No.203490

恋姫無双~バレンタインパニック~前日、謎解き編

くらのさん

はい。バレンタインシリーズ三作品目。是非、楽しんでいってください。そしてもしよろしければコメントも。

2011-02-24 13:41:34 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:4161   閲覧ユーザー数:3417

 書庫から出て、中庭を歩いていると、見慣れた袴を来た女性が寝転んでいました。

「霞? どうしたんだ、こんなところで?」

 神速の張遼と名高い、霞でした。

「ん、一刀かぁ。ん~、考えこと」

「霞が?」

「なんや、うちが考えとったらあかんの?」

 少し怒ったように言う霞に一刀は慌てて首を振ります。

「い、いや。そんなことないって」

「冗談や、冗談。それにしても明日何にしよう?」

「明日? バレンタインか?」

「そうや。一刀、何が欲しい?」

「いや、俺は何でも。ってくれるのか!?」

「当たり前やん。うちがこない悩む相手なんか一刀しかおらへんよ」

かすかに頬を染めて言う霞に一刀の顔が赤く染まります。

「そう言われると何だか恥ずかしいな」

「と、とにかくや! 何がいい? うちに出来ることやったら何でもやったるで」

 先ほど自分が言った言葉が恥ずかしくなったのでしょう、誤魔化すように慌てて聞きます。

「そうだな……」

 視線を宙に彷徨わせ、考えていると一刀の中にいたずら心が芽生えました。

「ひとつだけ欲しいのがあったな」

「な、なんや!?」

 大方「何でもいいよ」と言うと思っていた霞は驚きながらも尋ねます。すると、そっと霞の側により、耳元で囁きました。

「子ども」

「え?」

「だから、霞との子ども」

 一瞬、一刀が何を言ってるのか分からない霞でございましたが、理解した途端、顔どころか耳も首も真っ赤に染めました。

 その姿をみて、一刀はいたずらが成功した手ごたえを感じました。笑みを浮かべ、冗談であることを伝えようと口を開きました。

「なーんて――」

「え、ええよ」

 かすかな声。いつもの元気な声ではなく、小鳥が鳴くような小さな声が一刀の耳に届きました。

「な、って、霞?」

「や、やからバレンタインの贈り物。子どもで」

 以前、顔を真っ赤にしたままで一刀をじっと見つめてくる霞です。瞳も潤んでおり、一刀の理性を削って行きます。

「いや、でも」

 いないだろ。と口に出そうとしますが、霞は一刀に先を言わせまいと続けます。

「も、もちろん。まだおらんけど。今日から励めば。ち、近いうちに! っていうか今から!」

「お、落ち着け! 霞! 冗談! 冗談だから!」

 帯を外そうとする彼女を懸命に止める一刀です。このままでは一刀の理性がなくなるの必至でございます。

 必死で止めたおかげでどうにか、霞の暴走を止めることに成功した一刀でした。

「なんや、冗談なら冗談って早くいわなあかんやん!?」

 未だに赤い顔をしたまま霞は笑う。照れ笑いなのはご愛嬌でしょう。

「い、言ったけど聞いてくれなかったんだろ?」

「し、仕方ないやん。あんなこと突然言われたら」

 先ほど、一刀に言われたことを思い出したのか、顔が再び赤くなってしまいます。それを見た一刀ももう一度、顔が赤くなってしまいます。

「じゃ、じゃあ。俺、仕事があるから」

「あ、そ、そうやな」

 中庭から出ていこうと歩いていると、後ろから霞の言葉が届きました。

「うちは何でもええから」

(何でもいい? 何の事だ?)

  疑問に思いながらもその場を去る一刀でした。

 

 昼食の際、季衣と流琉に話を聞こうとしましたが、突如、二人の行動が怪しくなったため、聞くことはかないませんでした。

(何かおかしい……)

 そう思いはしますが、会う人会う人がそのことを尋ねると言動がおかしくなるために聞けません。

 凪達に訪ねてみても凪は顔を真っ赤に染め、真桜と沙和は欲しいものを言ってくるだけでした。

 

 警邏の際はいつも一刀の隣には凪達の誰かがいるはずなのですが、今日に限ってバラバラです。

「やっぱり、明日のバレンタインが関係してるのか?」

 だったら嬉しいな。と一刀はニヤニヤと口元がほころんでしまします。

 皆が一生懸命、明日自分に何かプレゼントをしてくれようとしているのだと思えば、感無量でしょう。

「隊長、どうしたんですか?」

「いや、明日のことを考えてたんだよ」

「ああ、隊長は特に大変そうですね。俺は奥さん一人に贈るだけで済みますから、楽なもんです。その点、隊長は曹操様達に贈らなければならないのですから」

 その時、一刀は嫌な気持ちにとらわれました。そう、何か重大なミスをしたときのような。

 気付きたくない。そう思いながらも、勇気を持って尋ねます。

「な、なあ。もしかして、明日って女性だけじゃなく、男性も贈るのか?」

 違う。そう言ってくれ。そう心の中で念じますが、現実は非常です。

「当たり前ですよ。だって『好きな人が居るものは手紙、もしくは花を贈るように』ですから。別に女性だとは限定していませんよ?」

 その時、ようやく一刀は皆の様子がおかしいことに気が付きました。

一刀の予想は半分当たり、半分外れでした。

確かに、一刀のことを考えて贈り物は用意したのでしょう。だけど、それと同時に皆、自分から何が貰えるのか、楽しみにしていたのでしょう。

 一刀の顔色は青色を通り越して白に近付きつつあります。

 流石に組んでいた隊員達も一刀の様子がおかしなことに気付きます。

「どうしました?」

「……してない」

「はい?」

「用意してないんだ。贈り物……」

 それを聞いた途端、隊員達の顔色が変わります。

「よ、用意してないって、それはまずいですよ! どしたんですか?」

「い、いや。元々、この『バレンタイン』ってのは天の国の行事なんだけど、これって女性が男性に贈るものだから、勘違いしてた」

「ど、どうするんですか!? 副隊長達なんか明日を楽しみにしすぎて眠れない。みたいなことを言ってるんですよ?」

「い、今から用意するしかない……」

「ま、間に合いますか?」

「間に合う、間に合わないじゃない。間に合わせるんだ! 悪いけど……」

 瞳に炎を宿し、断言します。そして、隊員達に申し訳なさそうに言葉をつなごうとすると、隊員の一人が頷きました。

「分かってます。ここから先は我々に任せてください。隊長は贈り物の準備に」

「ああ! 悪い! 今度何か奢る!」

 それだけ言うと、一刀は走りだしました。

 後に残されたのは警備隊だけです。

「なぁ、間に合うかな?」

 警備隊の一人の呟きに一刀と話していた隊員が答えます。

「さぁ。でも、もし、間に合わなかったら――」

「間に合わなかったら?」

「これが隊長の見納めだろうな」

「……なるほど」

 隊員達は小さくなっていく自分達の隊長の後姿をいつまでもいつまでも見送りました。いつまでもいつまでも。その後ろ姿が見えなくなるまで見送りました。

 

はい。遅筆で有名(自称)くらのです。いかがでしたでしょうか。ついに、一刀のバレンタインパニックが始まります。多分……。

この展開に一体どれほどの方が気が付いたでしょうか!? え? こんなの見たくない? 魏の武将が渡す時のあうあうぶりが観たいですと!? 

 なんと贅沢な。そんなの私だって見たいです。

多分、それはこの話が終わった後に書く予定(嘘……になるかも?)

「ハッピーバースデー!? 一刀の誕生日はやっぱりドタバタ!?」辺りで起こします。冗談ですけど。

ちなみに、決して季衣達が嫌いなわけじゃないんです。凪達が嫌いなわけじゃないんです! ただ、全員書くと、ただでさえぐだぐだな作品がぐにゃぐにゃに進化しそうでして。

泣く泣く、カットしたのです。

 さてさて、そろそろ一刀の本気が見れる予定です。それでは、次の作品で。

See you next again!

 


 
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