No.202806

とある一刀の超精子砲

たまには息抜きが必要と思うんだ。

2011-02-20 23:16:24 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:8084   閲覧ユーザー数:6592

 

「くそ! 何だアレ! ついてねえ」

 

 

街の裏路地を男が何かに追われるように走っていた。

 

 

しかし、次の瞬間男は地面に平伏していた。

 

 

「風紀委員(ジャッジメント)よ! キャー! 男なんて汚らわしい! 私に触れないで!」

「イデデデデ! ど、どっちが!」

 

 

いきなり現れた少女に抑えつけられた男。

 

 

少女は自分で触れておきながら罵詈雑言を男に浴びせる。

 

 

そして男はあえなく手錠をされ、捕まった。

 

 

少女は止まることなくさらに路地の奥に足を進める。

 

 

奥に男の仲間が逃げたのである。

 

 

「風紀委員よ。そこのアンタ大丈夫なのー? 今助けに――」

 

 

一般人らしき男性が立っていたので声をかける少女だが、途中で見覚えのある人物だということに気付いた。

 

 

「ん? あっ、桂花!」

 

 

その男性の周りには全身が白い液にまみれた男たちが倒れていた。

 

 

「……通報にあった喧嘩に巻き込まれた男性とはお兄様のことだったの……」

 

 

少女――桂花は苦笑いでその光景を見つめるのだった。

 

 

 

 

『学園都市』

 

 

東京都西部を切り拓いて作られたこの都市では"超能力開発"が学校のカリキュラムに組み込まれており、二三〇万人に人口の実に八割を占める学生達が日々『頭の開発』に取り組んでいる――

 

 

 

 

 

 

「まったく、学園都市の治安維持は風紀委員(ジャッジメント)と警備員(アンチスキル)の管轄なのよ」

「って言ってもさ、桂花達が来る前に終わっちゃうんだから仕方ないだろ。今のところ全戦全勝!」

 

 

一刀は自慢げに桂花に語るが、何かを思い出してイラついた表情を浮かべる。

 

 

「……あの馬鹿を除けばな」

 

 

一刀が今まで戦った中で唯一勝てなかった相手である。

 

 

「まあ治安維持活動は私達風紀委員に任せてよね」

「でも自分でやった方が早いし」

「学園都市に七人しかいない超能力者(レベル5)といっても一般人には変わりは――」

「おっ、このクレープ美味そう」

 

 

一刀は桂花の話を無視してクレープ屋に目がいく。

 

 

「俺はこれ。桂花は?」

「わ、私は警邏中だから」

「ああ、ダイエット?」

「ッ!」

 

 

痛いところをつく一刀に顔が赤くなる桂花だった。

 

 

「別にいいじゃん。桂花細いし」

「その油断が恐いのよ。さあ、私が目を瞑っている間に早く食べなださい!」

 

 

桂花は目を閉じて誘惑を振り払う。

 

 

「じゃあこれ一口やるよ」

 

 

一刀はクレープを差し出す。

 

 

「そ、それは私との間接的な接吻が御所望なの!?」

「は?」

「そ、そこまで言うならお兄様から先に食べなさい! わ、私はその後でじっくりと堪能するから!」

「ぐっ、そうきたか! やっぱりなしだ!」

 

 

言葉遣いがツンなだけで基本デレデレな桂花だった。

 

 

「桂花さん。北郷一刀さんも」

 

 

 

 

二人がもみ合っているところに声がかかる。

 

 

そこには二人の友人である少女がいた。

 

 

「あら? 桃香じゃない」

「おつかれさまですー」

「うわっ、なんなのその大きなマスク」

「風邪引いちゃったんで仕方ないんですよー」

「女は顔が命よ」

「…………そうですね」

 

 

一刀に顔を抓まれている桂花が言う台詞ではない。

 

 

「えっと桃香さんだよね? 桂花と同じ風紀委員の」

「は、はい。覚えて下さっていたんですね」

「本当に辛いなら休んだ方がいいよ? もうすぐ夏休みだし授業もないだろうし。……どれ」

 

 

一刀は桃香の額に自分の額を当てる。

 

 

「うわ。結構熱あるじゃん」

 

 

桃香の顔は真っ赤になっていた。

 

 

そしてそれを見ていた桂花からは凄い嫉妬のオーラが出ていた。

 

 

「で、でも風紀委員の仕事が忙しくて」

 

 

最近は能力を使って悪さを働く学生が増えてきているのだという。

 

 

「あれ? 桂花さん」

 

 

そんな話をしていると桃香が何かに気付く。

 

 

「何よ?」

「あそこの銀行、何で昼間からシャッター閉めてるのかな

 

 

その瞬間、桃香が指で示した場所が爆発する。

 

 

 

「ヨッシャ! さっさと引きあげるぞ!」

 

 

中から三人組の男達がでてきた。

 

 

白い布で口を隠しいかにも強盗ですという雰囲気を醸し出している。

 

 

「桃香は怪我人の確認を」

「は、はい」

「お兄様はそこにいてください」

「えー」

 

 

一瞬で仕事モードに切り替わる桂花は迅速に指示を出して自らは犯人逮捕に向かった。

 

 

「風紀委員よ! 器物損壊と強盗の現行犯でで拘束するわ!」

「嘘ッ!? なんでこんなに早く……ん?」

「……」

「……」

「?」

 

 

三人は桂花を見た瞬間固まる。

 

 

桂花は何故だか分からず首を傾げる。

 

 

「ギャハハハハ!」

「どんな奴が来たかと思えば……風紀委員も人手不足かあ?」

 

 

その言葉に苛立つ桂花。

 

 

「そこをどきなお嬢ちゃん」

 

 

男の一人が桂花に近づく。

 

 

しかし、桂花は男の横にテレポートして足を引っ掛けてそのまま投げた。

 

 

男はあっさりと気絶した。

 

 

 

 

それをみた男達は気を引き締める。

 

 

「ああ気持ち悪い。手が穢れちゃうわ」

 

 

桂花は手をプラプラとさせる。

 

 

「見た目どおりじゃないってことか。……だが俺だってな」

 

 

男の手から炎が現れる。

 

 

「発火能力者(パイロキネシスト)……」

 

 

得意げな表情を浮かべる男。

 

 

「はっ。戦う前から手の内を見せるなんてあんたバカ? 死ぬの? そういうのは普通隠すもんでしょ? 死ぬの? これだから男は。で、でもお兄様は別なんだからね!」

「お前分かってんのかコレ! レベル3だぞ! 少しはビビったり警戒したりしろよ」

「気持ち悪い。どうせ壁にぶち当たって諦めてグレたんでしょ? これだから男は死ねばいいのよ。お兄様は違うんだから!」

「テメエ!」

 

 

図星だった男は桂花に攻撃を仕掛けるが桂花は頭上にテレポートしてちんきゅーきっくをくらわせる。

 

 

そして太股に仕込んだ杭で男を拘束する。

 

 

「空間移動能力者(テレポーター)!?」

「これ以上抵抗するなら宦官にするから」

「ま、まいった!」

 

 

全力で投降するのだった。

 

 

二人が捕まったのを見て最後の一人は逃げ出した。

 

 

「どけ!」

「おっと!」

 

 

車に向かった男は目の前にいた一刀を突破した。

 

 

しかし、男を避けた時に一刀の制服にクレープがべったりと付着してしまった。

 

 

 

 

「あーー桂花?」

「は、はい!」

 

 

完全にキレている一刀に畏まる桂花。

 

 

「これは俺が個人的に喧嘩を売られたって事だから、手、出していいよな?」

「あー……」

「お、思い出した! 風紀委員には捕まったが最後、心も体も切り刻んで再起不能にする最悪の腹黒空間移動能力者がいるという噂!」

「誰のことよ? それ」

 

 

青筋が浮かぶ桂花に気付かず続ける男。

 

 

「チッ、あんなの相手に出来るか!」

 

 

その間に最後の一人は車に乗り込み逃走した。

 

 

「その空間移動能力者を虜にする相方……あの最強の精子使い……『超精子砲(カルピス)』!」

「どんな噂になっているか知らないけど……」

 

 

一刀はポケットからコインを取り出し、親指で上に弾く。

 

 

そして自らの滾った一物をチャックから取り出す。

 

 

「あの方こそが、学園都市二三〇万人の頂点、七人の超能力者(レベル5)の第三位――」

 

 

一物の前に落ちてきたコインを精子の力で加速させ撃ち出した。

 

 

「『超精子砲(カルピス)北郷一刀お兄様」

 

 

次の瞬間男の乗った車は吹き飛んだ。

 

 

「聖フランチェスカ学園が誇る最強無敵の全身精液孕ませ男よ」

「ば……化物だ」

 

 

自分とのレベルの違いに落胆する男だった。

 

 

 

 

男達は後からやって来た警備員に逮捕された。

 

 

「あんたは私達を化物呼ばわりしたけど、私もお兄様も初めからこうだったわけじゃないわ」

 

 

桂花は連れて行かれる強盗に一人に話しかける。

 

 

「自棄になって周りに当たり散らすあんたみたいなクソムシにはわからないでしょうけど」

「グッ」

 

 

笑顔で毒舌を吐く桂花。

 

 

「まあ、死になさい」

 

 

普通ならここで励ましの一言でもかけるシーンだが、最後まで男には厳しい桂花だった。

 

 

後にこの男は変な属性を見出すことになるのだがそれは割愛しよう。

 

 

 

 

 

 

 

「うーー」

「これ落ちないかもしれませんねー」

 

 

制服についた汚れを桃香に拭いてもらう一刀。

 

 

「おっにいさまーーんっ!」

「おわっ!」

 

 

完全にデレモードに移行した桂花は一刀に抱きつく。

 

 

「こらっ桂花、抱きつくな!」

「だめよ。一般人なのに手を出した罰よ」

 

 

言葉とは裏腹に嫌そうな顔ではない一刀。

 

 

「まったく、一〇億匹の精子を自在に操る超能力者(レベル5)、どこがただの一般人だよ」

 

 

そして得意の決め台詞。

 

 

「性欲を……持て余す」

 

 

 

 

 

 

完。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
67
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択