No.200772

真・恋姫†無双~恋と共に~ #36

一郎太さん

#36

2011-02-10 20:20:44 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:18368   閲覧ユーザー数:12047

 

#36

 

 

「おにーさん、ここは騎馬隊の皆さんにお任せしましょう。諸侯が黄巾党の相手をしている今を逃せば、張角さん達を助けることはできません」

「あぁ……行くぞ、恋!」

「………ん」

 

 

 

風の言葉に頷き、俺と恋はそれぞれ馬を走らせる。視界の隅で、賊と官軍がぶつかり合う光景が見えたが、すぐに砦の壁に遮られる。曹操の兵もいれば、雪蓮のところの兵もいた。袁家の旗も見えた。耳に届くのは雄叫びや断末魔の叫び、馬蹄の響き、剣戟の音。そのすべてを無視し、俺と恋はただ走り抜けた。

 

 

 

「此処からはこいつらは無理だ。降りるぞ」

「………(こく)」

 

 

俺と恋は黒兎たちから降り、勢いもそのままに走り出す。丘の上に広がる砦はなるほど、10万の賊が集まろうとするほど(実際に黄巾党本隊すべてがここで生活していたかは別として)の広さはある。そこかしこの壁に綻びが見え隠れするのは、この砦がはるか昔に建立されたことを示唆していた。その砦に囲まれ、いま俺たちは―――

 

 

 

「恋、急ぐぞ」

「………熱い」

 

 

 

―――火の真っ只中にいた。

 

 

 

 

 

 

数刻前―――。

 

 

 

「それにしても壮観だな………」

「ん…いっぱい」

「各軍に牙門旗が見えますが、有名どころでいうと………袁紹さんに袁術さん、あとその傘下の孫策さんがいますねー。それから公孫賛さんも」

「あぁ。皆、功労を上げようと画策しているんだろうな」

「もちろん風たちもですけどねー」

 

 

 

曹操の討伐軍はいま、とある丘の砦から離れたところに陣を敷いていた。ここから見える砦を黄巾党本隊は根城にしているとのことだ。実際、城壁の上には微かに蠢く人の群れが見える。そしてその周りには各軍の陣営もまた。それぞれが牙門旗を掲げ、存在を主張していた。

 

 

 

「どこも似たようなものよ。共同で賊を討てと命は出ていても、皆張角の首級をとろうと策を練っているところでしょうね。それでも動かないのは………まぁ、当然のことでしょうけど」

「曹操か。そろそろ軍議でも始めるか?それと護衛はどうした?」

「あら、必要かしら?何かあっても、貴方が守ってくれるのでしょう?………我々の方針は既に決まっているのよ、貴方の我儘のおかげでね」

「ひどいなぁ………」

 

 

 

だが、それも事実だ。俺が天和たちを助けたいと言った為、それに合わせた策を練らなければならなかった。ただ、相手に歴戦の軍師がいるわけでもなし。風と稟、そして荀彧により、その方策は割とあっさりと決まっていた。ただ、その為にはまだ時機を待つ必要がある。だからこそ、こうして曹操は俺のところに来て世間話でもしようとしているのだろう。

と、後ろから何やら騒ぎ声が聞こえてきた。

 

 

 

「貴様!止まらぬか!ここは曹操様の陣営だぞ!」

「あら、いいじゃない。今は味方なんだし」

 

 

 

その声に曹操は振り返り、俺はこめかみを抑えるのだった。

 

その闖入者は褐色の肌に桃色の髪を揺らし、他所の陣であるにも関わらず堂々と歩いてくる。そして、彼女は曹操の前で立ち止まり、口を開いた。

 

 

 

「貴女が曹操ね」

「そういう貴女は?」

「袁術が客将、江東の孫策よ」

「へぇ…貴女があの江東の虎の娘なのね」

「あら、知ってるの?光栄だわ」

 

 

 

と、自己紹介も終わったところで、彼女は俺に気がついた。そして曹操を無視して駆け寄ってきたかと思うと―――

 

 

 

「一刀っ!!」

「むぐっ」

 

 

 

―――思い切り抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

「一刀じゃない!貴方、なんで曹操のところにいるの!?」

「く、苦しいからちょっと離れて………」

「い・や・よ。久しぶりに会えたんだから、ちょっとくらい堪能させてくれたっていいじゃない。………って、恋もいるのね。久しぶり」

「ん…久しぶり」

「貴女も曹操に仕えてるの?」

「客将してる………雪蓮、一刀が苦しがってる」

「え?あぁ、ごめんごめん!久しぶりの一刀に思わず身体が動いちゃったわ」

 

 

 

ようやく解放された俺は首を鳴らしながら呼吸を整えた。相変わらずの奔放っぷりだ。

 

 

 

「孫策…人の将に大したことしてくれるじゃない」

 

 

 

ここで曹操が口を挟んだ。気のせいか怒っているように見える。戦の前に喧嘩なんかして欲しくはないぞ?そんな俺の心配を他所に、2人は言葉を交わす。

 

 

 

「いいじゃない、旧知の仲なんだから。それより曹操、貴女………」

「………何よ」

「貴女も一刀にフラれたくちね」

「なっ!?」

 

 

 

雪蓮の言葉に、曹操は途端に顔を赤くする。多分客将とか家臣とかそういう事を言っているのだとは思うが、曹操も勘違いしないでくれ。

 

 

 

「一刀をものにしようとしたんだろうけど、ダメよ。彼は捕まえられないわ」

「な、なんだ、そういうことね………。それより貴女も、ということは孫策も断られたようね」

「えぇ。なんでも為さなければならない事があるんだって」

「あら、それなら私も知ってるわ。だからこうして時間を潰しているのよ。………ただ、私たちよりも他の娘を優先するのは頂けないけどね」

「その点に関しては同意するわ」

 

 

 

そうして2人して俺に眼を向ける。若干殺気が籠っている気がするが、無視しておこう。

2人とも言っていることはわかる。天和たちのことだ。ただ、どこに耳があるからわからないから、ぼかして発言してくれたことには感謝しておきたい。俺は彼女たちの心配りに、ほんの少しだけ頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

それから少しだけ話をして、迎えに来た冥琳に引きずられて雪蓮は帰っていった。冥琳とも少し会話をしたが、変わらずクールな彼女であった。

旧友を見送った俺たちは、天幕へと戻る。そこには春蘭と秋蘭、そして稟と荀彧が揃っており、俺たちを迎えた。曹操が定位置につくと、荀彧が代表して口を開く。

 

 

 

「華琳様、袁紹への細作、準備が整いました」

「そう…ならばこれより、我々は進撃の準備に入る。春蘭、秋蘭!隊の編成を行いなさい!すぐにでも麗羽の莫迦は動き始めるわ」

「「御意!」」

「稟!貴方はさらに戦場の動きをはかりなさい!逐一報告する必要はないわ。こちらが動く必要が出た時だけ報告すればよい」

「畏まりました」

「北郷、恋!」

「あぁ」

「貴方達に100の騎兵を預けるわ。風と共に時機を見て砦に突入しなさい!」

「了解」 「………ん」 「御意なのですー」

 

 

 

春蘭たちが隊の編成を終えるかという時、丘の東側から鬨の声が届く。あの方角にいるのは袁紹だ。荀彧の言葉通り、俺たちは袁紹に細作を放っていた。かの軍勢は現状最大勢力であり、勿論兵数も飛び抜けている。その中に紛れ込ませて士気をそれとなく上げさせ、部隊長が出陣の進言に向かった頃、細作たちが戻っていた。

陣の中央に春蘭と副官に凪。右翼には秋蘭の弓隊、左翼には真桜と沙和の二頭部隊。本陣には曹操と軍師、そして季衣の率いる親衛隊。後曲には―――

 

 

 

「さて、おにーさん。風と一緒の実戦は初めてですが、本当に風に任せていいのですか?」

「今さらだな。風が言ったんじゃないか。『風の力で俺を窮地に追いやったりなど、絶対にしない』ってな。俺の軍師なら、もっと堂々としろ」

「おにーさん…おにーさんは今、風をやる気にしてしまったのです。そこまで言うからには、絶対に風の言う通りに動いてくださいね」

「任せろ」

「恋ちゃんもいいですか?」

「………難しくないなら」

「お任せあれー、です」

 

 

 

―――俺と背中に座る風の乗る黒兎、恋の乗る赤兎を先頭に、100の騎兵が縦5列、横20列の横陣を敷いていた。

話は少し遡るが、以前、大梁の街に向かった際に引き連れた500の騎馬兵の多くが、黒兎の走りを見て、俺に訓練を申し込んできたことがあった。俺は曹操に相談して許可を貰い、騎馬隊の調練をしていたのだが、彼らの根性もなかなかのものであった。馬の性能に大きく依存するとはいえ、乗り手の能力、そして信頼関係が馬の動きを左右することは言うまでもない。細かい鍛錬内容は割愛するが、その中から300を選抜し、ただ突破力のみを求めた特殊騎馬隊を、俺と恋で編成する。弓を持たせず、長柄の得物を携えさせたその騎兵達には、ただその破壊力のみを求められた。

そして今日。その特殊騎馬隊から3分の1を選び、俺たちと共に突撃部隊として編成する。皆俺と恋に、そして黒兎と赤兎に全幅の信頼を寄せてくれ、ただ指示を待っていた。

 

 

 

 

 

 

「聞けぃ!我が下に集いし精兵たちよ!いま、砦の門扉は開き、賊共が現れた!彼奴らに悩まされた日々も、今日!此処で!終わらせる!!………此度の遠征、これまでの集大成と思え!我らはこれより進撃し、黄巾の賊を殲滅する!全軍…進めぇぇえええっ!!」

 

 

 

曹操の口上が響き渡る。視界の向こうでは袁紹軍に向けて黄巾党が飛び出し、すでに戦闘を始めていた。砦の北側に位置する俺たちからは視界の左に砂塵が舞う。

友を助ける闘いが、始まった。

 

 

 

 

 

「夏侯淵隊!これより我らは先行して砦に火矢を放つ!続けぇ!」

 

 

 

秋蘭の掛け声と共に右翼が先行し、それに少し遅れて中央が前進する。斜形陣を敷き、そして―――

 

 

 

「放てぇ!」

 

 

 

―――青い戦装束に身を包んだ将軍の合図で、砦に向けて一斉に火矢が射かけられた。その頃には黄巾党も北門を開いて曹操軍へ向けて進んでいる。火矢を射た右翼は一度後退、それと同時に中央が前へと出て、鋒矢の陣へと形を変えたところで、前線が衝突した。

 

 

 

 

 

「始まりましたねー」

「あぁ。いつ…動く?」

「ここは待機ですよー。今は春蘭様や凪ちゃん達が黄巾党の前線と対峙しています。烏合の衆とはいえ、向こうの方が数は多いですし、力の均衡が崩れる瞬間を狙います」

「わかった」

 

 

 

風の指示により、俺たちはいまだその場に動かずにいる。こちらの軍は1万5000。対する黄巾党はそのすべてが此方に向かわないとは言え、およそ3万。彼我の差は2倍である。春蘭たちの心配はしていないが、砦から立ち昇る黒煙を見ていると、どうしても気が逸る。

 

 

 

「そろそろですかねー。おにーさん、兵の皆さんに檄を飛ばしちゃってくださいー」

 

 

 

風の言葉にようやくかと俺は腰の野太刀を抜き放ち、兵を振り返らずに声を張り上げる。

 

 

 

「我が下に集いし曹操が一の騎兵達よ!これより我らは進軍する!お前達に望むはただ一つ!決して立ち止まらず、中央軍の間を走り抜け、敵の腹を食い破れ!!………行くぞ」

「「「「「応っ!!」」」」」

 

 

 

頼もしい声を聞きながら、俺は黒兎の背を挟む脚に力を込めた。

 

 

 

 

 

 

「春蘭様!師匠と恋殿が後曲より向かってきます!」

「頃合いか………。伝令!各部隊長に通達。隊を4つに分け、後ろから迫る騎馬隊に道を開けろ!巻き込まれなくなかったら、死にもの狂いで隊を編成しろと伝えろ!」

「りょ、了解っ!」

 

 

 

それは彼女の本音だ。一度だけ特殊騎馬隊の訓練を見せてもらったが、あれは凄まじいものであった。街の外の平野の各所に障害物を設け、その間を全速力で走り抜けるその様は、まさに矢の如し。彼らはただ力と速度のみを求められ、北郷が進む跡を全速で追走するはずだ。ならば自分にできるのは、隊員を巻き込ませない事と、そして、北郷に道を作ることのみ。

 

春蘭が伝令に指示を出して数分もしない内に、後方から馬蹄が地を鳴らす音が届いてくる。

 

 

 

「来たな………」

 

 

 

彼女は後ろを振り返らない。自慢の隊だ。自分の命令を忠実にこなすはずである。自慢の仲間だ。彼女がそれを為し得ると信頼して、その速度を緩めることなく突破していくはずである。春蘭は目の前の敵を斬りつけながら、すぐ傍を走り抜ける馬たちを横目に、呟いた。

 

 

 

「流石、北郷だな…」

 

 

 

 

 

「華琳様、北郷の騎馬隊が中央を突破し、敵の中に突入しました!」

「そう…桂花?」

「はっ!これより鶴翼の陣へと移行し、奴らを後退させないように引きつけます」

「わかったわ。稟、中央と左翼、右翼に伝令を。下がりながら敵を囲う様に広げなさい」

「御意」

 

 

 

稟の報告と荀彧の進言により、軍の総大将は指示を出す。ここまでお膳立てをしてやったのだ。彼に失敗は許されない。とはいえ………。

 

 

 

「貴方が仕損じる訳がないわよね、北郷?」

 

 

 

彼女の信頼もまた、絶対のものであった。

 

 

 

 

 

 

俺たちは先の宣言通りに中央軍が作った3つの道をそれぞれ駆け抜け、敵の中を突き進む。速度は決して落とさず、ただ走り抜ける。途中春蘭を見かけたが、声はかけなかった。今の彼女にそんなものは必要ない。彼女ならしっかりやり遂げてくれると理解していたし、彼女もまた俺がそう理解すると信じていただろうからな。そうして走り抜けた俺たちは、北門に辿り着いた。

 

 

 

「おにーさん、ここは騎馬隊の皆さんにお任せしましょう。諸侯が黄巾党の相手をしている今を逃せば、張角さん達を助けることはできません」

「あぁ……行くぞ、恋!」

「………ん」

 

 

 

風の言葉に頷き、俺と恋はそれぞれ馬を走らせる。視界の隅で、賊と官軍がぶつかり合う光景が見えるが、すぐに砦の壁に遮られる。曹操の兵もいれば、雪蓮のところの兵もいた。袁家の旗も見えた。耳に届くのは雄叫びや断末魔の叫び、馬蹄の響き、剣戟の音。そのすべてを無視し、俺と恋はただ走り抜けた。

 

 

 

「此処からはこいつらは無理だ。降りるぞ」

「………(こく)」

「風は黒兎に乗ったまま門前の指揮を頼む。こいつらならしっかり風を守ってくれる」

「御意なのですー…おにーさん、恋ちゃん、気をつけてくださいね」

「任せろ」

 

 

 

俺と恋はそれぞれ馬から飛び降りると、勢いもそのままに走り出す。其処彼処で火の手が上がり、地面の草は既にほとんど燃えていた。俺たちはその中を走り抜け、砦の中央へと向かう。彼女たちがいるならここの筈だ。

 

恋が飛び出し、朽ちかけた扉を方天画戟で叩き割る。俺は勢いを弱めずにその中に飛び込み、廊下を走り続けた。時折落ちてくる燃えた梁を刀で弾き、倒壊物は跳び越え、階段を駆け上がる。

 

そして、炎が立てる轟々とした音の中、俺はそれを聞きつけた。

 

 

 

 

 

 

「ケホッ、ケホッ…なんで砦が燃えてるのよーっ!」

「知らないよー!お姉ちゃんだって困惑してるのー」

「たぶん…官軍が来て、火矢を射かけられたんだと思う」

 

 

 

その特徴的な声は忘れようもない。美しい旋律を紡ぐはずの喉は煙で僅かに擦れてはいたが、俺と恋はその声のする方向に向かう。

 

 

 

「捕まえたぞ」

「きゃっ!」

 

 

 

目の前の廊下を横切る3人を視界に入れると俺は、3人の前に飛び出す。

 

 

 

「ちょっと、危ないじゃない!………って、一刀!?」

「え、一刀、来てくれたのー!?」

「………一刀さん」

 

 

 

俺だと理解した途端、涙ぐむ3人の頭を撫でながら、俺は口を開いた。

 

 

 

「あぁ、助けに来たよ」

「でも…どうして………?」

「黄巾党…天和たちが企んだことじゃないんだろう?」

「そりゃそうよ!ちぃ達、勝手に祀り上げられて、軟禁されて………」

「やっぱりな。天和たちの討伐令が勅令として発せられて、外では官軍が黄巾党と戦っている。張角の首を獲れ、ってね」

「え……」

 

 

 

俺の言葉に、3人は後ずさる。その眼は怯えに彩られていた。

 

 

 

「だから、俺は君たちを助けに来たんだ。今は曹操のところで客将をやってるけど、天和たちを匿うことも言質を取ってある。俺と一緒に来るんだ」

「本当!?姉さん、人和!早く行くわよ!」

「待って、ちぃ姉さん…曹操が私達を匿う理由がないわ」

「ならばここで焼け死ぬか?それとも外で斬り殺されるか?それとも………俺が信用できないか?」

「そんな訳っ………!」

「俺の実力は知っているだろう?万が一曹操が約束を反故にしようしたら、俺と恋が助けてやる。だから今は一緒に来るんだ。詳しいことは後で曹操と説明するから」

「でも―――」

 

 

 

と、人和が口籠ったところで、天和が彼女を抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

「ね、姉さん?」

「もう、人和ちゃんはいつからそんな素直じゃなくなっちゃったの?そりゃ、お姉ちゃんたちは此処の人たちに閉じ込められて、辛かったけど、一刀だよ?私たちの友達が助けてくれる、って言ってるんだよ?だったら信じよう………ね?」

「………うん」

 

 

 

流石、姉だな。彼女の優しい口調は人和の心の鎖を少しだけ緩めてくれたようだ。俺はその言葉を聞くと、地和と人和を担ぎ上げた。隣では恋が天和を背負う。

 

 

 

「きゃぁっ!?」

「行くぞ、恋!」

「………ん」

「ちょ、ちょっと!ちぃ達自分で走れるわよ!」

「こっちの方が速い。それより、口を開くと舌噛むぞ」

 

 

 

その言葉に怯えたか、地和はそれきり口を噤む。

 

恋が俺の前を走り、空いた手で方天画戟を振るって道を切り拓く。俺はその後ろをついていき、ようやく吐けそうな一息に想いを馳せた。

 

 

 


 
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