大声で泣きながらエイルに寄りかかってきた。

その痛々しい姿にエイルは動揺を隠せない。

「アン!い、一体なにがあったんだ!?・・・ハッ!?まさかセーラー戦士どもに!?」

アンはこくりと頷く。

「くすんっ・・・メイ・ジンもやられてしまって、しかもジョイフダーが

 セーラームーンの手に渡ったために、わたくしはこんな目に・・・

 あぁああああ~~~ん!!くやしぃい~!!!」

「むむむ・・・なんという事だ・・・ではこの作戦はもう使い物にならないではないか・・・。

 しかもアンをここまで執拗に痛めつけるとは・・・!!

 おのれぇ!セーラー戦士ども!!この借りは必ず、いつかまとめて返させてもらう!

 覚えていろっ!!」

勇ましく叫ぶエイルだったが・・・

「・・・なんで助けにきてくれなかったの・・・エイル」

アンがぼそっとつぶやいた。エイルを恨めしそうに睨んでいる。

「え?」

「わたくしがこんなに可哀想な目にあってたのに、なんで・・・

 なんで助けに来てくださらなかったの!??」

「い、いや!すまない!!アン…だ、だがわたしには魔界樹の状態を管理する役目もあってだな・・・」

「エイルのバカーーーーッ!!!!」

 

バガァン!!!!

 

エイルの言い訳が終わる前にアンの怒りの鉄拳がエイルの顔面に炸裂した。

「ぶへぇえ!!?」

吹っ飛ばされたエイルは部屋の壁に思いきり頭をぶつけ、

言葉にできないような情けない顔で失神してしまった。

 

アンはとことん不憫な自分と、頼りなさ丸出しの醜態を晒すエイルに対する失望で、

泣きながら大声で叫ぶのであった。

 

「こんな生活!もぉお!!イヤァッ!!!!」

 

~おわり~


 
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