No.214830

偶然とは必然に起きるものである

月野渡さん

結構長い間投稿していないので昔に書いたリトバスのSSを投稿してみます。
原作のエンディングネタバレありの短編です。


過去のリトバス投稿作品

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2011-05-03 20:06:26 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1426   閲覧ユーザー数:1391

「謙吾ぉ! 全筋肉を開放しろ!」

「わかっている真人、お前こそぬかるな!」

「「ぬぉおおおおおおお!!」」

 こんにちは直枝理樹です。今どういう状況かと言いますと……

 修学旅行のやり直しだったはずの旅行で車が事故りました。

 簡単に言えばみんなの乗ったワゴンが横転、そのままスリップして崖に落ちそうになったところをワゴンの屋根から振り落とされて走って車を追いかけていた真人と謙吾が追いついてギリギリのところで止めてくれた。もし二人が外にいなかったらと思うとゾッとする。

「ふぅ、みんな無事か?」

 運転席から這い出てきた恭介がみんなの無事を確認する。

「大丈夫かみんな!?」

「なんとかだいじょーぶ……」

「わふ~目が回ったのです~」

 ワゴン車の後部座席の前方の席から鈴と小毬さんとクドが出てくる。

「いやいや、しかし人生で二度目の走馬灯を見ることになるとは思いませんでしたよ」

「うむ、さすがのおねーさんも今回ばかりは駄目かと思ったぞ」

「……無事で何よりです」

 後方の座席からは葉留佳さんに来ヶ谷さんに西園さん、全員無事だ。どうやら奇跡的に大きな怪我をした人はいなかったようだ。

「死ぬかと思ったろーがっ!」

 座席から出てきた鈴が恭介にくってかかる。

「いや、しかしだな鈴、ババナの皮でワゴンがスリップするなんて俺にだって予想外だったぜ」

「バナナって……」

 流石にそれは恭介の言い訳だろうと思って振り返ってみたら確かに車が横転した辺りにバナナの皮が落ちていた。そんなバナナ……いや、馬鹿な。

「まあしかしよ、全員無事だったんだからそれでいいじゃねえか」

「うむ、真人の言うとおりだ。だから鈴よ、少し落ち着け」

「むぅ、それはそうだが……」

 真人と謙吾になだめられて落ち着きを取り戻す鈴。

「そうだよ鈴、せっかくの修学旅行のやり直しなんだ、こんなところでもめているのはもったいないよ」

「理樹が言うならそうする」

 うん、これでいいんだ、僕らの修学旅行はこれからなんだから……

「それにしてもこれで事故は五回目とはいえ前回と今回は死ぬかと思ったぜ」

 ……あれ? 今なんかものすごく不穏当な発言が聞こえたような気がするんだけど……

「あのね恭介、事故が五回目ってどういうこと?」

「ああ、小学校の修学旅行と中学の修学旅行、それに俺が高二の時の修学旅行と前回の事故、そして今の事故だな」

 えーっと、つまりだ、前回の大惨事も今日の交通事故も引き寄せたのはひょっとして……

「じゃあ改めて旅行に行こうかみんな? もちろん恭介は抜きで」

「そうですネ」

「わふー!」

「しかし車がこれでは少し予定を変更する必要がありそうだな」

「……それもまた旅の醍醐味です」

 何も言わなくても意見が一致し僕の提案に乗ってくれるみんな、さすがはリトルバスターズ、足並みがピッタリだ。

「ちょっと待てい! なんで俺が置いていかれなきゃなんねえんだ!?」

 諸悪の根源が何か言っているけど気にしない。

「きょーすけ」

「おお鈴、ちょうどよかった。お前のほうからも理樹の奴になんとか言ってやって……」

「ついてくるな」

「え……?」

「疫病神め」

「ぐわああああ!!!」

 実の妹からの一刀両断、さすがの恭介もこれには膝を屈した。

「わりぃな恭介、なんとか一言でもフォローしてやりたかったんだがかける言葉が思いつかねえんだ」

「右に同じだ」

 そして幼馴染達からの追撃、これがバトルなら恭介のライフはとっくに0だろう。

「恭介さん、恭介さん」

「神北……」

「ワッフルをどーぞ」

「うう、お前だけだ、こんな俺を……」

「それを食べながらお留守番をしていてください♪」

「ぐぼぁ!?」

 そして小毬さんのささやかな優しさによる鮮やかなとどめ、悪は滅びた。

「なぜなんだーーー!?」

 こうして僕らは修学旅行を何のトラブルもなく充分に満喫することができた。徒歩で僕らの旅行についてこようとした恭介が国際レベルの陰謀に某国のお姫様と一大アドベンチャーを繰り広げることになるのだがそれはまた別のお話である。


 
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