No.213842

少女の航跡 短編集04「飛翔」-1

ブラダマンテの旅は続きます。彼女はハルピュイアという街で、ギルドの仕事に就くことができたようですが―。

2011-04-28 11:29:00 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:371   閲覧ユーザー数:335

 

 故郷を飛び出した少女、ブラダマンテと、彼女の愛馬、メリッサの旅は今日も続いていた。

 

 彼女が旅を始めてから、およそ9ヶ月が経つ。まだ14歳だというブラダマンテ。しかし彼女

は、西域大陸をほぼ、南北に縦断するほどの旅をして来ていた。

 

距離にしておよそ2,500km。ブラダマンテとメリッサは、大陸の海岸線を南へ。そして、すで

に『リキテインブルグ』の領土内へと入っている。

 

 『リキテインブルグ』は、その国境を開放し、誰何人をも国の中に受け入れる自由の国だっ

た。

 

 そうであっても、数百年の間、他国に侵略を許していない、強国でもある。

 

 自由と強さを兼ねそろえた国。それが、この土地だった。

 

 "私のような若い娘でも、この土地で生きていく事はできるだろうか"

 

彼女の不安は残りつつも、ブラダマンテは街を目指した。

 

 

 

 

 

 

 

「お譲ちゃん、本当に剣なんて使えるのかい…? とてもそんな風には見えないんだけれども

ねぇ…?」

 

 ブラダマンテの目の前には、カウンター越しに中年の男が立っていた。男は、まじまじとブラ

ダマンテの姿を見るなり、疑り深そうにそう答えていた。

 

 ブラダマンテが望んだのは、交易品関係のギルドの護衛。彼女の目的はそこにあった。『リ

キテインブルグ』は自由の国。しかし、広大な草原を持つ平原には盗賊も多く潜んでいる。交易

品の行き来を担う、商業ギルドは常日頃、盗賊の危険にさらされている。

 

 だから、商業ギルドは雇い護衛、傭兵を必要としていた。その護衛の質は、ギルド商会の規

模にも反映されており、大規模な上流ギルドだったら、護衛隊、時には騎士団さえも護衛に付く

ことがある。

 

 だが、ブラダマンテはどうだろうか。

 

「お譲ちゃんみたいな子だったら、護衛なんかよりも、売り子の方が似合っていると思うんだけ

どねえ…」

 

 その男はそう言ってくるばっかりで、ブラダマンテを認めようとはしなかった。彼女は諦め、別

の商店に頼み込む事にした。

 

 ブラダマンテが『リキテインブルグ』領土内に入り、更に、沿岸沿いの一つの街、《ハルピュリ

ア》へとやって来てから3日が経つ。彼女の目的は、他国や国内の情報の出入りが激しい、交

易品護衛に付く事だった。

 

 屈強な者ならば、護衛に付く働き口は幾らでもあるらしい。しかしブラダマンテはまだ14歳の

少女に過ぎなかった。

 

 しかし、売り子の仕事で身を立てて行くのは、ブラダマンテの本来の目的からあまりにもかけ

離れすぎていた。

 

「あんたねえ…、親はどうしたのさ…? 何であんたみたいな子が、危険な護衛なんかに付くっ

て言うんだい…?」

 

 今度はまた別の商店で。内陸から届けられた穀類などを商う商店だった。店頭には女店主

が現れ、またもブラダマンテの姿をまじまじと見つめる。

 

 自分はまだ、親を持ち出されてしまう立場の人間に過ぎない。まだ、保護されている側の人

間。そうに過ぎない年頃の娘なのか。

 

「そりゃあ、売り子や雑用をしたいって言うんなら、奉公に使ってくれる所もあるだろうよ。でもあ

んた、護衛だなんてねえ…」

 

「はぁ…、分かりました。また別を当たって見ます…、失礼しました…」

 

 多分、話している言葉にも問題があるのかもしれない。南方の『リキテインブルグ』と、彼女の

育った北方地方では、方言が違い過ぎる。ブラダマンテは頑張ってこの地方の言葉に慣れよう

としていたが、顔立ちも少し違うし、口を開けば、明らかに国外の人間だと分かってしまう。

 

 すでに3日。ブラダマンテはあらゆる商店を回り尽くした。しかし成果は無し。

 

 分かった事と言えば、自分がまだいかに未熟かという事。そして、より大きなギルドに加盟し

ている店舗では門前払いにされるから、なるだけ小さい、ほぼ露天程の大きさの商店でもなけ

れば、話も聞いてくれないという事。

 

 自分の剣の腕がどれ程か。盗賊とか人間相手に剣を振るったのは、『エカロニア』の街でご

ろつき相手に護身をした程度だ。

 

 幾ら、人里離れた森の奥地で、あの精霊達に剣の稽古を付けてもらえたとしても…。

 

 あのシルキアナの言っていた言葉を、再びブラダマンテは思い出していた。

 

 女の子だからって甘く見られないようにしなさい。

 

 だが、自分はただ、甘く見られているだけではないのか。

 

 だったら、自分を甘く見る事などできないように、実力を見せ付けてやれば良いのではないの

か。

 

 護衛の仕事をしたいのには目的がある。それこそまさに、ブラダマンテが今生きている目標

なのだから。

 

 ブラダマンテは、街の広場に貼り出されている掲示板の前に立っていた。

 

 掲示板には様々なものが貼り出されている。従業員募集中の広告、大売出しの広告、船舶

乗組員募集中の案内、そして、劇場の舞台公演など。ほとんどが、商店ギルドの広告だ。

 

 そして彼女は一つの掲示に眼を止めた。

 

 

 

 

 

 緊急手配!

 

 赤い盗賊団、通称、パッショネ盗賊に、《ハルピュリア》のギルドの誓いの証明である指輪を

盗まれてしまいました。ご存知、銀にハーピーの装飾が埋め込まれたものです。取り返してくれ

る方がいらっしゃったら、報酬を差し上げます。

 

 依頼不要。依頼品と現金を交換の条件で。 

 

 商会ギルド レテリ商会

 

 店名     ルセラトラ

 

 依頼人   サーペント・フェラガモ

 

 

 

 

 

 ブラダマンテは、これだと思った。

 

 これは、盗賊に日々悩まされているこの街、この地方で生み出された賞金制度。商店やギル

ドが出す依頼内容を満足させれば、代わりに報酬を貰えるというもの。

 

 大体問題事を起こすのは、盗賊や海賊だった。奪われた金品や、商品などを誰でもいいから

取り返して欲しい。そう言った依頼ばかりが貼り出されている。

 

 こう言った依頼を請け負うのは、大抵、腕っ節に自身のある屈強な者ばかりなのであるが。

 

 しかし赤い盗賊団、又の名をパッショネ盗賊団と言えば、『リキテインブルグ』北部の一部地

域を脅かしている盗賊だ。本拠地も持たず、ただ国の内陸に広がる広大な平原を移動し、交

易品や街を襲う、無数にある盗賊団の一つ。

 

 ハーピーの指輪を見つけ、この店へと取り戻してあげれば、ブラダマンテの実力が世間に認

めてもらえるはずだった。

 

 

 その時、ブラダマンテは金銭的に切迫した状況ではなかった。だから彼女は何が何でもすぐ

に報酬が欲しいわけでも無かったし、どこかで護衛として雇ってもらう必要も無かったわけだ

が、あくまで商会ギルドの護衛、傭兵になるというのは、彼女の生きる目標の始まりだった。

 

 だから彼女は、街の周辺を行き来するギルド紹介の交易隊に眼を光らせるようになった。

 

 パッショネ盗賊団の特徴は、掲示板に書かれていた。少人数による行動。赤い染料で塗りた

くったようなマントを着ている事。赤い盗賊団を名乗るだけあって、赤が特徴らしい。だからル

ビーの指輪が狙われたのだろうか。

 

 目当てとする盗賊団は、ならず者ばかりが集まった、小さなチームに過ぎないが、彼らを相

手に物を取り戻すのなど、若い娘のする事ではなかった。

 

 しかし案の定、盗賊団はすぐに見つけられた。

 

 『リキテインブルグ』の海岸の街から内陸へ、そして、『セルティオン』。重要な交易ルートだ。

そこは平原を突っ切る街道があり、多くの物資が行き来をする。それを狙う盗賊も多い。

 

 特に、小規模ギルドは良く狙われる。多額の報酬が払えない分、大した護衛を雇う事ができ

ないからだ。盗賊団もそれを知っている。

 

 広大な平原では、『リキテインブルグ』の街道警備隊も、全てを把握し切れない。

 

 物影に紛れ、交易隊を襲うつもりだ。

 

 港の街から、国の内陸部へと伸びていく街道。平原の中を通るその道は、平原とはいえ茂み

や木々などの障害物が多く、人が身を隠す事のできる場所は無数にあった。

 

 いつ狙われてもおかしくは無い。だから護衛を雇うのだが、今、狙われている交易隊の護衛

は、あまりに頼りなさげだった。大きな荷物を積んだ馬車の周りを囲っているのは、少人数な

上に、老人に手が届きそうな年頃の護衛だ。

 

 街外れの高台にいたブラダマンテは、その馬車を狙うかのように、物陰を素早く移動している

赤い影を見ていた。

 

 彼女はここ数日間、その影が現れるのをずっと待ちわびていたのだ。

 

 日中、人目に付かないような場所で素早く襲い掛かる。そして、余計な事はせず、必要なもの

だけを奪い、素早く身を隠す。それがこの地方の盗賊のやり方だった。

 

 おそらく、ほんの数分の間に、あの馬車は襲われる。そう思ったブラダマンテは、盗賊同様、

素早く行動を開始した。

 

 あの馬車を守っている老人の護衛達は、警戒する様子も見せていない。おそらく、自分達が

狙われている事にも気付いていない。

 

 赤い盗賊達は、平原内の物陰を、慣れたかのような動きで移動していく、彼女もその跡を追

った。

 

 木陰に身を隠して、馬車の様子を伺う。まだ距離はある500メートルほど。街道をゆっくりと

進んでいた。

 

 ブラダマンテの目的は、掲示板に貼り出されていた指輪を見つける事。だが、彼女の中で、

何かが動き出そうとしていた。

 

 目の前で馬車が襲われるのを、黙って見ているわけにはいかない、と。面倒事に巻き込まれ

るのは嫌、という心を乗り越えるかのように、その意志が生まれつつあった。

 

 ブラダマンテはどう動こうか頭を働かせつつ、馬車へと距離を縮めて行った時、

 

「こんな所に、こんなにとびきりのお嬢ちゃんがいるとはな…。声を上げたり動くんじゃあねえぜ

…、たっぷりと可愛がってやる…」

 

 木を背にした時、背後から囁くように聞えてきた声。同時にブラダマンテの目の前に刃が現

れた。

 

 ブラダマンテは、声を出す事もできずに、刃の前に凍り付いた。

 

 彼女を押えたのも、パッショネ盗賊団の一人だった。ブラダマンテが背後を振り返らなくても

分かる。赤い血の匂いが流れて来ていた。

 

「オレの仲間が、仕事を済ませるまでの辛抱だからよ…。なーに、ほんの5分とかからねえ。そ

したら、お嬢ちゃんと楽しんでやるからよ…」

 

 そう言って来る男は、声は静かにしているが、欲望を抑えきれずにいる。改めてブラダマンテ

は自分が、14歳に過ぎない娘である事を思い出していた。

 

 だが、こんな所で盗賊などに辱められてたまるだろうか? いや、そんな事は命に替えてだっ

てさせない。

 

 ブラダマンテは、目の前に突きつけられている刃をこらえた。

 

「おおいッ! やっちまえッ!」

 

 誰かの声が聞えてきた。ブラダマンテに背後から刃を突き付け、脅しかけている男は、その

声の方に少しだけ気を取られる。

 

 そこに、ほんの少しだけの隙ができた。ブラダマンテは相手の刃を持っている方の腕を掴む

と、そのまま体重をかけてねじ上げ。相手の方へと肩から突進した。

 

 背にしていた木と、ブラダマンテの間に挟まれ、男は声を上げる事もできずに気を失う。いく

ら若い娘の体格とはいえ、不意を付いた攻撃は効果があった。

 

「ウォッ! ウォッ! ウォッ!」

 

 低い男達の掛け声が聞えて来る。いよいよ馬車に襲い掛かっているな、とブラダマンテは判

断した。

 

 再び木の陰から様子を伺うブラダマンテ。赤い衣を纏った者達数名が、街道の馬車へと武器

を向けながら近付いていっている。

 

 自分はハーピーの指輪を探しに来ただけ。あの襲われている馬車と自分は関係ない。そう彼

女は自分に言い聞かせようとしていた。

 

 だが、あの老人に手がかかりそうな護衛達では、とても不安だった。

 

「うおっ! 何だ貴様らっ」

 

「じじいはどいてなッ! オレ達はその荷物を頂きに来ただけだ。大人しく従えや命までは盗っ

たりしねえッ! 5分で済むこった」

 

 そう言って脅している盗賊の男の背後は、隙だらけだった。おそらく彼が頭だろうか、他の赤

い盗賊達よりも大柄で、派手な姿をしている。周りに振りまいている貫禄もあった。

 

 彼は右手に湾曲した剣を持っていた。おそらく異国からの輸入品。滅多に見かけない代物

だ。禍々しい刃を持つその右手、右手…。

 

 きらりと光る、うっすらと青いもの。ブラダマンテは物陰から眼をこらしてそれを見た。

 

 指輪に彫り込まれた、翼が見える。そして女の長い髪を象った装飾。人の女性の姿に鳥の

翼と胴体を付けたその姿は、魔獣ハーピー。

 

 あの頭であろう男がしているのは、ブラダマンテが捜しているハーピーの指輪だった。

 

 こちらに背を向けていて、彼は隙だらけだった。もし背後から奇襲をかけたならば、例え私で

あろうとも、あの大柄な男を倒せるかの知れない。他の仲間達からも距離が離れている。

 

「そうはさせん。盗賊などに、この荷物を渡してたまるかッ!」

 

 見た目の割りに勇ましい護衛だった。彼は剣を持っているが、頭の男に比べればえらく頼り

なさげな剣だった。ろくに防具も付けていない。

 

「そうか、ならばこうするまでだ」

 

 そう言って、頭は初老の護衛に剣を振り上げた。血が飛び散って、その護衛は地面に崩れ

た。

 

 ブラダマンテは思わず悲鳴を上げそうになった。目の前で人が傷つけられ、殺されている。

 

 彼女は心臓が高鳴って、呼吸が乱れた。私も出て行けば、あのように殺されてしまうかもしれ

ない。剣を抱きしめて、身を縮めた。

 

「しょうがねえなあ、このじじい共は、どうやら死にたいらしい。おい、護衛は皆殺しだ。10分は

かかるな」

 

 そう言って、頭の大男は剣を振り上げていた。護衛達も応戦しようと身構えるが、見た目もさ

る事ながら、人数でも盗賊達に負けていた。商人であろう中年の男は、怖気づいていて頼れな

い。

 

 だが、ブラダマンテが気付いた時、彼女は背後から盗賊の頭に飛び掛っていた。

 

 剣を振り上げ、眼にも留まらぬような素早い動きで、大男の背中に飛び込む。

 

 彼女は剣で盗賊の男の背中に、豪快に峰打ちを食らわせていた。刃の方を使わなかったの

は、ブラダマンテにはこの盗賊達を殺害する理由が無いからだ。

 

 しかし若い娘の力と、大の男の体とは言え、背中からいきなりみね打ちを食らわされて、平気

でいられるわけは無いだろう。

 

 頭の大男は呻き声を漏らし、どっと力無く倒れこもうとする。

 

「あッ…、お頭が…」

 

「何でえ、その小娘は…!」

 

 盗賊達が次々と喚いている。自分の目の前には倒れた大男。

 

 と、ブラダマンテはいきなり腕を鷲掴みにされた。

 

「ほう…、こんなお譲ちゃんが、一体このオレ様に何の用だ…。是非とも教えて欲しいもんだね

…」

 

 背後からみね打ちを食らわせてやったと言うのに。倒したはずの盗賊の頭である大男は、ブ

ラダマンテの腕を掴んだまま起き上がろうとしていた。

 

 相手が掴んで来ているのは右腕。きらりと光る相手の小指には、まだその輝きを保っている

銀色の、ハーピーの指輪がはまっていた。

 

 今なら、この指輪を奪い取ってしまえるかもしれない。ブラダマンテの手が伸びた。

 

 だが、その瞬間、大男はブラダマンテの手を離し、更に自分は剣を構えて彼女の方へと向け

た。

 

「これはこれは。随分と手付けの良いお嬢ちゃんだ。どうやらお目当てはこの指輪か? あん

たの今の手の動きと目線じゃあ、スる前に、相手に分かっちまうぜ…」

 

 相手に笑われている。自分が未熟な事を知り、ブラダマンテは顔を赤らめた。

 

「どうした? かかって来ないのかよ? おおい、手を出すなよ。こんなとびきりのお嬢ちゃんに

狙われて、今オレは幸せなんだからよ。てめえらは、そこにいるジジイ共を押えていろ」

 

 手下に命じる頭。完全に自分が舐められている事を知り、ブラダマンテは剣を握る腕を強め

た。

 

 ブラダマンテは挑発に乗ってしまい、正面から相手の方に斬りかかって行った。

 

 もう少しで刃が届く。と行った所で彼女の剣は相手に受け止められた。その時の衝撃が腕に

伝わり、ブラダマンテは痺れる。

 

「この国じゃあ、女も男並みに強いかもな。だが、そりゃあ、もっと体がおっきくなってからの話

だぜ、お譲ちゃん。それに、あんた見たいなどこぞやのお嬢ちゃんが、剣なんか振り回していち

ゃあ、行けないんだぜ…」

 

 相手の男は挑発して来る。目の前には、目的であるハーピーの指輪があった。だが、どうや

ってそれを奪えと言うのか。

 

「どうした? 目的はこの指輪じゃあねえのか? 確かに、この街じゃあ珍しいものだからな。

弱小ギルドだったら、店主が捜索に掲示を出すのも不思議じゃあねえ。オレもそんくらい分か

っていたが、まさか取り返しに来たのが、こんなお嬢ちゃんだとはなあ…。嬉しくてしょうがない

ぜ…!」

 

 今度は攻撃して来たのは相手の方だった。剣を振りかざし、その湾曲した刃を、わざとブラダ

マンテの剣に叩き付けて来る。

 

 その衝撃に耐え切れず、彼女の体は地面を転がった。

 

「はっはっは! そんなもんかい!」

 

 笑われている。だが、それがどうしたというのだ。

 

 ブラダマンテは起き上がりながら、自分を見下している男の顔を睨みつけてやった。

 

「おっとォ…! どうやら本気になられたらしいぜ…。だったら、どうした? やって見ろ。オレの

腕を斬り落とすでもして、この指輪を奪い取ってみろよ…」

 

 こんな小娘に睨まれても、大の男は笑うだけか…。ブラダマンテは思った。しかし、彼女は身

を起こし、大男に対して身構えた。

 

 相手は、完全に自分を舐め切っている。力では相手の方が圧倒的に優位だからだ。だが、

舐めていると言う事は油断しているという事。

 

「だが、そろそろ、飽きたなァ…。へっへっへ。武器を捨てて許してくれって言えばよォ。オレの

女として向かえてやってもいいぜ…」

 

 まじまじとブラダマンテの姿を見て、盗賊の首領は言って来た。

 

「お頭ァ…。あんた、こんな若いお譲ちゃんが好みなのかよ」

 

 部下の一人が横槍を入れる。

 

「そういうわけじゃあねえが、こんな所で、とびきりのお嬢ちゃんに出会えるとは思っていなかっ

たんでな…」

 

 手に持った剣を振り回しながら、お頭は言って来る。だがブラダマンテは、そんな脅しには屈

しなかった。

 

 相手は自分の二倍ぐらいの体格がある。

 

 しかしブラダマンテは、シルキアナの言っていた言葉を思い出していた。自分がまだ小娘だ

からって舐められているわけにはいかない。

 

 旅の間に鍛えた自分を見せ付けてやる。

 

 ブラダマンテは、素早く脚を踏み切り、目の前の大男までの距離を一気に縮めた。

 

「お…!」

 

 彼女の動きに驚いたのか、盗賊団の首領は眼を見開いた。

 

 真横から相手の持つ剣へと、ブラダマンテは剣を振り、その湾曲した刃の位置をずらす。そ

れだけで相手は無防備になった。

 

 このまま素早く剣で斬りつけてやれば良い。この男は剣を持っている以外は、派手な赤色の

マントを着ているだけでろくな武装をしていなかったから、このまま殺してしまう事もできた。

 

 そうすれば、簡単にハーピーの指輪を奪える。街道を脅かす盗賊が倒れ、その分、人が救

われる。

 

 しかし、ブラダマンテには出来なかった。

 

 さっき、人が死ぬのを見てしまっている。それはほんの一瞬の出来事だったけれども、人の

命が一瞬にして奪われる。ほんの一瞬の行為が、人の全てを奪う。それを自分がするのかと

思うと、彼女には出来なかった。

 

 たとえそれが、たった今、人の命を奪った人間であっても。

 

 ブラダマンテが目の前の男に振った剣は、刃の方ではなく、みね打ちになっていた。

 

 盗賊の首領は、うめき声を上げて地面に崩れた。

 

「お…、お頭…!」

 

 手下が声を上げている。だが、私は倒れた頭の方に、刃の逆の方を向けたまま、息を喘が

せていた。

 

 自分には人を殺す事などできない。

 

「ど…、どうした? オ…、オレを殺してこの指輪を奪ってみろよ…。へへ…、怖いのかい…? 

まさかこの期に及んで、怖気づいちまったのかい…。お嬢様、らしいなあ…。へっへっへ…」

 

 みね打ちではこの男を倒す事はできなかった。彼は地面に尻餅ちこそついたものの、すぐに

立ち上がって来ようとしている。

 

 周りからも手下達が近付いて来ようとしていた。囲まれてしまっては何も出来ない。

 

「ほれほれ…、どうしたんでえ、何とかして見ろよ…」

 

 盗賊の頭はすぐにでも起き上がって来ようとしていた。

 

 こうなってしまっては、もはや迷ってなどいられなかった。

 

「こうします!」

 

 ブラダマンテはそう言い放つと、手に持つ剣を一閃させた。同時に、血が飛んで、空中に銀

色の光が輝く。

 

 素早く、彼女は飛び上がり、空中に待っていたハーピーの指輪を手の中に納めた。同時に、

攻撃を加えた、頭の上を飛び越え、囲まれていた枠の外へと飛び出す。

 

「こ、この小娘ッ! オ、オレの指を、オレの指を切り落としやがったッ!」

 

 それが、人を殺さずに指輪を奪い取る、とっさの判断だった。

 

 だが、指輪を奪い取れたとしても、ブラダマンテにとってはこれからが問題だった。一つの盗

賊団に目をつけられてしまったのだ。

 

 彼女は、一目散にその場から逃げようと駆け出す。

 

「ええいッ! さっさと追っかけてって、あの小娘を捕えろーッ!」

 

 背後から、手下達に命じる頭の声が聞える。早く、待たせているメリッサの所まで行かなくて

は。盗賊の男達と、彼女の歩幅ではすぐにも追い付かれそうだ。

 

 指を切断され、更には指輪も奪われた事に、盗賊の頭は血が上り、わめき散らしている。

 

 彼女は大急ぎで逃げていたが、背後からは次々と手下達が追いかけてきていた。

 

 ブラダマンテも、逃げ足には自身があったが、体力が彼ら程は続かなかった。

 

「おい、反対側からも回り込め」

 

「おう!」

 

 まるで楽しむかのように盗賊達はブラダマンテを追い立てた。追いつかれ、取り囲まれるのも

時間の問題だ。

 

 逃げるブラダマンテ。しかし、彼女の目の前にナイフを構えた盗賊が立ち塞がった。

 

 走らせていた脚を、急激に止める彼女。だが、背後からも賊が迫っている事にも注意は行か

なかった。

 

 頭の後ろを思い切り殴られ、ブラダマンテの意識は一瞬にして飛んだ。彼女にとっては死ん

だかと思った事だ。

 

「へッ! 手こずらせやがって…! だが、これで、もう逃げられないぜ。全くよォ…、こんな小

娘に指を切られ、盗んだものも取り返されかかったなんつったら、パッショネの名が泣くぜ

…!」

 

 盗賊の頭はブラダマンテの倒れた姿を見下ろし、吐き捨てていた。

 

「でもお頭ァ…。この小娘、とびきりですぜ。さすが、まだ育ち盛りだけはある。それに顔立ちか

らして、貧民の娘じゃあねえ…」

 

 同じようにブラダマンテの体と顔を見下ろしている手下が言った。

 

「だが、どこぞやのお嬢様が、こんな事をするとも思えねえ。人質にして金を要求しても良い

が、どこの娘か分からねえんじゃあ、しょうがねえな。とりあえずは、色々聞き出してやる。おお

いてめえら。この小娘を連れて行くぜ。あの馬車の荷物をとっとと片付けちまえ」

 

「へい」

 

 そう頭に命令され、盗賊達が動き出した時だった。

 

 平原に爆発音のようなものが、数発、轟いだ。次いで、盗賊達の呻き声が上がり、パッショネ

盗賊団の手下達が次々と倒れる。

 

「な、何だあ…!」

 

 頭が声を上げた。彼は、爆音が聞えてきた、背後の高台の方へと眼をやる。

 

 男、男がそこには立っていた。それも銃を構えている。

 

 脅しではない。冷たい銃口は殺気を放っている。

 

 頭はその男が、どんな男かも見分けられないまま、爆音と共に地面に崩れた。

 

 ブラダマンテは、薄れ行く意識の中で、その男の姿を見ていた。冷たい銃口、それだけが頭

の中に残る。

 眼を覚ましたとき、ブラダマンテの眼の中に飛び込んできたのは、真っ白な光だった。まるで

天国にいるかのような気分だった。

 

 だが、彼女がいたのは天国ではなかった。熟睡していたせいか、意識がはっきりと戻ってくる

までに、少し時間がかかった。

 

 寝かされているのは、どこかの宿屋だろうか。簡素な造りの小さな部屋。ベッドが一台置いて

あるだけ。なぜ自分はこんな所にいるのだろうか。

 

 頭の後ろが痛い。確か、盗賊に思い切り殴られ、気絶させられたのか。だが、盗賊達に連れ

て行かれたようでもない。

 

 あの時、誰かが助けてくれた。あの高台にいた男。確か銃を持っていた人物。そう考えるの

が自然か。

 

 ブラダマンテは痛い頭を押えながら、ベッドの上で起きた。

 

 すると、ちょうどそこへ、扉を開けて入って来る人達。

 

「あら、起きてたのかい。まだ、頭が痛むだろ。かなりでかいコブが出来てたよ、あんた」

 

 入ってきたのは、少し太った中年のおばさんだった。長い茶髪でエプロンをしている。

 

「ここに連れて来てくれたのはあなた達ですか? 有難うございます」

 

「なーにを。礼を言いたいのはこっちだよ。あんた、うちの店の荷物を盗賊共から守ってくれた

だろ?」

 

 私の頭の後ろの様子を確認しながら、そのおばさんは私にそう言って来た。

 

「え…、本当はそんなつもりじゃあ…」

 

 予想外の相手の礼に、ブラダマンテは戸惑って答えた。

 

「じゃあ、どんなつもりだったって言うんだい? うちの店の入っているギルドは、ちぃーっとば

かり、資金不足でさ…、ろくな護衛を雇えないんだよ…。だから、うちの旦那にも任せているん

だけれども、これも兵の経験もない軟弱者だからさ…。まさか、あんた見たいに若い娘に助け

られるとは思っても見なかったけどね…」

 

 では、このおばさん。多分、どこかの店のおかみさんと一緒に入って来ているのは、その旦

那さんなのだなと、ブラダマンテは理解した。

 

 そしてこの人達は、あの赤い盗賊団に襲われていた荷馬車の関係者達。あの荷馬車で交易

をしている店の人達なのだ。

 

「ありがとう。君のお陰で大切な荷物を救えた」

 

 彼女は握手され、それに思わず頬を赤らめた。照れくさかったのだ。

 

「そ…、そうだ…。この指輪を盗賊に奪われて、捜していた店はどこでしょう?」

 

 ブラダマンテは、短いパンツのポケットに大事にしまっておいた指輪を取り出し、目の前の2

人の前へと差し出した。

 

「こりゃあ、ハーピーの指輪だね…? これを一体どこで…?」

 

 おばさんは尋ねてくる。ブラダマンテは答えにくそうに答えた。

 

「この指輪を捜している人がいるって、張り紙を掲示板で見ました。だから私はあの盗賊団を

追っていたんです…、そこへたまたま、あなた方のお店の馬車が襲われて…」

 

「それで助けてくれたって言うのかい。こりゃあ、あたし達も運に見放されてはいなかったようだ

ね。だけれどもあんた、あの赤い盗賊団に、たった一人で無闇に手出しするんじゃあないよ。

そこら中の店やら港やら、旅している連中が襲われているんだ。今となっちゃあ、そんな盗賊

団もなくなっちまったけどね」

 

「あ…、はい…。それは、肝に銘じて置きます」

 

「肉の肝でも、何でもいいから、あんな盗賊に女の子が関わっちゃあ駄目だって事だよ。分か

った?」

 

 私がそんな事を言っても、おばさんには言葉の意味が通じなかったようだ。言葉の違いのせ

いか、難しい言葉を使ってしまったのか。

 

「は、はい…。分かりました」

 

「これは、ルセラトラのものだ」

 

 何かに気付いたように、ハーピーの指輪を眺めていた旦那さんが言った。

 

「ええ…、確かに掲示板に張ってあったのは、その店からの依頼でしたね」

 

 ブラダマンテはそう答えた。

 

「この指輪は、君が返しにいきなさい。そうすれば、君の手柄になる」

 

「あんた。こんな娘に、手柄も何も、あったもんじゃないだろ」

 

 旦那の言う事にすかさず横槍を入れたおばさん。しかし、ブラダマンテは、

 

「そのお店はどこにあるんですか? 教えてください」

 

「まあ、待ちなって。あんたはこの指輪を盗賊団から奪った。だとしたら、何か目的があったん

だろ? でも、多分あんたが言っても、それを取り返したって信じてもらえないよ、きっと」

 

 慌てるブラダマンテを落ち着かせるように、おばさんは彼女にそう言った。

 

「じゃ、じゃあ…、どうすれば…?」

 

「あたしの旦那が、一緒に行ってやるよ。何せ、あんたに助けられたんだからね。あの赤い盗

賊共がいなくなったってのは、もう街の皆が知っている。だからうちの旦那があの時の事を話

せば、皆が信じるよ」

 

「本当ですか? ありがとうございます」

 

 一歩前に出た主人が、ブラダマンテに手を差し出した。

 

「こちらこそ。感謝している」

 

 彼は表情を変える事は無かったが、声にはブラダマンテに対する深い感謝の意が込められ

ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ブラダマンテは、教えられた道を行き、ルセラトラという店のある場所を目指していた。

 

 港町を馬で歩き、その店を探す。聞いた話では、かなり街の中心部にあるという事だった。

 

 やがて辿り着いたその商店は、鳥を専門に扱う店だった。それも食用の鳥を。

 

 中心部にあるらしく、かなり賑わっている。表通りに面している店は絶えず客の流れがあっ

た。

 

 そのルセラトラと言う店も、割と規模は大きい。店先では鳥を焼き、常にそれを店員が販売し

ていた。

 

 何でも、私が助け、逆に私も助けられた主人と同じ商会ギルド、レテリ商会に所属しているら

しかった。

 

「やあ、調子はどうだい?」

 

 ブラダマンテをここまで案内してきた主人と同じぐらいの年頃。中年の髭を生やした、この店

の主人らしい男が、彼に話しかけてきた。顔見知りなのだ。

 

「赤い盗賊団が消えた事は知っているか…?」

 

 と呼ばれた主人は答えた。

 

「ああ…、もちろん知っている。あのパッショネ盗賊団がいなくなったお陰で、うちのギルドはま

ず安泰さ」

 

「私は、誰が盗賊団を始末したかを知っている」

 

「ほう…? 誰だい…?」

 

「この娘だ」

 

 ルセラトラの主人は、不審げにブラダマンテの顔を見つめた。

 

「おいおい、冗談言っちゃあ行けないぜ…」

 

「私が、冗談を言うと思うか…?」

 

 あくまでも真面目な口調で、ブラダマンテを連れて来た主人は言った。

 

「だって、その娘、うちの娘よりも小さいぜ…」

 

 ブラダマンテは恥ずかしかったが、このまま信じてもらえなかったら、自分はまるで道化だ

な、と思う。

 

「証拠に、ハーピーの指輪を持っているぞ」

 

 に言われ、ブラダマンテはハーピーの指輪を差し出した。

 

 すると、ルセラトラの主人は、驚いたように声を上げ始めた。

 

「おお…! こいつは…! こりゃあ! 盗賊団にも命と引き換えにされたもんだ…! 以前に

うちの荷馬車が襲われた時、どうか、これと引き換えに命をお助け下さいって頼んだら、助けて

くれた…! おお…! まさに、命の女神様だ! これが無くなったら、ギルドの信用を失う所

だったんだ!」

 

「ハーピーを女神様と崇めるお前もなかなかだが…、これで、この娘がその指輪を取り返した

のだと分かっただろう?」

 

 と、主人はそう言ったが、

 

「まーたまた、よォ…。違うだろ? この指輪は、あんたが取り返してくれたんだろ? もしかし

たら、盗賊団を倒したのも、あんたなんじゃあないか…?」

 

 ルセラトラの主人の方は、信用せずにそう笑いかけた。

 

「私が、嘘をつくとでも思っているのか…?」

 

 だが、ブラダマンテを連れて来た主人の顔は真剣だった。

 

「う…。た、確かにあんたは嘘をつかない人だが…。いや、まさかな…? だって、その娘は15

いや、14歳くらいだろ…?」

 

 ブラダマンテの顔と、主人の方とを交互に見比べながら、ルセラトラの主人は疑った。

 

「ああ、そうだ…。私も、最初、この娘が割り入って来た時は、危険だと思った。だが盗賊の連

中を出し抜いた。そしてこの娘の後を追いかけた時は、賊は全滅していたんだ…」

 

 ブラダマンテに隠れて話すかのような小声で、主人達は話し合った。

 

「本当か…! 確かにうちの国じゃあ、そのくらいの娘で騎士見習いってのはいる。だが、あく

まで騎士見習い程度なんだぜ…」

 

「才能、とは考えられないか…? 時々、まだ若いというのに、戦場で活躍する者もいる」

 

「しかし、その娘は、この国の人間じゃあねえだろ。眼の色を見りゃあ分かる。こりゃあ北方の

生まれだ」

 

「まあ…、お前も、ギルドの信用を取り戻せて良かったと思え。掲示板に貼り出しておいただろ

う…。この娘にさっさと報酬をやるんだな…」

 

 主人達が話している間も、ブラダマンテは観察していた。自分がやって来たこの商店街は、

内陸の町や国からの商品を販売している。品数は多く、通りも賑わっている。交易が盛んな証

だ。

 

 物流が盛んならば、情報の行き来も盛んなはず。

 

 ここには、自分が追い求めていたものがあるかもしれない。

 

「報酬は、まだ用意してねえんだよ…。だから、今日の売上が終わったら、それで良いか…?」

 

 そう言う店主は、ブラダマンテではなく、彼女をここまで連れて来た主人に言っている。

 

「あの…! 報酬の代わりに、私を護衛として雇ってくれませんか…!」

 

 思わず大きな声で、ブラダマンテは叫んでいた。

 

 二人の店の店主達だけではない、通りにいた人々までもが、彼女の方も向いてくる。

 

「ご、護衛…、だと…?」

 

 ブラダマンテは、また笑われてしまうのではないかと思い、顔が赤くなっていくのを感じてい

た、しかし、

 

「この娘、剣の腕は確かなのか…?」

 

 ルセラトラの主人は、もう一人の主人に尋ねた。

 

「老人の護衛などを雇うよりもましだ。それに、この娘は、報酬よりも、雇われる事を望んでい

る…」

 

「いまいち、信用できねえな…。やばくなったら、逃げちまうんじゃあねえのか…?」

 

 ルセラトラの主人は疑ってくる。

 

「あの赤い盗賊団の首領と、剣を合わせたような娘だぞ…!」

 

「あんたの言う事を信じないわけじゃあねえ。だが、実際にその場で見たわけじゃあないから

な」

 

「なあ…、我々のギルドは、いくら商店街の中心近くにあるとは言え、盗賊共が暴れているお陰

で弱小ギルドだ。何よりも資産が無い。だから、ろくな護衛も雇えない。店の店主達だけであつ

まった、寄合自衛隊じゃあ、盗賊には適わん。そして、また商品を盗まれる。悪循環が続くだけ

だ」

 

 主人達は小声で言い争っているが、ブラダマンテにはその声が聞えていた。

 

 ルセラトラの主人は、疑うような目でブラダマンテの方を向いてくる。だが、やがて彼は深いた

め息をつくと言った。

 

「お嬢さんよ…。あんたを護衛として雇ってもいいが…、護衛はギルド単位で働くって言う決まり

があんのさ。だから、あんたは次のギルド商会の集まりで、我々の店の店主達に認めてもらお

う」

 

「は、はい…! ありがとうございます」

 

 ブラダマンテは思わず大きな声で感謝を述べていた。

 

「何、心配する事は無い。皆、盗賊団には心底参っている。護衛に関しては、藁にもすがる思

い、さ」

 

 


 
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