No.205983

真・恋姫無双 ~とある思春の閲禁報告書~

うたまるさん

人様の二番煎じですが書いてみました。
毎日一刀に辛く当たる思春、だけど彼を観察した記録は、いつのまにか彼女の本音が書きつづられていく。
基本思いつきなので深い突込みはなしで御願いします。

面白いとか、思春が可愛いと思ってくれた方は支援ボタンを押してくれると嬉しいです。

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2011-03-10 19:49:11 投稿 / 全15ページ    総閲覧数:19966   閲覧ユーザー数:14332

 

 

 

真・恋姫無双 二次創作短編小説 ~異聞録~ 其の伍

 

『 とある思春の閲禁報告書 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 狭乃 征様の【真・恋姫夢想 ~とある桂花のデレ日記~】を見て思い浮かんだので、狭乃 征様に許可をいただき書いてみました。

○月×日

 

 まったく今日はとんでもない日だった。

 袁術の馬鹿さ加減のおかげで、堂々と雪蓮様達と合流できた目出度い日だと言うのに、雪蓮様の拾ってきた天の御遣いに仕立てた男を紹介されたのだが、よりにもよって将来我等の旦那になると言う。

 主であり孫呉の王である雪蓮様や蓮華様の手前、それらしく振舞いはしたが、まったく雪蓮様は何を考えておいでだ。

 …いや、考えは分からないまでもないが、子を成すと言う事は、つまりそう言う事をすると言う事だ。

 蓮華様をあのような得体のしれない男に抱かせよう等と、断じて許せるような事ではない。

 そ、それに私とて選ぶ権利ぐらいはある。 あのようなへらへらと笑うぐらいしか能がなさそうな男に躰を許すなど、考えただけで怖気が走ると言うもの。

 だから観察し、その記録を取る事にした。

 あの男が、我等の旦那になるに値しない男だと証明するために。

 

 とりあえず考えが不足ながらも、それらしい策を出して置きながら、その策の意味の重さに青い顔をしながらも、責任の重さから逃げ出さないだけ、そこらの男どもよりはマシなのかもしれない。

 それに人の事を構っていられるような精神状態ではないのに、蓮華様を気遣うぐらいの心根は持ち合わせているようなので、もう少し観察する事にした。

 

 

 

○月▽日

 

 えーい、今日もあの男はへらへらしおって。

 貴様が役に立たない事など、最初から分かっていた事。

 それを誤魔化すように、むやみに笑顔を振り撒くなど信じられん。

 だいたい、貴様は役に立たないなら役に立たないなりに、役に立とうと努力しているではないかっ。

 夜に走り込んだりして体を鍛え。 そのあとは文字を覚えようと下手糞な字を砂に向かって書いては消すと繰り返しているではないか。

 貴様は隠しているつもりかもしれんが、我等にはまる分かりもいい所だっ!

 すぐに結果が出るなどと最初から思っていないと言うのに、それを誤魔化すように愛想を振りまくところが気に食わん。

 

 ………とりあえず、努力している事に免じて、もう少しだけ様子を見る事にしよう。

 

 

 

◇月□日

 

 まったく饅頭を食べながら、蓮華様との鍛錬を断りもなく見学するとは失礼な奴だ。

 これからも我等と共にすると言うのならば、礼儀作法を正してやろうと思ったが、蓮華様が許された以上私がでしゃばる訳にはいかない。

 あれだけ事ある事に鈴音を突きつけたり脅したりして、体に教えてやっていると言うのに進歩の無い奴め。

 私は認めてはいないが、蓮華様の旦那様候補である以上、せめて何処に出しても恥ずかしくない程度に礼儀作法を身に着けてほしいものだ。

 

 それにしても鍛錬を見ていた時の北郷の目は、離れていた所で見ていたと言う事を差し引いても、我等の動きを理解し追いついていた。

 一般兵ではとても追いつけない我等の動きを北郷は見てとっていた所を見ると、私が鍛えてやればモノになるかもしれん。 だが、天の御遣いを無暗に危険に晒す訳にもいかないので、諦める事にした。

 

 しかし天の世界の剣か。

 装飾ではなく剣そのものが美しいと言うが、興味が無いと言えば嘘になる。

 ………いつか詳しく聞いてみよう。

 

 

 

◇月●日

 

 北郷にはもっと毅然としてもらいたい。

 虎牢関を落す策を考えたばかりか、軍師として戦場にきちんと立ったのだ。

 そういう時こそ軍師として、漢として少しは精悍な顔を見せてほしいものである。

 だがアヤツの笑顔が周りの兵士達の緊張を程よく解したと考えれば、………まぁ、悪くはない。

 

 ……さて、アヤツがなけなしの勇気を振り絞って、漢を見せようとしているのだ。

 ならば蓮華様を守るためにも、アヤツの所には敵の一兵たりとも近づけさせないように奮闘しよう。

 

 

 

□月×日

 

 北郷の鍛錬が変わった。

 どこからか手にした木剣を振り回しているだけだったのが、いつの間にか想像の相手を見据えて振るう様になった。

 まだまだ甘く、相手の想定がなってはいないが、それなりに考えて動いている事が分かる。

 私から見たら隙だらけで未熟もいい所だが、真剣に想像の相手を見据えるアヤツの瞳は、………そのなんと言うか悪くないと思ってしまった。

 

 そう言えば、最近は穏のおかげもあって、基礎的な文字なら読み書きできるようになったおかげで、簡単な案件を子瑜様や穏の力を借りながらやっているようだ。

 

 ……ふん、少しは自覚が出てきたのかもしれない。

 

 

 

□月◆日

 

 蓮華様と海軍の鍛錬から戻ってみると、祭殿が北郷を鍛えていた。

 実力の差は明白で、北郷は何度も地に転がされていた。

 当たり前だ。 北郷は慣れぬ剣を持っている上、実戦を知らない。 いくら基礎が出来ていようとも気迫の籠った剣と言うものを知らない以上、その基礎を活かす事などできやしない。

 故に兵達ですら怖気づくような祭殿の鍛錬に、手も足も出なくてもそれは当然と言えよう。

 

 だが、アヤツはそれでも諦めずに祭殿に向かって行く。

 何度も何度も。

 決して敵う訳ないと理解している瞳。

 だけど強くなる機会を逃すまいと必死に剣を振るう。

 自分がどうしたら剣を当てれるかと、考えを巡らせながら動き続ける。

 届く訳ない相手に届かせようと必死な瞳に、私は知らず知らずに拳を強く握りしめてしまう。

 気が付けば、心の中で北郷を応援してしまう。

 蓮華様や小蓮様、そして明命のように。

 声こそ出さなかったが、確かに私は北郷の動きを、土埃にまみれようとも、必死に剣を届かせようとする北郷の瞳に見とれてしまった。

 

 くっ、甘興覇一生の不覚。

 

 だからそれを誤魔化すかのように【当たらなければ意味がない】と北郷の心の傷に塩を塗る様な事を言ってしまった。

 なのにアヤツときたら、苦笑を浮かべ口では情けない言葉を吐いていようと、その眼はまっすぐと私の言葉を己が力にしたと言っていた。 私なりの励ましだと都合の良い勘違いをして、私に笑顔で漢を見せつける。

 

 ……まったく、何なんだこのイライラはっ!

 

 

 

△月●日

 

 蓮華様に報告をと探していると、庭の東屋で二人を見つける。

 北郷の何やら変わった遊びに蓮華様は、頬を薄っすらと赤く染めながら、孫家の姫君から一人の女性に戻られている事がすぐに分かった。

 心から警戒を解き、北郷にされるがままに肩を揉ます蓮華様。

 私にとて、其処まで警戒を解いた所を見せた事はないと言うのに、北郷にはあっさりと見せている。

 そして北郷も、そんな蓮華様に普段のヘラヘラ顔とは違う暖かな笑顔を……。

 何処までも優しい瞳を蓮華様に注ぐ。

 北郷が纏うように持っている暖かな雰囲気で、蓮華様を優しく包み込むように……。

 

 ズキッ

 

 その二人の姿に私はその場を走り去った。

 自分の中の想いに気が付いてしまったが故に……。

 私は未熟だ。 こんな事に今まで気が付かなかったなどとはっ。

 

 しばらくして無理やり心を落ち着けようと努力がようやく実った時、廊下で北郷に出会ってしまうが、私は心の中の動揺を知られまいと必死に心を殺す。

 なのに北郷は、そんな私の気など知らないと言わんばかりに、蓮華様とのひと時を誤魔化す。

 

ぎりっ

 

 その隠しきれていない態度に、人の気持ちを知らないでこの男はっ! と怒鳴りたいのを必死に我慢する。

 私が蓮華様とのひと時の事を指摘すれば、私がその場を見た事を知られてしまう。 万が一其処から黙って去った私の行動を不審に思われ、私の気持ちを知られてしまえば、私は自分が抑えられるか自信がなくなってしまう。

 

 ………蓮華様の想い人を、私のような下賤な者が横取りする事など……できやしないのだ。

 

 

 

△月◎日

 

 明るい日差しが降り注いでいると言うのに、目の前が真っ暗だ。

 孫呉の旗の下、順調良く江東と江南の地を平定するために邁進し続けているが、私の足はまるで黄泉路を歩いているかのように重い。

 原因は………あの男の事だと言う事は分かっている。

 私は忠実なる臣下である以上、蓮華様を差し置いてあの男と結ばれる事などできる訳もない。

 

 だから、せめて主君である蓮華様の想いを叶える事に、心を殺して力を尽くすと心に決めた。

 あの男が蓮華様の物となるのならば、諦めが付くと己が心に言い聞かせて、あの男が蓮華様と二人っきりになるように誘導する。

 その時溢れそうになる想いを必死に抑えていたためか、いつも以上にあの男にキツク当たる事になったが、この際かまわない。

 

 それで蓮華様と結ばれ、この気持ちに諦めが付くのならば………それで構わない。

 

 

 

●月●日

 

 もう眠れぬ夜を何日過ごしただろう。

 蓮華様とあの男が結ばれれば、諦めが付くと思っていたのに、想いは募るばかり。

 それでも、この想いは叶えてはならない物と自分に強く言い聞かせ。

 せめてアヤツに嫌われればと、今まで以上に辛く当たって見せるのだが、アヤツは逆に私を心配する始末。

 あんなに辛く当たったと言うのに、私にあそこまで気に掛けるなどと、お前はどこまでお人好しなんだっ!

 ………そして、何処まで優しいんだ。

 

 頼む、もう私に優しくしないでくれ。

 私に微笑まないでくれ。

 お前の優しさが……。

 暖かな瞳を向けられる事が……。

 この焼けるような想いをぶつけられない事実が……。

 どうしようもなく辛くて堪らないんだ。

 

 

 

●月◎日

 

 とうとう蓮華様に気が付かれてしまった。

 その事に顔が熱くなってしまったのと、蓮華様の言葉を否定するために北郷を蹴ってみせる。

 何度も、何度も、……北郷を蹴るたびに私の心がその痛みに悲鳴を上げ続ける。

 だと言うのに、蓮華様を誤魔化せなかった。

 ……いや、最初から蓮華様の目を誤魔化せる訳なかった。

 

 蓮華様に心を言い当てられ。

 北郷を感情のままに蹴りつけた事に、かつて無い程動揺した私は、間抜けにも蓮華様の言葉に墓穴を掘ってしまう。

 私の隠していた本心を知られてしまう。

 あの男に知られてしまう。

 隠し通さなければいけなかった想いを。

 叶える訳にはいかない想いを。

 

 だけど、まだ救いはある。

 今まであれだけ辛く当たってきたのだ。

 しかも、つい先程本気で蹴りつけたのだ。

 こんなガサツで、武骨な女など相手にする訳がない。

 我ながら、そんな馬鹿な希望に縋り付いた。

 

 だけど、そんな希望は……私の最後の盾は、アヤツのどこまでも真っ直ぐな想いと暖かな瞳に、あっさり砕かれてしまう。

 

 

 

●月♀日

 

 朝目が覚めると躰が怠い事に気が付く。

 それとは裏腹に、私の心は晴れやかだ。

 躰が重く、僅かに痛みが走る原因。

 北郷と結ばれた事実に、笑みが浮かんでしまう事が抑えられない。

 どうしようもなく湧き上がる喜びの感情を、私の体を温めていた布団を体いっぱい抱きしめる事で何とか声を上げずに抑えるものの、それでもどうしても喜悦の声が毀れ出てしまう。

 

「ふふっ、……ふふふふっ♪」

 

 昨夜もそうだ。 この想いを表に出さずに済んだものの、その反動なのか私の躰はアヤツと結ばれた喜びのあまり、アヤツを激しく求めてしまった。

 初めての痛みに……、躰を串刺しになるような痛みに襲われたと言うのに…、それでもそれすら結ばれた証だと私の心と感情が痛みを悦びに変えた。

 行為の後。 私は力が抜け、ふらつく体を無理やり抑え、早々に北郷の部屋を去った。

 あのままあの部屋に居たら、私は何を口走るか分からなかった。

 主君である蓮華様を差し置いて、もう一度北郷の心と躰を求めてしまいそうになる感情を必死に抑えて走り去った。

 

 アヤツは本当の私を知らない。

 まるでお伽話に出てきそうな少女のようにアヤツを想い。

 アヤツと結ばれた喜びのあまりに寝台の上で悶え転がる姿を。

 と言うか知られたら死ぬっ。

 恥ずかしさのあまり死んでしまうっ!

 布団をアヤツに見立てて、ぎゅっと抱きしめて頬を緩めている姿などを見られたら、たとえ蓮華様だとしてもその頸を落して、私も自決する事を抑えられる自身がない。

 それくらい今の私は、普段の私の行動から掛け離れている。

 アヤツを諦めずにすんだ嬉しさに。

 想い続けても良いのだと言う事に。

 そして、結ばれた嬉しさに。

 

 だいたいアヤツは、私の事を勘違いしている。

 いつでも毅然とし、感情ではなく理性でもって廻りに当たり、格好良く佇む武人だと思い込んでいる。

 だから、私はアヤツの理想の私でなくてはいけない。

 ………ああ、そうか。 だから蓮華様はあれだけ急激に成長されたんだ。

 北郷が側で見守ってくれるから、格好良くありたいと思うから。

 彼が側にいれば、危うい時は止めてくれると信じられるから。

 全力で駆ける事が出来たのか。

 

 蓮華様のように北郷に甘える姿など私には想像できない。

 そんな私の姿を想像するだけで、恥ずかしくて顔から火が出でしまう。

 だから、私も全力で駆けて行こう。

 北郷に格好の良い私を見て貰おう。

 その方が、よほど私らしいと言う者だ。

 

 

 

×月□日

 

 今日から、北郷に手合わせしてやる事になった。

 名目上は祭様がそれを口実に仕事を怠業されるため、仕事が疎かにならぬように半分は私が受け持つと言う事にしておいた。

 実際、祭様はよく仕事を怠業されるので、すんなりとの私の案は通った。

 寝る間も惜しんで祭様の身辺調査をし、怠業の実態を事細かに記した甲斐が在ったと言うものだ。

 

 そして思った通り、北郷の鍛錬の相手と言うのは心地良い。

 祭殿が仕事を怠業される気持ちも分かる。

 北郷の腕は未熟なれど、筋そのものは悪くないし覚えも良い。

 だけど、私の心を打ち振るわせるのは、北郷の熱い眼差し。

 私に剣を届かせようと必死に、私に挑んでくる。

 私の動き全てを見逃さまいと、私の全身を見つめ。

 剣筋を読もうと、私の心を必死に考える。

 

「どうした、その程度の攻撃しかできないのか? やる気が無いのならやめてもいいのだぞ」

「相変わらず思春はきついなぁ。 でも、それだけに全力でぶつかれる」

 

 この時ばかりは私と北郷の二人だけの空間。

 そう考えるだけでも心が燃え上がり、知らずと剣に力が入ってしまう。

 私をもっと見つめてくれと、目を細め睨みつけるように北郷の真剣な顔を見つめてしまう。

 攻撃をいなされ。剣の腹で撃たれ。肩で息が上がっていると言うのに、北郷は私に必死に向かってくる。

 蓮華様にも邪魔をする事のできない、私と北郷だけの至福のひと時。

 だけど何時までもこうしている訳にはいかない。

 誰にも、私がこんなバカな事を考えていると、知られる訳にはいかないからだ。

 

ドシンっ!

チャキ。

「ぐっ!」

「剣を振るうのに力の入れすぎだ。 無駄に力を入れすぎれば、相手に利用されると知れ」

 

 北郷の剣を振るう力を利用して、地面に投げつけ首元に鈴音を突きつける。

 そのために接近しすぎた北郷の身体から、彼の汗の匂いと共に彼自身の匂いが私の鼻をくすぐる。

 気付かれぬよう息を整える振りをして、胸いっぱいに彼の匂いを吸い込む。

 ああ……これだけで心も躰も蕩けそうだ。

 

 

 

×月◎日

 

 明命の様子がおかしいのは知っていた。 ……その理由にもな。

 可愛い妹分の抱える悩みは、私には良く分かる。

 それはかつての私が抱えていた悩み。

 心を焦がした想い。

 だから、背中を押してやる。

 もともと北郷はそういう約束で孫呉に居るのだし、蓮華様もその事は分かっている。

 ……そして私も頭では納得していた。

 

 潜り込んだ屋根裏から行為の後の明命が、完全に躰が弛緩しながらも彼に甘えていた。

 幸せそうに彼の胸に頭を摺り寄せている。……まるで甘える猫のように。

 そんな明命の黒髪を彼は優しく、愛しげに撫で続ける。

 私ではそんな真似は恥ずかしくてできない事を、明命は自然とやって見せ、彼の笑顔を手に入れる。

 

 二人の寝息を確かめるようにその場を後にした私は、月夜の下剣を振るう。

 何もない空間に相手を重ね、其処に剣を振るい続ける。

 仕方ない事だと言う事は分かっている。

 ……だが、感情の全てが納得したわけではない。

 

「ふふふっ……今度の鍛錬。 少しくらい厳しくても構わぬかな?」

 

 

 

■月◇日

 

 仮初の同盟が組まれ、二国が平和になったと思ったが、野盗どもは一向に減らぬ。

 蓮華様自ら出陣されるのならば、それについて行くまでの事。

 彼の視線と言葉に、己が心を奮い立たせ奮起する蓮華様。

 それは良い。 必要な事だし、その事で蓮華様が王として成長して行くのならば否はありません。

 あるとしたら。

 

「蓮華、何処までもついて行くよ」

 

ぎゅう~っ!

 

「い゛っ!」

 

 私に足を踏みつけられた痛みに、小さな悲鳴を上げる彼。

 まったくこいつときたら、あれだけ肌を重ねたと言うのに、ちっとも私の事を理解してくれない。

 蓮華様を見るのは構わないが、少しは私を見てほしい。

 そう目を閉じて怒りを飲み込んでいた所に、彼が私に優しく微笑んでいる事が気配で分かる。

 

 ……まったく、ずるい奴だ。

 私は何時もこれで誤魔化される。

 損な性分だと思いつつも、それだけ彼が私の事を信用していると考えると、それも悪くないと思えてしまうから、本当に性質が悪い。

 

「貴様は民の大事だと言うのにへらへらと笑っている場合か。 行くぞ北郷っ」

「ああ」

 

 つい思っている事とは逆な言動をしてしまう。

 女らしさとは無縁の私だが、それでもこれだけははっきり言える。

 彼を好きになってよかったと。

 今がとても幸せだと。

 そして何時か彼にはっきりと言葉で伝えたい。

 

 

 

 あなたを愛していると。

 

 

 

 それが今の私の夢。

 

 

 

 

 


 
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