No.219440

真・恋姫無双SS~この地に生きる者として~

SYUUさん

4度(無印、魏、呉、蜀)外史を巡った北郷一刀が
天の御使いとしてでなく、その地に生きるものとして外史をかけぬける物語

色々と納得の行かない点も多々あると思いますが、
なまあたたかく見守っていただければ幸いです。

2011-05-29 17:37:46 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:22740   閲覧ユーザー数:17961

 

 

 

真・恋姫無双SS ~この地に生きる者として~

 

 

プロローグ

 

 

一人の男が自身の置かれた状況に困惑していた。

 

何も見えず、何も聞こえず、何も感じられない

自身が起きているのか、寝ているのか、生きているのかさえ判断がつかない

 

それでいながら、思考だけは働くのである

現状がわからない以上、過去に手がかりを求めるしかなく彼は自分の過去を振り返ろうと

記憶を紐解いていく・・・

 

 

 

正史と呼ばれる世界から外史とよばれる三国志に似た世界にとばされ

そこで関羽こと愛紗と、張飛こと鈴々に出会い、彼女達と共に乱世を平定し

その乱の元凶と思われる白装束との決着をつけるべく泰山におもむいた

 

泰山の神殿にて待っていた左慈と于吉、同行してきた貂蝉によって聞かされた

この世界が終焉を迎えるしかないという事実に驚愕しつつも

最後の望みをたくして銅鏡に触れ光につつまれた

 

光の中で意識失いそうになりながらも愛紗の伸ばしてくれた手を掴もうとしたがつかめず

気がつくと俺はそれまでの記憶を失い新たな世界にやってきていた

 

そこまでは間違いなく思い出せたのだが、そこから先がはっきりとしない

 

曹操こと華琳の魏にいたり、

孫権こと蓮華の呉にいたり、

劉備こと桃香の蜀にいたり、

 

ひとつの物語を各々の陣営から見てきたような感覚に困惑を深めながらも

さらに記憶をたどる

 

彼女達と共にいくつもの戦場を潜り抜け、乱世が終焉を迎える。

 

そして最後に思い出したのが、彼女たちとの別れ

必死に引きとめようとする彼女達に答えることもできず、

自身の視界が暗くなっていき、ついには何も感じなくなった

 

 

そこまで思い出したところで、男は自身が涙を流していることに気づく。

 

先ほどまで、一切の感覚が欠如していたというのに

今では、頬を涙が伝うのをたしかに感じている。

 

涙を拭おうと手を動かそうとしてみれば手が動かせ

辺りは暗くて何も見えないが自身が暗闇の中で立っていることまでが知覚できた

 

 

「自己を取り戻したようですね、北郷一刀」

 

 

不意にかけられた声に驚いて振り返れば

そこには一人の少女が立っていた。

 

「き、君は・・・」

 

見覚えのない少女に困惑しつつも問いかけてみれば、

少女は少し思案した後に管輅と名乗った。

 

「君があの星読みの管輅・・・」

 

「ええ、ですがここでは外史の管理者と言った方が話が早いでしょうか・・・

貂蝉、左慈、于吉といった者達を覚えていますか?

私は彼らと同じ存在です」

 

外史の管理者の言葉に驚きつつも、

管輅の表情や続けて出た貂蝉たちの名から嘘や冗談の類でないことがわかった

 

「・・・・俺はどうなったんだ」

 

 

「順を追って説明しましょう。

 

始まりの外史の終焉にてあなたが銅鏡に触れた事により、

あの外史は終焉を向かえ、あなたは正史に帰るはずでした。

 

ですが、銅鏡に触れた時の貴方の思いが正史に戻ることよりも

外史の少女達と居ることを強く望んでいた為に新たな外史が開かれた・・・

 

しかし、そこで問題が発生した」

「問題?」

 

管輅と名乗った少女が小さく頷き、言葉を続ける

 

「新たな外史に進むにあたり、北郷一刀という存在が三つにわかれてしまった。

 

本来、外史の者でない貴方が外史によって分かれるなどといったことはありえません。

しかし、事実として3つの外史で貴方が観測された

 

もともと一つの存在である者がわかれたことによりその存在は揺らぎやすく、

すぐにでも消えてしまいそうだった」

 

男は自身が消えてしまいそうだったという言葉に驚きを隠せない

 

「 もとより管理者の責で外史にやってきた貴方が本人の意思に関係なく

その存在が消え行く事を私は見過ごすことができなかった。

 

そこで、貴方に選択の機会を与えるため

何人かの管理者と協力し貴方を一つの存在へと戻しここへ導いた。」

 

 

「これが貴方の現状です」

 

そういって管輅は言葉を区切り、一刀を見据える

 

「・・・ああ、あまり理解はできなかったけど、

君達に助けられたということはとりあえずわかったよ。

 

ありがとう」

 

感謝の言葉と共に、一刀は深々と頭を下げた

 

その反応があまりに想定外だったのか、管輅はまじまじと一刀の顔を見つめた後、

おおきなため息をついた

 

(貂蝉の言っていたとおりの人物のようですね・・・)

 

「・・・・それで北郷一刀、貴方はこれからどうしたいですか

貴方が望むのであれば正史の世界に戻ることもできますが」

 

正史の世界に戻れるというのは本来であれば喜ぶべきことであるはずなのに

一刀は素直に喜べずにいた

それほどまでに外史の世界での出来事は一刀にとって大切で何物にも変えがたいものに

なっていたのである

 

それを見て取った管輅は新たな選択肢を一刀に提示することにした

 

 

 

「外史の人間として生きてみますか」

 

「えっ・・・」

 

新たにつむがれた管輅の言葉に、驚きと歓喜とが入り混じったような表情を浮かべる一刀

 

「勘違いはしないでください。

外史の人間として生きるといっても先のように天の御使いとして外史に戻るわけではありません。

その言葉のとおりに外史の人間として生まれ変わるのです。

これを選んだ場合、あなたは二度と正史の世界に戻ることはできません。」

 

「・・・正史に戻れない・・・」

 

失意ともとれる一刀の言葉を聞き流しつつ管輅は言葉をつづける

 

「それだけではありません、

 

外史の人間として生まれ変わるわけですから、

以前のように天の御使いとしての虚名によって周囲の人間がもてはやすこともありませんし、

貴方の今もっている記憶も失います。

 

そんな中、今度は自身の力のみであの乱世を潜り抜けなければなりません。

乱世の終焉を見届けることなく息絶えてしまうかもしれない、

 

それでも・・・『それでも』・・・」

 

管輅の言葉に一刀が割り込む

 

「それでも会いたいと思ったんだ、

愛紗に、華琳に、蓮華に、桃香に、皆に・・・

 

彼女達は、何のとりえもない俺を支え続けてくれたんだ。

それなのに俺はまだ何も返せていない」

 

「彼女達も貴方の事は覚えていませんよ?

それもでもですか?」

 

管輅の再確認に一刀は強い意志をを秘めた眼差しで答える。

 

「・・・・わかりました。

そこまでの覚悟があるのなら、もはや何も言いません」

 

管輅がそう告げると一刀の姿が徐々に闇に飲まれていきやがてその姿が消え去った

 

 

「北郷一刀、もう会うこともないでしょうが貴方の行先に幸多からん事を・・・」

 

 

 
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