No.205590

真・恋姫†無双‐天遣伝‐ IF現代編(2)

今回、ラブラブ度は薄いかもしれません。

ぬぅ、失速してきた感がアリアリですね。

もっと精進せねば・・・・・・

2011-03-07 23:28:42 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:9846   閲覧ユーザー数:7549

 

 

・Caution!!・

 

この作品は、真・恋姫†無双の二次創作小説です。

 

オリジナルキャラにオリジナル設定が大量に出てくる上、ネタやパロディも多分に含む予定です。

 

また、投稿者本人が余り恋姫をやりこんでいない事もあり、原作崩壊や、キャラ崩壊を引き起こしている可能性があります。

 

ですので、そういった事が許容できない方々は、大変申し訳ございませんが、ブラウザのバックボタンを押して戻って下さい。

 

それでは、初めます。

 

 

 

 

 

「あっ、ヤバイヤバイ、死ぬー! ・・・・・・アッー! 俺のネンドールがー!!」

 

「うわぁ・・・相変わらず鬼の様な育て方してんな、風。

ヘルガーのかみくだく一撃で倒すとか」

 

「むふー、当然ですよ。

戦の常道ですからー」

 

「そして、相変わらず俺の膝を占拠するんだな、お前」

 

「何時もの事です。

むっ、これは勝てません。

じゃ、どくどくして交替ですね」

 

「んげー!? オノノクスを先制できるんかいな!」

 

「ふふん、育て方の差です」

 

「くっ、諦めへんで! 見さらせ、これが俺のオノノクスのげきりんじゃー!」

 

「ばくれつパーンチ」

 

「きゃー! 耐えおったー!? しかも一撃!!

もしかしなくても、そのカイリキーの持ち物、きあいのハチマキやなっ!?」

 

「何を今更。 で、どうします?

こっちにはまだ、ゴンさん(フライゴン)が控えてますよ?」

 

「か、勝てん・・・負けた」

 

「いぇー」

 

 

一刀の膝の上でゲーム機片手にガッツポーズする風。

対戦相手の及川は項垂れて負けを認めた。

見物に回っていた一刀は、苦笑を漏らすしかなかった。

 

 

真・恋姫†無双

―天遣伝―

IF現代編第二話「休日/モテると言っても度が過ぎればうんざりする」

 

 

――― 一刀が恋姫達を現代へと引き摺り込んでから約3カ月のある土曜日。

 

聖フランチェスカ学園は、補習以外は基本休み。

そして風は、昨晩から一刀の部屋に泊っていた。

いやらしい事は何もしてはいない。

唯、ゲームで遊んでいただけだ。

因みに、及川は一刀に朝飯をたかりに来ていたついでに、風とゲームを始めただけである。

そして今は。

 

 

「・・・かずピー、相変わらず鬼みたいな攻めやな」

 

「いや、余裕ないし。

攻めなかったら即オワタだからな」

 

「確かに、夜中のお兄さんも風の事を鬼の様に責めるのですよー」

 

「くぁっ! リア充か、リア充なんかこの野郎! もげろや!」

 

「お兄さんがもげたら、とっても沢山の人を敵に回しますよ?」

 

「ちくしょう! 世界は不公平に満ちとるで!!」

 

「うし、クリアー」

 

「そしてかずピーは全くこっち見とらん!?」

 

 

ゲーム画面がリザルトになり、真っ赤なSの文字がズラリと並んだ。

それを見て、一刀は漸く身体を伸ばす。

 

 

「新記録だな・・・これでも、ランキング十位以内にさえ入れちゃいないんだけど」

 

「いやいやいや、かずピー?

このゲームやり始めてからまだ一週間程度しか経っとらんのに、元の持ち主なアキちゃんよりも数十倍巧いやんか。

アキちゃん落ちこんどったで? 「俺の200時間は何だったんだー」って」

 

「俺だって、20時間はやってるぜ?」

 

「どう考えても比率おかしいやん!?」

 

「お兄さんは前々から、物事に対して慣れる力は人より数倍優れていますからー」

 

 

風が何故か胸を張って言う。

及川はそれを聞いても納得はいかないようだが。

 

 

「何やそれ!? あれか!?

『何事にも慣れる程度の能力』ってな感じの超能力でも持ってるんか!?

ぐぎぎ、羨ましい。

俺等凡人に寄越せや!」

 

「いや、無理だし、意味が分からないって!?」

 

「問答無用やー!!」

 

「あいだだだだだだだだだ!?」

 

 

一刀に絡み付いて、ヘッドロックを仕掛ける及川。

かけられた一刀はと言うと、成されるがまま。

風は首を傾げる。

一刀程の力量があれば、即外せると分かっているからだ。

 

実際、一刀はすぐ外せるのだが、わざとかかっている。

友人との触れ合いは、女性陣に囲まれる時に感じるストレスを和らげてくれるので、一刀も従っているだけに過ぎない。

 

そうして、午前中の時間は過ぎて行く。

 

 

 

 

 

時は午後に突入。

一刀は、及川と別れて風と共に街に出ていた。

但し、二人きりでは無い。

 

 

「・・・なぁ? もう離してくれても」

 

「い~やっ♪」

 

「む~~~・・・」

 

 

左腕に縋り付いている雪蓮の存在があった。

風は無論不機嫌である。

 

周りの男共からは、「ああ何時もの事だな」と「羨ましいなコンチキショウ」と言った視線が主に送られてきていた。

 

先程昼食をついさっき起きたばかりだと言う雪蓮にたかられ、そのままなし崩し的に街に連れ出された形である。

 

 

「お兄さん、こっちとも手を繋ぐです」

 

「あ、ああ、分かった」

 

「・・・・・・んふー」

 

 

風に右手を差し出し、その手を繋ぐ。

何時も通りに何処からともなくチュッ〇チャッ〇スを取り出して口に含んだ。

左腕を雪蓮、右手を風に支配された一刀は、もう二人の成すがままにされるしかなかった。

 

 

「あ、そうだ、今度学園で臨海学校があるんでしょ?」

 

「ありますが、雪蓮さんは関係ないでしょう。

あくまで『冥琳先生』の同居人なだけなんですから」

 

「ふふふ・・・分かっちゃいないわね。

私が個人的に海に行って、その結果《偶然》貴方達と同じ所、同じ時分に行くだけかもよ?」

 

「くっ、屁理屈を」

 

 

一刀を挟んで火花を散らす両雄。

挟まれた一刀は正直生きた心地がしない。

 

 

「だから一刀、水着を選ぶの手伝って♪」

 

「お兄さん・・・?」

 

 

雪蓮からは至極楽しそうに、それでいて風からは凄まじい圧力で言われ、一刀の胃が悲鳴を上げた。

だが、ここは70近いハーレムを持つ天の種馬としてあった一刀。

何とか危険な手を選ばずに、この場を切り抜ける。

 

 

「分かった、但し一緒に風も付いて来る事。

俺よりも風もいた方が、的確なアドバイスが出来るし。

それに、風も新しい水着買いたいだろ?」

 

「お兄さんは相変わらずずるいのです」

 

「巧いわね・・・」

 

 

顔を赤くしてそっぽを向く風に、一刀の横顔を眺めながら感心した様に頷く雪蓮。

一方の一刀はと言えば、何とかなった事に安堵の溜息を吐いていた。

そして、その三人の更に後方。

こそこそと後を付ける三人がいた。

雪蓮と一刀は気付いていたが、風は気付いていない様子。

武官ではなかった風では無理もないが。

 

で、こちらが後を付ける三人。

 

 

「気付かれているだろうに、何故未だ隠れる必要が?」

 

「しっ! 華蘭様はこう言う時のロマンが分かっちゃいないの!」

 

「えぇ、全くね。

例え気付かれていなかろうが、隠れて後を追う。

そして、わざとらしいタイミングで乱入するのよ」

 

「お前等・・・ドラマの見過ぎだろう、それは。

それに華琳、お前も下着を一刀に選んで貰った身のくせに、何故水着如きで躊躇うんだ?」

 

「ぐっ・・・・・・」

 

「ふっふ~ん、華蘭様。

この世にはとても便利な言葉があるの」

 

「『それはそれ、これはこれ』か?」

 

「む、当たりなの。

と、それは置いておいて。

水着は隊長だけじゃなく、他人にも見られる物。

ここじゃあ、誰もいない水場なんて稀だし」

 

「成程、何処の誰に見せても恥ずかしくない物を望んでいる訳か」

 

「・・・悪いかしら?」

 

「いいや、全く。

どちらかと言うなら安心した。

華織も同意してくれると思うぞ」

 

「・・・華織は関係ないでしょう」

 

「と言うか、今にも隊長達を見失いそうなの。

さっさと追いかけるの!」

 

 

沙和の言葉を聞き、三人は相変わらず気配を殺しながら追いかける。

唯一不得手な沙和は注目されていたが、華琳と華蘭はそうでも無かったのだが。

 

 

 

 

 

―――某ファッションショップ。

 

 

「着いたわ」

 

「凄いな、俺場違いじゃないか?」

 

「そんな事無いのですよ。

ほらほら、ちゃんと男物も」

 

 

風がそう言って指差した方向には、確かに男物の海パンの類も。

だが、あくまでも申し訳程度。

圧倒的に女物の方が多かった。

 

 

「じゃ、ちょっと試着して来るわ」

 

「風も、ですよ」

 

「ああ、行ってらっしゃい」

 

 

漸く二人から解放され、ずっと縋り付かれていた為に重くなっていた左肩をグルグル回して力を抜く。

背負っていた暁入りの袋も壁に立てかけた。

 

 

「いやぁ、お客さんもてますね~。

で、どっちが本命で?」

 

「・・・・・・ふざけるのも大概にしろよ?」

 

「むぅ、ノリが悪いじゃないか。

そこはもう少し捻った言葉が欲しかった」

 

 

そちらを向けば、そこにいたのは休。

そして蒲公英。

 

 

「お前等、バイトしているとは聞いていたが、ここだったのか」

 

「うん、そうだよ?

と言うか、雪蓮さんに此処の事教えたの私達だし」

 

「あーそーかい」

 

 

げんなりとして言う。

 

 

「いやしかし、此処は眼福の嵐だ。

まあ、時たま見るのも憚れる様な奴が来る事もあるが」

 

「じゃあ私はどうかしら?」

 

「「げぇっ! 孟徳!?」」

 

「・・・貴方達が私をどう思っているのか、改めてよーく分かったわ」

 

 

店へと入って来た華琳に対し、半ばテンプレ染みた言葉を言う休と蒲公英。

一刀はと言えば、余り問題なし。

隠れていたのが三人だとは分かっていたが、それが華琳だとは思わなかったので少し驚いた、程度である。

 

 

「一刀ー、ちょっと来てー!」

 

「お、呼ばれてるぞ、一殿」

 

「ああ、分かった」

 

 

雪蓮に呼ばれ、其方に向かう。

で、そこには試着コーナーのカーテン陰から手だけで手招きする雪蓮が。

何やら嫌な予感もするが、取り敢えず近付いた。

そして、カーテンの内側に引き摺り込まれる。

 

 

「やっぱりこうなるか」

 

「そう思っていても来てくれる一刀だから、好きよ」

 

「どうもありがとう」

 

 

試着室の中で、壁に押し付けられる。

雪蓮は既にスイッチが入っている様だ。

その姿は、深紅のビキニ。

とても良く似合っているので、素直に褒める事とした。

 

 

「凄い似合ってる」

 

「そう、ありがと」

 

 

話題逸らしに失敗した感がありありである。

雪蓮はそのまま首筋に顔を埋め、全身を一刀に押し付けて迫る。

このままでは否応なしに元気になりかねないと冷汗が止まらない。

が、今この場には二人きりでは無いのだ。

故に。

 

 

「そこまで。

気持ちは分かるが、夜まで待つ事だ」

 

「ちぃっ! 後少しだったのに!」

 

「・・・・・・助かった」

 

 

華蘭の乱入で、事無きを得た。

 

 

 

 

 

「ではこれはどうかしら?」

 

「んー、もう少し地味な色合いがいいかな・・・?

でもそれもありと言っちゃありなの・・・籠に残しておこっと」

 

「長いな・・・・・・」

 

「女の買い物とはそういうものだ。

一殿、まだまだ甘いな」

 

 

華蘭に救われた後、華琳とそのアドバイザー沙和による水着ファッションショーが行われ始めていた。

先程は蒼穹の如き青いビキニ。

で、今度は白のワンピースを持って来る沙和。

 

 

「しかし、大所帯だな・・・」

 

「そしてその全員が、一殿の嫁と来た。

これは凄まじい」

 

「一つ聞きたいんだが、『俺の嫁』の中にお前を含んじゃいないよな・・・・・・?」

 

「クククククククク・・・・・・」

 

「否定しろぉ!!」

 

 

半泣き声になってしまった。

このバイは、冗談でも本音に聞こえるから困るのだ。

今まで多くの人間と付き合って来たものの、このバイだけは心が読めない。

 

 

「むむむ・・・全部が全部似合ってるの」

 

「ではどうするのかしら?」

 

「全部買って行くか?」

 

「それでは予算が足りなくなる、華織に大目玉を食らいかねんぞ」

 

「そうね・・・」

 

「俺は出さないからな?」

 

 

途中金払いの時に此方を見られ、一刀は反射的に答えた。

華琳はそれを受け、幾つか選んだ。

 

 

「これとこれにするわ」

 

「毎度」

 

 

最後に薄く笑って、レジを打つ休。

背筋に怖気に近しい何かが奔った一刀だった。

そこで気付いた。

 

 

「そう言えば、華蘭は買ってなくないか?」

 

「私は良い、学校指定の物で充分だ」

 

「だけど、なぁ」

 

「良いんだ、それに・・・」

 

「それに?」

 

「一刀以外の男の眼に、私の肌は出来る限り晒したくない・・・・・・」

 

 

顔を赤くしながら言われた言葉に、脳髄を揺さぶられる。

どうして普段は凛々しいくせして、こう言う時にこうも可愛くなられるのか。

風からジト目で見られていなければ、頭を撫でていただろう。

 

 

「よし、帰るか」

 

「待つの!」

 

「沙和?」

 

 

帰ろうとした一刀の服を、沙和が強く掴んで引き止めた。

その目は異常に真剣な光を湛えていた。

半分狂気に近い物があったのは、勘違いだと思いたい。

 

 

「まだ沙和の水着を買うのが終わってない!

終わるまで隊長に帰る事は許さないの!!」

 

「おいおい・・・」

 

 

それでも、沙和は至って本気。

一刀を帰す気は無さ気であった。

 

 

「それじゃ私も残るわ」

 

「華琳もか」

 

「ふむ、となると私もだな」

 

「華蘭・・・」

 

「風は帰るのですよ」

 

「あ、私もー」

 

「風! 雪蓮! 空気読め!!」

 

「「読んだから帰るの(です)よー」」

 

「逃げたね」

 

「逃げたな。

あ、因みに俺達はまだ勤務時間内だ」

 

 

結局、沙和の納得する水着を買うまで更に二時間近くかかった。

御無礼。

 

 

 

 

 

「疲れた――」

 

「あら、この程度でへばるなんて、随分と鈍っているんじゃない?」

 

「肉体的な疲れと、精神的な疲れは全くの別物だって・・・」

 

 

自室のベッドに半ばダイブの勢いで倒れ込んで言った言葉に、華琳が反論。

それに力あるツッコミ一つ返す気力も一刀には無い。

 

 

「それは分かる、私も今回はそれなりに、な」

 

「・・・正直、私もね」

 

 

華蘭が自身の心情を吐露したのを切欠に、華琳も自身の心情を語った。

その表情は確かに、疲労を抱いている人間のそれだ。

 

首を回して目覚ましを見れば、既に短針が7を回っている。

そろそろ飯の支度をせねば。

そう思い、一刀は疲労を感じながらも身体を起こそうとして―

 

 

「駄目よ、貴方は休んでなさい」

 

 

華琳によってやんわりと止められる。

そのままベッドに留められ、華蘭がその傍に座った。

 

 

「華蘭、ちゃんと見張ってなさい。

目を離したら、また起きようとする筈だから」

 

「任せろ」

 

「いや、夕飯を」

 

「それなら私が作るわ。

異論は受け付けないわよ?」

 

 

ニヤリと笑いながら、厨房へと進む。

一刀はそれを見ながら華蘭に語りかけた。

 

 

「すまん、迷惑をかける」

 

「気にするな、寧ろもっと迷惑をかけてくれ。

私達は皆一刀の嫁を自負しているのだ、頼ってくれた方が嬉しい」

 

「・・・思春と桂花辺りは断固否定しそうだけどな」

 

「桂花はともかく、思春は今の所そうでもあるまい」

 

「どうだろうな」

 

 

フッと鼻頭で笑いを零しながら、一刀の手をちゃっかりと握る華蘭。

その表情に、ややながら色が混じった。

 

 

「ふふっ、身体の調子は万端か?」

 

「ヤる気満々か、お前」

 

「そうだ、実の所今日は華琳もその気で“ビュオッ!”

何だ危ないじゃないか、いきなり包丁を投げるんじゃない」

 

「よ、余計な事を言った罰よ・・・・・・!」

 

 

顔を真っ赤にしながら、投擲した姿のまま此方を睨み付ける華琳。

自ら明かさず、華蘭によって明かされたのが悔しいついでに恥ずかしいのだろう。

一刀には何故かは分からないが、華琳はそう言った事を他人から言われるのを無性に恥ずかしがるのである。

そんな華琳だからこそ、愛おしいとも感じるのだが。

因みに華琳が投げた包丁だが、華蘭の左手の人差し指と中指の二本で摘み取られていた。

 

 

「返すぞ」

 

「・・・ふん」

 

 

華蘭から投げ返された包丁を危な気なく受け取り、華琳は再び調理に戻る。

その頬はやはり赤いままであった。

 

 

「肝が冷えるなぁ」

 

「大丈夫、華琳だって分かっているさ。

戦の無い現世において、命の奪い合い等必要が無い事位」

 

 

今も一刀の右手に自分の右手を合わせたまま、言葉を交わし合う。

その温かさを身に染み込ませながら、一刀は戦の無い今に想いを馳せる。

 

確かに現代日本では、命の奪い合い等必要はない。

だが、危険が無くなった訳でもない。

それに文官であった者達はまだしも、戦の中に生きる道を見付けて生きて来た武官であった者達は、大丈夫なのだろうか?

今の様な世の中に不安を感じちゃいないだろうか?

それが不安でならない。

 

 

「大丈夫だよ」

 

「華蘭?」

 

「お前がいるこの世を壊したくなんかない。

誰もかれもがそれを望んでいる。

戦しか知らない私達に愛を教えてくれた。

もっと自信を持っていいんだ」

 

 

そう言われながら微笑まれる。

一刀は自分の頬が熱を持つのを感じた。

 

華琳の手料理が完成するまで、華蘭はずっと手を握り締め続けていた。

まるで、「自分はここに居続ける」と自己主張する様に。

 

 

 

 

 

―――翌朝、日曜日。

 

一刀はベッドから身を起こした。

その姿は無論、素っ裸である。

そして一刀以外にベッドで眠っている少女二人も当然。

 

多少寝不足な目を擦りながら、着替えを着込む。

ついでに顔を洗い、更なる目覚まし用にコーヒーを準備。

それから厨房へと進んだ。

冷蔵庫を開放して中身を確認するが、全く無い。

溜息と呟き一つ。

 

 

「そういや、昨日の晩飯の材料全部こっから出したんだった・・・」

 

 

だから、こうなるのも至極当然だった。

 

こうなると、コンビニか何処かで材料かもしくは既に出来上がっている物を買うかしなければならない。

しかし。

 

 

「華蘭だったら気にしないだろうけど、華琳は激怒モンだしなぁ・・・・・・ハァ」

 

 

華琳の上質な舌は、食品添加物の入った物を殆ど認めてくれない。

そんな技術等無かったあの大陸で、美食で育った華琳らしいと言えばらしいのだが。

褒めていたのが、無添加調味料とミネラルウォーター程度である事も、実にらしい。

こうなると、頭を抱えてしまう。

 

 

「しょうがないな、頼み込みに行くか」

 

 

向かう先は悪友が一、早坂章仁の部屋。

妹が時々世話焼きに入る為か、冷蔵庫内にはそれなりの物が入っている事を確認済みだ。

 

同じ寮に住んでいるので、少し歩くだけでいい。

表札に《早坂》と出ている部屋のインターホンを一度押す。

まだ寝ていたのか、ガタガタと慌ただしく部屋の主が動いた気配がした。

 

 

「誰だ!? 日曜の朝っぱらから! って、お前か」

 

「あぁ、悪いが食料分けてくれないか?

昨晩使い過ぎて、今朝の分が無いんだ」

 

「別にいいぜ、その代わり貸し一つだからな」

 

「それ位ならお安い御用だ」

 

 

それを聞いてから、章仁は自分の部屋の扉を開けて一刀を招き入れる。

一刀も勝手知ったる他者の部屋。

ずかずかと上がる。

真っ直ぐ厨房に向かい、目当ての冷蔵庫を開けた。

 

 

「良かった、やっぱり使われてなかったか」

 

「いやー、羽未には悪いんだがな。

どうも朝早く自分の飯の支度をするってのが」

 

「多分、あの子はそんな気でこの中身を揃えたんじゃないだろうけどな」

 

「ん、何か言ったか?」

 

「何でもない、これだけあれば十分だ」

 

 

ボソリと小さく呟いた言葉に勘付いた様だが、一刀はさっさと食材を自前の買い物袋に詰めてから立ち上がった。

そのまま玄関まで。

 

 

「ありがとな、急な頼み事だったのに」

 

「いいって事よ、その代わりに貸しを一つ作れたからな」

 

 

その言葉に苦笑する。

貸し借りだの言ってはいる。

一刀はそんな言葉は必要無く、何時でも頼って貰えればいいと思っているのだが、章仁はわざわざ貸し借りという言葉を使う事で、こちらに返しては対等であろうとしてくれている。

それが、堪らなく嬉しい。

 

 

「ははっ」

 

「? どうしたよ」

 

「いや、お前が友人で本当に良かった」

 

「うわぁ、止めろよ!

俺は男同士の『ウホッ』なんかに興味はねぇんだぞ!!」

 

「んな興味、俺にもねぇよ!!」

 

 

自分の身体を抱いて後ずさった章仁にすかさずツッコミ。

しばし間が空いてから、二人揃って声を出して笑った。

そのまま別れた。

 

自分の部屋に戻ってみると、華蘭が既に起きて一刀を出迎えた。

 

 

「お帰り、食事にするか? 風呂にするか? それとも・・・・・・」

 

「・・・食事は今から作るし、風呂も沸かしてないんだが?」

 

「なら、ヤる事は一つだな」

 

「いや、ヤらないからな?」

 

「む~~~」

 

 

ぷくーっと頬を膨らませる。

普段の凛々しい様とのギャップが可愛いものだ。

 

華蘭の頭をガシガシと少し乱暴に撫でてから、一刀は厨房へと向かった。

枕を抱えながら、此方を羨ましそうに見ていた華琳はわざと無視した上で。

 

―――その所為で、後日元魏勢の内11名を伴って夜襲を掛けられ、その翌日登校が出来なくなってしまったのだが。

それはまた、別のお話。

 

 

 

 

IF現代編第二話:了

 

 

 

 

 

後書きの様なもの

 

ちょりっす!

宣言通り、IF現代編です。

但し、内容は短め。

密度も余り濃くはありません。

それで、IF現代編でありますが、一応【天遣伝版萌将伝の世界】という感じの設定です。

 

コメ返し

 

 

・KU-様:そう言って下さるのが、本当にありがたいです! 頑張ります!

 

・はりまえ様:そうですとも! これこそが天遣伝であります!

 

・2828様:無知の恥という言葉もありますが・・・・・・どうなのでしょう?

 

・西湘カモメ様:ある意味菖蒲に堕とされましたねーw

 

・ロンロン様:そこんとこも注目お願いします!

 

・タケダム様:ほんっとーに、応援ありがとうございます!

 

・流浪人様:キャーリューサーン!! 個人的に超好きです。

 

・悠なるかな様:西涼がどう動くかは、請う次回!!

 

・村主7様:えぇそうなんですよ、華琳の所はえらいチートに・・・故に波乱も必至です。

 

・ヒトヤ犬様:えーっと、史実の曹操も似た様なモンな気がしますが・・・?

 

・O-kawa様:はっはっは、まさかー、当然そうに決まってるでしょう!?(キリッ 美羽はまだ発展途上だったり。

 

・nameneko様:御期待に沿える様頑張ります!

 

・mighty様:稟の基本方針は、クーデレのふりしたデレデレ。 恋は、隠さないデレデレと決めてますので。 そう言ってくれるとは、この方針は正解だったと思わざるを得ない・・・! 華蘭の活躍に請うご期待!

 

・poyy様:連携云々を主に見ると勝ち目はありませんが、此処の力を主に見るとそうでもなかったりするんですよ、これが。

 

・F97様:そう言ってくれると、もっと気合を入れざるを得ない!

 

・砂のお城様: 実に素晴らしきかな、『熱情の律動』! 軟国志は我が聖書(バイブル)!

 

 

それではー。

今度は本編で会いましょう!

 

 

 


 
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