No.201571

真・恋姫†無双~恋と共に~ 外伝:今日はなんの日?

一郎太さん

外伝

2011-02-14 18:26:50 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:15013   閲覧ユーザー数:10184

 

今日はなんの日?

 

 

 

外出先での用事を終えると、俺は家路を歩く。そこかしこで今日のイベント商戦を行っているが、俺にとってはどちらでもいいことだ。世間では女の子が親しかったり、あるいは想いを抱く相手にチョコレートを贈るというイベントだ。いや、俺に彼女がいない訳ではないのだが、うちではその送り主と貰い手の性別が逆だということだけ言っておこう。

という訳で、俺の手の中にはお菓子の材料が入った紙袋。勿論チョコレートも欠かさない。

 

 

 

「去年はチョコチップ・クッキー100枚だったから、今年はチョコケーキ3、いや5ホールくらいかな」

 

 

 

とまぁ、俺の彼女は大食漢なわけである。太らないから別にかまわないし、見ていて飽きないから食べてくれて構わないのだが、正直、体積的に彼女のキャパを超えているような気がしないでもない。そんなことを考えながら、道を歩く。曇った空は雪を降らせることはなく、ただ冷たい風だけが吹いている。

 

 

 

 

 

 

「ただいま………」

「………おかえり」

 

 

 

家のドアを開けると、恋がセキトと一緒にコタツで丸くなっていた。本当にこの娘は冬が苦手だな。俺は苦笑しつつ靴を脱ぎ、買ってきた荷物を台所に置く。軽く手を洗い、流しの下からケーキ作りに必要な道具を取り出すと、早速分量を量り始めた。すると、恋がコタツに潜ったまま問いかける。

 

 

 

「今年は………何?」

「ん?お楽しみ………って言ってもすぐにわかるしな。今年はケーキだよ。好きだろ?」

「ん…一刀のお菓子は、お店のより美味しい」

「買い被りすぎだよ」

 

 

 

俺は答えながら次々と準備を進める。手慣れたものだ。これも恋の為に覚えただけだから、趣味とは言い難い。それでも恋はいつも美味しそうに食べてくれるもので、作り手冥利に尽きる。

 

 

 

 

 

しばらくすると、部屋中にいい匂いが満たされる。恋をちらりと見ると、幸せそうな顔で眠っており、時折鼻をヒクヒクとさせる様子がまた可愛らしい。

そうしてさらに数十分後―――。俺は焼き上がったケーキを眺める。うん、今年もいい出来になりそうだ。俺はそのまま次のホールを準備してオーブンに入れると、チョコクリームの準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

「………けぷ」

「お腹いっぱいか?」

「ん………しあわせ」

「そっか。喜んでくれて嬉しいよ」

 

 

 

恋はお腹を摩りながら、俺に寄り添ってくる。これもまた例年通り…ではなく、食後のお馴染みの光景である。そんな恋の頭を撫でていると、ふと、恋が身体を離した。

 

 

 

「どうした?」

「………いつも、恋ばっかり作って貰ってる」

「まぁ、恋は料理が苦手だしな」

「でも、恋も一刀にプレゼント、したい」

 

 

 

なんということだ。あの恋がそんなことを言うとは………。俺は喜びに少し泣きそうになるのを我慢しながら、続きを目で問う。

 

 

 

「でも……恋はお菓子作れない」

「………そうだな」

「雪蓮に相談したら、いい方法がある、って教えてくれた」

 

 

 

恋はそう言うと立ち上がり、台所へ行くと、ボウルを抱えて戻ってきた。その中にはあまったチョコクリームが残っている。

 

 

 

「あはは、食べさせてくれるのか?」

「………食べさせて、欲しい?」

「そりゃ、恋がそうしてくれるなら、ぜひお願いしたいよ」

「………ん」

 

 

 

俺の言葉に頷くと、恋はいきなり服を脱ぎだした。

 

 

 

「ちょ!恋!!何やってるんだよ!?」

 

 

 

恋は俺の問いに応えず、セーターをまくり上げ、スカートを脱ぎ、下着もとって、ハイソックスだけという恰好になる。

 

 

 

「雪蓮が言ってた………男の人は、こうしてあげると喜ぶ、って」

「………え」

 

 

 

恋はそう言うと、指でクリームをすくい、その綺麗な形の胸へと塗っていく。何度かそうしたところで―――。

 

 

 

 

 

「一刀………恋を、召し上がれ」

 

 

 

 

 

 

『俺の理性は耐えることが出来なかった。俺は恋に飛びかかると、顔や手にクリームがつくのも構わず―――』

 

 

 

カタカタカタ………

 

 

 

「………ん、いいでき」

 

 

 

PCの前に座る少女は、キーボードで文章を打ち込みながら微笑む。その内容は………割愛させて頂こう。ただ、そこには彼女の願望も幾分か含まれていることは、想像に難くない。彼女は文章を保存し、インターネットのソフトを起動すると、いつもの投稿サイトに接続した。この小説を読んでくれた人のコメントを思い浮かべて、少女はもう一度微笑む。

 

 

 

「これで、あとは投稿すれば―――」

「………投稿すれば、どうなると思う?」

「っ!」

 

 

 

突如かかる声に、少女はビクッと肩を震わせる。彼女は振り返らない。いや、振り返れない。ガタガタと震えながら、少女はなんとか声を発する。

 

 

 

「………見た?」

「あぁ…ばっちりと」

「………………お仕置き?」

「あぁ………お仕置きだ」

 

 

 

その声を発する男の口元は獰猛に歪んでいる。彼は少女の後頭部を掴むと渾身の力で締め上げた。

 

 

 

「あれほど変なエロ小説を書くなと言ったのに、まだやるか!」

「恋を…待っている人がいるなら………」

「俺の尊厳はどうなる!?」

「………芸術に、犠牲は付き物」

「 こ の や ろ う 」

「………痛い、一刀」

 

 

 

青年と少女の戯れは続く。

今日はバレンタインデー。右手で少女の後頭部を掴む青年の左手には、ホール型のチョコレートケーキ。

 

これもまた、いつもの二人。

 

 

 

 


 
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