No.211431

孤高の御遣い Brave Fencer北郷伝31

Seigouさん






続きを表示

2011-04-13 01:18:20 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:18343   閲覧ユーザー数:11612

一刀が月達のもとを離れてから、2年が経過していた

 

その間に三国の間では様々な戦いが起こり、領土の奪い合いが頻発していた

 

その戦いは主に三国の中心である荊州で起き、一刀が最初にやってきた荊州北部の村も例外無く被害を受けていた

 

しかし、その全ての戦いに一刀の姿は無く、三国の将達は山賊狩りとしての一刀の噂しか耳にしていなかった

 

そんな一刀はというと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パッカパッカパッカ

 

 

 

 

 

 

 

一刀は現在、長江の川岸を狛煉に跨って歩いていた

 

 

 

 

 

 

 

???(サンゾクガリノセイカツニモナレタカ)

 

一刀「(そうだな、もう人を斬ることにも完全に慣れてしまったな)」

 

???(ミエスイタウソハヤメルンダナ)

 

一刀「(・・・・・・・・・・)」

 

もはや聞き慣れたこの声

 

現在では夢の中だけではなく日常でも心の中でコミュニケーションが取れるようになってしまっていた

 

???(オマエガコノセカイニキテカラ、ドレクライノニンゲンヲコロシテキタカナ?)

 

一刀「(数えるのが馬鹿馬鹿しいけど、もう百万を超えてしまったかな?)」

 

幻想なのか、一刀の目には自分を取り巻いている黒い霧のようなものが見える

 

最初は鬱陶しかったのだが、今ではすっかり慣れてしまっていた

 

それが人を斬るにつれてどんどん濃くなっていた

 

???(ソレニシテモ、ダイブヤツレタナ)

 

一刀「(最近は、何を食べても、何を飲んでも、血の味しかしなくなったからな)」

 

???(ソコマデシテサンゴクノシリヌグイヲシテナニガタノシインダカナ)

 

一刀「(俺にも分からない)」

 

???(マッ、セイゼイガンバレ、オマエガソウヤッテコワレテイクノヲオレハケンブツシテイテヤルゼ)

 

一刀「(・・・・・・・・・・)」

 

正体不明の声は聞こえなくなった

 

一刀が自己嫌悪に陥っていると

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「・・・・・なんだ?」

 

突然、大勢の人の声と共に、赤く光る炎が見えてきた

 

一刀「・・・・・魏の船団が・・・・・燃えている・・・・・」

 

今一刀の目の前、長江の上流では、世に名高い赤壁の戦いが行われていた

 

一刀から見て左側に孫の旗、劉の旗

 

そして、対岸には曹の旗が立っている

 

どうやら赤壁での蜀呉連合は成ったらしい

 

一刀「今更、俺が介入したところで、どうこうなる問題じゃないよな・・・・・」

 

武都で菖蒲を助けて以来、一刀は三国の戦いには一切関らないでいた

 

これ以上自分が介入して歴史を弄くるのはよくないとして、自分の手が届く範囲だけに絞り一刀は自分の行動を制限してきた

 

一刀「・・・・・みんな・・・・・大丈夫なのか?・・・・・」

 

狛煉を降り、長江の川辺に腰を下ろし、一刀は燃える魏の船団を見ながらかつての仲間達の安否を心配していた

 

一刀「(月、詠、雫、菖蒲、恋、嵐、ねね、徐栄、張済・・・・・)」

 

身勝手と分かっている

 

勝手にみんなのもとを離れて、こんな自分が人の心配をする資格なんて無いということも分かっている

 

しかし、欲を言えば他の三国の将達の身の上も心配なのだ、なにせ向こうが神聖と謳っている真名を預けられているのだから

 

三国の英傑達と顔見知りという時点で、既に異常と言えば異常なのであろうが

 

 

 

 

 

 

 

一刀「・・・・・はぁ~~~~・・・・・我ながら女々しいなぁ・・・・・」

 

長江の傍らで膝を抱え、戦いを見つめながらこんな自分が嫌になる一刀であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「・・・・・・・・・・収まったか・・・・・」

 

それからしばらく経ち、赤い炎は見えなくなった

 

一刀の目の前には焼けた魏の船団の残骸やら、既に事切れた多くの兵士達の亡骸が流れてきていた

 

その有様は、まさに地獄の川と呼ぶに相応しいと言える光景であった

 

一刀「・・・・・ん?・・・・・あれは・・・・・」

 

そんな中、一刀は見覚えのある人物が流れてきたことに気付いた

 

一刀「・・・・・って、祭さん!?」

 

流れてくる銀髪の面影を見て、あの黄蓋だと分かった

 

一刀「っ!祭さ・・・・・」

 

助けようと一瞬思うが、足が止まってしまう

 

ここで黄蓋を助けることが果たして正解なのか?

 

呉の黄蓋は呉においてかなりの影響力がある

 

きっとこれからも、三国の戦いは続いていくことだろう

 

黄蓋を助けるということは、今後呉にとってかなり有意義な存在が返り咲くということになる

 

一刀「・・・・・くっ!」

 

それでも一刀は長江に飛び込み祭のもとに駆けつけ、岸へお姫様抱っこで連れて行った

 

一刀「祭さん!大丈夫ですか!?」

 

祭「・・・・・ぅぅ・・・・・・・・・」

 

一刀「よかった、息がある・・・・・祭さん、聞こえますか!?祭さん!」

 

祭「・・・・・ぅ・・・・・ぅぅ・・・・・」

 

一刀「体温が低下している、血を失い過ぎているか」

 

祭の腹部に突き刺さった矢

 

そして背中には、あまりに痛々しい鞭打ちの痕ができている

 

これはかの有名な苦肉の策を使ったものだと一刀は理解した

 

忠久を抜き、今では膝まで長くなった自分の髪を少しだけ斬り、懐から鍼を取り出す

 

一刀「はああああああ!!」

 

そして、腹部に突き刺さった矢を抜きつつ氣を一気に集中させた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪蓮「呉の勇者達よ、魏の奴らを打ち滅ぼせ!!!我らの大地を二度と踏ませるな!!!」

 

蓮華「祭の仇、なんとしてでも討つ!!!絶対に曹操を逃すな!!!」

 

「おおおおおおおおおおーーーーーーーーーー!!!!!!!」

 

雪蓮と蓮華に激高され将と兵士達は魏軍の追撃に移っていった

 

雪蓮「・・・・・ふぅ・・・・・」

 

蓮華「・・・・・祭・・・・・」

 

冥琳「蓮華様、気を落とさないでください、祭殿は武人として最も望んだ死に方をしたのです」

 

蓮華「冥琳!」

 

桃香「そうです冥琳さん!そんな言い方無いと思います!」

 

雪蓮「桃香、言わなくていいわ」

 

桃香「雪蓮さん・・・・・」

 

雪蓮「冥琳の言う通り、祭はこうなることを望んでいたし、覚悟も決めていたわ」

 

小蓮「お姉ちゃん・・・・・」

 

蓮華「・・・・・・・・・・」

 

美羽「雪蓮・・・・・・」

 

紫苑「桃香様、気を落とさないでください、戦に生き戦に死ぬのは武人の運命(さだめ)ですわ」

 

桃香「・・・・・(わたしは、そんな現実を変えたくて、戦っているはずなのに・・・・・)」

 

朱里「(雫ちゃん)」

 

雛里「(大丈夫かな)」

 

穏「・・・・・冥琳様・・・・・」

 

亜莎「・・・・・やっぱり、悲しいです・・・・・」

 

冥琳「そんな顔をするな、草葉の陰で祭殿も笑っているぞ」

 

一同が祭の死を悼んでいると

 

祭「ワシがどうかしたかの?」

 

雪蓮「え!?」

 

蓮華「さ、祭!?」

 

桃香「黄蓋さん!?」

 

穏「まままままさか!!?」

 

亜莎「ゆゆゆゆ幽霊!!?」

 

祭「失礼なことを言う奴らじゃな!?こうしてぴんぴんしておるわい!」

 

紫苑「でも、黄蓋殿は確かにあの時・・・・・」

 

祭「ああ、確かに夏侯淵の矢がワシを射抜いた」

 

雪蓮「だったら・・・・・」

 

冥琳「うわああああああああああああん!!!!」

 

雪蓮「え!?」

 

蓮華「冥琳!?」

 

穏「め、冥琳様・・・・・」

 

亜莎「めめめめ、冥琳様!?」

 

朱里「ええええ!?」

 

雛里「・・・・・・・・・・」(ぽか~~~~~ん)

 

いきなり人目を気にすることも無く膝を折り泣き出した冥琳に一同は唖然とした

 

冥琳「よかった・・・・・ぐすっ・・・・・よかった・・・・・」

 

祭「なんじゃ、いきなり泣き出しおって、まだまだお主も子供じゃのう」

 

雪蓮「ホント、鼻水出てるわよ」

 

冥琳「ええ!!?////////」

 

雪蓮「ふふっ♪冗談よ♪」

 

冥琳「もう、雪蓮!」

 

雪蓮「ごめんごめん」

 

祭「まったく、いつになったら巣立ちができるのだお主等は、これでは安心して隠居できないではないか」

 

蓮華「祭!祭にはまだまだわたし達を引っ張っていって貰わないと困るわ!」

 

穏「そうですよ、祭様!」

 

亜莎「どうぞこれからも、御指導御鞭撻の程願いします!」

 

祭「はぁ・・・・・そろそろワシも休みたいところじゃがのう、早くお主等を一人前にしなければおちおち隠居もできんか」

 

雪蓮「それはそうと祭、本当にどうして助かったの?」

 

祭「うむ、こやつが助けてくれたわい」

 

雪蓮「こやつ?」

 

一同が祭の後ろにいる人物を見ると

 

雪蓮「一刀!?」

 

蓮華「か、一刀!?」

 

桃香「一刀さん!?」

 

紫苑「まあ♪一刀さん♪」

 

そこには、ボロボロの外套と服に身を包んだ一刀がいた

 

一刀「やあみんな、久しぶり」

 

雪蓮「ホント久しぶりね♪」

 

桃香「お久しぶりです、一刀さん♪」

 

小蓮「久しぶり~~~♪一刀~~~♪」

 

蓮華「今までどこに居たの?一刀」

 

一刀「相変わらずだよ、そこらじゅうにいる賊を討っていた」

 

雪蓮「・・・・・本当に相変わらずな様ね」

 

冥琳「それより雪蓮・・・・・」

 

雪蓮「そうね・・・・・一刀、我が国の宿将、黄蓋を助けてくれたこと、礼を言うわ」

 

一刀「俺がここに居たのは偶然だったんだ、別に礼を言われるようなことはしていない」

 

雪蓮「・・・・・一刀・・・・・あなたそろそろ腰を落ち着けた方がよくない?」

 

蓮華「そうよ一刀、損な性格も程々にしとかないとそのうち壊れてしまうわよ」

 

美羽「そうなのじゃ!一刀!」

 

雪蓮「それに一刀、前よりずっと痩せて・・・・・いいえ、やつれてない?」

 

桃香「本当だ・・・・・こんなに痩せ細ってしまって・・・・・」

 

祭「ちゃんと食事はとっておるのか?北郷」

 

一刀「大丈夫です、ちゃんと食べてますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嘘だった、本当は食事はまともに喉を通らないくらい一刀は疲弊していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桃香「一刀さん、もう止めにしませんか?」

 

朱里「そうです!一刀さんがどんなに賊を討っても、一人でできることには限界があります!」

 

雛里「(コクコクコク)」

 

亜莎「もう止めてください、一刀様・・・・・」

 

穏「一刀さん~・・・・・」

 

小蓮「一刀・・・・・」

 

紫苑「一刀さん・・・・・」

 

祭「北郷、我が命を助けていただいた礼がしたい、ぜひ建業へ来られよ」

 

一刀「祭さんありがとう、みんなも心配してくれてありがとう・・・・・でも、俺は今更自分の生き方を曲げることはできないんだ」

 

「・・・・・・・・・・」

 

一刀「それはそうと、冥琳」

 

冥琳「なんだ?」

 

一刀「最近、体の方に何か違和感は無いか?」

 

冥琳「っ!?・・・・・どういう意味だ?」

 

雪蓮「!?」

 

一刀「何か、病気とかにかかっていないか?例えば・・・・・そう・・・・・血を吐いたりとか」

 

雪蓮「ちょっ!!?冥琳!!?」

 

冥琳「・・・・・ふっ・・・・・流石天の御遣いだな、全てお見通しというわけだ」

 

一刀「やっぱりな」

 

雪蓮「まさか・・・・・本当なの?冥琳・・・・・」

 

冥琳「黙っていてすまない、北郷の言う通り、今まで数回血を吐いたことがある」

 

雪蓮「どうして言ってくれなかったの!?」

 

蓮華「そうよ冥琳!」

 

冥琳「蓮華様、言い訳に聞こえるかもしれませんが、赤壁での戦いが控えている以上、みなに余計な心配をかけたくなかったのです」

 

蓮華「・・・・・冥琳」

 

穏「そんな・・・・・」

 

亜莎「冥琳様・・・・・」

 

この時代では労咳は不治の病である

 

一同が、心の奥で冥琳は助からないだろうと思っていると

 

一刀「大丈夫、もう心配は無いよ」

 

雪蓮「どういう意味、一刀?」

 

一刀「前にこっそり冥琳の病魔を調べた事があったんだけど、その時には病魔は見えなかったんだ、けど今ははっきり見える、だから今この場で治すことができるよ」

 

雪蓮「本当!?一刀!?」

 

一刀「ああ」

 

そう言って一刀は忠久を抜き自分の髪を半分ほど切った

 

桃香「え!?どうして切っちゃうの、一刀さん!?」

 

一刀「冥琳の病魔は今はかなり大きくなっているからね、自分の体の一部を使わないと到底打ち消せないんだよ」

 

桃香「それってどういうこと?」

 

一刀「見ていれば分かるよ・・・・・それじゃあ冥琳、こっちに来てくれ」

 

冥琳「ああ・・・・・」

 

そして、一刀と冥琳はあと一歩の距離まで近づいた

 

一刀「それじゃあ・・・・・はああああああ!」

 

「!!??」

 

初めて五斗米道を見る桃香達は驚きの表情をしていた

 

一刀の気合と共に、一刀が切った髪が眩い光を放ち始めたのだから

 

一刀「っ」

 

ガバッ

 

冥琳「え!?」

 

「!!???」

 

一同は目を見開く

 

突然一刀が冥琳に自分の髪を押し付け、そのまま抱きついたのだから

 

冥琳「/////////////////」

 

一刀に抱きしめられ、冥琳は顔を真っ赤にしてしまうが

 

フワアアアアアアアアアアアアアアアアアア

 

次の瞬間、一刀と冥琳を淡い光が包み込んだ

 

冥琳「(これは、なんと暖かい)」

 

自身を包む淡い光に、冥琳は自然と身を委ねた

 

そして、光は消えていった

 

一刀「・・・・・どうかな?」

 

冥琳を離し、一刀は尋ねる

 

冥琳「・・・・・胸の奥の違和感が完全に無くなったようだ」

 

一刀「そうか、どうやら成功したみたいだな」

 

雪蓮「大丈夫なの?冥琳」

 

冥琳「ああ、なんだか前より調子が良くなった様だ」

 

一刀「ほら桃香、この通りだ」

 

桃香「あ」

 

完全に白髪になった自分の髪を桃香に見せた

 

一刀「一度代用した髪は、二度と使えないんだよ」

 

雪蓮「・・・・・一刀・・・・・わたしの命だけでなく、祭やわたしの親友の冥琳まで助けてくれて、本当に感謝し足りないわ」

 

一刀「気にしなくていいよ・・・・・それじゃあ、俺はこれで」

 

蓮華「そんな!お願い一刀、行かないで、どうかお礼をさせて!」

 

桃香「そうです!せめてみんなに会っていって下さい!」

 

一刀「ありがとう・・・・・でも会うと名残惜しくなるからな、ここで失礼するよ・・・・・みんなによろしく言っといてくれ」

 

そう言って一刀は、狛煉に跨り去っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・」

 

雪蓮、桃香を含めた一同は、一刀の去っていった方向を見て言葉を発せずにいた

 

そして、その沈黙を破ったのは

 

蓮華「・・・・・お姉様」

 

雪蓮「・・・・・何、蓮華?」

 

蓮華「わたし達は、本当に正しいのでしょうか?」

 

穏「蓮華様?」

 

蓮華「確かに我々には、孫呉の夢、お母様が我々に託した夢があることは重々承知しています・・・・・でも、わたしは最近思ったんです・・・・・わたし達よりも一刀のやっている事の方が正しいのではないかと」

 

亜莎「・・・・・蓮華様」

 

蓮華「お姉様、もうここでよろしいのではありませんか!!?これ以上戦いを続けても呉の為に・・・・・国の為にならない気がするのです!!」

 

雪蓮「・・・・・・・・・・」

 

小蓮「お姉ちゃん、シャオもお姉ちゃんの言っていることが正しいと思う・・・・・うまく言えないけど、わたし達は一刀にばかり嫌なことを押し付けちゃいけないと思うの」

 

小蓮は、今回の戦には乗り気ではなかった

 

もちろん攻められる以上守らなければならないのは分かるが、相手には真名を許した沙和がいるのである

 

それ以前に、本来賊の盗伐はその賊を生み出したその国の責務なのである

 

賊が生み出される理由はその国の政治が悪いからであって、自分達で処理しなけらばならないツケなのだ

 

これまで一刀が討伐していたからやらなくてよかっただけで、決して一個人に押し付けていい代物ではない

 

桃香「そうだよ、蓮華さんと小蓮ちゃんの言う通りだよ雪蓮さん!!もうこれ以上戦っても無駄な犠牲にしかならないよ!!」

 

美羽「雪蓮・・・・・わらわも、もう殺し合いは見とうないのじゃ・・・・・」

 

七乃「美羽様・・・・・」

 

彩「・・・・・・・・・・」

 

穏「雪蓮様・・・・・正直に申し上げますと、わたくしもこれ以上戦を続けても国を衰退させるだけかと思います~」

 

亜莎「はい・・・・・わたくし達も今回の戦で船団の約半分を消耗させてしまいましたので・・・・・」

 

そう、この赤壁の戦いで蜀と呉は、自分達の船に火を付け魏の船団に突っ込ませるという無茶ぶりを演じたのである

 

本来船というのは、一隻作るだけでも多大な費用が掛かるため今回の作戦決行は冥琳にも躊躇いがあった

 

しかし、魏の圧倒的兵力の前に形振り構ってはいられなかったのだ

 

雪蓮「・・・・・冥琳」

 

冥琳「安心しろ、お前がどのような結論に達し、どのような道を歩もうとも、わたしはお前に付いていき支えてやる」

 

雪蓮「・・・・・ありがと」

 

この二人には、小さい頃にした二人で天下を取るという約束がある

 

しかし、一つや二つの約束が成されない位で揺らぐほど二人の絆は甘くは無かった

 

断金の契りというのは理屈で語ることができないのである

 

蓮華「お姉様!」

 

桃香「雪蓮さん!」

 

雪蓮「ええ、まずは曹操を話し合いの席に引っ張り出さないことには始まらないわね」

 

冥琳「そのためには、なんとしてもこの戦いで曹操を押さえなければならないな」

 

朱里「追撃に出たみなさんの報告が朗報ならいいんですけど・・・・・」

 

桃香「お願いみんな、曹操さんを捕まえて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日

 

 

 

 

 

 

雪蓮「ご苦労だったわ、みな」

 

思春「・・・・・はっ」

 

明命「・・・・・はい」

 

純夏「・・・・・ええ」

 

桃香「みんな、お疲れ様」

 

愛紗「はい、桃香様・・・・・」

 

鈴々「ただいまなのだ、お姉ちゃん・・・・・」

 

星「ただいま戻りました、桃香様・・・・・」

 

桔梗「また、生き残りましたな・・・・・」

 

焔耶「ただいまです、桃香様・・・・・」

 

曹魏を追撃に出た将達は力なき声を出していた

 

祭「なんじゃなんじゃ、しみったれた顔をしおって」

 

思春「な!!?祭殿!!?」

 

明命「はうあ!!?祭様!!?」

 

純夏「生きていたんですか!!?」

 

追撃に出た将達は死んだと思った祭が生きていたことに度肝を抜かされた

 

桔梗「黄蓋殿は、確かにあの時・・・・・」

 

祭「ああ、確かに夏侯淵の矢を受けた・・・・・だが、北郷の奴が助けてくれたのじゃ」

 

愛紗「か、一刀様が!!?」

 

鈴々「にゃにゃっ!!?お兄ちゃんが!!?」

 

星「一刀殿!!?」

 

純夏「一刀が来ているの!!?」

 

一同は今まで何の音沙汰も無かった一刀がすぐそこにいると思うだけで明るい顔になった

 

愛紗「どこですか!!?一刀様はどこにいるのですか!!?」

 

桃香「ごめんね愛紗ちゃん、引き止めたんだけど・・・・・」

 

雪蓮「一刀は、もうここにはいないわ」

 

愛紗「・・・・・そんな」

 

純夏「あの馬鹿、少しくらい待ってくれてもいいじゃない・・・・・」

 

一刀に一番会いたがっていた愛紗と純夏は項垂れてしまった

 

しかし

 

焔耶「・・・・・・・・・・」

 

ここにもう一人残念そうにしている者がいた

 

桔梗「ん?・・・・・ふふふふ♪・・・・・どうした、焔耶よ」

 

焔耶「な・・・・・なんですか?桔梗様」

 

桔梗「なに、お主もかなり残念そうな顔をしておると思ってな♪」

 

焔耶「な!!何を言っているのですか桔梗様!!わたしは別に北郷の奴のことなんて!!」

 

桔梗「おや?ワシは一言も一刀殿の事だとは言ってはいないのだがな」

 

焔耶「・・・・・あ/////////」

 

まんまと嵌められてしまった事に気付き、焔耶は顔を赤くしてしまう

 

桔梗「はははは♪お主も正直よな♪」

 

星「まったくだ、焔耶は誰かと同じでからかい甲斐がある♪」

 

焔耶「桔梗様!星!///////////」

 

愛紗「誰かとは、誰のことかな?」

 

星「おや?心当たりがあるのか?」

 

愛紗「・・・・・知らん」

 

雪蓮「はいはい、漫才はそこまで・・・・・それで、思春、明命、純夏、曹操はどうなったの?」

 

桃香「そうだ!みんな!曹操さんは捕まえたの!?」

 

愛紗「・・・・・申し訳ありません、桃香様」

 

思春「あと一歩というところで、取り逃がしました」

 

雪蓮「・・・・・・・・・・」

 

桃香「・・・・・そんな」

 

これで曹操を捕まえれば太平の世を築くことができると期待していた桃香は眉をしかめた

 

穏「しかし、どうして取り逃がしてしまったのですか~?」

 

亜莎「ええ、こちらの連環の計と火計で曹魏の兵力はかなり削れたはずです」

 

穏「曹操さんには防備を固める余裕は無いはずですが~」

 

冥琳「亜莎、穏、一つ忘れていることがあるぞ」

 

朱里「はい」

 

雛里「そうですね」

 

亜莎「え?」

 

穏「・・・・・あ!」

 

星「そうだ、董卓の兵に邪魔された」

 

思春「あの汜水関、虎牢関を守っていた部隊だ」

 

明命「物凄い防御力でした」

 

純夏「ええ、まさに鉄壁そのものだったわ」

 

冥琳「噂に聞く董卓新鋭防衛隊か・・・・・」

 

雪蓮「自称北郷隊ね」

 

桃香「・・・・・・・・・・」

 

愛紗「わたくしの部隊も何度も突撃を敢行しましたが、悉く跳ね返されました」

 

鈴々「にゃ~~~、鈴々も攻め疲れちゃったのだ~~」

 

焔耶「あの盾はやっかいだ・・・・・」

 

桔梗「我が豪天砲で幾人か吹っ飛ばすこともできたが、それでも冷静さを欠かさずに陣形を崩すことがなかった、おかげであっという間に弾切れですわい」

 

星「あの我慢強さと忍耐力は、見事という他無かった」

 

明命「認めざるおえません、一刀さんの部隊の防御力は、大陸一です」

 

純夏「あれは、あたしの隊に欲しい位よ」

 

思春「まったく北郷のやつめ、厄介な置き土産を董卓に残していきおって」

 

雪蓮「そう・・・・・あわよくばと思ったんだけどね・・・・・」

 

明命「どうしたんですか?雪蓮様」

 

雪蓮「うん・・・・・実は、私達は曹操と和睦しようと思っているのよ」

 

明命「ええ!?」

 

思春「雪蓮様!?」

 

純夏「今更!?」

 

愛紗「桃香様もですか!?」

 

桃香「うん、今なら曹操さんもわたしのことを認めてくれるかな~って」

 

鈴々「でも・・・・・」

 

桔梗「さよう、我々は今回の戦いで曹操に甚大なる被害を与えてしまっておる」

 

焔耶「今更和睦を申し出ても、かえって曹操の怒りを買ってしまうのではありませんか?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

雪蓮も桃香も考え込んでしまう

 

ここまでやってしまった以上、今更和睦を申し出ても蹴られる可能性の方が大きい

 

紫苑「なら、桃香様」

 

桃香「なんですか?紫苑さん」

 

紫苑「ここは、あの人に頼む他無いんじゃないかしら?」

 

桃香「・・・・・あの人?」

 

朱里「一刀さんですね」

 

桃香「あ!そうか!」

 

雪蓮「それしか手は無いわね・・・・・」

 

穏「わたし達を含めた三国全てに顔が利く人間といえば~・・・・・」

 

亜莎「一刀様以外ありえません・・・・・」

 

雪蓮「そうと決まれば、さっそく一刀を探しましょう」

 

桃香「雪蓮さん、わたし達も協力します!」

 

鈴々「お兄ちゃんを探すのだ♪」

 

愛紗「一刀様、どこにいるのですか!?」

 

純夏「まったく、肝心な時に居ないんだから」

 

小蓮「まだこの辺りに居ればいいけど・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、呉内では戦後処理と同時に一刀捜索部隊が編成され、昼夜問わず一刀の捜索が開始された

 

しかし、一刀の姿はどこにも無かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

許昌の玉座

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聖「おお、華琳、月、お帰りなのじゃ」

 

華琳「ただいま戻りました、聖様・・・・・」

 

月「ただいまです・・・・・」

 

許昌に帰った二人の格好はまさに敗残兵と呼ぶにふさわしかった

 

葵「その様子を見るに、見事に負けたようだな」

 

「・・・・・・・・・・」

 

一同は俯いてしまう

 

春蘭「おい葵!そのような言い方があるか!」

 

嵐「その通りだ!それにどうして参戦してくれなかったのだ!?」

 

葵「おいおい、俺達は不可侵条約を結んだだけで華琳の覇道に協力するなんて一言も言っていないぜ」

 

翠「そうだぜ!負けた理由を涼州のせいにされちゃ困るぜ!」

 

春蘭「なんだと!!」

 

嵐「貴様!!」

 

翠「やるかーーーー!!?」

 

蒲公英「ち、ちょっと!お姉様!?」

 

お互いに武器を構え一触即発の雰囲気が辺りを支配する

 

華琳「お止めなさい!春蘭!」

 

月「止めてください!嵐さん!」

 

春蘭「しかし華琳様~」

 

嵐「月様~~~」

 

華琳「春蘭・・・・・」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

月「嵐さん~~~~~~!」

 

華琳は春蘭を鋭い目で睨み、月はぷく~~~とフグの様な顔で嵐を睨む

 

月の方は凄く可愛い

 

春蘭「はい、華琳様・・・・・」

 

嵐「は、はい!月様!////////」

 

葵「翠もとっとと武器を退け、聖様の前で血生臭いことをするな」

 

翠「分かってるよ」

 

春蘭と嵐と翠は、お互いに武器を納めた

 

華琳「それにしても、今回は月に助けられたわ、本当にありがとう」

 

月「いいえ、お礼ならあの部隊を訓練した一刀さんに言ってあげて下さい」

 

詠「そうね、正直今回の戦は北郷隊のおかげで撤退することができたようなものよ」

 

華琳「・・・・・今度会ったら、お礼を言うわ」

 

月「皆さんも、本当にお疲れ様です、主要な将が一人も欠けないで良かったです」

 

霞「そう言ってくれると嬉しいで・・・・・」

 

菖蒲「力が及びませんでした・・・・・」

 

嵐「お役に立てなくて申し訳ありません、月様・・・・・」

 

悠「熱かったぜ~」

 

恋「ん・・・・・ごめん・・・・・」

 

音々音「恋殿のせいではありませんぞ!」

 

稟「その通りです!」

 

桂花「兵力ではこちらが圧倒的に有利だった、装備も抜かりは無かった・・・・・」

 

風「相手の策を見破ることができなかった我々軍師の責任ですからね~・・・・・」

 

雫「恋さん達が万の兵を防ぐことができても、万の炎までは防ぐことはできません・・・・・」

 

稟「しかし・・・・・劉備と孫策があんな大胆な策をとってくるとは思いませんでした・・・・・」

 

桂花「そうね・・・・・あれは、自軍の損害を完全に無視した戦法よ・・・・・」

 

雫「わたしも諸葛亮と鳳統があのような策を使って来るとは、よみきれませんでした・・・・・」

 

朱里と雛里が連間の計と火計をを使ってくることを雫はよんでいた

 

魏の圧倒的数の船舶を制するには、それしか手は無かったからである

 

しかし、方法をよむ事が出来ても、手段まではよめなかった

 

せいぜい火矢か松明を使っての着火と想定し、万全の備えをしてきたが、甘かった

 

まさか自軍の船舶の大半を犠牲にする手を打ってくるとは思ってもみなかったのである

 

華琳「・・・・・月・・・・・ごめんなさい」

 

月「華琳さん?」

 

華琳「今回の戦であなたの兵士もかなり減ってしまったでしょう、おまけに北郷隊の徐栄と張済を負傷させてしまって」

 

月「止めてください華琳さん!それは華琳さんも同じことです!」

 

華琳「・・・・・月、ありがとう」

 

月「いいえ・・・・・」

 

華琳「(わたしは一体何をしているの!?一刀に月を任されているっていうのに!?)」

 

凪「(わたしは何をしているというのだ!?こんな有様では一刀様に認めてもらうことなど夢のまた夢ではないか!?)」

 

華琳と凪は自分の不甲斐無さに怒りを感じていた

 

沙和「(凪ちゃん・・・・・)」

 

真桜「(凪・・・・・)」

 

沙和と真桜も自分を責めている親友にかけられる言葉が見つからなかった

 

「・・・・・・・・・・」

 

しばらくの沈黙

 

そして

 

季衣「・・・・・あの、華琳様」

 

華琳「どうしたの、季衣」

 

季衣「ボク、分かんなくなっちゃったんです」

 

流琉「季衣?」

 

季衣「華琳様は、前にボクに約束してくれましたよね、この大陸のみんなを守ってくれるって」

 

華琳「・・・・・ええ、その通りよ」

 

季衣「でも、ボク思うんです、ボク達のやっていることはかえってみんなを苦しめているんじゃないかって・・・・・」

 

春蘭「季衣・・・・・」

 

秋蘭「・・・・・・・・・・」

 

華琳「・・・・・・・・・・」

 

沙和「・・・・・華琳様」

 

華琳「何?沙和」

 

沙和「沙和もね、どうして自分がこんなことしているのか分からなくなってきたの・・・・・沙和、呉の孫尚香ちゃんと仲良くなることができたの・・・・・もちろん、一刀さんのおかげということもあるけど・・・・・それでも他の国の人と仲良くなれたの・・・・・だから、華琳様の言う天下統一も大事だと思うけど、ひょっとしたら他の方法もあると思うの!」

 

華琳「・・・・・・・・・・」

 

聖「・・・・・華琳」

 

華琳「聖様」

 

聖「朕も、これ以上民達が殺しあう光景を見るのは嫌なのじゃ」

 

葵「・・・・・聖様」

 

聖「頼む華琳!呉と蜀と和睦してくれんか!?朕も協力する!・・・・・漢王朝は衰退してしまい、殆どの民達の心は魏、呉、蜀に傾いていることは分かっている・・・・・それでも朕も何かしたいのじゃ!こんな情けない朕でも、何かできることがあるはずなのじゃ!」

 

華琳「・・・・・聖様」

 

月「華琳さん、わたくしからもお願いします」

 

華琳「・・・・・月」

 

月「わたくしは弱い人間です、一刀さんのように強くもないし、詠ちゃんのようにすごい政が出来るわけでもない・・・・・華琳さんの覇道に大したお手伝いもできませんでした」

 

詠「・・・・・月・・・・・」

 

嵐「・・・・・月様・・・・・」

 

月「でも・・・・・他の道も有るのではないですか?武力による統一だけが一つの道ではないと思います!」

 

麗羽「・・・・・月様・・・・・」

 

斗詩「・・・・・・・・・・」

 

猪々子「・・・・・・・・・・」

 

華琳「・・・・・・・・・・」

 

どうすればいいのか悩む華琳

 

正直今回の敗戦は、華琳もかなりのショックを受けていた

 

しかし、かつて師の墓前で誓った、必ず自分が天下を取ってみせるという誓い

 

それを破るということは、今までの自分を否定するようなもの

 

このまま悩んでいても仕方がないと分かってはいるが、どうにも答えが導かれない

 

秋蘭「・・・・・華琳様」

 

悩む華琳を見かねたのか、秋蘭が口を開いた

 

秋蘭「ご安心ください、例え華琳様が覇王の衣を脱いだとしても、我々の華琳様への忠誠は揺らぎません」

 

春蘭「そうですとも華琳様!例え華琳様がどのような道を歩もうとも!我ら姉妹は華琳様のお傍を決して離れません!」

 

桂花「わたくし、荀文若の心は常に華琳様のものです」

 

稟「我々はどんな華琳様でも受け入れて見せましょう」

 

風「大丈夫ですよ~華琳様、風達が付いているのです~」

 

零「・・・・・・・・・・」

 

華琳「・・・・・そうね、たしかに覇道のみが天下への唯一つの道というわけでもないでしょう」

 

聖「おお!華琳!」

 

月「では!」

 

華琳「ええ、我々魏は、呉・蜀と和睦します!」

 

季衣「華琳様~♪」

 

流琉「よかったね季衣♪」

 

季衣「うん♪」

 

沙和「よかったの~♪」

 

華琳「さて、何か策はあるかしら?桂花、風、稟、零」

 

桂花「難しいでしょうね」

 

風「そうですね~、先の赤壁での戦いで風達は孫策さんと劉備さんに敵意丸出ししてしまいましたからね~」

 

稟「和睦をするとなると、こちらがかなりの誠意を見せなければ、到底取り合ってもらえないでしょう」

 

それはそうだ、たいてい和睦の申し出というのはこちら側がかなり有利な状況でなければ決してしてはいけないのだ

 

赤壁での敗戦でこちらの戦力はかなり削られてしまった

 

この状況で和睦するとなると向こうからどんな要求が来るか分かったものではない

 

零「・・・・・ここは、あいつに頼むしかないでしょうね」

 

華琳「あいつ?」

 

雫「一刀様ですね」

 

霞「あ、その手があったか」

 

風「確かに、魏、呉、蜀の仲介役ができる人はお兄さんしかいないでしょうね~」

 

桂花「はい、悔しいですが、あいつ以外に三国の仲を取り持つことができる者はいないでしょうね」

 

稟「しかし、一刀殿の行方は未だに掴めません」

 

詠「山賊狩りとしてのあいつの噂は聞いているけど、あちこちに噂が蔓延していてどれが新しくて正しい情報なのか分からなくなっているから」

 

華琳「では、暫くは一刀の情報を集めることを優先的に行いましょう」

 

聖「朕も協力するのじゃ!葵、一刀を探すのに協力してくれ!」

 

葵「はっ!聖様!」

 

翠「分かりました!」

 

蒲公英「うん!お兄様を探さないとね!」

 

翠「え、蒲公英!?お兄様ってなんだ!?」

 

蒲公英「え?・・・・・あ・・・・・」

 

その瞬間、蒲公英はやってしまったと思った

 

悠「ああ実はな、あたしと蒲公英は以前に北郷一刀に会っているんだよ」

 

華琳「え!?」

 

月「本当ですか!?」

 

悠「翠と蒲公英が魏ができた直後に視察に来たことがあっただろ、その時に荊州北部でな」

 

秋蘭「(そうか、だから武都での戦いで北郷は、悠を真名で呼んでいたのか)」

 

菖蒲「そんな・・・・・どうして言って下さらなかったのですか!!?そのような大事なことを!!」

 

翠「そうだぞ蒲公英!!」

 

蒲公英「怒らないでよお姉様!しょうがなかったんだよ!お兄様から口止めされていたんだもん!」

 

雫「何故そのようなことを・・・・・」

 

悠「あいつは、月達の所に戻るのを迷っていたよ・・・・・」

 

菖蒲「どうしてそんな・・・・・」

 

蒲公英「お兄様悩んでいたんだよ、自分が一つの勢力にいるとかえって人死にが多く出てしまうんじゃないかって」

 

月「一刀さん・・・・・」

 

詠「なに馬鹿なこと言っているのよ・・・・・」

 

霞「あのオタンコナス・・・・・」

 

嵐「馬鹿者が・・・・・」

 

菖蒲「一刀様・・・・・」

 

雫「どうして・・・・・どうして言ってくださらなかったのですか?一刀様・・・・・」

 

恋「・・・・・かずと・・・・・」

 

音々音「一人で全部抱え込んで、そんなにねねは頼りないですか・・・・・」

 

董卓一同は悩みを打ち明けなかった一刀に怒りを覚えた

 

しかし、それ以上に一刀の悩みに気付く事が出来なかった自分達に腹が立った

 

一刀だって一人の人間でしかないのだ、悩みもするし、傷を負えば赤い血が流れるのだ

 

心のどこかで思っていた、一刀ならば大丈夫、一刀ならば何とかする

 

だが実際はどうだ

 

今自分達は一刀と離れ離れになっていて、一刀は毎日賊を討つ生活を送っている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全然大丈夫ではないではないか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

華琳「・・・・・とにかく、葵と月達は一刀の捜索に当たって頂戴!私達は赤壁の戦後処理が終わり次第、一刀の捜索に協力するわ!」

 

葵「おう!」

 

月「分かりました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその後、曹操陣営は赤壁の戦後処理に、董卓、涼州陣営は一刀の捜索に乗り出した

 

しかし、こちらでも一刀の姿は影も形も見当たらなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三国が一刀の捜索を開始してから約半年

 

最初に一刀の情報を手にしたのは魏であった

 

 

 

 

 

 

 

徐栄「報告します!」

 

月「っ!一刀さんが見つかったのですか!!?」

 

雫「一刀様はどこにいるのですか!!?」

 

徐栄「はっ!ここより北の広平の村にて隊長が賊を討っているという情報が入りました!」

 

華琳「ようやく尻尾を出したわね、一刀」

 

月「今すぐ現場へ向かいます!詠ちゃん!準備して!」

 

詠「そんな!月まで行く必要なんかないって!」

 

月「ううん、わたし思うの、わたしが一刀さんを迎えなきゃいけないって」

 

詠「・・・・・・・・・・」

 

月「・・・・・・・・・・」

 

月は詠えを真っ直ぐに見つめた

 

その目には決意の色が伺える

 

詠「・・・・・はぁ・・・・・分かったよぅ・・・・・」

 

今までの付き合いで、こうなってしまっては月を説得することは不可能と分かっていた詠であった

 

月「詠ちゃん、ありがとう」

 

華琳「月、わたしも行くわ」

 

桂花「そんな!華琳様まで!」

 

華琳「桂花、あなたも分かっているでしょう、私達は一刀に多大な借りが有ることを」

 

桂花「・・・・・はい・・・・・」

 

華琳「そしてこれからも、わたし達は一刀の世話に肖ろうとしている、ここでわたし自身が一刀を迎え入れなくてどうするのよ」

 

桂花「・・・・・分かりました・・・・・」

 

華琳「よろしい・・・・・では、行きましょうか、月」

 

月「はい!華琳さん!」

 

霞「一刀、待ってろや!」

 

嵐「今行くぞ、一刀!」

 

菖蒲「待っていてくださいね、一刀様!」

 

雫「一刀様、どこにも行かないでください!」

 

恋「・・・・・かずと・・・・・やっとかずとにかずとの剣返せる」

 

音々音「待っていろです!バ一刀!」

 

凪「一刀様!今参ります!」

 

真桜「一刀はん、今行くで!」

 

沙和「待ってて頂戴なの~!」

 

稟「一刀殿!」

 

風「お兄さん・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして一同は急遽北を目指した

 

その途中にて

 

月「後どれくらいで着くでしょうか!?」

 

華琳「そうね!一刻もあれば着くでしょう!」

 

馬を潰すのも覚悟で華琳達が急いでいると

 

稟「・・・・・ん?・・・・・あれは・・・・・」

 

華琳「どうしたの?稟」

 

稟は道端を歩いている一人の人間に見覚えがあった

 

稟「・・・・・あれは・・・・・華佗殿!?」

 

華琳「何ですって!?」

 

風「おお~~、確かにあれは華佗さんですね~」

 

月「あれが、一刀さんに医療を教えた人・・・・・」

 

稟「華琳様!どうか止めていただけませんか!?」

 

華琳「今は一刻を争うのよ!止めている時間なんて無いわ!」

 

月「いいえ!止めましょう!華琳さん!」

 

詠「月!?」

 

月「詠ちゃん、何故だか分からないけど、あの人も連れて行った方がいいと思うの」

 

詠「・・・・・・・・・・」

 

華琳「分かったわ、全軍停止!!!」

 

華琳の掛け声と共に全軍は一斉に止まった

 

稟「華佗殿!!」

 

華佗「ん?・・・・・おお!稟じゃないか!」

 

風「お久しぶりです~」

 

華佗「風まで!こんな所でどうしたんだ!?」

 

華琳「それは、わたしが説明するわ」

 

華佗「ん?君は・・・・・」

 

華琳「申し送れたわね、わたしの名は曹孟徳よ」

 

華佗「な!!?魏王がどうしてここに!!?」

 

華琳「それは・・・・・・・・・・」

 

華琳は自分達がどうしてここにいるかを説明しだした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

華琳「・・・・・・・・・・・・ということよ」

 

華佗「なるほどな、一刀に三国の仲介役になって貰おうとしているのか」

 

稟「華陀殿、どうか一緒に来てもらえませんか?」

 

華佗「そうだな、一刀をこのままほうっておくわけにもいかないだろう、俺も同行させて貰うよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、一同は広平の村に着いた

 

しかし、村の様子がおかしい

 

桂花「?・・・・・どういうこと?」

 

春蘭「人の気配がないではないか」

 

そう、村には誰一人いなかったのだ

 

月「賊が襲ってきて、皆さん避難したんでしょうか?」

 

華佗「それにしては村に賊が入った形跡がないぞ」

 

そう、確かに人は居ないがそれでも荒らされた痕跡はない

 

恋「(フルフル)・・・・・違う」

 

詠「え?何が違うの?恋」

 

恋「・・・・・居る」

 

沙和「何が居るの~?」

 

恋「・・・・・家の中・・・・・居る」

 

恋が指差す方向には村の家屋が立ち並んでいた

 

恋「みんな・・・・・息を殺して・・・・・家の中に居る・・・・・」

 

菖蒲「どうしてそんな」

 

恋「・・・・・怯えている・・・・・震えている」

 

秋蘭「賊に怯えているということか?では我々が来た事を知らせれば良いではないか」

 

華琳「・・・・・そうね・・・・・みな!村を捜索なさい!一刀の情報も聞き出すのよ!」

 

凪「はっ!」

 

真桜「ほいきた!」

 

そして、曹操軍は村の捜索を開始する

 

しかし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドンドンドンドン!!!

 

春蘭「おい、ここを開けろ、曹操軍だ!!我々が来たからにはもう安心だ!!だからここを開けろ!!」

 

家屋の扉をけたたましく叩き中に居るであろう住民に呼びかける春蘭

 

扉を開けようにも家屋の扉は内側から閂がかけられているのか、びくともしなかったのだ

 

住民「ひいいいいいいい!!!いやだ!!!あんな恐ろしいもの見たくない!!!」

 

春蘭「???・・・・・恐ろしいもの?」

 

中から聞こえてくるのは恐怖に心を乗っ取られたかのような住民の怯えた声だった

 

凪「曹操軍です!!皆さんの救援に来ました!!どうか開けてください!!」

 

住民2「いやああああああああ!!!開けないで!!!出て行ってーーーーーーーーーー!!!!」

 

凪「・・・・・・・・・・」

 

雫「お願いです!!ここを開けてください!!聞きたいことがあるんです!!」

 

住民3「うわあああああああああ!!!!止めろおおおおおお!!!開けるな!!!開けたら殺すぞ!!!!」

 

雫「・・・・・・・・・・」

 

月「・・・・・いったい何があったんでしょう?」

 

稟「住民達のこの怯え様、尋常ではありません・・・・・」

 

風「はい~、よほどのことがあったんでしょうね~・・・・・」

 

沙和「華琳様~駄目なのぉ~~・・・・・」

 

霞「あかんわ、誰一人出てこうせん・・・・・」

 

他の者達も住民から話を聞こうとしたが同じ反応だったようだ

 

華琳「仕方ないわね・・・・・春蘭、扉を壊して住民を引きずり出しなさい!」

 

秋蘭「華琳様!?」

 

月「そんな!?そんな強引なやり方・・・・・」

 

華琳「今は、一刻も早く一刀の情報が欲しいのよ・・・・・やりなさい!」

 

春蘭「はっ!!どりゃああああああ!!!」

 

バガーーーーーーーーーーン!!!

 

七星餓狼を振りおろし住居の扉を粉砕した春蘭は中に突入し住民を引っ張り出した

 

春蘭「こら!!!大人しくしろ!!!」

 

住民「いやだああああああああ!!!!家に戻してくれえええええええええ!!!!」

 

まるで死刑執行直前の死刑囚のような反応に曹操軍一同は面食らった

 

桂花「ちょっと!!落ち着きなさいよ!!」

 

住民「止めてくれ!!!殺されるうううううううううううう!!!!」

 

音々音「なっ!!?人聞きの悪いこと言うなです!!ねね達は聞きたいことがあるだけ・・・・・」

 

住民「うわああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

 

もはや支離滅裂、精神崩壊一歩手前といってもいい住民に一同もどうすればいいのか分からなかった

 

しかし

 

華佗「~~~~~~~っ・・・・・はあああああああ!」

 

ぴしゃーーーーーーーーーーーーーん!!!

 

氣を集中し、住民の首筋に鍼を打ち込む華陀

 

真桜「ちょっ!!?いきなり何するんや!!?」

 

華佗「今突いたのは、心を落ち着かせるツボだ・・・・・どうだ?落ち着いたか?」

 

住民「ああ・・・・・ああああ・・・・・」

 

華佗「よし、目の焦点もあってきた、顔色も良くなってきた・・・・・俺の言っている事が分かるか?」

 

住民「あ・・・・・はい・・・・・」

 

華佗「よかった・・・・・それじゃあ話してくれないか?この村で何があったんだ?」

 

住民「え、ええ・・・・・ついさっき山から賊が襲ってきて、逃げようとしたんですが・・・・・・・・・・」

 

菖蒲「?・・・・・どうしたんですか?」

 

住民「・・・・・突然、髪の長い一人の男が賊の前に立ちはだかって・・・・・」

 

雫「一刀様です!」

 

恋「(コクコクコクコク!!)」

 

菖蒲「ああ・・・・・一刀様ぁ」

 

凪「ようやく会えるんですね」

 

確かな一刀の情報を聞いたことによって一同の顔には笑顔がこぼれる

 

が、住民は変なことを言い出す

 

住民「そうしたら次の瞬間、突然辺りが暗くなって・・・・・」

 

霞「は?なんやて?」

 

詠「そんな!?今は昼よ、そんなことあるはずないわ!」

 

真桜「なんやでかい雲でもお日様遮ったんかいな?」

 

住民「それで、暗くなったと思ったら、ものすごい音と同時にその暗がりが賊を飲み込んで・・・・・」

 

風「いったい何を言っているんですか~?」

 

住民「そしたら、辺り一面が真っ赤に染まって・・・・・あんなの人じゃない・・・・・人なわけがない・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・」

 

この住民の言葉の意味が全く理解できない一同

 

 

 

そして、次の瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「ぎゃあああああああああああ!!!助けてくれええええええええ!!!」」」」」

 

「!!!???」

 

董卓陣営、曹操陣営は突然の悲鳴に驚く

 

住民「ひいいいいいいいいいいい!!!お助けおおおおおおおおおおお!!!!」

 

その住民は、一目散に自分の家へ走り込んでしまった

 

月「ええええ!!?」

 

華琳「これは!!?」

 

華佗「山の方からだな!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズバッ!バシュ!ザシッ!ザンッ!バシッ!ザシャッ!ゴキュッ!ザンッ!

 

「「「「「うわあああああああああああ!!!化け物だああああああああ!!!!」」」」」

 

「・・・・・・・・・・」

 

一同は面食らった

 

今目の前で行われているのは、たった一人による大多数への一方的な殺戮だった

 

一人の人間が後ろから賊達を追い散らし山道を賊達が先を争うように逃げ惑い、山頂から麓にかけてあっという間に鮮血の血溜まりが広がっていく

 

「「「「「ぎゃああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」

 

賊の数が少なくなってきたのか、叫び声はドンドン少なくなっていく

 

そして

 

賊「た、助けて!助け(ズバッ!)・・・・・」

 

最後の賊が目の前で首を飛ばされ絶命した

 

そして

 

カシャン!     ボアアアアアアアアアアア!!!!

 

その賊が持っていた油が何かの拍子に引火して燃え広がった

 

その炎は、周りの草木を次々と焼いていく

 

月「一刀さん!」

 

恋「かずと!」

 

霞「一刀!」

 

嵐「ようやく見つけたぞ!この馬鹿者が!」

 

菖蒲「一刀様!」

 

雫「一刀様!」

 

詠「一人で突っ走ってんじゃないわよ!」

 

音々音「心配かけやがって!この野郎!」

 

徐栄「隊長!」

 

張済「兄上!」

 

凪「一刀様!お迎えに上がりました!」

 

一同が一刀に駆けつけようとした時

 

華佗「よせっ!!!近寄るな!!!」

 

「!!!???」

 

突然の華陀の怒声とも取れる引止めに全員の足が止まる

 

月「どうしたんですか?華陀さん」

 

華琳「華佗?」

 

華佗「・・・・・・・・・・」

 

まるで鬼のような目で一刀を睨む華佗

 

「・・・・・・・・・・」

 

一同も一刀をもう一度見てみると

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月「・・・・・か、一刀さん・・・・・」

 

詠「・・・・・・・・・・」

 

霞「・・・・・本当に・・・・・一刀なんか?・・・・・」

 

嵐「・・・・・あれが、一刀なのか・・・・・」

 

菖蒲「・・・・・一刀・・・・・様?・・・・・」

 

雫「・・・・・ど・・・・・どうしてしまったんですか?・・・・・一刀様・・・・・」

 

恋「・・・・・か・・・・・ずと・・・・・」

 

音々音「・・・・・・・・・・」

 

華琳「・・・・・あれが、一刀なの?・・・・・」

 

春蘭「・・・・・北郷?・・・・・」

 

秋蘭「・・・・・・・・・・」

 

稟「・・・・・一刀・・・・・殿・・・・・」

 

風「・・・・・お兄さん・・・・・」

 

桂花「・・・・・いや・・・・・いやーーーーーーーーー!!!!」

 

桂花は思わず絶叫を上げる

 

そこにいたのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目には光がなく、まるで焦点が合っていないように見える

 

全身に賊の返り血を浴び、忠久を完全に紅に染め炎の中に立っている一刀だった

 

おまけに一刀が纏っている氣

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                黒い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、今までの山吹色のような美しい氣とは程遠い、どこまでも暗く深い暗黒だった

 

「・・・・・・・・・・」

 

一同が一刀の変わりように呆然としている中

 

パッカパッカパッカ

 

張済「!?狛煉!?」

 

一刀の愛馬狛煉が張済に近寄ってきた

 

しかし

 

狛煉「ヒヒン・・・・・」

 

張済「・・・・・狛煉・・・・・お前・・・・・」

 

狛煉は泣いていた

 

まるで一刀の心を代弁するかのように

 

雫「・・・・・一刀様!!」

 

雫が一刀に叫び掛ける

 

しかし

 

 

 

 

 

一刀「・・・・・?」

 

一刀は、首を傾げるだけで何の反応もない

 

雫「・・・・・そんな・・・・・一刀様、わたしが分からないのですか?・・・・・一刀様!!わたしです!!徐庶です!!雫です!!」

 

月「一刀さん!!」

 

詠「一刀!!」

 

霞「目を覚ますんや!!一刀!!」

 

嵐「どうしてしまったのだ!!?一刀!!」

 

菖蒲「一刀様!!」

 

恋「・・・・・かずと!」

 

音々音「しっかりしろなのです!!」

 

徐栄「隊長!!」

 

張済「兄上!!」

 

凪「一刀様!!」

 

一刀「・・・・・?」

 

それでも一刀は反応しない

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

そして、一刀は一同から背を向けその場を去ろうとする

 

雫「っ!!一刀様!!」

 

一刀を追いかけようと走り出す雫だったが

 

華佗「よせっ!!!!」

 

ズバンッ!!!

 

華佗「ぐっ!!」

 

雫「きゃあっ!!!?」

 

黒い邪氣の斬撃が雫と華佗の足元を斬り裂いた

 

月「そんな、一刀さん・・・・・」

 

華琳「一刀・・・・・」

 

菖蒲「そんな・・・・・」

 

恋「かずと・・・・・」

 

沙和「こ、こんなの・・・・・」

 

真桜「嘘・・・・・やろ・・・・・」

 

凪「一刀・・・・・様・・・・・」

 

月と華琳を含めた一同は、目の前の光景が信じられなかった

 

あの一刀が本気で雫に斬り掛かったのだ

 

もし華佗が止めていなかったら、今の邪氣の斬撃は間違いなく雫に直撃していただろう

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

一刀は無言のまま、狛煉にも乗らず炎の中へと消えて行った

 

メラメラと燃える炎は、何処かどす黒く、まるで地獄から這い出てくるように燃えていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雫「ぁぁ・・・・・・・一刀・・・・様ぁ・・・・・ぁ・・・・・・か・・・・・・ず・・・・・」

 

雫は体の痙攣が止まらず、その場にへたり込むしかなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうもseigouです

 

かなり遅い更新となってしまいました

 

最近執筆に回せる時間が短くなってきて自分でも嫌になってきますよ

 

というわけで、とうとう出てしまいました、闇一刀

 

次回、一刀、暗黒偏に突入です


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
100
12

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択