No.219587

行商人簡雍とその御供

傀儡人形さん

お久しぶりです傀儡人形です。
時間がない事とスランプ気味なもので執筆がはかどらず、音信不通でしたが生存報告みたいなもので上げます。

2011-05-30 11:21:05 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1461   閲覧ユーザー数:1386

「暇だねぇ。いい儲け話はないものか」

 

ふぅ、と白い煙を口から吐き出す。

吐き出された煙は空気中に散乱し、やがて、すぅーっと消えていった。

煙を吐いた男は鉄で出来た細長い筒を口に咥えて息を吸い込み、また、ふぅ、と白い煙を吐き出した。

 

「朝廷が荒れ放題な今、商人にとっちゃぼろ儲けする千載一遇の好機な筈なのに、この簡雍(かんよう)ともあろう者が何をしているんだろうねぇ。こんな水辺で、煙管を吹かせて」

 

男、簡雍の少し後ろには屋根付きの荷馬車と暇そうにしている馬がいる。

商人、と本人が言うように荷車には香辛料や武器、陶器など売り物が丁寧に敷き詰められている。

簡雍はまた煙を吐き出し、目の前の川を見た。

太陽の光が反射してチラチラと目に光が眩しい。綺麗な証拠なのか、水面からでも魚の姿がちらほら見えている。

ぐぅ、と簡雍の腹が鳴った。そろそろ昼飯時だ。

 

「素直(すなお)やーい。魚は獲れたかーい?」

「もうちょっと待ってください! 今すぐに・・・・・・」

 

素直と呼ばれた子供くらいの背の少女は勢いよく両手を川に突っ込んで悔しそうに何もない両手を見つめた。

先ほどから魚を捕まえようとしているのだが、これがどうにも上手くいかず、いまだに一匹も捕まえる事ができていない。

水中では思いの外すばしっこい魚は少女の小さな手をスルリとかわして、また悠然と泳ぎ続けている。

少女は次の獲物に狙いを定め、静かに近づき、そして、

 

「獲った!」

 

両手で魚をガッチリと捕まえた。が、

 

「あ、うわぁ!」

 

魚を獲れた事が嬉しすぎたのか、足元が疎かになって体勢を崩して川に倒れこんでしまった。もちろん、倒れた衝撃で捕まえていた魚は逃げてしまった。

 

「水も滴るなんとやら。素直、魚はいいからこっちおいで。風邪引くよ」

「え、でも昼食の食材が・・・・・・」

「木の実やら何やらがある。食費浮かせようとケチな事するもんじゃないねぇ」

「すみません。この田豫(でんよ)、一生の不覚です」

「一生の不覚を我輩はもう五回以上は聞いてるよ」

「あぅ・・・・・・」

 

田豫は荷馬車の荷台へ向かい、濡れてしまった服を脱いで大きめの毛布に包まって出てきた。

 

「警戒心がないのか我輩にはそういった感情を抱いていないのか誘っているのか・・・・・・」

「いやらしい事考えてますね。というより、口に出てますよ」

「して、素直はどれなんだい? 我輩としてはどれでも構わないんだが」

「信頼してるからです。こんな幼稚体系で欲情しない事くらい付き合いの長さで知ってます」

「ふむ、それほど長い付き合いになるのか。時が経つのは早いものだ」

 

ふぅ、と白い煙を吐き出す。と、田豫が睨み付けているのに気が付いてそちらに目を向けた。

 

「その煙、何なんですか? 最近ですよね、そうやって奇怪な煙吐くようになったの」

「奇怪な煙とは失礼な。と言っても臭いなんかは否定しない。これは前の街でとある筋肉ダルマが持っていた所持品で、煙管という娯楽品だ。未使用の新品を買った。葉も大量に購入してある」

「またそんな無駄遣いを。大道芸人みたいですよ、それ」

「お、今度それで客引きしてみようかねぇ。素直も吸うかい? 中々深みのある味わいだよ」

「・・・・・・いただきます」

 

煙管を受け取った田豫はしばらくジッと口で咥える部分を見つめていた。胡散臭そうな顔をしつつ口に咥え少し吸い込むと、

 

「けほっ、けほっ」

 

むせて苦しそうだった。

 

「な、何ですかこの体内に直接異物を叩き込んだような嫌な感じは。こんなもの平然と吸ってるな

んておかしいですよ」

「失礼な、と言いたいが否定しない。我輩も最初は不快感しかなかったが、これは続けると癖になる。素直もどうだい? 予備にもう一本ある」

「遠慮します。体に悪そうだから」

「そうかい? そりゃ残念」

 

田豫から煙管を受け取った簡雍は思いっきり煙を吸い込んで大量の煙を吐き出した。

灰を煙管を購入するときに「マナーは守るべきであろう」と買わされた受け皿に落とし、煙管を洗いに川に向かった。

一日一本。今度いつ手に入るか分からないものを馬鹿吸いして公開するような算段を簡雍はしない。一年は持たせる気概でいるのだ。

 

「よし、こんなものか」

 

煙管に付いた水分をぬぐって懐にしまった。購入時に説明は受けたが、それほど覚えておらず、適当に洗い流す程度しかしていない。

 

「さて、素直が魚を取れなかったから昼飯は木の実とかになった。これなら移動しながら食べられるから移動するよ」

「うぅ、すみません。でもこの木の実、美味しいですよ」

「こら、勝手に食べない。ま、いいけど」

 

簡雍と田豫は荷馬車に乗り込んだ。賢い馬で、出発すると感じれば少し後ろを振り返ってからゆっくりと進みだす。

 

「さあ、公孫瓚殿のところに向かおうか」

 

のんびりとした速度で荷馬車は進みだした。

 

 

はい、というわけで生存報告がてらシナリオ上げてみました。

短いですが生存布告には丁度いいかと思います。

忙しいですね毎日。執筆時間がほとんどない。

今回は生存報告なので次いつ上げるは未定ですが、気長に待っていてくれると

嬉しいです。

では。

 


 
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