No.196958

遥か彼方、蒼天の向こうへ-真†魏伝-序章・第一話

月千一夜さん

始めまして
作者の、月千一夜と申します
本作は、オリジナル“魏√after”をテーマとした作品です
“真・恋姫†無双”の魏√攻略者にしかわからないネタが多々あります
また、ストーリー上の都合でオリジナルキャラクターも多く登場します

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2011-01-20 23:08:25 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:22024   閲覧ユーザー数:16422

夢を見る・・・あの日から何度も、同じ夢を

 

『さよなら・・・寂しがり屋の女の子』

 

響いてくるのは、とても優しくて・・・とても温かくて

だけど、とても苦しそうな貴方の声

その声を聞くだけで、私の胸は強く締め付けられる

 

『一刀・・・!』

 

気づいた時には、私は叫んでいた

貴方の名を

大切な人の名を

喉が潰れそうになるくらいに叫んでいた

 

嫌だ・・・!

嫌だ嫌だ嫌だ・・・離れたくない!!

 

そんな想いを込め、私は彼の名を叫ぶ

 

だけど・・・

 

 

『さよなら・・・愛していたよ、華琳』

 

 

私の声が、彼に届くことはなかった

 

『あ・・・ぁ・・・』

 

 

振り返ったとき、そこにはもう私が一番欲しかったあの笑顔はない

彼は、もういない

その場に、私一人・・・取り残されてしまった

 

『ぅ、ぁぁ・・・』

 

力なく、その場に崩れ落ちる

 

体に力が入らない

頭が、上手く働かない

 

私はだらしなくその場に膝をついたまま・・・泣いた

 

込み上げるものを、抑えることができなくて

溢れ出る想いが、あまりにも多すぎて

 

私は、ただただ・・・泣き続けた

 

『ばかっ・・・ばかぁ

ほんとに消えるなんて・・・なんで私の側にいてくれないの・・・っ?

ずっといるっていったじゃない!!』

 

 

頭が痛む

わかっている

全部、わかっている

私は、全部理解してしまっている

 

ああ、もう・・・彼はいない

私の隣で笑っていた彼はもう、ここにはいないんだ

 

『一刀・・・一刀ぉっ!』

 

憎らしいほどに、美しい月の下

私の声だけが響いている

 

涙は止まらない

止まるわけがない

 

そうだ、私は・・・今さらになって気づいたのだ

 

 

 

『一刀・・・・・・』

 

 

この日、私は・・・一番大切なモノを失ってしまったのだと

 

 

 

 

 

 

《遥か彼方、蒼天の向こうへ-真†魏伝-》

序章 一話【歩みを止めた少女】

 

 

ーーー†ーーー

 

「また・・・あの夢、か」

 

目を覚まし、見上げた天井

 

私の心は既に、大分落ち着きを取り戻していた

未だに毎日このような夢を見るのだ・・・多少なりとも、慣れるというものだ

しかし・・・

 

「やっぱり、涙だけは・・・出てしまうのね」

 

そう言って、私は目元にそっと触れる

触れた部分・・・涙を流したあとに、私は苦笑した

 

「もう三年も経つのに、未だにこのザマよ・・・一刀」

 

呟き、私は寝台から体を起こした

いつもと同じ、体に僅かに残る気だるさに顔をしかめ・・・私は着替えるため人を呼んだ

 

 

 

そう・・・もうあれから三年経つのだ

一刀が、天の御遣いである北郷一刀が天に帰ってから

 

あの日、成都での宴の夜

美しい月に照らされた彼

彼はこの乱世の終わりと共に、その役目を終えたといい・・・天へと帰ってしまったのだ

まるではじめからここにはいなかったかのように、その姿は跡形もなく消えてしまっていた

 

それは、さながら“胡蝶の夢”のように・・・

 

その光景を、私は・・・三年経った今でもこうして、毎晩のように夢に見る

 

だから、忘れることはない

忘れることはできない

忘れられるはずがない

 

これはきっと罰なのだ

 

私に対する、天からの罰

 

最後の・・・本当に最期の瞬間

 

『さよなら・・・愛していたよ、華琳』

 

 

彼の言葉から目を背けてしまった愚かな私への・・・罰なのだ

 

 

 

 

「華琳様・・・?」

 

ふいに聞こえてきた声

その声に、私はハッと我にかえる

声の主は、先ほどまで私の着替えを手伝っていた秋蘭のものだった

 

「どうかなさいましたか?」

 

「別に、何でもないわ」

 

「そうですか」

 

言いながら、秋蘭は私から少し離れ頭を下げる

その姿に、私は苦笑してしまう

 

多分・・・彼女は気づいているのだろう

だけど、何も言わない

私も、彼女達も

それが、いつの間にかできていた・・・私達の中の“決まり”

 

皆、彼を愛していたのだ

秋蘭も春蘭も、あの桂花でさえきっと彼を愛していた

あの日、誰よりも泣いていたのは・・・桂花だったのだから

 

桂花だけじゃない

皆、泣いた

一日中、三日三晩・・・ただひたすら泣いた

 

だからこそ、わかってしまう

そのことに気づいても、私達は絶対に聞いたりはしない

 

そのようなことを繰り返し、この三年間を過ごしてきた

不様だ

傷は癒えるどころか、ますます酷くなっている

情けない

私達は、未だに前に進めていないのだ

 

会いたい

だけど、きっと・・・もう会えない

 

 

「華琳様・・・」

 

「ぇ・・・?」

 

再び聞こえた、秋蘭の声

気づいた時にはもう、私の目からは・・・とめどない想いが溢れ出していた

 

 

「秋蘭、お願い・・・もうしばらく、一人にしてくれないかしら?」

 

「御意・・・では、しばらくしたら窺いますので」

 

「お願い・・・」

 

静かに、部屋から出ていく秋蘭

その背中を黙って見送る

 

そして・・・想いが弾けた

 

 

「うあぁ・・・一刀、一刀・・・一刀!」

 

 

膝をつき、ただ泣きじゃくる

 

ああ、本当に

本当に、不様だ

 

三年・・・もう三年経ったのに

 

私が、覇王であるこの私が・・・一番、前に進んでいないじゃないか

 

なんて惨めなのだろう

なんて情けないのだろう

 

私は、私は・・・

 

 

 

 

 

~貴女は、本当にそれでいいの?~

 

 

「ぇ・・・」

 

聴こえてきたのは・・・声

でも、ただの声じゃない

 

この声を、私はよく知っている

 

「っ・・・」

 

慌てて、立ち上がり・・・見つめるのは、部屋の窓

そこに座る人物の姿に、私は言葉を失ってしまった

 

『あら、どうかしたのかしら?』

 

だがそんな私の様子に対して、その人物はあざ笑うかのように・・・実際に少し笑いながら、そう言った

 

「私は、夢でも見ているのかしら?」

 

『ふふ、そうかもしれないわね』

 

ようやく出た言葉

目の前の【少女】は、不気味に笑う

 

「貴女は・・・何者なの?」

 

多少のイラつきを覚えながらも、私は彼女にたずねる

彼女は・・・愉快そうに表情を歪める

 

『見てわかるでしょう?

この顔が、この声が、この姿が・・・貴女には、いったい誰に見えるというの?』

 

言いながら、彼女は・・・こちらに歩み寄ってくる

私は、その場から動けないでいた

 

目の前の光景に、軽い眩暈まで感じてしまう

 

『貴女ならわかるでしょう?

誰よりも私を知り、誰よりも私を知らない貴女なら』

 

やがて、彼女は私のすぐ傍まで・・・耳元に、口元を近づけてくる

 

そして、こう言ったのだ

 

 

 

『ねぇ・・・もう一度、彼に会いたくない?』

 

 

 

時間が止まってしまったかのような錯覚

私の目の前

私と全く同じ顔をした【彼女】の言葉

 

 

「は・・・?」

 

 

私は、全身から血の気が引いていくのを感じた

 

同時に、“歓喜”する

 

 

 

「は、あはは・・・あははははははははははっ!!」

 

 

 

彼に、また会える?

そう思うと、私は笑みを止める事ができなかった

 

「ふ、ふふふ・・・これは、夢なのかしら?」

 

『さぁ? どうかしら

でもそんなことは、もうどうでもいいでしょう?』

 

「ええ、そうね

そんなことは、もうどうでもいいわ」

 

そう言って、私は笑った

そうだ、忘れていた

 

私は覇王・・・曹孟徳なのだ

一度手に入れると決めたものは、絶対に手に入れてみせる

それがたとえ、遥か彼方・・・蒼天の向こうにあるモノだったとしても

 

「聞かせなさい・・・彼に会う、その方法とやらを」

 

『ふふふ、それでこそ【私】だわ

いいでしょう、聞かせてあげるわ・・・彼に会うための、その方法を』

 

 

ああ、そうだ

 

ようやくわかった

ようやく理解した

 

私がやらなくてはいけないことを・・・

 

 

 

 

 

「私は、絶対に“貴方”を奪い返してみせる!!

たとえ天を、“全て”を敵にまわしたとしてもっ!!」

 

 

 

 

部屋の中

響く・・・“嗤い声”

 

二人の“覇王”の嗤い声は、響いていく

窓の向こうに広がる、今にも雨が降り出しそうな・・・薄暗い雲の向こうにまで

 

不気味に響いていった・・・

 

 

 

ーー†ーー

 

「お~い、遊びにきたで~」

 

白い、清潔感のある部屋の中

一人の男がそのような声と共に入ってきた

眼鏡をかけた、一人の青年だ

 

「なんや、ま~だ寝とるんかいな」

 

言いながら、彼はその部屋の中心にあるベッドの傍まで歩み寄る

それから椅子をベッドの横に置き、そこに座り込んだ

 

そして、見つめた先・・・一人の青年が眠っていた

長い茶色い髪をした、端正な顔立ちの青年だ

彼はその青年を見つめたまま、フッと微笑みを浮かべた

 

 

「はよ起きいや・・・“かずぴー”」

 

 

呟き、彼はベッドに眠る【青年】の髪に触れた

長く、茶色がかったその髪に

 

 

「返事くらいせぇや・・・なぁ?」

 

 

そして、見上げた天井

部屋と同じで白く清潔なその天井に、彼は深い溜め息をこぼした

 

「もう5年も経つんやな・・・かずぴーが起きんようになって」

 

 

そう、五年だ

彼が・・・“青年”が眠りについてから、もう五年の月日が流れていたのだ

その時のことを、彼は今でも鮮明に覚えている

 

突然、行方不明になった親友

その親友の姿を、彼はある日発見したのだ

 

学園の中庭・・・そこで、涙を流しながら眠る彼の姿を

 

 

 

 

 

「あれからもう五年も経つんや・・・月日の流れってんは、早いもんやなぁ」

 

 

言って、彼は立ち上がる

それから、彼は歩き出した

 

 

「ほなら、また明日も来るで・・・かずぴー」

 

 

そう言って、彼はその部屋から出て行った

 

 

 

その場には、ベッドで眠る青年だけ

部屋の中は静寂に包まれる

 

 

「・・・ん」

 

そんな中、ふいに・・・何か、声のようなものが聴こえた

だがしかし、ここには青年以外は誰もいない

故に、この声に対し疑問に思うものはいないのだ

 

だからこそ、誰も知らない・・・気づかない

 

 

 

「か・・・ん・・・・・」

 

 

終わってしまったはずの、“一つの物語”

そのページに、新たな“物語”が綴られようとしていることに

 

今はまだ、気付いていない

 

病室の窓の向こう

果てしなく広がる、あの青空以外は

 

 

 

「か・・・り、ん」

 

 

 

遥か彼方、蒼天の向こうへ

その声は、今はまだ届かない・・・

 

 

 

 

 

 

≪遥か彼方、蒼天の向こうへ-真†魏伝-≫

   序章 ~開†幕~

 

 

 

物語は・・・もう間もなく、始まろうとしていた

 

 

★あとがき★

 

どもっですw月千一夜ですww

 

さって、他の作品ももうすぐ終わりそうですし此方もそろそろ始めようかな

というわけで、序章の修正版です

地味に長くなってしまった

 

今作は≪雲の向こう、君に会いに-魏伝-≫と対を為す物語です

あの作中で言っていた“そうなったかもしれない未来”が舞台

因みに、雲君を読まなくても全然お話はわかりますんでww別に無理して合わせて読む必要もありません

ただ、雲君内での“北郷一刀”の決意を知っていれば少し一刀がカッコよく見えるかも・・・いや、ないか(ぇ

 

今のところ、雲君を超す“長編”になる予定です

さらに戦闘描写も多く、“死”についても深く触れていくハズ

 

雲君とはまた違った物語が展開していきます

勿論、シロタビとは全然違いますwwwwwwwwwこちらは、ガチなafterものです

 

ともあれ、序章はあと参話くらい続きます・・・ってか、序章だけでかなり続くなぁ

序章では主に、華琳達魏メンバーが活躍していきます

一刀君の出番は、もう少し先になるでしょう

 

それでは、またお会いする日まで


 
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