No.216475

真・恋姫†無双〜群雄割拠~

アインさん

前回のお話
劉備軍と袁術軍の争いを止める呂布。しかし、それは人質となった北郷に頼まれたからであった。

2011-05-13 07:54:38 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:1485   閲覧ユーザー数:1331

 ついに袁術は玉璽を所持している事を理由に皇帝宣言をする。

 しかし、形だけの皇帝者など誰も従うわけもなく、袁術打倒を唱える諸侯しかいなかった。

 だが、それを好機と考えた諸侯もいた。

 曹操と呂布。

 天下統一目指す曹操は、漢王朝の皇帝に袁術討伐任務を曹操にさせるように仕向け戦う名目を得て、一方の呂布は、袁術と同盟を組んで、袁術皇帝反逆の罪という名目で劉備を倒そうと軍を動かしていた。

「劉備討伐後は下邳城に移るですと?」

「…………うん」

 呂布は陳宮の質問に頷く。

「お待ちください恋殿。ただでさえ、我々は袁術に味方したために各諸侯から命を狙われる状態ですのになぜ徐州城から出ようと思うのです」

「……民を守るため。……一刀を守るため」

「恋殿?」

 玉座に座っていた呂布は立ち上がる。

「ねね。今曹操の所にいる皇帝は人形」

「そうですな――。人形ですな」

「……うん。だからもう終わりにするべきだと思う」

 張遼が呂布の方天画戟を持ってきて渡すと、それを一回転空に振り回して地面へ強く叩きつけた。

「この戦いは、一刀と恋の新しい未来を作るための戦い。……その一番の障害は曹操と劉備」

 民のために倒すべきだと思う曹操と生きている限り二人の生活を脅かす劉備。

「……ここはその二人を倒した後、後々恋達に絶対に必要となる場所。今はできるだけ傷をつけたくない」

「恋殿……」

 その瞬間、陳宮は呂布の決意とは裏腹に悲しい顔をする。

 陳宮は知っていた。

 本当は今どうするべきなんか、どう行動するべきなのかを。

 だけど、すべてを呂布に任せ自分は補佐だけに留めた。

「(……恋殿。貴方の行動は一刀殿だけを守るための戦いをしておられます。それでは……)」

 しかし、陳宮は何も言わない。

 なぜなら、呂布は今まで生きる希望を持っていなかったからだ。

 

――あの日、大切な友である董卓を殺してから。

第五話

 

『消えゆく英雄達』

 袁術皇帝宣言から数日後、大陸に大きな戦いが行われた。

 まず、呂布が劉備の城に攻めこんだ。

「やめてください恋さんっ! 私達は貴方と戦いたくないです!」

「………殺れ」

 劉備の言葉も空しく、城は滅び劉備達や生き残った兵士達などは、曹操の元へ逃げ込む。

「いらっしゃい劉備。貴方を歓迎するわ」

 曹操は逃げ込んだ劉備達を受け入れると、劉備と共に袁術と戦った。

 戦況は、兵の数が圧倒的に少なくても劉備の仲間である関羽や張飛などの豪傑達が大活躍して、袁術を追い詰めていった。

 だが、最後の詰めで張薫や北郷の活躍によりなんとか押し留める。

「曹操さんには、私達の予想以上の反撃で、もう食料が乏しいはずです。このまま睨み合っていれば勝手に自滅ですね」

 この張薫の読みは正しかった…………が。

「ふふ………なら、それさえも利用するだけよ」

 曹操はこの戦いでの食料管理者に食料横領の罪を被せて、兵士達に奮起を促した。当然ながら何も知らない兵士達は死に物狂いで戦った。

 結果。

「申し上げます! 北郷殿が戦死。さらに我が軍が押されておりますっ! こ、このままでは……」

「え………」

 袁術軍は敗退。生き残った張薫は逃げ、本国での防衛に徹した。一方の勝利した曹操は、すぐさま陣形を立て直した後、下邳城にいる呂布に攻め込んだ。

 だけど、曹操は下邳城を囲んでだけでそれ以上はしなかった。

「華淋様。どうして下邳城を攻めないのですか?」

 夏侯惇の質問に曹操はこう答えた。

「これは稟と詠の考え……でも、うまくいけば一切の兵を失わずに勝利を治めれることができるわ」

「はぁ……」

 その時、雨が降り出した。

「……どうやら天は呂布を見放したようね」

 曹操は笑みを浮かべ、下邳城を見つめた。

 呂布の命運が終わろうとしていた。

 大雨が明けた翌日、下邳城は大量の水に埋もれてしまっていた。だが、それだけならまだ呂布は戦えたのだが、もう一つの出来事で運命が決まってしまう。

 兵士達の裏切り。

「………なんで……」

 強固な鎖に繋がれた呂布は悲しい顔で尋ねた。

「貴方の視点は、愛する者しか見ていなかった。それが裏切りの理由です」

「………それが、何が悪い」

 裏切った兵士達が呂布の頭を地面に叩きつけた。

「駄目じゃないですよ普通は。でも、当主としては失格ですね」

「………貴様ら……」

 呂布の目は殺気に満ちる。しかし、何もできない彼女に怖がる人間はどこにもいない。

「無様なものね………恋」

 懐かしい声が自分の真名を呼ぶ。

「………っ!?」

 呂布は目を疑り、彼女の名を呼んだ。

「詠?」

「久しぶりね、恋。こうして会うのは月を殺したあの日以来?」

「………詠が、この作戦を立てたの?」

「まさか? 貴方の日ごろの行いでしょう」

「………」

 賈駆はそう言うが、呂布は悟ったように目を閉じた。

「それじゃね恋。貴方と最後に話せてよかったわ」

 

 

 ―――そして、賈駆は呂布を捕らえた兵士達に首を斬るように命令した。

 彼は生きていた。

 だから、帰ってきた。愛する者を助けるために。

 しかし、地獄を耳にした。

「美羽様が死んだ?」

 すでに崩壊した袁術軍の兵士だった者が、たまたま見かけた彼に袁術の最後を伝えた。

「……この前の戦いの敗北が、原因で病になってしまい」

「嘘だ……」

「最後は血を大量に吐いていましたので、それが原因かと……」

「嘘だ……嘘だ……」

「張薫様も後を追うように……」

「…………くっ!」

 次の瞬間、彼に気が狂いそうになるような激痛に襲われた。

「北郷様? 北郷様っ!」

 膝から下の力が抜ける。脳に無断で膝が折れる。そしてそのまま、天を見上げるように地面にドサリと倒れた。

「な……ぜ?」

 弱々しく問うが、その問いは兵士は答えない。

「な、ぜだ……」

 もう一度問いかける。でも、何も変わらない。

「なんだ……、なんなんだ。うっ……」

 その場で四つんばいになって嘔吐した。

「北郷様? 北郷様っ!」

 気持ち悪い。気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。

 人間とは人間という形で無くなった瞬間、こんなにも人に不快感を与えるものなのか。

「……」

 北郷は腹の全てを出し切り、虚ろな瞳で再び顔を上げ、

「ちく、しょう……」

 その場で気を失って倒れた。

二人の英雄が死んだ。

 

一人は愛する者を守るために。

 

一人は愛されている者達が。

 

最後の結末は、人の裏切りですべてを終えた。

 

 

最終話に続く……


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
6
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択