No.222708

真説・恋姫演義 北朝伝 第六章・序幕

狭乃 狼さん

はいはい。
北朝伝、新章突入です~。

で、ここでひとつお知らせを。

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2011-06-14 20:50:08 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:20423   閲覧ユーザー数:14902

 劉協が犯した失敗。

 

 一つは、益州へ向かうための道程を、荊州は江陵から抜けるルートを選んだ、その選択。もう一つは、途中、宿をとろうとして襄陽に寄り道をしたこと。そしてその地において、ある男の手により“保護”されることになってしまったこと。

 

 蔡瑁。字を徳桂。

 

 現在荊州において、病のふちにある劉表にかわって、その実権を握っている男。襄陽の街にて、身分を隠して宿をとろうとしていた劉協と董承に気づき、蔡冒は彼女らを自らの保護下に置いた。中原にて、曹魏が北郷に敗れたことをすでに知っていた蔡瑁は、劉協に対し、自身の姪であり劉表の次女である劉琮を、新たな荊州の牧として認めさせた。

 

 民や臣下を見捨てて逃げ出した皇帝には、それ程存在価値は無い。北へと送り返され、自分が見捨てた者たちに殺されたくなければ、ここで自分の指示に従えと。劉協をそう脅し、その劉協の命を盾にして、董承らも従わせた。

 

 

 今まで散々他人を利用してきた劉協が、初めて自分の意思に関係なく、他者に利用されるだけの、本当のお飾りにされたわけである。

 

 しかし、劉協もただでは転ばない。己に追従してきた禁軍の兵の一部を、自身が書いた密勅とともに、三方へと走らせた。一人はもちろん、益州の劉備の下にである。己の現況を知らせ、彼女に自身の“救出”をさせるために。

 

 もう一方で、劉協は呉にも密勅を送った。益州の劉備と協力し、蔡瑁を討伐したのなら、以後荊州を孫呉のモノとして認めると。そう書き記して。

 

 そして残る一人、であるが。こちらが向かったのは長安であった。現在、旧都である長安を支配している、馬騰ら西涼連合に対し、北郷への牽制をさせるために。

 

  

 皇帝の勅。

 

 

 それを受け取った劉備、孫策、そして馬騰のそれぞれの反応を、ここから記していこう。

 

 「では、皆さんの意見を伺いたいと思います」

 

 益州・成都の玉座の間。ここに、現在蜀に属する将のほとんどがその顔を並べていた。中央にある玉座に座るは、現・益州の牧である劉備。その右少し手前に、筆頭軍師である諸葛亮が、一通の書簡を手に厳しい表情で立つ。

 「意見も何もありはせぬであろう、朱里よ。これは皇帝陛下よりの勅なのだ。従うのは当然の理ではないか」

 「私も愛紗の意見に賛成だな。漢の皇帝が桃香様を頼ってこられている。これこそ好機というものではないか。ですよね、桔梗さま?」

 関羽が発したその言葉に、まず同調の意を示したのは、黒髪にメッシュを入れた一人の少女。魏延、字を文長。益州所属の将にて、若手の中でも将来有望とされる武人である。

 「確かに、焔耶の言うとおり、良い機ではあるとは思うが。……ちと、の」

 「桔梗さんは、何か腑に落ちないものでもあると、言われるのですか?」

 魏延から桔梗と呼ばれた、その妙齢な女性-蜀将の一人である厳顔が、自らの弟子でもある魏延の言葉に、その顔をわずかに曇らせる。それを見た諸葛亮が、厳顔に対しその反応の意味を問いかける。

 「腑に落ちない、というのとは、ちと違うがの。……その皇帝本人についてじゃが、わしはあまり、接近せぬほうが良いかもしれん、と。そう思っておるというところじゃな」

 「……それについては、私も同感ね」

 厳顔と同じようにその顔を曇らせ、その台詞に同調したのは、弓を携えた女性。黄忠、字を漢升という。

 「あわわ。紫苑さんも、ですか?」

 「ええ。……朱里ちゃんが手に入れた、“あの情報”のことを考えると……ね」

 諸葛亮とは反対側の位置に立っていた、蜀におけるもう一人の代表軍師である龐統に、劉協への不信を語る黄忠。

 

 彼女たちが今話し合っているのは、昨日届けられたばかりの漢帝劉協の密勅に対し、益州の態度をどうするかというものである。その大まかな内容は、

 『荊州にて保護という名の下虜囚とされている自らを、益州の軍勢をもって救出するように。その暁には劉備に漢中王の印綬を贈るものである』

 といった感じのものであった。

 漢の系譜に連なる者(ということに一応はなっている)である劉備にとって、漢の皇帝からの勅は抗いがたいもの。劉備本人の感情としては、その勅に応えたいと思っては居はした。しかしその一方で、理性の方がある警鐘を彼女に鳴らしていた。

 「……朱里ちゃん。皇帝陛下に関するあの噂…ううん、情報は確かなものなのかな?」

 それまで無言で玉座に座っていた劉備が、諸葛亮にそのことを問いかける。今までのような、ただの噂話ではなく、諸葛亮直属の草組が集めた漢帝劉協に関する、とある情報の信用性を。

 「……十中の八九は」

 「……そっか」

 「私はまだ信じられません。帝ともあろうお方が、自身の母や兄である先の小帝陛下を暗殺した、これまでの様々な乱れの黒幕だったなど」

 その件に関し、顔をしかめてそう語る関羽。

 「愛紗ちゃんの気持ちはわかるし、気持ちだけで言えば私も同じだよ。でも、気持ちで情報を判断しちゃだめ。冷静な頭で、しっかりとした現実を見ないと。……ね?」

 「……桃香様」

 慈母のごときその微笑みを、自身の義姉妹に向けてそう語る劉備。まるで、自身にも言い聞かせているかのように。

 (……ご成長なされたものだ。口惜しいが、やはりあの男との邂逅があったからこそ、か。……北郷一刀、か。……そこに関しては、あやつに感謝せねばならんかもな)

 かつて、ただひたすらに夢だけを見続けていた、夢想家で甘いだけの劉備はもう居なかった。そこに居るのは、理想の前にしっかりとした現実を見ることのできる、真の大徳と呼ぶにふさわしい人物だった。

 「……それで、結局どうするのじゃ?皇帝からの勅に応えるのか、拒否をするのか」

 「桃香さま。御裁断を」

 「うん。……私は」

 

 劉備が選んだのは果たしてどちらか。その答えを記す前に、ここで一旦、場面を揚州へと移させていただく。

 

 

 「……気が乗んない」

 手にした書簡を不機嫌に見つめつつ、玉座に座った孫策がつぶやく。

 「気が乗る乗らないの話ではないだろう、雪蓮。曲がりなりにも、皇帝からの勅だ。これに応えない手はないと思うが」

 そんな孫策にそう声をかけるのは、彼女と同じく褐色の肌をした黒髪の女性。眼鏡をかけた理知的なその女性の名は周瑜、字を公瑾という。孫呉の筆頭軍師であり、孫策にとっては義姉妹の契りを交わした大親友である。

 「それはそうなんだけどねー。……協力したら荊州を孫呉の物と認める、なんて。どう考えたって空手形もいいところだわ」

 孫策が手にしているその書簡。それは劉協の手により送られてきた、孫呉への荊州攻めを命じる密勅であった。

 「策殿の申されるとおりじゃな。例え事がすべてうまく運んだとしても、南郡の袁術が納得しないじゃろう」

 孫策のその読みに同調をしたのは、孫家に永く仕える宿将で、孫呉随一の弓の使い手。黄蓋、字を公覆である。

 「祭の言うとおりだと、私も思うけど?あのわがままお子ちゃまが、大人しく私たちの傘下に入ると思う?」

 「それについては私も同感だが……なに、きっかけには十分なるさ」

 「きっかけ?」

 「そう。きっかけ、だ。仮にも皇帝が、我らの荊州領有を認めたのだ。……たとえそれが、非公式なものであっても、な」

 フ、と。眼鏡を直しながら、周瑜は孫策と黄蓋に、口の端を上げてそう笑ってみせた。

 「……そういうこと。祭、抹稜のあの子達、すぐにこちらと合流できるかしら?」

 現在、この柴桑の城とは別の場所-抹稜という地にて、とある支度を行っている、一族の者や家臣たちに集合をかけようと思った孫策が、黄蓋に対してそう問いかけをする。

 「ふむ。北への抑えもあるし、全員でというわけにもいかぬじゃろうが……。皎殿と明命であれば、すぐに合流出来るやもしれませんな」

 ちなみに、黄蓋のいう皎殿、というのは孫策の従妹である孫皎、字を叔朗という人物のこと。明命というのは孫呉の臣の一人で、周泰、字を幼平のことである。

 「……蓮華では駄目なの、祭?」

 「駄目ですな。残念ながら、まだまだ前線に出れるほどの物ではありませぬ。せめてもう二月は修練に励んでいただきませんと」

 蓮華こと、自身の妹である孫権は、まだ前線指揮官としては不十分であると、黄蓋の口からはっきりと言われて「……そっか」と、わずかながらに肩を落とす孫策。

 「では祭殿。蕈華(しぇんふぁ)様と明命に、こちらへ合流するよう連絡してください。……いいな、雪蓮」

 「ええ。祭、お願いね」

 「承知」

 頭を下げ、拱手して部屋を退出していく黄蓋の背を見送ったあと、孫策は一つ大きく息を吐いた。

 「はあ~……やっぱり気が乗らないわね~」

 「……まだ言っているの?雪蓮、貴女」

 「だあ~ってえ~。……なあ~んか、いやあ~な予感がして仕方ないのよねえ~」

 「……嫌な予感、ねえ」

 「そ。嫌な予感」

 

 ふう、と。孫策が再びため息をついたところで、再び場面を転換させていただく。

 

 

 蜀と呉。その双方に届けられた劉協の密勅。それらとは少しばかり内容の異なる、もう一つの密勅が届けられた長安では。

 

 「……それで?一体どうすると?」

 「皇帝の勅だ。決まっているだろうが。洛陽を攻め、そのまま落としてくれるて」

 かかか、と。機嫌よく笑うその男の背後で、あくまでも表面上は無表情に、しかしその奥歯を強く噛み締めて、彼はその男をにらみ付ける。

 「龐将軍、もちろんおぬしの活躍にも期待しているぞ?……一応言っておくが、くれぐれもおかしな真似はせぬようにな」

 「……わかってる」

 口の端を吊り上げ、にやりと笑いながら自身にそう釘を刺すその男に、彼-龐徳は不承不承ながら、ただ目を閉じてそう返した。

 (……人質をとらねば人を従えられないやつに、このまま勢力をまとめ続けることなど出来るものかよ。……とはいえ、椿様の居場所が分からないでは、こっちも動きようがないが……)

 龐徳の返事を聞いた後、上機嫌で笑い続けるその男-韓遂のその背を冷たい視線で見つつ、龐徳はそんな思考をしていた。

 (こうなってくると、頼みの綱はお前たちだけだ。……翠、蒲公英、どうか二人とも、無事洛陽に辿り着いていてくれよ。そして、函谷関を……)

 今頃は、ひたすら東を目指して走っているであろう二人の友人に、龐徳はその想いをはせる。ちょうどその頃、長安の東にある函谷関を越えた地点では。

 

 「お姉さま!追っ手が!」

 「ちっ!意外に素早いじゃないかよ!韓遂の馬鹿の手下どもにしてはさ!」

 馬岱のその指摘で、彼女らの少し後方にある関の門が開かれつつあるのを視認し、馬上にて馬超はそう吐き捨てた。

 「うわ!結構な数が出てきた!お姉さまどうするの!?」

 「どうもこうもない!やり合ってる時間なんかないんだ!このまま走るぞ蒲公英!」

 「うん!」

 関から出陣しようとしている、かつての仲間で、今は敵となったその一団から逃れるため、二人は必死で馬を走らせる。かつて、一度だけ馬を並べたその相手に、救いの手を求めるために。そして、半刻も馬を走らせた頃、彼女らの視界にある軍勢の姿が飛び込んでくる。

 「お姉さま!あれ!」

 「ああ!あたしにも見えた!あれは……!!」

 その軍勢の中央に、風を受けてはためく二本の旗が立っていた。そこに描かれたその字は『華』と『張』。周辺地域の見回りのため、洛陽を出立して間もない、華雄と張遼の部隊だった。

 「待っててくれよ、母上。裏切り者の韓遂をぶっ飛ばして、必ず、必ず助け出すから……!!」

 「兄の立てた策、必ず成功させなきゃだね、お姉さま」

 「……ああ!」

 

 過日。突如として反乱を起こし、西涼連合を乗っ取った韓遂によって、馬超の母である馬騰は囚われの身となった。そして、馬超と馬岱の二人を逃がし、東へと援軍を求めに行かせるため、彼女らの友であり、武の師ともいえる龐徳は、あえてかの地に残った。馬騰救出のための、そのきっかけを掴む、策を成功させるために。

 

 

 

 各勢力がそうして動き始める中、許昌に本拠を置く一刀たちは、ある重要な事案を話し合っていた。それは-。

 

 「……『晋』、『周』、『趙』、『魯』。土地の縁から決めるのであれば、このあたりになるでしょう」

 「後は、これまでどおり一刀の姓を、『北郷』をそのまま使う……というのも手ではあるの」

 「……なあ、みんな。どうしても名乗らないと駄目かな?」

 許昌の城に新たに作られた円卓の間にて、何枚かの紙を卓上に並べて、あーでもないこーでもない、と。意見を交し合っている一同に、それまでずっと黙り込んでいた一刀が、おもむろに声をかけた。

 「……まだ言うておるのか?いい加減諦めが悪いのう。……駄目に決まっておるじゃろうが」

 「そうです。対等な立場の同盟者である華琳さんが、これまで通り魏王を名乗り続けることになった以上、その同盟者である方も同じ立場でなければ、釣り合いが悪いですから」

 「……正直、柄じゃあないんだけどなあ……」

 

 官渡での決戦後。魏王の位を捨てようとした曹操だったが、一刀からその必要はないと言われて、これ以降も魏王を名乗り続けることになった。一刀曰く、

 「魏の将兵や民たちにとっては、貴女が王であることに違いは無いんですから」

 とのことである。

 であるならば、対等な立場での同盟者である一刀や公孫賛も、曹操と同じく王を名乗ったほうが、より対等な立場であることを示しやすいだろう、という話になった。しかし、一刀はあまり乗り気ではなかった。公孫賛が王を名乗るのには大賛成であったが、自分が、となるとどうにもしっくり来なかったのである。

 「もともとそんな大層な立場とは無縁の、ただの学生だったからなあ。みんなの言うことも理解は出来てるし、必要なことだって言うのもわかるけど」

 「……それこそ今更だと思いますけど。過去はどうあれ、現在は私たちのご主君なんですから」

 「るりるりの言うとおりやで、カズ。それに、や」

 「それに?」

 一刀のぼやきに突っ込みを入れた司馬懿に、姜維が同調の言葉を発したあと、いまだに覚悟を決めずにいる一刀に、こんなことを言った。

 

 「……我が君の王位即位。それを望むは臣らのみではありません。多くの兵や民もまた、それを望んでおります。我らが王の誕生を」

 

 「……」

 久しぶりに、その場にいた全員が、姜維が本来の話し方をしたのを聞いた。いつもの少々ふざけ気味の雰囲気は姿を消し、ただまっすぐに己の主を見据える、北郷一刀の臣下である、姜伯約がそこにいた。

 「……いい加減、腹をくくるのですな、我が君?」

 「蒔さんまで」

 「煮え切らない男は嫌われますよ?あ、でもその方が、輝里がご主君に愛想を尽かして、かえっていいかも♪」

 「……さ・く・や?(ぎぬろ)」

 「あん。冗談だってばあ、輝里い~(つい~)」

 「うひゃい!だから背中はやめなさいっての!(ごちぃっ!)」

 「うきゅっ!?(ばた)」

 『あ~あ……』

 といった感じの、徐庶と伊籍のいつもの漫才はさておいて。

 

 それから数日後の、吉日。

 

 

 

 「北郷一刀。公孫伯珪。両者とも、祭司たる我が前へ」

 『は』

 厳かな雰囲気の中、一刀と公孫賛の二人が、この儀式のために急遽設営された祭壇を、一歩一歩ゆっくりと上がっていく。その二人の姿を見つめるのは、二人の家臣一同と、曹操、劉豹、丘力居という、二人の同盟者たち。そして、地を覆いつくさんばかりの、多くの兵と民。

 その多くの視線を背に受けつつ、一刀と公孫賛は、壇の頂上に立つ、この儀式の祭司役を勤める李儒の下へと歩を進める。この式のためにあつらえられた儀式用の蒼いマントを、一刀はいつもの制服の上に羽織って、朱雀と玄武を腰に佩(は)いている。一方の公孫賛は、いつもの地味な鎧ではなく、紅白に金をあしらった儀式用の鎧をその身にまとい、白いマントを羽織っていた。

 「……どうした、美音?泣いてるのか?」

 「……だって、嬉しゅうおますもの。白蓮はんが王になる。うちのその夢がついに叶ったんやさかい……ぐしっ」

 よほど感激しているのか、周囲の目を一切気にすることなく、単径はその目から大量の涙を流していた。敬愛する主である、公孫賛の晴れ姿を見て。

 「……気持ちは分かるよ。あたしだって、まさかあの姉貴が、こうして王位に就く日が来るなんて、夢にも思ってなかったからな」

 涙こそさすがに流しては居ないものの、公孫越も今日という姉の晴れ舞台の日を迎えて、胸が熱くなる思いで居た。そして、二人がそんな会話を交わしている間に、一刀と公孫賛は祭壇の頂上へと到達し、李儒のその前に膝をついていた。なお、李儒の今の服装であるが、さすがにこの時ばかりは、いつものメイド服というわけにもいかないので、皇帝時代に着ていた衣装を模した祭礼服を、現在彼女はその身にまとっていた。……いつもの仮面をつけたままで。

 「北郷一刀。公孫伯珪。両名とも、これよりは王の位にある者として、これまで以上に民を愛し、その力を数多の民のため振るうべし」

 『は』

 「公孫伯珪には、“燕王”の印綬を、ここに授くものである」

 「はっ!燕王として、この命の続く限り、身命賭して働いて見せましょう!」

 

 おおおっっっっっ!!

 

 公孫賛の手にその印綬が渡された瞬間、人々から盛大な喝采と拍手が巻き起こる。そして、

 「……北郷一刀」

 「は」

 「そなたには、“晋王”の印綬を、ここに授けるものである(……これからも期待しておるからの、一刀)」

 こそ、と。王の印綬を一刀に手渡しつつ、李儒は小声でそう耳打ちをした。

 「……はっ。王の印綬、謹んでお受けいたします。いまだ若輩なれど、この命を賭けて、世の平穏のために働いてまいります」

 

 わあああああっっっっっっ!!

 

 それは、先ほどの公孫賛の時の倍以上の歓声だった。

 

 この時、その場の誰もが、これまでに経験したことが無いくらいの、熱狂の渦に包まれていた。

 

 “晋王”北郷一刀。

 

 “燕王”公孫賛伯珪。

 

 二人の新たな王の誕生に、誰もが興奮の坩堝の中に居た。

 

 

 

 

 

 しかし、それはほんのわずかの間のことだった。

 

 その日の夕刻。

 

 一刀と公孫賛、二人の王の即位を祝う宴が、国中をあげて執り行われようとした矢先、その報せはもたらされた。

 

 「洛陽近郊にて、董卓将軍率いる部隊が交戦状態に突入!敵は西涼連合軍二十万!至急援軍を請う!」

 

 

 新たな戦いが始まろうとしていた……。

 

 ~続く~


 
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