No.217174

恋姫†無双~御使いを支える巨人~3

SUUさん

3話目です。

楽しんでくれたら、これ幸い。

2011-05-17 02:33:42 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1006   閲覧ユーザー数:918

「では、始めようか。陸豪殿」

 

「ああ、いつでもいいぜ」

 

調練場に来た俺と超雲は、それぞれ刃潰しをした武器を持ち対峙した。

 

超雲の得物は槍、俺は幅広の長剣だ。

 

(本来の得物じゃないが、我慢するか)

 

「はっ!!」

 

超雲の槍が真っ直ぐ俺の胴を狙ってくる。それを剣の腹で往なし、柄で打撃を加えようとするもすぐに距離を取られた。

 

「上手いな、流石だ」

 

「こちらも中々本気で突いたんだがな、やるではないか」

 

超雲が俺を見て不敵に微笑む。

 

(ありゃ強敵を見た時の目か? 少しは認められたかな)

 

「それ程なら、本気を出しても大丈夫であろう?」

 

そう言って、「はいっ!!はいっ!!はいっ!!」と連続で突きを繰り出してきた。

 

(全部急所狙いかよっ!!)

 

一撃目を剣の腹、二撃目を剣の柄、三撃目を体捌きでかわし、かわしながら剣で下から斬り上げた。

 

斬り上げた剣は槍の柄で受け止められたが、すぐに横に薙いだ。

 

「くぅ!?」

 

超雲の身体が流れた、好機とばかりに超雲の胴を突いた。

 

「オラァ!!」

 

全身のばねを使って突くが、バックステップで避けられてしまう。

 

「今のは肝が冷えましたぞ、陸豪殿」

 

「俺はイケると思ったんだがね、超雲殿」

 

2人してニヤっと笑う。

 

 

 

side:一刀

 

 

 

「星も仁義兄ちゃんも凄いのだ!!」

 

「ああ、鈴々。仁義殿は中々の武をお持ちのようだ」

 

愛紗と鈴々が仁兄さんを褒めている。

 

「ご主人様!! 仁義さんって強いんだね」

 

桃香も喜ぶように褒めている。

 

「そりゃあ、ね。じっちゃんが唯一認めた後継者だし」

 

強さより心意気で認めたとか言ってたけど、実際に仁兄さんは強いからなぁ。

 

仁兄さんの持ってた大太刀って、じっちゃんが渡した物だもんな。

 

「北郷、仁義を私の所の将にしていいか?」

 

白蓮が遠慮がちに聞いてきた。

 

「俺がどうこう言う事じゃないからね、仁兄さん次第じゃないかな」

 

この世界に来てしまった以上、どう生きるのかは本人次第だ。

 

桃香達と苦しんでいる人々を救う為に、天の御使いとして生きるのを決めた俺みたいに。

 

個人的には、一緒に来て欲しいなんて思ってるけど……

 

 

 

side end

 

 

 

武器を構えたまま、睨み合いが続く。

 

「外野も盛り上がってるな」

 

「陸豪殿ばかり話題にあがるのは、些か不愉快ではあるが致し方なしですかな」

 

超雲は少し不満そうに言った。

 

(この人は目立ちたがりなのか?)

 

まぁ、確かに人目を引く美貌の持ち主だと思うが。

 

「さて、これだけ睨み合っても面白みが無い。ここは一撃の勝負としませんかな?」

 

「一発勝負か、面白いねぇ」

 

俺は自分の顔の笑みがより深くなるのを感じた。

 

それは超雲も同じようで、笑みを深めている。

 

超雲は腰を落とし、両手で槍をしっかりと持ち、真っ直ぐに向けた。

 

俺は剣を両手で持ち、肩に担ぐように構え、腰を落とした。

 

「見た事の無い構えですな……」

 

「この時代には無い剣術だからな。俺もタイマン、一対一以外じゃ使わない……」

 

カウンター特化の構えなんぞ、戦場で使えんからな。

 

「反撃重視の構えに見えますな。だが、あえて誘いに乗りましょう」

 

(超雲の顔は、あえて誘いに乗っても絶対に勝てるという顔だ。面白い、実に面白い)

 

超雲の槍は最初と比べ物にならない程の速度で心臓辺りに迫る。

 

俺は自身に迫る槍に合わせ剣を全身全力で振り下ろした。

 

「せぇぇぇぇぇぇいっ!!」

 

「チェストォォォォッ!!」

 

ガァァン!!と金属同士の激しくぶつかる音がして、互いの得物が離れて飛んで行ってしまった。

 

「……引き分けですかな」

 

「……得物がなけりゃ、続きは出来んな」

 

超雲はフッと笑みをこぼし、此方に近づいてきた。

 

「私の真名は星。どうか受け取ってもらえないか」

 

「ありがたく受け取るよ、星殿。俺は仁義だ」

 

俺は星と握手した。互いの健闘を称えるように。

 

 

 

「仁義殿。私の事は呼び捨てにしてくれないか?」

 

「分かったよ、星。俺の事も呼び捨てにしてくれ」

 

「あ、私達も呼び捨てにして仁義さん!!」

 

気がつくと、先ほどまで観戦していた桃香達が近くにきていた。

 

「別に構わんぞ?」

 

俺が桃香と話していると、鈴々に袖を掴まれた。

 

「仁義兄ちゃん凄いのだ!! 星と互角に戦っていたのだ!!」

 

「互角って。お互いに本来の得物じゃなかったしな。偶然だよ、偶然」

 

本来の得物だったら勝てなかった、と思う。

 

突きだって、こんな速さじゃなかっただろう。

 

「あの星相手に渡り合ったのです。謙遜なさる事では無いと思いますが」

 

「ありがとう、愛紗。少しは誇れるかね」

 

愛紗は少し熱の籠もった目で見てきた。

 

(こりゃ、後で戦いたいとか言われるかもな)

 

「仁義、ウチで働かないか? 給金は保証するし、住む所も用意しよう」

 

「ありがたい申し出だ。しかし良いのか、こんなに素性の知れん奴を雇おうなんて」

 

白蓮はため息を付き、暗い顔をしながら言った。

 

「ウチは深刻な人材不足でな……少しでも優秀な奴に手伝って欲しいんだ」

 

「そいつは大変だ。……期限付きでなら良いなら雇ってほしい」

 

白蓮は怪訝そうな顔をした。

 

「期限付き? 出来れば、ずっといて欲しいんだが」

 

「そいつはありがたい。ありがたいが、一刀に付いて行きたいからなんだ」

 

そう言って、俺は一刀を見た。

 

「俺は大事な弟に寂しい思いをさせた。せめてもの罪滅ぼしをしたいんだ」

 

「仁兄さん……」

 

一刀は感極まったように俺を見る。

 

「嬉しいよ、仁兄さん。でも、良いの?」

 

「いずれ一刀はここを出て行くだろう? 苦しんでいる人々の為に」

 

そう言うと一刀は、ハッと俺を見る。

 

「一刀の考える事なんて、すぐ分かるさ。お前は優しいからな」

 

「仁兄さん……ありがとう」

 

俺は一刀の頭を乱暴に撫でた。

 

「そうか、そこまで言うなら仕方ないか。北郷達が出て行くまで手伝いを頼む」

 

「此方こそ、よろしく頼む白蓮殿。この世界に来たばかりで右も左も分からない未熟者だが、弟共々よろしく致す」

 

腰を90度に曲げ頭を下げ白蓮に礼をする。

 

白蓮は「私も呼び捨てで構わないよ」と朗らかに笑い、頭を下げた。

 

 

その時、1人の兵士が息を切らしながら走って来た。

 

「報告します!! また賊が出ました!! 数は1500!! 近くの邑を襲うようです!!」

 

「なっ、1500だと!? 今までより多いじゃないか!!」

 

白蓮が驚いた声をあげる。そういや、さっきの討伐は何人だったんだ?

 

「先程の我々が行った討伐は300程度でしたからな」

 

俺の考えを読んだ様に愛紗が述べる。5倍かよ……

 

「桃香、悪いがまた行ってもらえるか?」

 

「気にしないで白蓮ちゃん。みんなを苦しめる悪い人たちを退治に行くよ!!」

 

桃香が鼻息荒く宣言した。

 

「でも、話し合いで解決出来るなら良いんだけどね……」

 

桃香が伏目がちに呟いた。

 

「桃香様!! 相手は賊です、話し合いになど応じません!!」

 

「そうなのだ!! 悪い人達はお尻ペンペンしないと言う事聞かないのだ!!」

 

愛紗と鈴々は息巻いて意見を述べる。

 

「でもでも、賊の人たちだって理由が有って、あんな事をしてるんだよ? まずは話し合ってみないと」

 

(流石は仁徳の王ってか。賊相手に話し合いの選択肢が出るだけ凄いな)

 

「素晴しい考えだと思うが、まずは握り拳を解かせないと話もクソも無いとおもうぞ」

 

俺は俺の意見を素直に述べる。

 

「相手は俺らを殺しにくるんだ、此方の流儀に合わせたいなら、まずは相手を無力化して交渉につかせればいい。

 それからでも話し合いをするのは、遅くないさ。それとも、むざむざ殺されて助けられる筈の命を見捨てるか?」

 

(少し辛辣だったかね。しかし、誰かが諌めなけりゃどこまでもこのままだろう)

 

「……まだ納得は出来ない。けど、助けられる人たちを見捨てるよりはきっと良いと思う」

 

桃香の目に強い意志が宿ったように見える。

 

(こいつは驚いた、未完の大器が花開こうとしている。何処まで行くかね、この娘は)

 

「今はそれで良いさ。さて、賊退治に行くんだろう? 俺も付いて行っていいか」

 

「私達だけだと心許ないです、コチラからも是非お願いします」

 

桃香は頭を下げる。

 

「なに、やるだけやるさ。鈴々風に言えば、お尻ペンペンしてやるよ、な?」

 

そう言って、俺は微笑んだ。

 

「そうなのだ、お尻ペンペンなのだ!!」

 

鈴々が呼応して気合を入れる。

 

「今回は私も行こう。この超子龍の槍があれば千人力であろう?」

 

星が不敵に微笑む。

 

「ありがとう仁義。しかし出せる兵は500が限界なんだ。すまない」

 

白蓮は本当にすまなそうに言った。確か烏丸の脅威があるんだったか?

 

3倍差を跳ね返さないといけないのか、こりゃ骨が折れるな。

 

「前回、ご主人様が行った策で戦えるのではないでしょうか?」

 

「策?」

 

愛紗の話を聞き、一刀を捕まえる。

 

「どんな策だよ」

 

「あのね、仁兄さん……」

 

その策を聞いて、思わず笑った。

 

「なるほど、流石は北郷家の男だ」

 

俺は一刀の頭を乱暴に撫で、喜んだ。

 

(これなら行けるか? いや、地形次第か)

 

とりあえず、やれるだけやるか。

 

 

 

俺達は賊が集まっているという邑の近くに到着しようとしていた。

 

驚いたことに一刀が指揮を執り、賊討伐の指示を出していた。

 

(一刀は一刀で成長しているって事か。成長するのは嬉しいが、戦に慣れるのはなぁ)

 

俺は義弟の成長を嬉しく思いながら、複雑な感情を抱いていた。

 

 

 

俺は50の兵を率いて囮を受け持つ事になった。

 

勿論、周りは反対したが押し切った。

 

「ただでさえ少ない兵だ、新参者が囮になった方が戦いやすいだろう」

 

「仁兄さん、釣り野伏せは囮が肝心なんだよ? 新参者って言うなら兵士との連携だって取れないでしょう」

 

一刀は心配した面持ちで言ってきた。

 

「そんなの分かってるさ。ところがな……」

 

俺はそう言い後ろに控えていた兵に目を向けた。

 

「コイツ等、さっきの星との一騎打ち見てたみたいでな。どうせ戦場に出るなら俺と一緒に出たいんだと」

 

「我々は先程の陸豪様と超雲様の一騎打ちに感動致しました!!

 陸豪様程の御方なら、命を預けられると感じております!!」

 

一気に捲くし立て包拳礼をして俯いてしまう。

 

「な?ここまで言うなら大丈夫だろう。策の役割も目を輝かせて聞いていたし」

 

「兵の士気も高いですし、仁義殿に任せてみてはどうでしょうか?」

 

愛紗が口添えをしてくれた。

 

「分かったよ、仁兄さん。でも、約束して絶対に死なないって」

 

一刀は真剣な顔をして俺を見ている。

 

「当然だ。折角再会した弟と別れてたまるかよ」

 

俺は一刀の肩を叩き場所を後にした。

 

 

 

「陸豪様、そろそろ接敵します!!」

 

兵の1人が俺に報告してきた。

 

俺は兵に向き直り、声を張り上げた。

 

「テメェ等!! これから絶望的な数の敵に立ち向かう!! だが、安心しろ。テメェ等には俺が付いている。

 俺の強さは知ってるな? 俺の武でテメェ等を守ってやる!! だから、テメェ等は俺を守ってくれ!!

 往くぞテメェ等!! 俺達は強い!!」

 

「ウオォォォォォッッッ!!!!!!」

 

とても50人とは思えない声が大地を揺るがす。

 

そして、50人と1人の死地に向かう旅が始まった。

 

 

 

side:一刀

 

 

 

どうやら、仁兄さんの部隊の突撃が始まったようだ。

 

「心配? ご主人様」

 

「ああ、心配だよ」

 

隣にいる桃香が聞いてきた。

 

俺達は仁兄さんが敵を釣り上げた後の援軍として50の兵を連れて後方に待機している。

 

愛紗が右、鈴々は左に、それぞれ200の兵を引き連れて伏せている。

 

星は俺達と一緒にいる。

 

地形的には左右をなだらかな崖に囲まれた道に陣取っている。

 

仁兄さんが敵をちゃんと釣れれば策は成功する。

 

「まぁ、強さは知ってるし大丈夫だと思うけど……」

 

俺は遠くに見える砂塵を見ながら呟いた。

 

 

 

side end

 

 

 

「ウラァ!!」

 

俺は目の前の賊を斬り伏せ、横にいた賊を鞘でブン殴った。

 

(もう100は斬ったか? 本当に果てしないな、こりゃ)

 

肩で息をしていると兵が声をかけてきた。

 

「報告します!! 目の前の集団に少女が囚われている模様!!」

 

「あんだとっ!!」

 

目の前の賊の塊を見ると、魔女の帽子みたいのが見えた。

 

(救える命を救わなけりゃ、偉そうに説教出来ねぇな)

 

俺はすぐに集団目掛け駆け出した。

 

「あの集団を蹴散らしたら、すぐに退くぞ!! 退却準備始め!! 殿は俺だ!!」

 

「応っ!!」

 

言うや否や、兵達は退却用の道を作り後ろに下がり始めた。

 

俺が決めた命令は2つ。突撃と退却だ。

 

前に進むか、後ろに下がるか、だ。

 

(全く練度の高い兵で助かったよ)

 

俺は目の前の賊に一太刀浴びせ、集団に風穴を開けた。

 

すると、頭を抱え小さな女の子が震えていた。

 

「大丈夫か!? 俺は公孫賛の軍の者だ、すぐに退くぞ!!」

 

そう言うと俺は少女の返答を待たず、脇に抱えてもと来た道を走り出した。

 

「あわわ~!!」と何か叫んでるが大丈夫だろう。

 

もと来た道を走っていると兵が報告してきた。

 

「陸豪様!! 退却予定の道の近くに少女がいました!! 保護しますか!?」

 

「救える命は全部救っておけ!!」

 

そう指示すると兵は少女を保護するために走った。

 

 

「待ちな兄ちゃん!! ここで会ったが100年目だぁ!! あの時の借りは返させてもらうぜ!!」

 

道の入り口にどこかで見たような3人組がいた。

 

(ええい、このクソ忙しい時に!!)

 

ほっておけば明らかに作戦の邪魔になる。

 

そう判断した俺は近くの兵に抱えていた少女を放り投げ、兵に先を急がせた。

 

「あわわわわ……!!」声が小さくなって行くが、大丈夫だろう。

 

「あの変な奴等は俺が引き受けた!! テメェ等は先に行け!!」

 

真っ直ぐ3人組を見据え突撃した。

 

「変な奴等だと!? もう許さん!! お前に負けて編み出した俺達の必さ……」

 

「ウルセェ!!!」

 

真ん中の髭に勢いそのままの蹴りをブチかました。

 

空中で抜刀後、チビを峰打ちし、鞘でデクの顎をカチ上げ黙らした。

 

「邪魔すんな!! お前らそこで寝てろ!!」

 

そう言い残し、一刀達の所に駆け出した。

 

 

 

side:一刀

 

 

 

「御使い様!! 陸豪様の部隊が見えました!!」

 

いつの間にか近くなっている砂塵を見据えた。

 

「よし!! 俺達も動くぞ!!」

 

「応っ!!」

 

兵士達が呼応する。

 

(待ってて仁兄さん。今すぐ助けるから)

 

 

 

side:愛紗

 

 

 

「関羽様!! 陸豪様の部隊がもうすぐ通り過ぎます!!」

 

「分かった。皆の者、弓の準備始め!!」

 

「応っ!!」

 

鈴々の方を見ると、どうやら準備は完了しているようだ。

 

(仁義殿、私は貴方の囮役に賛成しました。ですから、どうか御無事で)

 

 

 

side:鈴々

 

 

 

「張飛様!! 弓兵の配置完了しました!!」

 

「分かったのだ!! 仁義お兄ちゃん達が通り過ぎたら一斉射撃なのだ!!」

 

「了解しました張飛様!!」

 

(仁義お兄ちゃん、鈴々がすぐに助けてあげるのだ!!)

 

 

 

side end

 

 

 

「陸豪様!! もうすぐ約束の場所です!!」

 

「よっしゃ!!……3・2・1、反転しろ!!」

 

俺の号令で残った兵が全て反転した。

 

俺達を追っていた賊は突然の事で度肝を抜かれ足が止まってしまう。

 

「今だ!! 一斉射撃!!」

 

「鈴々達も射ち込むのだ!!」

 

崖に伏せていた愛紗達が賊めがけ弓を乱射する。

 

前にいた賊は矢から逃げようと後ろに下がり、後ろにいた賊は前に行こうとして賊はギュウギュウになっている。

 

そこに追い討ちのように再び矢が降り注がれる。

 

半数近くが戦闘不能になり、残りも混乱している。

 

「全員突撃だぁ!!」

 

一刀の号令で全員が突撃をし、残りの賊を捕縛したり討ち取ったりした。

 

こうして、俺達の賊討伐は終わった。

 

 

 

白蓮の城に帰り、捕まえた賊を牢に入れた。

 

牢を見て回ってると、さっきの3人組がいた。

 

「よう、お前方さんも捕まったか」

 

「……兄ちゃんか、気が付いたら牢の中だよ」

 

そう言って、3人はため息を吐いた。

 

「そういや兄ちゃん、聞きたい事があるんだが」

 

「なんだよ、髭のオッサン」

 

「……なんで俺達を助けた?」

 

「助ける?」

 

髭が不思議な事を言った。

 

「最初に会った時は得物を使わなかった。次に会った時は得物は使ったが誰も斬られなかった」

 

「ああ、その事か。別に好き好んで殺す必要は無いだろう。斬らずとも制圧出来た訳だし」

 

俺がやれやれといった感じで話した。

 

「俺は殺しは好かん。どうしてもしなければならないなら仕方なし、覚悟は決めているさ」

 

「へ、甘ちゃんだな……」

 

髭は天井を仰ぎ、呟くように言った。

 

「その甘ちゃんに命を助けられたんだろう? 良かったじゃないか」

 

「違ぇねぇ」

 

何かを達観したように3人が笑う。

 

「さて、と。俺はもう行くぞ」

 

「……なぁ、兄ちゃん。最後に一つ良いか?」

 

髭が真剣な面持ちで質問してきた。

 

「兄ちゃんにとって兵って何だ?」

 

「いきなりだな。……そうさね、家族・友人・仲間・兄弟・恋人、どれでも好きな物で良いぞ」

 

「……どういう事だ?」

 

髭は怪訝そうに聞いてきた。

 

「どれでも答えは一緒なんだよ。”護る者、護られる者”

 俺が兵を護るのは当然だ、でも俺自身も兵に護られてるんだよ」

 

家族を護るのは当たり前だ、その家族からも実は自身が護られていたりする。

 

(それに気づけなかったからなぁ、若い頃)

 

色々失敗したが、今日も元気です。

 

髭は下を向き俺の答えを聞いていたが、顔を上げてこう言った。

 

「兄ちゃん、いや旦那!! 俺達3人を使ってくれ!!」

 

いきなり髭が叫んだ。

 

「俺達は旦那の様な御方を待っていた!! 俺達が仕えてきた奴等は皆、俺達をゴミのように扱ってきた。

 でも、きっと旦那なら俺達を人として扱ってくれるだろう!? 頼む、旦那!!」

 

「オイラはアニキに拾われるまでは、ゴミとして生きてきた。やっと出来た家族なんだ。

 頼む、旦那!! オイラ達がダメならアニキだけでも頼む!!」

 

「オ、オデは2人共助けて欲しいんだな。オデみたいな鈍臭いのも面倒みてくれたんだな。

 2人には感謝しても、し、しきれないんだな。お願いします」

 

3人が額を床に擦り付け懇願してきた。

 

「俺は構わんが、他がなんて言うか……」

 

その時、兵が俺の下に駆けてきた。

 

「陸豪様、公孫賛様が謁見室でお待ちです。何でも褒賞の話がしたいとか」

 

「白蓮が?……どうにか出来るかもな」

 

俺はニヤっと笑い、3人に向かって「安心しろ」と言い、白蓮の待つ部屋に向かった。

 

 

白蓮の待つ部屋に入ると他の人は既に皆集まっていた。

 

「遅いぞ、仁義。ほら、アイツが仁義だ」

 

白蓮が2人の少女に声をかけた。

 

「はわわ」「あわわ」

 

何だこの小動物。

 

「ん、お前さん達は、さっき助けた娘か。無事で何よりだ」

 

「はわわ、先程はありがとうございましゅ!!」

 

お、噛んだ。

 

「あわわ、ありがとうございましょ!!」

 

こっちも噛んだ。

 

「別に構わんよ、お嬢さん方。ところで、どちらさんかな?」

 

「はわわ、私は諸葛亮って言いましゅ」

 

「あわわ、私は鳳統って言いましゅ」

 

なんと、あの有名な臥龍と鳳雛か。

 

(やっぱり女の子なんだなぁ、しかもこんないたいけな少女だなんて)

 

「仁兄さん、この2人は俺達と一緒に来るってさ」

 

「ほうほう、そいつは重畳。して、何で桃香達と一緒に行こうなんて思った?」

 

2人に向かい、なるべく怖がらせないように聞いた。

 

「桃香様の意思に賛同したためです、より多くの民を救うために」

 

「私も同じく、桃香様なら大徳の世を築けると思ったからです」

 

お、今度は噛まずにスラスラ言った。

 

なるほど、澄んだ良い目をしている。

 

「そうかい、なら俺から言う事は無いな。俺の名は陸豪仁義だ。よろしく頼む」

 

2人に手を差し出す。

 

「私は諸葛亮、字は孔明、真名は朱里です」

 

「私は鳳統、字は士元、真名は雛里です」

 

「良いのかい、真名まで貰って。怖~いオジサンかもよ?」

 

少し声を低くして、わざと怖がらせて言ってみる。

 

「はわわ!!天の御使い様のお兄様なら預けても問題ないとおもいましゅ!!」

 

「あわわ!!戦場で命を救って頂いたので問題ないとおもいましゅ!!」

 

少しやりすぎたか……痛い!!その鈴々の瞳が痛い!!

 

「仁義お兄ちゃん、遊んでるのだ」

 

「(ははは、流石に遊びすぎか)2人共、真名を喜んで預かろう。俺の事は仁義と呼んでくれ」

 

そう言って2人に微笑み、白蓮に顔を向けた。

 

「そういや、褒賞がどうの聞いたが」

 

「ああ、その事で来てもらったんだ。褒賞は何が良い?」

 

俺に褒賞かよ、そんなに活躍したかね。

 

「今回の仁義殿の活躍は凄まじいものだ。あの決死行の中、死者は零。負傷者は、まぁ全員だが命に別状は無い」

 

星が俺の部隊の結末を教えてくれた。

 

(そうか、アイツ等生き残ったのか。途中から記憶が曖昧だったからなぁ)

 

「そういう訳だ、仁義。何が欲しい?」

 

「それなら、3人程欲しい奴がいる。その3人を俺にくれ」

 

「人か……ウチは慢性的な人不足だぞ?」

 

白蓮が暗い顔をする。

 

「ああ、大丈夫。将や兵からくれって言ってる訳じゃないから。捕まえた賊の中から3人欲しいんだ」

 

「さっきのか? まぁ、ほとんどが地方の農民だから帰すつもりだったから別に良いぞ」

 

白蓮が承諾してくれた。

 

「ついでに、その3人の為に装備一式揃えて貰えるとありがたい」

 

「装備もか!?……仕方ない、良いよ」

 

白蓮はまた暗い顔をしながら言った。

 

(つくづく苦労人体質だこと。まぁ今回は俺の所為だからなぁ、合掌)

 

俺は心の中で白蓮に合掌しつつ3人の所に向かった。

 

 

牢に戻り、3人組に結果を報告する。

 

「お前さん方、良いってよ」

 

「本当か、旦那!!」

 

3人にそう告げると諸手を挙げ喜んだ。

 

「3人には、これから俺の副官として働いてもらう。しっかりと修練を積んでもらうから、そのつもりで」

 

「その程度、屁でもねぇぜ!! 旦那、俺の名前は韓暹、真名は雷濠(らいごう)だ」

 

髭が自己紹介した。

 

「アニキがしたならオイラもしないと、名前は李楽、真名は凱風(がいふう)だ。よろしく頼むぜ、旦那」

 

「オ、オデは胡才、真名は雲堂(うんどう)なんだな。よ、よろしく頼むんだな」

 

他の2人も自己紹介した。

 

「俺は陸豪仁義だ。字や真名は持ってない、だから仁義と呼んでくれ」

 

「真名が無い? 旦那は天の御使いみたいだな」

 

「ああ、それ俺の弟」

 

全員「!?」みたいな顔になった。

 

「ちなみに俺もその世界から来たから」

 

「「えええええええええええええええ!?」」

 

3人とも絶叫した。

 

 

俺に、また仲間が出来た。

 

どこまで一緒か分からんが、楽しんでいこう。

 

皆に幸多からん事を。

 

 

 

後書き

 

はい、という訳で3話目です。

 

今回で見習い卒業になるのかな?

 

次でプロフィール、その次に拠点でも書きましょうかね。

 

では、またいつか。

 

 


 
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