No.198734

ルパン三世-蒼海の悪魔

necolobyさん

PS2ゲーム「ルパン三世~ルパンには死を、銭形には恋を」をリライトしたエンタメ系シナリオです。
不二子からの連絡を受けて中国の国際都市”蒼海”に降り立ったルパンと仲間たち。彼らを出迎えたのは謎の男・光琳だった・・・ 滅亡した蒼海王朝の”財宝”とは? そして美少女・銀麗の運命は?
スリリングなルパンワールドを是非お楽しみ下さい。

2011-01-30 16:07:43 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1728   閲覧ユーザー数:1716

 
 

ルパン三世-蒼海の悪魔 <版権リライトシナリオ> chap_01

 

 

 

◆昼間、中国・蒼海シティ

香港・上海のような経済・観光都市

港湾、空港、山手(李王朝時代の王宮『万府京(ばんぷきょう)』が観光名所)、新しい高層ビル市街、貧民街などがエリアに分かれている。

 

 

 

◆蒼海空港

大型ジェット機の発着が多い。高層ビルをかすめるように離発着が続く。

 

 

 

◆空港正面の屋外駐車場

広大な駐車スペースには多くの車が停めてある。

その中に黒塗りのメルセデスセダン1台と2、3台の大型ランドクルーザーが見える。

車内には黒づくめの男たちが身じろぎもせず座っていて異様。

メルセデスセダンの後部座席に座っている二十代前半の険のある男・光琳、フロントガラス越しに見える空港出入り口に鋭い視線を張り付かせて動かない。

光琳、座席の脇に置いた小さいアタッシュケースに手を置いている。黒い皮手袋をはめたその手首から酷いやけどの跡が見える。

ルパンカーが空港正面エントランス前に入ってきて停まるのが、光琳の視線に映る。

光琳、軽く手を振ると、それまで車の中でじっとしていた男たちが一斉にドアを駆け降りる。

 

 

 

◆空港正面エントランス前

ルパンカーに乗っているのは不二子一人。

不二子、ルパンカーから降りて歩きだすと、先程の黒づくめの男たちが不二子の行く手をふさぐ

不二子、逆らいながら

「なにするのよっ!あんた達だれっ!」

光琳、不二子につめよって不二子からスカーフをさっと奪う。

「お前に聞きたいことがある……峰不二子」

不二子、心当たりあるらしく無言。

不二子、ランドクルーザーに乗せられいずこかへ消え去る。

光琳、駐車場に一人残り、空港ロビーに向かって歩きだす。

 

 

 

◆空港ロビー内・発着ゲート付近

明るく広いゲート前は大勢の人が行き来している。

蒼海の観光イベント『巫女コンテスト』が3日後に開催されるという告知がいたるところにある。

ルパン、次元、五ェ門、到着ゲートから出てくる。

ルパン、半ば観光気分。ファーストフード店のコーラをストローで飲みながら

「蒼海って中国の僻地かと思ってたらぜ~んぜん都会じゃん! 『巫女コンテスト』ぉ? 着いた早々盛り上がっちゃってま~~。さぞかしオレ好みのカ~ワイ娘ちゃんがワンサカと……グフフ……」

次元、冷静に流しつつ

「何浮かれてやがる。オレたちゃ仕事にきたんだぜ。」

五ェ門、やや不機嫌に

「それより、我らを呼び出した本人・不二子が見えぬではないか……」

ルパン、浮かれたまま

「マァマァ、堅ぇこと言わずに楽しもうぜぇぃ~」

次元、あきれて

「ハッ」

五ェ門、何かにふと気づいたようで

「コホンっ、拙者しばらく失礼致す」

次元

「はぁ?」

五ェ門、ロビー内の店が並んだ一角に向けて歩いて行く。

ルパン、五ェ門をよびとめて携帯を投げ渡す。

「五ェ門! 後で連絡する」

五ェ門、受け取った携帯にうさんくさそうな一瞥をくれるが袖にしまって、とある店にすたすた歩いてゆく。

その店の看板は『純和風茶店・侘び寂び』

五ェ門、入り口の美形和服嬢に赤面しながら店内に入ってゆく。

次元、あきれて

「チッ、同レベルってヤツか……いいのか? ルパン。仕事の前にこんなで。」

ルパン

「い~じゃないの。人生、楽しまなくっちゃ、誰かさんのようになっちまうぜぇ。」

光琳、off

「ルパン三世、だな?」

ルパン、声の方に振り返るが意外といった表情。

「?……いつもならとっつぁん登場なんだが。(次元の方を向いて)お友達?」

次元、肩をすくめて首を振る。

光琳、ルパンに向けて不二子のスカーフを投げる。

ルパン、受け取りはっとする。

「これは、オレが不二子にプレゼントしたスカーフ……(光琳をにらみつけて)どういうことだっ!」

 

 

 

 

 

光琳、無感情に

「回りくどいのは嫌なんだ……古文書をよこせ」

ルパン、いらつく

「古文書?なんのことだっ?」

光琳、冷徹に

「今なら不二子を返してやる……この蒼海で手にいれた古文書をよこせ」

次元、

「おい、若いの。なにか勘違いしてねぇか? オレたちゃ、今着いたばかりなんだぜ。」

光琳、

「渡さなければ不二子は死ぬ……それだけだ」

光琳、話は終わったとばかりに振り返って歩いてゆく

ルパン、ちょっとあせって

「ち、ちょっと待てって!」

光琳、振り向かずに止まる

「渡すのか」

ルパン、光琳に追いついて

「いいか、古文書なんてオレは知らない。それにどんな理由があろうと不二子を傷つけたら、オレは黙っちゃいない……わかるか?」

光琳、背中ごしに

「ああ、不二子は死ぬ」

ルパン、逆上してその男の肩に手をかけようとする。

が、その男の体がコマのように旋回し、あやうくのけぞったルパンのあご先を何かがかすめた。

(光琳が後ろ回し蹴りした。)

ルパン、後ろにバランスを崩して、次元にぶつかる。

「うっく!」

ルパン、その男を見ようと顔を上げるが姿はない。

次元、指さす。

「あそこだっ」

ルパン、次元の指さす方を見ると、空港正面エントランスのガラスドアを歩いて出てゆく男の後姿が見える。

ルパン、跳ね起きて駆け出す。

次元、続いて駆け出しながら

「何モンだ?」

ルパン

「分からんっ!」

 

 

 

◆空港正面エントランス前

ルパン、次元、ガラスドアを飛び出してきた目の前で黒塗りメルセデスセダンが発進する。

メルセデスセダンの後部座席には、光琳の横顔。

メルセデスセダン、滑らかに加速して走り去る。

ルパン、悔しそうに見送る。

次元、空港正面エントランス前に乗り捨てられているルパンカーを指さす。

「ルパンっ! ありゃお前の車じゃねぇか!」

不二子が乗り付けたルパンカーがそのままに駐車してある。

ルパン、次元、ルパンカーに飛び乗る。

ルパン、スイスアーミーナイフを取り出し、キィ穴にグサッと差し込んで回すとエンジンがかかる。

ルパンカー、急発進、メルセデスセダンの後を追う。

空港を出ると道路はゆったりしたカーブになっている。

メルセデスセダンの姿はない。コースの分岐路が迫ってくる。

次元、帽子を押さえながら

「左だっ」

ルパン、ハンドルを左に切る。

ルパンカー、左レーンに入って更に加速すると高速に入る。

ルパン三世-蒼海の悪魔 <版権リライトシナリオ> chap_02

 

 

◆蒼海市街高速道路

蒼海高速道路はゆるやかなカーブの連続で渋滞はない。

左手には緑に覆われた山手、右手には蒼海湾の美しい広がり。

突っ走るルパンカーの前方に、やがて光琳の乗ったメルセデスセダンが見えてきた。

ルパン、ギアを上げてアクセルを深く踏み込むと、車体が軽く浮くように加速してメルセデスセダンとの距離を詰めてゆく。獣のようなエンジンの唸り。

すると、メルセデスセダンの前方から両サイドの車線に、ホロをつけたピックアップトラックが二台減速してルパンカーの前に割り込んできた。

ルパン、

「!」

トラックの後部に垂れ下がっていたホロをはねあげて、黒づくめの男達が姿を現したのが見えた。

男達の手にはマシンガン。

ルパン、素早く反応しハンドルを切る。

ルパンカーがさっきまで走っていた路面にマシンガンの乱射が突き刺さる。

ルパン、切れ目ない銃撃をかわし続けるが、時々ルパンカーのボンネットにも弾が弾ける。

次元、帽子が飛ばないように必死。

「着いた早々コレかよっ!」

手榴弾の攻撃も始まるが、巧みに運転し、他の車も利用しつつ全てかわす。

ピックアップトラックの男達、銃撃を止める。

ルパン、

「?」

トラックの男達、荷台からドラム缶を蹴り出す。

ドラム缶、一度路面にバウンドしランダムな高速回転でルパンカーに迫る。

ルパン、急ハンドル片輪走行で間一髪かわす。

すれ違ったドラム缶はもう一度路面にバウンドする前に爆発する。

ルパンカー、衝撃にあおられ着地したショックでフロントガラスが割れる。

次元、立ち上がってシートの背に座り直し、ベルトに挟んでいたマグナムをとりだす。

「なめやがってぇ!」

ルパン、

「いくぜぇっ!!」

ルパンカー、二個目のドラム缶を左にかわしざま急加速、ピックアップトラックの左から前に出る。

そこには更に前方にもう一台のピックアップトラックが走っている。

ルパンカーを見て、ピックアップトラックに乗った男達、驚く。

次元、ピックアップトラックの荷台にあるドラム缶にマグナムを連続で撃ち込む。

ピックアップトラックの男達、あわてて飛び降りる。

その直後、ドラム缶が爆発しピックアップトラックは火を吹きながら横転する。

後方のもう一台のピックアップトラックはそれを避け切れず、まきこまれてしまう。

ルパン、バックミラーでピックアップトラックから男達が飛び降りるのをちらっと確認、前方に目を戻すと男の乗ったメルセデスセダンが見える。

が、すぐ前方にタンクローリーが迫っている。

次元、タンクローリーの向こうにちらりと見えるメルセデスセダンのタイヤに狙いをつける。

ルパン、タンクローリーを避けようとあわててハンドルを左に切ってかわす。

その揺れで次元の狙いがわずかにずれ、マグナムから発射された弾丸が光琳の後頭部をまともに打ち抜くラインを進んでゆく。(スロー映像)

次元、

「しまったっ!!」

弾丸が光琳の頭部を破裂させると思われた瞬間、その空間から光琳が消え、弾丸はメルセデスセダンのリアとフロントのガラスを貫通しただけ。

その次の瞬間には、光琳の後姿は元の位置に戻っていた。

次元、モノローグ

“何ッ!!”

(スロー映像終わり)

ルパン、タンクローリーを追い抜いた後、見るとメルセデスセダンは高速の隣のレーンに入っていた。

ルパンカーの走っているレーンはどんどん下がっていって、メルセデスセダンとは離れてしまう。

ルパン、

「くっ!」

次元、シートに座り直しつつ

「逃げられた……らしいな」

ルパン、カーナビを操作しながら

「いいや……見ろ。」

カーナビの液晶画面には、男の乗ったメルセデスの行き先が表示されている。

ルパン、

「ヤツの行き先は蒼海貧民街・ダウンタウンだ。逃がしはしないぜ……」

 

 

 

◆ダウンタウン

開発から取り残された貧困階級の住むエリア。

建物は旧統治時代の煉瓦造りが多いが、老朽化し、住民によって相当改造されている。

上下水道、ガス、電気、電話などのインフラはほとんどない。

異臭ただよい、治安は悪い。外国人はもちろん、蒼海人でも部外者は絶対に立ち入らないエリア。

黒いメルセデスセダンが大きい廃工場に入ってゆく。

ルパン、それを双眼鏡で停車したルパンカーで見ている。

「そこがお前のねぐら、ってわけか……」

ルパン、

「オレは車を安全なところに停めてくる……路駐はヤバそうだ」

次元、ルパンカーを降りながら

「ちげぇねぇ、じゃオレは先に様子を見に行くぜ」

ルパン、歩いてゆく次元の背中に軽く言う。

「次元、ドジふむなよ」

次元、毒づく。

「けっ、誰にいってんだよ」

次元、歩み去る。

次元、モノローグ

“あの男、ふざけたまねしやがって……”

ルパン、ルパンカーをゆっくり進める。

 

 

 

◆ダウンタウン、人気のない運河のそば

運河は狭く、ドロドロの水をたたえて流れていない。横付けされた小さな船も朽ち果てて沈みかかっているものが多い。

ルパン、手近にあったホロをルパンカーにかぶせて隠し終わる。

ルパン、携帯を出しGPSを立ち上げる。

小さいモニターに次元の位置が表示されている。

既に、メルセデスの入っていった廃工場内部に侵入したらしい。

ルパン、

「次元、やるじゃねぇか」

ルパン、次元に電話をかける。

短い呼び出しの後、次元が抑えた声で出る。

『オレだ』

ルパン、

「車は隠した。そっちはどうだ?」

次元、

『ん、中に入ったんだが、地下へ降りてゆく階段が見える。工場にしちゃ変だな』

ルパン、

「分かった。オレが行くまでそこで……」

携帯の向こうで、次元と誰かが争う物音が聞こえる。

ルパン、

「次元、どうしたっ? おいっ!」

携帯が堅い床に落ちるような音が聞こえて、通話が切れた。

ルパン、怒鳴る。

「次元っ!!……」

応答はない。

ルパン、立ち尽くす。

 

 

 

◆ダウンタウン、廃工場内部

かつてはセメント、製鉄、製造関係の広い工場だったらしいが、操業をやめてから相当時間が経っておりまともに作動する機械はない。

昼でも暗いため機械類が黒いシルエットになって見通しが悪い。

正面シャッター入り口から少し入ったところに黒いメルセデスが停まっている。中には誰もいない。

ルパン、工場の天井に近いキャットウォークに身を潜め、気配を探っている。

まったく物音ひとつしない、静寂。

ルパン、携帯を取り出す。

モニターにはGPSが、次元の携帯の現在位置を示している。

ルパン、

「北東へ25メートル……か」

ルパン、キャットウォーク上をそっと移動する。

錆び付いた機械類で埋め尽くされた一階フロアの一角に、後から造り付けられたような不自然に新しい鉄扉が見えた。

素人がやったようなコンクリートの枠組みにはまったそのドアは、地下への入り口としか思えない作りになっていた。

ルパン、

「次元が言ってたのはコイツか……」

ルパン、しばらく考えてから、ゆっくりキャットウォークを降りる。

ルパン、物陰を伝いながらその鉄扉へ近づく。

辺りを見回して敵の不在を確認し、小さくそっとドアを開ける。

予想通り下へと続く階段があるが、先の方は暗闇に溶け込んで全く見えない。

人がやっとすれ違えるぐらいの幅しかないその階段からは風の唸りがわずかに聞こえてくるだけ。

ルパン、ジッポライターの火をともし、その階段を下りてゆく。

 

 

 

◆ダウンタウン、廃工場地下

その階段はすぐに終わり、薄暗く広い空間に出た。

上の廃工場と同じく、ここも機械類に埋め尽くされていたが、この部屋の機械類は作動している。

何かの精製プラントらしく金属製のタンクやパイプ類が有機的に絡み合っており、所々からゆるく白い煙が漏れ出している。

ルパン、部屋に充満する臭いに顔をしかめる。

「……ワルはみんなこれに手を出すねぇ」

ルパン、GPSの表示にしたがって進んでゆく。

前方に、少し広くなった場所が見えてくる。天井から電球の直射照明がそこだけついており、いかにも罠っぽい。

GPSの表示はそこを指している。

ルパン、機械類に身を摺り寄せた格好で様子を伺う。

照明の当たっている真ん中、一番明るい辺りにドラム缶が1つ置いてある。その上に次元の携帯があるのが見える。

ルパン、

「!」

その時、ルパンの耳がわずかな軋みを聞き取った。

ルパン、ビクッとなる。しかし何も起こらない。

ルパン、辺りを見回すうちに、照明が当たっているその向こうの暗がりに誰かがいることに気づく。

ルパン、

「はっ! 不二子っ! 次元っ!」

次元と不二子、6、7メートルの距離をはさんで後ろ手につるされている。二人とも爪先立ちになってシーソーのような金属製の装置の上に立っている。

足はほとんど浮きかけているようで、フラフラしている。

次元、苦しげに、

「す、すまねえ、ルパン。こいつは……」

ルパン、

「罠だってんだろ……不二子!大丈夫かっ?」

不二子、苦しげに

「今のところは……ね」

ルパン、

「がんばれ、今助けてやるからなっ!」

ルパン、ワルサーで不二子をつっているロープを撃とうとするが次元が遮る。

「やめろっ! ルパンっ。片方を撃てばバランスが崩れて二人とも死ぬっ!」

二人を縛り上げているロープは、上の方でローラーを介してつながっているようである。ロープを切れば二人とも落下する構造である。

次元と不二子の不安定な足元のさらに下方には、煮えたぎる高温の釜が口を広げている。

次元、

「両方同時にロープを切るしか手はねぇんだっ!」

不二子、爪先立ちで片方のヒールを落としかける。

「イヤ~~ン! アタシのヒールがっ!!」

ルパン、

「クッ!」

そこへ空港で会った光琳の声

「命の瀬戸際で靴の心配か……」

光琳、歩いて現れ、次元、不二子とルパンの間で立ち止まる。

ルパンの背後には黒づくめの男たちが多数、音もなく現れる。

光琳、

「普通こんなことまでしないんだが……ルパン、アンタの名声に敬意を表してみた。」

ルパン、怒る。

「ふざけるなっ!今すぐ二人を放せっ!!でないと……」

光琳、

「空港で言ったとおりだ……古文書をよこせ」

ルパン、いらだつ。

「だから知らねぇっつってんだろっ!!」

光琳、軽く溜息。

「……アンタにはがっかりだ。伝説の大泥棒、ルパン三世、大したことなかったな……」

ルパン、逆上してワルサーを抜く。

しかし、ワルサーの銃口が光琳に向くよりもずっと速く、光琳がルパンの目の前に立っている。

ルパン、目を見張って

「!」

光琳の指先がルパンの胸に触れている。

ルパン、何を突きつけられたのか見ようと視線を落としたときには、光琳は既にルパンから離れて元の場所へと戻っている。

ルパン、何が起こったのか理解できない。

「……な、なにしやがったっ!?」

 

 

 

 

 

光琳、

「無影掌(むえいしょう)……」

ルパン、

「なにっ!」

光琳、わずかに笑って

「アンタの心臓にいたずらをした……酷い痛みがくる、何度も。」

ルパン、

「?」

光琳、

「その度にアンタは弱ってゆく……そしてついには耐え切れず、死ぬ。……三日といったところかな?」

ルパン、

「スカしてんじゃねぇ!現に今オレはなんとも……」

ルパンが胸を張ったとき、心臓にハンマーで殴られたような衝撃が起こり、続いて鋭い針先で突き刺されるような苦痛が全身に沸き起こった。

ルパン、のたうつように倒れる。落としたワルサーが床に転がる。

「ぐぅぁああああっ!!」

光琳、ルパンの姿をじっと見つめている。

ルパン、苦痛がやや弱まって

「分かった……この痛みがホンモノだってことはな」

光琳、

「古文書だ」

ルパン、ヨロヨロ体を起こしながら

「これを治し、そこの二人を解放する保障は?」

光琳、

「約束する」

ルパン、、

「……信用できねぇな。……だがな、確実な手がひとつある」

ルパン、手がすばやくワルサーに伸びる。

光琳、あきれた、といった表情。

その時、尺八の音とともに壁面の分厚いコンクリートを一瞬で切り裂く鋭い音が響く。

ズタズタに切り裂かれたコンクリートの塊が床に落ち、外光をバックに五ェ門が現れる。

五ェ門、目を閉じたまま

「義により、助太刀に参った……」

五ェ門の手にはルパンからもらった携帯がある。

次の瞬間、五ェ門駆け出して、ルパンの背後を固めていた男たちの間を駆け抜ける。

そのすれ違う際、刀の鞘、柄で男たちに当身を入れて倒す。

五ェ門、止まらずルパンを素通りして、光琳へと殺到する。

五ェ門の避けようのない一打ち(鞘のまま)を、光琳は考えられないような体のひねりで空振りさせた。

五ェ門、カッと目を開く。

“なにっ!”

五ェ門、更に止まらずジャンプし、次元と不二子をつるしているロープを同時に切断し、二人を抱えて着地する。

不二子、

「キャッ!」

次元、

「助かったぜ」

五ェ門の注意は既に光琳に向いている。

「何奴」

光琳、軽く構える。

「おもしろいな、お前」

五ェ門、じわっと間を詰めて、流れるように抜刀する。

光琳、斬鉄剣の刃に背中を向けるようにすれちがう。

五ェ門、光琳の顔めがけて続けざまに上から斬り下ろす。

光琳、五ェ門が斬ろうとした位置ではなく、五ェ門と息が触れ合うほどのすぐ前にいる。光琳の左手が柔らかく斬鉄剣の柄頭を制している。

五ェ門、驚く。

「っ!?」

光琳がニヤリとして五ェ門の胸に触れようとしたとき、ルパンが閃光弾を二人の足元に投げ込んだ。

光琳、

「うっ!!」

光琳、強烈な光のせいでしばらくじっとしていたが、ゆっくり目を開ける。

既にルパン達は姿を消している。

光琳、ニヤリ

「……おもしろいな、ルパン」

ルパン三世-蒼海の悪魔 <版権リライトシナリオ> chap_03

 

 

 

◆昼間、蒼海ホテル、エントランス

蒼海ホテルは旧統治時代から続く、歴史ある名門ホテル。広大な敷地に数棟の建物、趣向を凝らした庭園などがある。

建物は外観も内部も、ヨーロッパと中国のミックスしたような印象。

 王宮の様な造りのエントランスに10台ほどのパトカー(埼玉県警)と機動隊輸送車両が騒々しく乗りつける。

 

 

 

◆蒼海ホテルの庭園

噴水、池、川、植物、石造りの灯篭など、中国情緒あふれる明るくシックな広い庭園。

巫女コンテスト出場者のためのプロモ撮影が行われている。

出場者と思しき一人の中国人女性・銀麗、衣装さんと楽しげにコンテスト用ドレスを仕立て直している。

銀麗、ドレスの仕上がりを気に入った様子。

そこへいきなり銭形と機動隊員たちが無神経に乗り込んでくる。

銭形、大声で

「やめろっ! 撮影は中止だっ! 聞こえんのか貴様っ!」

銭形、そばで撮影を続けるカメラマンのカメラをもぎとる。

銭形、矢継ぎ早に隊員たちに指示を出す。

銀麗、状況が分からず

「なっ、何ですかっ、あなた達はっ!」

銭形、高圧的に

「インターポールの銭形だ、ルパンが蒼海に潜入したという情報があるっ!」

銀麗、一歩も引かない。

「インターポールだかなんだか知りませんが、捜査なら他所でやっていただけませんかっ! ここは……」

銭形、遮るように

「近々蒼海では巫女コンテストなるものが開催されるらしいな……タイミングからいってそいつがルパンのターゲットである可能性が高い」

銀麗、あぜんとして

「そんないいかげんな……(完全に怒って)今すぐ出ていってくださいっ!」

銭形、無視して

「徹底的に調べるんだっ!」

機動隊員、コンテスト用ドレスを指差して

「警部ッ、これを!」

銭形、ドレスにずかずか近づいてゆく

「むっ、これはコンテストの衣装だな……明日のコンテストでこれを着るのかっ?」

銀麗、駆け寄る。

「ドレスに触らないでっ!」

銭形、ドレスをつかんでもちあげる。

「何かあるかもしれん……」

銀麗、ドレスを取り返そうとして銭形と取り合いになり、ドレスが破れる。

「!」

銀麗、はっとなってドレスを見つめる。

「ああ……なんてことをっ!」

銭形、ちょっとバツが悪いが開き直る。

「あ、あなたが引っ張るから……」

銀麗、信じられないといった表情で銭形を見る。

「私のせいですって!? どうしてくれるのっ! 一週間も掛けて作ったドレスなのよっ! 明日のコンテストに出場できないじゃないっ!」

銀麗、ドレスを見つめて傷心。

その場の全員が事の成り行きを見ている、固まった空気

銭形、ちょっとあわてて

「え? あ、あなたはコンテストの出場者なんですか?」

側の機動隊員がささやく。

「まずいですよ、警部……」

銭形、その隊員に小声で怒鳴り返す。

「そんなこといったってしょうがないだろがっ!」

 

 

 

 

 

銭形、気まずそうに

「あ、あのぅ、お嬢さん……」

銀麗、完全に怒って

 「銀麗、李 銀麗ですっ! どうしてくれるんですかっ! ゼ、ゼニ……」

銭形、胸を張って

「銭形です。インターポールの銭……」

銀麗、遮るように

「どうでもいいです! それよりどうしてくれるんですか! このドレスをっ!!」

銭形、どうしていいか分からず、ドレスを持ち上げ

「あ~、私にお任せください。こう見えても裁縫は得意でして、若い頃は自分でズボンのほころびも直していたものですから……」

銭形、ドレスを下手に扱ってさらに修復不能なほど破いてしまう。

銀麗、信じられない生き物を見る目で

「銭形さん、あなたって最低です……」

銭形、自分でもそう思う。

が、開き直る。

「ル、ルパンがこの蒼海で何かをたくらんでいることは確かです。お詫びにインターポールがあなたを警護しますっ。」

銀麗、

「結構ですっ! ルパンなどという人、聞いたこともありませんっ。」

銭形、胸を張って

「いや、警護します。ルパン逮捕のためです!」

 

 

 

◆夕方、ルパンが蒼海市内にレンタルしたウィークリーマンションの一室(アジト)

かつては古い中流ホテルだったらしいが経営者が変わり、長期滞在用の部屋となった。家具調度も備え付けてある。

次元、窓からカーテン越しに追跡者を警戒するため見張っている。

五ェ門、ドアの側で瞑想(?)中。

不二子、なにをするでもなく座っている。

ルパン、革張りの長ソファに寝かされていたがうなされて目が覚める。胸には外傷は無かったが、包帯を巻いて手当てしてある。

不二子、心配そうに

「大丈夫? ルパン」

ルパン、むっくり起き上がって

「あ~、よく眠ったぜ」

不二子、ヒールの中に隠していた古文書を取り出し、ルパンに見せる。

「……これが例の古文書」

ルパン、あっけにとられて

「や~っぱり不二子だったのか……」

ルパン、古文書を受け取る

「そんじゃまぁ、洗いざらいしゃべってみちゃおうか? 不二子チャン」

不二子、しおらしく語り始める。

「アタシが蒼海の財宝の情報をキャッチしてここに来たのが3週間前……いろいろ調べてどうやらそれが、かつての李王朝の王宮・万府京(ばんぷきょう)にあるらしいって分かったの」

次元、警戒を続けたまま

「万府京といやぁ、蒼海の山手にあるあの観光名所か? そんな賑やかなところに財宝なんて隠すか?」

不二子、

「その地下の洞窟にあるらしいんだけど、王宮の玉座の間にある入り口の開け方がどうしても分からなかったの。それを記した古文書のうわさを聞きつけて探っているうちに、ある男が浮かび上がってきたの……」

ルパン、

「それがあの男……」

不二子

「そう、李 光琳」

次元、

「ん、聞いたことがあるぞ、その名は。中国の新興シンジケート・天竜界のボス、若いが切れる男。うわさでは殺しても死なない男だとも……なるほどな」

ルパン、

「それで、この古文書をヤツから盗み出した……」

不二子、

「ええ……たかが古文書だからと、最初は軽く考えてたの。でも、盗まれたと知った光琳の執念は異常だったわ……」

不二子、悪寒を抑えるように両腕を組む。

「アタシ、怖くなってルパンに連絡したの……でもヤツの手が回りそうになって蒼海から逃げ出そうとしたところを捕まったって訳」

次元、

「ここは中国の経済特区だ。外部との連絡は海と空しかねぇ……光琳はもうどちらも抑えちまってるだろうなぁ」

ルパン、

「袋のねずみ、って訳だ」

不二子、

「……こんなことになってしまって、本当にごめんなさい」

ルパン、気楽そうに

「過ぎたことはしょうがねぇ、楽観的にイキマショ!……切り札の古文書もこっちにあるんだしな」

ルパン、古文書を眺めて

「しっかし、こりゃなんだぁ? 何が書いてあるのかさっぱりだ」

古文書には文字らしきもの多数と、意味不明な図案が書いてあるだけ。

不二子、

「何かの暗号だと思って、解読ソフトに掛けたんだけどダメだったわ」

ルパン、古文書をじ~~~~っを見る。

「ん~~、こりゃただの暗号……じゃなく、れっきとした文字じゃないかな?……」

不二子、

「文字?こんなへんてこりんな文字、世界中捜しても無いわよ」

ルパン、

「いや、現在じゃない……遠い過去の、古代文字かもしれねえな」

不二子、

「そういえば、蒼海は李王朝という単一の王族が3千年以上にわたって支配してきた、中国でも珍しい土地なの。その李王朝が出現する前の時代なら、もしかして……」

ルパン、

「調べてみる価値はありそうだな……」

ルパン、立ち上がってドアへと向かう。

次元、

「おいおい! 今、無茶は禁物だぜ、ルパン」

ルパン、笑って

「な~に、大したことをするわけじゃねぇ」

ルパン、ルパンカーから防水バッグを持って部屋に戻ってくる。

中にはいろんな小道具がはいっている。

ルパン、バッグから小型超高性能ハンドヘルドコンピュータをとりだし、電源を入れる。

OSが立ち上がり、広域無線LANに接続し、検索を何回かかける。

ルパン、

「ほぅ~ら、来た。……蒼海前李王朝時代文明、これだ」

液晶モニターには、蒼海の古代文明に関する研究発表論文が表示される。

ルパン、

「資料……文献……あった! こいつだ」

液晶モニターに並んだサムネイル画像のうち、ルパンが指差したものはまさしく目の前にある古文書そのものであった。

「さぁて、開けてびっくり玉手箱っと」

ルパン、そのサムネイルの下の『解読』と書かれたボタンをクリックするが、『sorry,file not found(該当ページ、ナシ)』の表示

次元、

「え? ねぇのかよ!」

ルパン、他の文献の解読ボタンをクリックしてみるとリンクされた解読ページは開く。が、その古文書のみリンクを張った解読ページが存在しない。

サーバ上の隠しファイルも含め全て表示させてみるが、古文書の内容を書いたと思われるファイル名は存在しなかった。

ルパン、

「意図的にこのファイルだけアップロードしてないってことか……」

次元、

「じゃ、どうしようもねぇ」

ルパン、

「あきらめるのはまだ早いぜ。他の文献の翻訳内容をざっと見てみたが、ずいぶん機械チックだ。つまり……」

不二子、

「翻訳ソフトが存在する……」

ルパン、

「そいつをいただきにいこう」

不二子、

「どこへ?」

ルパン、

「このサイトを主催している『蒼海前史民俗研究所』だ」

不二子、

「それって、万府京の中にある博物館のことよ!」

次元、

「ちょっと待てよ、今街中にぁ光琳の手下どもが手ぐすね引いて待ち構えてるんだぜ!」

ルパン、巻かれた包帯を解き着替える。

「そいつぁ、承知の上だ。ここはヤツらの庭ん中のようなもんだ……じっとしてても、いずれは見つかる。オレは待ってるような男じゃないのサ」

ルパン、ジャケットをはおりながら

「強制はしねぇ。イヤなら乗らなくてもかまわねぇ……」

次元、

「ん、一理あるな。……よしっ、その古文書にかけてみるか!」

五ェ門、瞑目したまま返事をしない。

ルパン、次元、不二子、部屋を出てゆく。

五ェ門、最後に出てゆく不二子を呼び止める。

「不二子……光琳の言ったこと、ルパンが三日で死ぬと……それは本当なのか?」

不二子、立ち止まって

「光琳は不気味なうわさに包まれた男よ。無影掌の話もそのうちの一つ、誰も見たものはいないわ」

五ェ門、

「……おヌシ、我らを謀ろうとしているのではあるまいな?」

不二子、謎めいた微笑み

「だったらどうするの? アタシを斬る?」

五ェ門、

「……」

不二子、

「斬ってもいいのよ……」

不二子、出てゆく。

五ェ門、部屋に残される。

 

 

 

◆夜、蒼海・万府京

低い山頂に築かれていた李王朝の広大な王宮・万府京、現代技術で極彩色に復元され今では有名な観光スポット。

内外の観光客が連日押し寄せるにぎやかさであるが、今は閉館時間を過ぎて人影はない。

(夜間でも王宮はライトアップされている。)

その一角に蒼海の過去の文物の研究、展示を目的とした『蒼海前史民俗研究所』がある。

王宮の景観を損なわないよう、中国伝統建築を模した鉄筋コンクリート製の大きな建物。(王宮建物よりは地味)

 

 

 

◆蒼海前史民俗研究所内

外見と違って研究所の内部はごく普通のオフィスビル的。

ルパン、次元、不二子、既に研究所に侵入している。

ルパン、研究所のネットワークに侵入し翻訳ソフトを見つける。

「こいつだ、あったぜ次元。そっちはどうだ?」

次元、古文書をスキャンしOCRにかけている。

「あ~、さすがは研究機関だ、もう終わった。ファイルをそっちに送る」

次元、古文書をスキャンしたデータを翻訳ソフトをインストールしてある端末にコピーする。

ルパン、

「よ~し来た。んじゃ、ぽちっとな」

次元が送ってきたファイルを翻訳ソフトのアイコンにドラッグすると解読が始まる。

2分ほどで順調に進行し終わった。

ルパン、

「ほんじゃま、見てみようか?」

翻訳済みのデータを立ち上げる。

ルパン、

「ん~~なになに……『新月の夜、祝福を受けし巫女の手により桃水晶を玉座に据えよ。さすれば道を指し示す』だと……?」

次元、

「それにこの図面はどうやら王宮地下の洞窟の地図らしいぜ。」

玉座の間から複雑な経路である地点まで延びるルートが説明されている。

ルパン、

「よ~し、仕事は済んだ。引き上げだ」

ルパン、翻訳済みのデータを自分のハンドヘルドコンピュータにコピーしてから、研究所のPCから完全削除する。

 

 

 

◆夜、ルパンアジト

ルパン、次元、不二子、古文書の翻訳データを前に作戦会議。

テレビがバラエティ番組を流している。

五ェ門の姿はない。

ルパン、

「……『祝福を受けし巫女』と『桃水晶』、この二つで万府京の玉座の間が開くってことだ」

次元、

「で、それってナンだ?」

ルパン、

「俺に聞くなよ~」

不二子、はっとする。

「これじゃない!? ルパンっ!」

テレビ画面、バラエティ番組の合間のCMで巫女コンテストの宣伝をやっている。

『……さぁ、本年最大の蒼海イベント巫女コンテスト!世界中からよりすぐりの美女が30名参加し、美しき女の戦いを繰り広げます。見事栄冠を手にした美女には、蒼海王宮伝統の巫女の祝福と、これまた王宮宝物である桃水晶が与えられます。二日後の美の祭典をどうぞお楽しみにっ!』

ルパン、

「ああ、不二子。こいつだ! よし次のターゲットは巫女コンテストで決まりだな」

不二子、

「私、出場するっ!」

ルパン、次元、驚く。

「んぇえ~~~っ!!」

不二子、

「って、ちょっとそこまで驚くことないじゃない!」

次元、めんどくさそうに

「盗んじまったほうが手っ取り早ぇだろが」

不二子、

「だめよ。桃水晶は盗めるけど、巫女の祝福はそうはいかないわ」

ルパン、

「ってことは、こいつに出場して優勝しなきゃ2つは手にはいらない」

不二子、うれしそうに

「そゆことね!」

次元、がっくり

「果てしなくうまく行かねえ気がしてきたぜぇ……」

ルパン、

「ん、ここは一丁不二子にがんばってもらうか!」

不二子、満足そうに

「任せといて、ルパン」

ルパン、

「ん……だが、念には念を入れとこう。」

不二子、

「どういうこと?」

ルパン、

「要は、対抗馬を潰しておくってこと。ホレ……」

ルパン、テーブルの雑誌を取って見せる。

テーブルの上の巫女コンテストの特集記事の中に、優勝候補筆頭として銀麗が紹介してある。

次元、雑誌を取って

「ん~、今大会の優勝候補No.1の李 銀麗。かつての李王朝の血を引く才媛、ダウンタウン出身でボランティア活動に従事しており、市民の支持度は非常に高い……だと」

ルパン、

「この銀麗がもし、出場しなければ……」

不二子、ムキになって

「そんな必要ないわ。私の実力で十分優勝できるわよ」

ルパン、

「オレもそー思うんだけっどもよぉ、なんつーか、その……保険ってやつかな~」

次元、雑誌を見ながら

「銀麗は今、蒼海ホテルに泊まってるってよ」

ルパン、ポケットから小瓶を取り出す。中には液体が揺れている。

「よ~し。じゃ、銀麗にはこいつでしばらく眠り姫にでもなってもらおうか。不二子は巫女コンテストのエントリー手続きを頼むワ」

不二子、

「任せといて!」

次元、不承不承

「決まりだな」

ルパン、

「んじゃ、今夜はもうお開きだ」

ルパン、立ち上がるがふらふらとバランスを崩し不二子に支えられる。

不二子、

「大丈夫?」

ルパン、

「あぁ、ちょっと疲れただけだ。一晩寝りゃよくなる」

ルパン、不二子の手を押しやって寝室に消える。

次元、

「相当堪えたな……無影掌が」

不二子、心配そう

次元、

「チッ、こんな時に五ェ門のやつぁどこほっつき歩いてんだっ……」

 

 

 

◆夜、蒼海裏通り商店街

まだ再開発されていない昔ながらの商店街。新しくはないが人が多く活気がある。

五ェ門、とある漢方薬局へと入る。

「御免……」

外の喧騒とは対照的に静まり返った店内には、主人と思しき老婆が座っている。

五ェ門、老婆の前に立って

「ちとものを尋ねたいのだが……」

老婆、五ェ門に理解できない言葉をしゃべる。

「○△□……」

五ェ門、

「通じぬか……無影掌だ、無影掌に効く薬は無いか?」

老婆、五ェ門のいうことを理解した様子はない。

五ェ門、手近のメモ帳に無影掌と書いて渡す。

老婆、しばらく見ていたが、急に血相を変えてわめきだす。

五ェ門、そんな老婆に店の外まで追い出される。

「無影掌……一体……」

その時、背後に監視する視線を感じる。

五ェ門、そ知らぬふりでわき道にそれ、物陰に身を隠す。

しばらくすると、黒づくめの男(光琳の配下)が一人やってきてキョロキョロする。

五ェ門、

「探し物かな?」

男、ギクッと振り返ったところを、斬鉄剣の柄を鳩尾につきこまれて気絶する。

五ェ門、

「この分では、皆のところへ戻るは危険……はて、どうしたものか。」

その時、離れたところから初老の男性が静かに五ェ門に話しかける。

「そこの漢方薬の店に来た日本人というのは、あんたかね?」

五ェ門、振り返る。

「いかにも……」

初老の男性、

「あんた、黒社会の人間か?」

五ェ門、

「黒社会?中国の裏の世界のことだな……拙者、日本から来た者だ。当地のマフィアとは関係ござらぬ」

初老の男性、うなづいて

「ん、ついてきなさい」

五ェ門、初老の男性の後について行く。

 

 

 

◆夜、蒼海市街から少し離れた静かな住宅地、その一角にある、初老の男性の自宅。

そこは小さな医院で、初老の男性はそこの医師である。

五ェ門と医師、テーブルをはさんで座り茶をすすっている。

医師、

「で、あんたはなぜ無影掌のことを?」

五ェ門、

「拙者の友人が光琳という男に、その無影掌を受けたのです。それで……」

医師、表情を苦しげにゆがめて

「光琳……」

五ェ門、

「ご老師、無影掌を受ければ三日で命が無い、というのは誠でござろうか?」

医師、

「……二年前、胸の激痛に苦しむ患者がかつぎこまれたことがあった。原因は不明、手の施しようがなくその場で亡くなった」

五ェ門、

「!」

医師、

「その者の最後の言葉が……無影掌、だった。その後警察に遺体を引き取ってもらったのだが、不審死として司法解剖したらしい……結果は、その者は全くの健康体であったということだった」

五ェ門、

「では、三日で死ぬとは誠であったか!」

医師、

「ぅむ……」

五ェ門、

「ならば、その無影掌を治す手はっ!?」

医師、茶碗に目を落として

「無影掌自体、幽霊のようなものだ。ましてやそれを治療するなど、雲をつかむような話というしかない……もし治せるとしたら」

五ェ門、

「光琳自身……か」

医師、

「……光琳は、もとはダウンタウンのストリートギャングほどのことだったらしいが……」

 

 

 

◇医師の回想

ダウンタウンを根城とする十代の少年ストリートギャングの一員だった光琳

彼らが収入源としてゲームセンターを作ったことが、旧来のマフィア組織との抗争の始まりであった。

その闘いの中で少年たちは次々に命を落としていった。

偶然から光琳はリーダーとなった。

『俺達を拒絶するこの世界の扉をこじ開けろっ!』

爆破、見せしめ……光琳はドラスティックな方法で反撃を始めた。

光琳自身も敵のターゲットとして狙われたのだが、3回の爆破報復を無傷で生き延びた。『不死』とうわさされるようになった光琳は、やがて既存のマフィアを一掃し、遂にはダウンタウンの支配者に登り詰めた。

キィとなる抗争は全て、光琳一人がやったといわれている。

医師、off

「光琳は決して卑怯な男ではないが、その底知れぬ残虐は、敵に対しては躊躇がない……」

回想終わり。

 

 

 

◆医師の自宅内

医師、

「あんたの友人には気の毒だが、あきらめるしかない。あんたも早くこの蒼海から姿を消した方がいいだろう」

五ェ門、瞑目して医師の言葉をかみしめる。

「お話、しかと承った……(立ち上がって)結構なお茶でござった、御免」

五ェ門、医師宅を出てゆく。

門柱の角を曲がったところでふと立ち止まる。

 

 

 

◇フラッシュインサート・五ェ門の回想

ダウンタウン、光琳の廃工場地下、光琳との対決

光琳が避けた後の、返しの斬り下ろしを光琳が片手で制している。

五ェ門、off

「尋常とは思えぬ……」

五ェ門の胸に当てられた光琳の手。

そして、苦痛にあえぐルパンが閃光弾で五ェ門を救う。

五ェ門の回想終わり

 

 

 

◆医師の自宅の前

五ェ門、モノローグ

“ルパン……”

五ェ門、再び歩き出す。

医師、表に出て去ってゆく五ェ門をカーテンの隙間から目で追っている。

医師の背後に足音が聞こえて、黒づくめの男(光琳の配下)が現れた。

医師、

「いいのかい?本当のことを言ってしまったが……」

男、

「感謝する」

男、五ェ門の後を追って家を出て行く。

 

(以下、続く)

 
 

 
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