No.220865

空の花

同人円文さん

ども、同人円文です!
私は主に魏・凪メインの作品に獣耳シリーズと称してニヤニヤするためのお話を書いています!そろそろ他の国も書いてみたいが…。恋姫好きの読者の方々をニヤニヤさせれたら嬉しく思います!!

オススメ!
MALIさん→延耶が可愛すぎる!

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2011-06-05 13:36:29 投稿 / 全13ページ    総閲覧数:4145   閲覧ユーザー数:3484

 

「「あっつ~…」」

 

 暑い夏の日。私の隣にいる二人がそんな声を挙げた。

 

「沙和に真桜。だれるんじゃいない」

「凪~、だって~…」

「暑いもんは暑いんや~…」

 

 注意する私に二人はブツブツと文句を行っている。

 全く…と心の中で思った私は、

 

「だいたい真桜、お前はそんな下着のような格好で何を言っているんだ。兵士たちを見てみろ。鎧を着ているのだぞ?」

「凪~そないなコト言ったって暑いもんは暑いんや。兵士のみんなも暑そうにしてるし、凪はそんな鎧と武器着けとって暑くないんか?」

「…気合だ」

 

 そうだ…。気合があれば、このくらいなんとも…ない…。

 しかし、真桜はじっと私を見ている。

 

「な、なんだ、じろじろ見て…?」

「凪ぃ?…そら我慢してるってことやろ?」

「違うぞ!だ、断じて違う!」

 

 そうだ、気合で乗り切るのであって消して我慢では…!

 

「嘘!凪ちゃん汗すごいかいてるの!」

「そ、それは仕方ないだろう!?この暑さじゃ…!」

 

 しまった!思わず本音が…!

 

「あー凪、今暑いっていった!」

「そんなんじゃ汗が臭っちゃって隊長に嫌われちゃうの~!」

「ええっ!?た、隊長に…?」

 

 そ、そんな…!隊長は汗臭い女は嫌いなのか…!

 いや!隊長に限って…でも、しかし…。

 

「そーやで、凪。だからここは…」

「日陰で休憩するの~!」

 

 

 二人はここぞとばかりに休憩を提案してきた。

 

「だ、ダメだダメだ!そんなこと言って楽をしようなんて…!そうはいかんぞ!」

 

 私は二人の提案をきっぱりと断った。

 そうだ、私は北郷隊を率いる人間だ。部下の手前、だらけるわけには…!

 

「なら凪は隊長に嫌われてもいいんやな~?」

「えっ!そ、それは…」

「そ〜いえば~、この先にいいお香売ってるお店見つけたの~。ねぇ真桜ちゃん早速買って使ってみてみるの~」

「ふ~ん。まぁうちはあんま興味ないけど…隊長の前で汗臭くてもかなわんしなぁ~」

「そうなの~。隊長の前で汗臭いなんて女の子としてダメなの~」

「まぁそれもそうやな~。ならこの先でうちらの隊は休憩ってことで…」

「ま、待て!」

「どうしたの~?」

「どないしたん~?」

「わ…」

「わ?」

「わ?」

「私にも使わせろ!///」

 

 

 

 

 結局私も勤務中にサボってしまった…まぁ、警備兵のみんなも休憩自体は喜んでいたようだが…。しかし…隊長になんて言えば…で、でも匂いも気になるし…あ~…どうすればっ~!!

 

「ほら~凪ちゃん。もういい加減に諦めて隊長に会いに行くの~」

「そ~やで?まぁちょっとぐらい遅れるのはいつものことやろ?」

「いつもじゃマズイだろう…!」

 

 そんなことを言う二人に私は思わずこめかみを抑えた。

 いや、確かに私も結局サボってしまった訳だし…。

 

「ええい!隊長に隠し事なんてダメだ!正直に話す!」

「ええ~!!?」

「それだったらウチらまで怒られるやん!?」

「連帯責任だ!」

 

 そう言って私は二人の首根っこをつかんで詰所に入っていった。

 

 

「あ、三人ともお帰り。遅かったね?」

「あー…凪さん、真桜さん、沙和さんおかえりなさい…」

「「「…」」」

 

 そこには半裸の隊長と、顔を真っ赤にして奥の腰掛に横たわる虎琥の姿があった。

 

「た、隊長…ひ、昼間ッからなんちゅーカッコで…な、なんちゅーことを…!」

「しかもまだ入ったばっかりの虎琥ちゃんを…いっぺん死んでみるの~…!!!」

「…へ?何を言ってるんだ?このカッコはちょっと暑くなったから脱いだだけだが…」

「あ、熱くなったら!!!?そ、そんなに…!!!!」

「け、ケダモノ…ケダモノがいるの…!!!」

「お、お前ら、なんか勘違いしてないか?俺は熱中症になっただな…って凪?」

「…」

「どうしたんだ?なにか手にバヒュンって…ちょ、ま」

「隊長の…バカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

「ですから隊長は暑さにやられた私を介抱していただけで…!」

「ホントか…?」

「ホントに~…?」

「本当だろうな…?」

 

 どうやら隊長は本当に、本当に虎琥を介抱していたらしい。

 虎琥が若干赤みの引いた顔で私たちに伝えてきた。

 しかし…。

 

「わ、私はなんてことを…!!」

 

 今更ながら頭を抱えてしまう。

 私は虎琥の膝に頭をのせて目を回している隊長のほうを見た。

 気のこもった一撃がキレイに決まったらしく、目を覚ます気配がない。

 

「まぁさすがは凪やな。一撃で殺ってしまうとは…」

「殺っ!?」

「ホント。キレイに決まったの~…」

「そ、そんな…!」

 

 ま、まさか。私は隊長を…!

 というか以前もこんなことが…。

 

「だ、大丈夫ですよ!ちゃんと呼吸もありますし心の音も聞こえます!」

 

 と、隣から虎琥の声が聞こえた。

 私も隊長の胸に目を下ろした。

 

 

「…///」

 

 い、意外といい体つきをしてるなぁ…///

 太くもなくかと言って薄くもないとても均等な筋肉の付き方をしている…。

 と私は目線をわずかに逸らした。

 とそこには。

 

「「「…///」」」

 

 三人とも隊長の胸板に目がいっていた。

 

「おい、お前たち…なに隊長の体をじっと見ているんだ…」

「いや!思てへんよ!?隊長意外といい体してんなーとか思てへんよ!///」

「そ、そうなの!ぜんぜん思ってないの!///」

「…(ポッ)///」

「本音がダダ漏れだぞ!って虎琥?ポッてなんだ!?ハッ…!まさか虎琥が倒れた理由って…!」

「そ、そんなことありません!別に隊長の上半身裸の姿を見ていたら体が熱くなったなんてそんな…!」

「「「本音がダダ漏れーーーー!!!?」」」

 

 

 

 

 

「じゃ誤解はとけているんだ。よかった…これで桂花や春蘭に知られたら色々と面倒になりそうだからな~…」

「「「「そ、そうですね…(やね…)(なの~…)///」」」

 

 隊長はその後、私たちが色々している間に目を覚ました。

 ううぅ…さっきまでの光景が頭に張り付いて頭から離れない。

 他の三人も…どうやら一緒らしい。顔が赤い。

 

 

「どうしたんだ。みんな、顔が赤いけど…熱中症?」

「いや!なんでもありません!なぁ三人とも!?///」

「そうやで!なんもあらへん!///」

「何もないの~ねぇ虎琥ちゃん!?///」

「そ、そうですね!何でもありません!///」

「そっか?まぁいいけど…無理するなよ?」

 

 そう言って隊長は服を着て上着を羽織った。いつもの格好だ。

 隊長はがっこうのせいふくと言っていたが私たちの知る由はない。

 だがそれよりも…!

 

(おい!真桜…!さっきの…!)

(わーってるって…!)

(絶対失敗しちゃけないの~)

(コクコクッ!!)

「4人とも何をこそこそしてるんだ~?しっかし、こう暑くっちゃ兵士や街の人たちも大変だな。何かパーっと楽しいことして気分を変えたくなるな~…」

 

 隊長は戸の前で外の暑さに顔をしかめている。

 「夏だから…水着!ってこの世界で作れるのか…?」とかよくわからないことをつぶやいている。しかし、私たちはそれどころではない。

 あんな姿の隊長…。そう簡単に拝むことはできない…!しかし華琳様に仕えるものとして教えるべきか…「そうだ!!!」

 と、いきなり隊長の声が聞こえた。

 

「なぁ真桜!こんなの作れそうか!」

 

 そう言って隊長は真桜の耳元に手をやった。

 何か内緒話でもあるらしい。

 

「って隊長!いきなりなんやねん!?って…ふんふん…まぁ…華琳様の許しが貰えれば…どうにかなると思うけど…」

「華琳のか…!よし、ちょっと華琳のところ行ってくる!虎琥!後のことはよろしく!」

「あッ!隊長!!?」

 

 あ、あの人は…しかし、後は頼むって何を頼むんだ?まさか仕事を?さすがに隊長と言ってもそんなことは許されないはずだが…それにあの人はそんなことは…。

 

 

「あ、そのあたりは大丈夫です!」

「大丈夫って…」

「隊長の仕事はもう終わっています。私に頼まれていたのはこっちで…。真桜さん、沙和さん隊長からのお知らせです」

「なんや?…ま、まさか!隊長うちらが残した仕事終わらせてくれたん!?」

「ホ、ホント!?きゃーーーー!隊長優しいーーーー!」

「はい!」

 

 そう言って虎琥は隣の部屋に行き…。

 何かを抱えて戻ってきた。

 

「はい!真桜さんと沙和さんの分です!」

 

 ドサッ!っと二人の前に大量の書簡が置かれていた。

 見るにここ数日のものだろう。

 

「「へ…?」」

 

 目の前の書簡の量に真桜と沙和が変な声をあげた。

 

「な、何か。増えてへん…?」

「はい。ここ数日の未提出の報告書でいい加減な感じになっているものは全部、私が選定しました。それも今日、全部やり直していただきます。それと隊長がやらなくても私たちだけで片付けられる分もです。もう、隊長ったら自分の仕事以外の分やお二人の分までやろうとしたんですよ?…けどまぁ、わかりますよね?」

 

 虎琥がとってもいい笑顔で二人のほうを見ている。

 確かによく二人の分の仕事がやけに減っていたりしていることがあったが…隊長が片付けていたのか。なんて申し訳ない…今度お礼をしないと。

 ちなみに虎琥は基本、真面目で真桜と沙和にも厳しい態度でいることが多い。現に今、ものすごくいい「笑顔」で二人に接している。

 その点、私は残業を残すようなことはないため、彼女にあんな笑顔(?)を向けられる心配はない。

 真桜と沙和は虎琥の手によっててきぱきと分けられる書簡の分量に呆然としているようだ。

 

「はい、これが私と凪さんの分で…こちらがお二人の分です」

 

 割り振りは真桜、沙和、私、虎琥の順に4:4:1:1と言ったところだろう。

 それでも量が量なので大分差があるが。

 

「なぁ、凪…?」

「えーと…凪ちゃん?」

 

 二人が私をじっと見つめている。

 私はため息を一つ付いて、

 

「自業自得だ」

「「そんなぁ~~~~~!!!!!」」

 

 詰所に二人の叫び声が響いた。

 さて、私は警邏の報告書を書こう。

 

 

「終わった…」

「終わったの…」

 

 二人は額を机に着け突っ伏していた。

 

「はい、お疲れ様です」

「やっと終わったか?」

 

 その隣で私と虎琥はひと足早くお茶と甘い菓子を楽しんでいた。

 

「ずるいの…。凪ちゃんだけずるいの…」

「なんで凪は仕事がないねん…」

「私は普段自室にも持ち帰ってやっているからな」

「同じく、です」

「やったら手伝ってくれたってええやん!?」

「そうなの~!!」

「「イヤ(だ)(です)」」

 

 そんなぁ~!っと言った表情を浮かべている二人を見て私は改めて、自業自得だ、と言ってやった。

 と、そんな話をしていると、

 

「真桜!いるか!?」

 

 隊長が帰って来た。

 

「なんや~、真桜さんは疲れきって動くことも」「悪い!真桜を借りてくぞ!」

「って隊長!?ああんもう引っ張らんでええから…!てか休ませてーーー!!」

「っともういい時間だから今日は上がっていいぞ!じゃあ!」

「ってウチは!?」

 

 隊長が帰ってきたと思ったら真桜の言葉を待たずに連れていきなり出ていった。

 

「…どうしちゃったのかな~?」

「さ、さあ…?」

 

 沙和と虎琥は隊長が走り去って行ったあとをただ呆然と見ていた。

 

「あ…」

「ん、どうしたの?凪ちゃん?」

「いや…」

 

 そういえば…結局気づいてもらえなかったな…。

 

「ん…?凪さん。もしかしてお香をつけてますか?」

「…ッ!虎琥…?」

「そうなの~。凪ちゃんお昼汗だくになってたから汗臭くならないようにって付けてあげたの。いい香りでしょ?」

「はい!とってもいい香りがします!」

 

 隣で笑顔を向けてくれる虎琥を見て私は…、

 

「むぎゅ!?って凪さん!!!!!?///」

「うう~…あ、ありがとう。虎琥~…!」

「むぎゅ~~~~!!!?///」

 

 思わず虎琥を抱きしめていた。

 それにしても隊長…気づいてくれないなんて…。

 

 それから私は、沙和に引き剥がされるまで虎琥を胸のなかに抱いていた。

 

 

 それから数日がたった。

 

「「「花火大会?」」」

 

 私達、三人は思わず声をあげた。

 

「ああ。真桜に協力してもらってようやく完成したんだ」

「完成したって…花火、ですか?」

「爆竹とは違うの~?」

「ああ。爆竹は音だけだけど花火は空に飛ばして火花にいろんな色があって…とっても綺麗なんだよ」

「「へぇ~~~…」」

 

 二人は興味津々と行った様子で隊長の話を来ていた。

 

「隊長…今までこちらに来ず、そんなことをしていたんですか…」

「…ごめんね。どうしても完成させたかったんだ。ちゃんとこの埋め合わせはするから…。ね?」

 

 隊長は申し訳なさそうな顔をして私の顔を見つめてくる。

 そんな、顔されたら…。

 

「…今度」

「ん?」

「一緒に、街を回ってくれるなら…いいです///」

「街を?…それでいいの」

 

 私は何も言わずに頷いた。

 隣ではニヤニヤと虎琥と沙和が笑っている。

 わ、笑うな!///

 

 それからさらに数日。

 

「で、出来た…さすがウチや…」

 

真桜はそう言ってすぐに眠ってしまった。

 

「真桜ちゃん。眠っているように死んでるの~…」

「死んだように眠ってるの間違いじゃ…?」

「あ…。ま、間違えたの…」

 

 ここ数日の間、真桜は花火の打ち上げの試験に彩色増やすなど色々と忙しかったようだ。

 さらにこの試験を承認した華琳様も試験加わっていたようで休む暇もなかったらしい。

 こんな時ぐらいは休ませてあげよう。

 私は布団もかぶらずに寝ている真桜に布団をかぶせると沙和と部屋を出た。

 

「さて…せっかく真桜と華琳様が作った花火だ。沙和、どこか見にいかないか?」

「んふふ…♪」

 

 隣に立つ沙和がニヤニヤと笑っている。

 なんだ…?

 

「凪ちゃん…そんなんじゃダメなの!」

 

 突然怒られた…。

 

「な、何がだ?」

「せっかく隊長とでぇとの約束したんだからここで使わないと手はないの!」

 

 沙和はそう言うと私の手をつかんでズルズルと引きずっていった。

 こうなると沙和はいつも以上に力を発揮する。

 できれば戦場や仕事でも発揮してもらいたいんだが…。

 

 

 

「…これは?確か前に隊長からもらった」

「そうなの~!浴衣なの!」

 

 そう。以前貰った浴衣だった。

 

「これ着て隊長とでぇとに行くの!早くしないと誰かに取られちゃうの!」

「し、しかし「おーい凪いるか?」って隊長!!!?///」

 

 突然隊長が部屋を訪ねてきた!

 あわわ!どうしよう!!!?

 

「凪ちゃん落ち着いて!それは別の人のネタなの!」

「だけ、だけど!!」

「凪?居るんだろ?開けていいか」

「「ダメーーーーーー!!!!」」

「お、おう!わっわかった!」

 

 はぁはぁ…。落ち着いて、落ち着いて…。

 

「隊長…あ、あの」

「ん?」

 

 扉越しに隊長の声が聞こえる。

 よ、よし!

 

「今日…一緒に、花火を…見ませんか?///」

 

 

 

 

「いやー賑わってるな~」

「そ、そうですね…///」

「もう少し事前に準備すれば屋台も出来ただろうけど…まぁ急な思いつきでここまで出来たんだからよしとするか。さ、行こうか?」

「は、はい!」

 

 日が落ちる街の中を私と隊長は歩き始めた。

 花火大会は花火を街のどこからでも見えるように、と言うことで街をぐるりと囲む城壁の上に設置しているらしい。

 街の人々も初めて見る花火というものに心を躍らせているようだ。

 時折騒がしい声も聞こえている。

 しかし、さっきから私はあることが気になっていた。

 

「あの、隊長?」

「ん?」

「どうして街の外に出ようとしているんですか?」

 

 そう。先程から隊長は街の中に向かっているのではなく、外に向かおうとしていた。

 街の中どこからでも見えるようにとしていたはずなのに。

 隊長は楽しそうに笑うと、

 

「内緒♪」

 

と一言だけ私に言った。

 

 

「隊長、ここは…」

「いい所でしょ?」

 

 私は隊長と二人で城を一望できる高台に来ていた。

 戦争の最中であればおそらく陣が敷かれるような場所だ。

 

「いやぁこの間さ、花火の試験しているときによさそうな気がしてね~。ちょうどよかったよ」

「そうだったんですか…」

 

 隊長はこれから始まる花火を楽しみにしているのか、子供のような笑顔を浮かべていた。

 私もその笑顔に釣られるように笑ってしまう。

 本当にこの人の笑顔は、人を惹きつける。

 私はこの人に、こんなにも惹きつけられている。

 

「ん?どうしたんだ、凪?」

「は、はい!?///」

 

 ち、近い!?隊長の顔が目の前に…///!

 

「じっと俺の顔を見て…何か付いてるか?」

「い、いえ…///」

 

 隊長は何かついてないか確認するように顔を触っている。

 とそんな時だった。

 

 ドーーーーーーーーン!!!

 

 大きな音と共に急に辺が急に明るくなった。

 

「お!始まったな!」

「はい…!」

 

 私と隊長は空を見上げた。

 空には大きな、とても大きな火の花が咲いていた。

 

「これが…花火…!」

 

 すうっと消えては、次々に大きな音と共に大輪の花が咲いた。

 私は思わず見入ってしまった。

 街の方からも歓声が聞こえる。

 私は興奮を抑えられず、隊長に声をかけた。

 

 

「隊長!すごいです!たい、ちょう…」

 

 私は、それ以上声をかけることが出来なかった。

 

 

 

 隊長は寂しげな顔で、涙を流していた。

 まるで、何かを懐かしむように。

 

 

 

「…」

「ああ…。ごめん、凪。どうしたの?」

 

 私は、何も言わずに隊長に抱きついた。

 私には、私たちにはきっと、何もできないのだろう。

 だから、私は。

 せめて、せめて、隊長の寂しさを、分かち合いたかった。

 隊長は突然のことに驚いていたが何か気づいたのか、そのまま私の背に手を回した。

 

「ごめん、こんな時に…。でも大丈夫、大丈夫だから…」

 

 何も言わずに、私は隊長を抱く手に力を込めた。

 

 

 

 

「ありがとう、凪。心配かけちゃったね」

「いえ、いいんです。私にはそれしかできないですから」

 

 私たちは腰を下ろして空に上がる花火を眺めていた。

 真桜の奴、こんなに作って大変だっただろうに…。

 私は若干的はずれなことを考えていた。

 

「そういえば」

 

 と、隊長が私の方を見た。

 

「凪、香水でも付けてるの?何かいい香りが…」

「こう、すい?お香なら少し…。沙和に使わないと隊長に嫌われるって」

「?どういうこと?」

 

 私は顔を逸らしてつぶやいた。

 

「汗臭くなるといけないからって…汗臭い女は、嫌われるって…」

 

 とそう言って隊長は声を上げて笑った。

 

「な、何がおかしいんですか!?///」

「いや、そんなことで嫌うなんてないのに…でも良いね。凪にピッタリだと思うよ」

「そ、そうですか…?///」

「うん」

「あ、ありがとうございます…隊長///」

「どういたしまして」

 

 私は隊長の肩に頭を乗せると、また空を見上げた。

 今日はとても幸せだ。

 沙和や真桜に感謝しなきゃな。

 隣に目を動かす。

 隊長も空を見上げた。

 私は再び空を見上げた。

 空には大きな花が咲いていた。

 

 今も昔も、この日は空に大きな花火が上がっていた。

 

 

 私は目を開けた。

 空には大きな花火が上がっている。

 私は隣に目をやった。

 

 

 

 そこには誰も居ない。

 

 

 

 

「隊長…」

 

 かつて、そこに居た。自分の隣に居た人のことを思い出した。

 今でも思い出せることができる。

 そのたびに、心がチクチクする。

 もう、あの人のことを忘れてしまえばいい。

 何度も何度も思い出しては感じる辛さに、苦しさに、何度そう思ったことか。

 今でも夜に目をつぶればどうしても、どうしても思い浮かべてしまう。

 呆れたように、困ったように、寂しそうに、怒ったように、心配そうに、優しげに。

思い出してしまう、いつも見ていた、あの時も見ていた、あの横顔。

 こんなにも辛いなら、なぜ。

 なぜ私は、私たちは出会ってしまったのか。

 私は幾度も考え続けてきた。

 あの方は、なぜ私の前に現れたのか。

 出会わなければ、こんなに苦しい思いをすることはなかっただろう。

 だが。

 

 

 

「忘れることなんて、できない…」

 

 

 

 誰に言うわけでもなく、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。

 きっと私は、あの時の隊長と同じ顔をしているのだろう。

 あの日を思い出して、懐かしみ、寂しさを感じている。

 隣にこの世界にあの人が居ないことに。

 私はあの時、隊長の気持ちを分かってあげることができなかった。

 でも、今ならわかる。

 

「隊長も、寂しかったんですね」

 

 今はない、いない人を思う。

 隊長も、あの時居なかった親しい人たちを、懐かしい場所を思い出していたのだろう。

 

 どーーーーーーーん

 

 空に花火が上がる。

 私は、空に大きな花が咲くたびにあの日を思い出す。

 そして私は心から願う。

 

(また、あなたと、ここで…)

 

 口には出さず心の中で、ただただ、空に願った。

 

 

はい。第一回同人恋姫夏祭りにということで参加させていただきました。

ギリギリになってしまいちょっとここはどうだろうかとかバランス悪いな、と思うところも多々あったのですが…申し訳ありません。

何か有りましたらどうぞコメントをください。

 

この作品は制作段階で華琳メインにするか、凪メインにするかで大いに悩みました。

華琳メインであればEDのこともありますし想像は容易なんです。

しかし、自分は凪スキーということを考え凪をメインにしました。

あとはじめての試みとして凪の独白的な感じで進めています。

今回はオリキャラの孫礼こと虎琥と真桜・沙和意外にキャラは出していません。

時間がありませんんでしたから若干すっとばした感じです。

そこは心残りです。

なお、この作品は他の作品共つながっています。虎琥がいい例かと。

また、とある曲に感化されたところもあります。

こんな駄文ですが恋姫の活性化につながれば、と思います!

それでは、誤字脱字等ありましたらどうぞ!

 

 

 

 
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