No.194430

真・恋姫†無双~物語は俺が書く~ 第17幕

覇炎さん

初心に帰りたいと思う今日この頃。

 投稿ペースがもう、酷い。でも言いたい。

 これを読んでくれる貴方方へ。

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2011-01-06 23:18:29 投稿 / 全15ページ    総閲覧数:3521   閲覧ユーザー数:2738

 

 

 

 

――― 俺は………そうか、あのデカブツを倒して。

 

 

 今、“俺”の視界には青い空が広がっていた。しかし、妙にフワフワとした感覚に包まれており、すぐに現実では無い事を理解する。

 

 差し詰め、ここは夢の中あるいはいつもの『観せられる空間』だと考える。その考えは的中していた。

 

 

 

 今、まさに“一刀”が城壁から降りて門前へと向っているところが観えた。

 

 

――― 俺はまた何かを“観”ているのか…。

 

 

 訓練場に着く。

 

そこには整列させた兵士の前には、小隊長と思われる三人娘がおりその娘が“一刀”に気づいた。

 

“俺”は其の子達を知っている。

 

 

――― あれは楽進と李典、于禁も…。

 

 

 彼女達は“一刀”に駆け寄り騒ぎ始めた。

 

 

――― 『どうやった?な、どうやったー!?』

 

――― 『上手く出来たと思うんだけどー……』

 

――― 『お気に召して頂けたでしょうか?』

 

 

 三者三様でそれぞれの感想を言っている。何かのお披露目でも行ったのだろうか?

 

 

――― 『大丈夫、大満足だったみたいだ』

 

――― 『ホントに!?』

 

――― 『あぁ、労いの言葉をもらったよ』

 

――― 『良かったぁ……!』

 

――― 『ふぅ~……これで一安心やなあ!』

 

 “一刀”の言葉に三人の表情も見る見る内に笑顔になった。

 

――― またか。“俺”はこの三人と仲良くなった覚えはない。でも理解が出来る。あの三人が向けている笑顔は“俺”では無く、彼女たちの目の前にいる、“一刀”に向けているモノだと…。

 

――― でも、朧〔おぼろ〕げではあるが俺自身も知っている。彼女達の笑顔を。『俺』が『アイツ』なのか?それとも『アイツ』が『俺』なのか?

 

 

 未だに理解出来ないこの現象。でも、何度もこの現象に逢っている内に俺は在る仮説を立てた。

 

 

 

 

 一つ。

 

 これは未だに実体の見えない敵の罠。

 

 例えば、于吉が俺を混乱させる為に見せている幻術や呪いの類。

 

 どうして、このような幻想を観せるのかは分からない……。

 

 いや、若しかしたら俺が知らない願望なのかもしれない。

 

 

――― 誰かと笑い合いたい。

 

 

 傍から見れば、拙〔つたな〕い願いであろう。

 

 しかし、幼少時代から孤独や人の闇を知っているからこそ…。

 

 

――― クッ!カット、カット、カット!!思考中断…。余計な詮索は混乱を招くだけだ。次の仮設を…。

 

 

 

 二つ。

 

 俺の知らない過去、つまり自分が記憶喪失。

 

 俺にそんな初期設定は無いし、若し在ったとしてもアイツら…楽進たちの方が最初にアクションを起こすはず。とすると、みんな揃って記憶喪失?あり得そうでないだろ?

 

 

 最後に俺は実は妄想癖を持っていた!

 

 

 ………はいはい、スルー、スルー。

 

 

 最後のあれは冗談としてだ…、いや、ほんとにな。もし、最初の二つだったとして……あれ?

 

 

――― 本当にこれだけか?何か腑に落ちない…。まだ、何か可能性が残っているのでは?

 

 

 貂蝉が言っていた…。

 

――― 『この世界に生きるもの、全ては本物よ。命が奪われれば死ぬし、助ければ生き延びる。私が“今の”ご主人様に言えるのはそれだけよん』

 

 

 左慈が吼えていた…。

 

――― 『………これほどの怒り………!!!感じさせた“北郷 一刀は”貴様が初めてだぁ!!』

 

 

 あの声が言っていた…。

 

――― 『…何処ノ“世界”ニモ、ドノ時代ニモ、無謀ト勇敢ヲ吐キ違エル者ハ、イルモノダ』

 

――― 『知ラン。寧ロ我ノ事ナド、ソノ辺ニ捨テ置ケ。“今ノオ前”ニ言ッテモ何モ理解出来ン。其レヨリモ』

 

――― 『成長シ、『真ノ存在[役割]』ヲ知ッタオ前。今ノオ前デハ、本当ノ“世界[真実]”ヲ知レバ自殺サレカネン』

 

 

 

――― 『今の俺』?つまり“昔の俺”がいる?

 

――― 『何処の世界』にも?それは“この世界以外”にも違う世界が存在している?

 

――― 『真の役割』、『本当の世界[真実]』って………。

 

 

――― まさか、今の俺の前にいる一刀〔俺〕は!?

 

――― 今、俺がいる世界って!!?

 

 

 

 

―――「―――そこまでです―――」―――

 

 

 

 女性の声が聞こえた。

 

 

 

―――「―――思考を停止して―――」―――

 

 

 さっきとはまた別な女の声が聞こえた。

 

――― 思考を停止。

 

 

―――「―――深く息を吸え―――」―――

 

 

 また別な声。

 

――― 息を吸う。

 

 

―――「―――吐いて―――」―――

 

 

 まただ。

 

――― 吐く。

 

 

 

 何故だろう?この女性の声を聴いていると、素直に従ってしまう。

 

 

 

―――「―――確かに、あれも貴方です―――」―――

 

―――「―――でも、今の君ではない―――」―――

 

―――「―――誰かに決められた生き方はしない。そう宣言したのは貴様だぞ?―――」―――

 

―――「―――そして、貴方は自分で『物語を書く』為に“筆〔剣〕”を持った―――」―――

 

―――『―――ならば、書き続けろ、振り続けろ!そして………―――』―――

 

 

 

―――「――― 僕を! ―――」―――

 

―――「――― 私様〔わたくしさま〕を!! ―――」―――

 

―――「――― 我を!! ―――」―――

 

―――「――― 私を!! ―――」―――

 

 

―――『――― 探し出し〔書いて〕て!! ―――』―――

 

 

 

 その言葉と共に目の前の景色が、墨汁〔ぼくじゅう〕を零した和紙の如く黒く塗りつぶされていく。

 

 そして、周りが黒一色に塗りつぶされた瞬間、俺自身の意識が途切れた―――。

 

 

 

 

 

 

 

 真・恋姫†無双~物語は俺が書く~

 

 第17幕「初めての直属の部下?三羽烏と闘う軍師2号!そして、リアルな鬼ごっこ♪:序章篇」

 

 

 

 

「―――きなさい。」

 

 

 一刀は深い意識の中、何かが…いや、誰かが自分に問いかける声を聴いた。

 

 

「(―――煩いなぁ。こっちは意味が理解出来ない、“あれ”のせいで寝た気になれないんだ)」

 

 

しかし、今の彼を目覚めさせるには可弱かった。

 

 声の主もそれを理解したのか、今度は口調を強めてこう言い放った。

 

 

「起きなさい、一刀!」

 

 

 そして、その成果は―――!?

 

 

「………むにゃ、あと3………刻〔約6時間〕」

 

 

 眠った一刀に効果が無いようだ。

 

 それどころか、悪化した事態に声の主は怒りを覚えて怒鳴ろうとしたが、その前に一刀がアクションを起こした。

 

 まず一刀が寝返りを打ち、まるで枕を抱え込むように抱きしめた。

 

 

―――ムニュ。

 

 

「きゃ…!」

 

「…んっ?(なんだ?枕にしては生暖かい上に良い匂い。それに柔らかい)」

 

 

 この世界に来てからは、ずっと硬い(正史に比べて)枕であったが為か、その手の感触を確かめるかのように再度……揉む。

 

 

―――ムニュ。

 

 

「んっ…!」

 

 

 …揉む!

 

 

―――ムニュ、ムニュ。

 

 

「や、やめっ…あぁ!」

 

 

 …揉む、揉む!

 

 

―――ムニュ、ムニュ、グニュ。

 

 

「いい加減に…ひゃ!」

 

「…ん~?(………ヤバい(-_-;)この声、間違いなくアイツだ…。あぁ、でもこの感触、止められない。否、止める訳にはいかない!!(キリッ))」

 

 

 一刀は狸寝入りをしつつ、聞き覚えのある声に背筋を凍らせていた。

 

最初は本格的に寝惚けていたとはいえ、今の自分がどう云った“状況”で“誰”の“何”を揉んでしまったのかは把握できている。

 

声の主は我らが王、その名の曹孟徳こと華琳さま。

 

状況としては、華琳が何らかの理由から一刀に“膝枕”をしてくれている。

 

あとは一刀が寝返りを打ち、『(膝)枕』を抱え込んだという事は必然的に一刀が揉んだのは“アレ”である。

 

その状況から一刀はすぐさま、結果を導き出す。

 

 

「(えぇ、わかりますとも。華琳サマの臀部〈でんぶ〉…お尻でございますね?死んだな、コレッ!)」

 

 

 一刀は頭が良い。だからこそ覚悟を決める。ただの覚悟ではない………天〔正史〕、それを『決死の覚悟』と言う!!

 

 

「いいぜ、俺だって『漢の子(誤字に有らず)』だ。自業自得とはいえ、こうなった以上は『チ○をもげっ!』を唄ってでも君の尻を揉みつくす!!」

 

 

 一刀の魔の手が再度、主の臀部に伸びるが…!

 

 其れよりも速く!

 

 

「~~~ッ!!ち、チチって嫌味なの!?思った事が、駄々漏れなのよ、この種馬が!!!」

 

「…チチ、モゲロ」

 

 

 華琳の肘〈ひじ〉が一刀の顳顬〈こめかみ〉に狙いを定め、

 

 

「なっ!?無い乳をどうやって捥〈も〉げっていうのよ~~~!!!#」

 

「言っておいて、あれだけど!そこに突っ込みますか、普通さっ!?」

 

 

 華琳の目尻に、薄く涙が溜めつつ、肘を振り抜いた!!

 

 

「~~記憶がなくなれーー!!あと、陰茎が捥げろ~~~!!!」

 

「ちょ、ま、話合おう、な!?ほんま、待て!こういうのは佑のやku……アッーーーーー!!!」

 

 

 

―――今日の天気。全面的に快晴。ですが、ところによっては記憶がとび、血の雨。一部の雲が及川さんに見え、幻覚が「かずぴー、ウチかてそんなヘマせえへんでー。それに貧乳はステータスや~あははっ!」っと言っているように見えますが―――幻覚です。見なかった事に、いっそう及川さんなど存在しなかった事にしましょう。

 

 以上お天気おネイサン、By朔。「―――ちょ、おま、たすけ―――アッ、そこはらめっーーーーー!!!」「ウチの出番はここで終了!?諦めたらそこまでやで、作者さん!?」

 

 

 

 

 閑話休題。

 

 

 

 

――― 五分後(一刀体内時計)

 

 

 

「―――義勇軍が私の指揮下に入るということ?」

 

 

 華琳があの場を去ってから、しばらくして一刀が顳顬〈こめかみ〉を抑えながら華琳たちと合流した。

 

そこには華琳たち以外にあの楽進たちもおり、何やら難しい顔で立て込んだ話をしていた。

 

 

「聴けば、曹操さまもこの国の未来を憂いておられるとのこと…一臂の力では―――」

 

 

 自分も軍師の端くれ。その話に混ざろうとするが、さっきの華琳の肘が地味に効いており、鈍痛で顔を歪ませる。

 

 

「…くそっ、地味に痛いぞ。だが、あの距離でこれだけの軽傷で済んだのは手加減してくれたからだよな。でも、いい加減、ギャグも大概にしないとその内にスキル『ギャグ補正』を修得してしまうぞ?」

 

 

華琳の優しさに感謝しつつも、少し悪態付いてみる一刀に朔が便乗して自分の主人をからかう。

 

 

<それで済めば、いいですね?終いにはSDキャラ風になって『まってよ~、朔~~!』なんていったりして…>

 

『ない、ない』

 

 

 しかし、朔の冗談は一刀だけでは無く、SDキャラの意味も知らない秋蘭達。終いには話に参加していない李典・于禁の二人にまで否定された。

 

 因みに朔さん的には主人が自分を頼ると言うシチュエーションは割と憧れの為、否定されたので拗ねてしまった。

 

 

「…はぁー、バカやってんじゃないわよ。それと、一刀?」

 

「んっ、なんだ?」

 

 

そんな中、話が終わったのか華琳と楽進が近寄り、一刀に話しかけてきた。

 

 華琳はさっきの事を無かった事にしたのか、それとも気にしてないのか、普段道理に接して来た。それと対極的なのは隣の楽進であった。

 

 

「………」

 

「………(なんだ!この憧れと言うか、『ワタシ、あなたと、合たi…ゲフン、手合わせしたい』というか、そう云ったモノが混ざり合った視線は!?)」

 

 

 一刀は視線と云うモノに敏感である。故に相手が自分にどう云った感情を向けているのかも大半は理解できる。

 

 殺意とか、憎悪、怒り、憐み、妬みとか、人の闇系統は特に。恋愛感情系統は鈍感な振りをするが。

 

 額に汗が垂れる。そして、華琳が口を開く。

 

 

「一刀。貴方がこの三人の…」

 

「その命令を断る!!」

 

「その権限を覇王の威厳で断る」

 

「結局、無理なのかよ!コンチクショー!!!」

 

 

 嫌な予感を感じたの為、速攻で字幕の付く位に勢いで宣言した。しかし、覇王には勝てない。無いむn…ゲフンゲフン。作者は一刀の二の舞には成らないのですよ?

 

 胸を張って勝ち誇った笑みで、一刀の権利を剥奪。結局のところ彼には最初から拒否権のは無いのだ。

 

 

 

「で、この三人は別段の指示が無い限りは俺の指揮に従う。そう云う解釈でいいのだな?」

 

「えぇ。相も変わらず、理解が早くて助かるわ」

 

 

 華琳が簡単に彼女達の事を簡単に説明すると、持ち前の理解力で即座に理解する。決して華琳の含み笑いで悟った訳ではない。

 

 

一刀が横目で楽進、李典、于禁を視る。

 

彼女達の事は知っている。

 

前に自分の陣地を視察した際に逢った、女の子達。一応は自己紹介した時に真名は預かった。

 

 

拳闘士の楽進。字は文謙、そして真名は『凪』。

 

螺旋槍の李典。字は曼成、真名は『真桜』。

 

最後に双剣士の于禁。字は文則。真名は『沙和』。

 

なのだが、一刀はある疑問を口にする。

 

 

「―――強いのか?」

 

『!!?』

 

 

 皆が一瞬…というか、世界が凍った気がした一刀であった。慌てて、二の口を紡ぐ。

 

「あ~、済まん。気を悪くしたのなら謝る。俺は君達の上司?になるのだろ?なら君達の力量を知らなきゃな~と思ってさ。見ただけで相手の力量を測れるような奴は―――」

 

 

 

 

 

 いない。っと言葉を紡ごうとして、止めた。

 

 隣を見る。

 

 見ただけで人の価値を見いだせる覇王さま。

 

反対側を観る。

 

 野生の感で敵の力量を感じ取る大剣殿。

 

 その他の武将もある程度は感じ取れる。

 

 各ゆう自分も同じような者である。こうして、対峙していても三人の力を肌で感じていた。

 

 凪は中の中、真桜と沙和は中の下と思っている。

 

 余談ではあるが、一刀の力量基準ではこうなっている。

 

 

 下段レベル、一般兵。

 

 中段レベル、武将。

 

 上段レベル、英雄、武神。

 

 

 因みに現在の魏(仮)の武将を仕分けるとこうなる。

 

 

○下段レベル

 ・なし。

 

 ○中段レベル

  ・下―李典、于禁

  ・中―楽進

  ・上―許緒、夏候淵

 

 ○上段レベル

  ・下―曹操

  ・中―夏候惇

  ・上―なし

 

 

 尚、これは武力のみの一刀基準である。因みに彼が基準にした人は自分の師範代とか…レベル的に上の上。

 

 

 

「まぁ、それは、追々話しなさい」

 

 

 華琳がこれ以上、話しを伸ばさないように終止符を打つ。

 

 その言葉に皆が従い、各持ち場に戻る。街の破損状態や追撃部隊の編成などは桂花がやっていると思っている為、一刀も兵士の整理等を行おうとして華琳に背を向けるが、同時に待ちなさいと言われたので、その場に残る。

 

 

 

 

「凪たちが貴方の部下に就いた事で思い出したのだけど、『あの件』何処まで進んでいるの?」

 

 

 華琳の雰囲気が変わった為に一刀も人知れず、背筋を伸ばす。いつもならチャラけるが場の空気を読めない訳ではので素直に答えた。

 

 

「…正直、表の舞台…戦場、軍議の場には出せるくらいには成長したが、如何せん性格に癖〈問題〉がある。けど、そろそろ戦場の空気に慣れて貰いたいところかな…」

 

「そう。まぁ、元は貴方が言い出した事なのだから“彼女”の事は全て貴方に一任するわ。“次の軍議に参加させるか否”かも…ね?」

 

 

 そう、含みのある言葉を言い残すと華琳は踵を返して、足早にその場を去る。挑発的な笑みと共に。

 

 その笑顔を見た一刀はというと、苦虫を噛み潰した様に顔を顰めつつ、頭を掻いていた。

 

 そんな、一刀を見て今まだ黙っていた朔が『望月〈鞘〉』から抜けた状態になり、話しかけてきた。

 

 

〈あんな、言い方をして置きながら拒否権なんて無いでしょうに。ねぇ?〉

 

「あぁ、でも…そろそろ、頃合い……かな?」

 

〈“食べごろ”の間違いでは?そう言ってあの我儘ボディを自らの物にする………なんて、破廉恥なっ!って、わっわっ!!〉

 

 

 

―――ガチンッ!

 

 

 

 くだらない事を言った朔を思いっきり、柄を掴み『望月』に入れる。それと共に喋れなくなった為、念話で抗議した。

 

 

〈(酷いですよ、マイスター!?手荒に扱わないでくださいまし。アッチ系に目覚めたらどうするんですか!?というより、最近、痛みが快楽に!!?)〉

 

「―――この世界の相方への評価は厳しい、5上がった分、50下がる」

 

〈―――(残りはいかほど?)〉

 

「………3………くらい?」

 

〈(黙りますから、もっと好感度をplease!!?)〉

 

 

 フォローしてくれた相棒への好感度の昇降は激しい。

 

 

「(まぁ、五段評価の3だけど。黙っておこう)」

 

 

 

 

――― 兵士達、集会所 ―――

 

 

〈ここにあの娘が…〉

 

「あぁ」

 

 

 一刀が来たのは兵士たちが集まっている駐屯地点。一刀の探し人はここにいた。

 

 しかし、ここから探すとなると結構大変なのであった。

 

 

 

―――ゾロゾロっ。

 

 

 

「なぁなぁ、夏候惇さまって可愛いよな」

 

「いやいや、夏候淵さまの美脚もえぇ」

 

「荀彧さま、ハァハァ(‐д‐)」

 

「誰だ!?戦場に猫を同行させたのは!!?」

 

「お猫様ッ!?」

 

 

 右を見る。

 

 

 

―――ゾロゾロっ。

 

 

 

「許緒さま、萌~」

 

「なぁ、さっき新たに武将になった女の子見たか!?」

 

「あぁ!眼鏡っ娘いい!傷っ娘、良い!!巨乳!うっしゃー!漲・っ・て・き・た!!!」

 

「オッス、おら孫悟ku「自主規制しろ(‐д(○=(>-<)←〈一刀〉))」

 

「お猫様~はいませんか?♪」

 

「荀彧さま、ハァハァ(‐д‐)」

 

「荀彧さま、ハァハァ(‐д‐)」

 

「お猫さま、ハァハァ(‐д‐)」

 

「荀彧たん、ハァハァ(‐д‐)」

 

 

 

「ウチって個性派が多いな。(桂花、以外に人気者?あと、猫???)」

 

〈本当に濃い人ばかりですね?(『お猫さま、ハァハァ(‐д‐)』ってなに?)〉

 

 

 何分武将、軍師が高圧的な者が多いせいか、被虐体質な方が多い兵士さん達でした。

 

 

〈この中から見つかるのですか?何と言うか、同じ空気を余り吸いたくは無いのですが…〉

 

「言うな。それにどうせすぐに見つかるだろ?」

 

 

 その言葉にすぐに朔が相槌を打った。

 

 

〈そうですね。だって彼女はイタい娘ですし〉

 

「あぁ、痛い奴だ」

 

 

 この二人にかなり言われている娘の話しをしていると何処からか哂い声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

「ふははっ!ふはははっ!ふははははっ…ゲフッ、ゴホ、ゴフ!―――あ、あー、ま~。よし、ふははははっ!」

 

 

 その声を聞いた二人から一言。

 

「〈ミ・ツ・ケ・タ。イタイ娘(こ)〉」

 

 

 二人はすぐに声の聞こえて来る方へ向かって行くと、その元凶を発見した。

 

 

「ふはははっ!もっと褒めろ愚民ども!」

 

「いいぞ、もっとやれ~!」

 

「ははっ、相も変わらず元気だな。彼女は…」

 

 

 一部集団が誰かを囲んで団を築いていた。その中心人物こそ一刀の探していた人物。なのだが、一刀はまたも頭を抱え込む。

 

 

〈心より心中お察しします〉

 

 

 いつもふざける朔すらも、一刀を思いやった。

 

 そんな一刀に気づかず、その者はヒートアップしていく。

 

 

「そうだ。この時代を変えるのは私!曹孟徳の考えをなど、もう古い!!」

 

 

 

―――ブツンッ。

 

 

〈あー、マイスター?平常心、KOOL、COOLですよ?華琳さんは連れて来いって言ってましたよ?〉

 

「あぁ、分かっている。今の俺は太陽ですら凍らせるほどの絶対零度が、肝を冷やしているぞ?」

 

〈いろんな意味で不味いですよ!?肝を冷やして如何するのですか、相手が冷えますから、頭を冷やして!?それに絶対零度は摂氏-273,15℃で太陽は表面温度だけでも5526℃ですから凍る訳無いです!?以上の点から貴方の頭は異常です!!って、聞きなさい。私を振り上げないで!駄目、逃げてイタ娘~!!?〉

 

 

 朔が叫ぶ中、一刀は制止も聞かずに北郷家・宝刀『朔夜』を抜刀する。

 

 仮にも曹孟徳の陣地で…終いには彼女は自分の部下である。その彼女が自分の主をバカにした上、下剋上紛いな事をし同僚を煽っていた。

 

 ………だが、皆本気にはしないだろうけど。“今は”。

 

 

「(そんな事は関係ない。華琳の覇道を阻む者は俺が潰す。部下なら………『“教え子”が道を危めるなら、その道を正す。それが“師”』だよな?じじい)」

 

 

 心の中ではニヒルに笑いながら、良い事を言っている心算なのだが、その姿は正に幽鬼。

 

 その姿が普通なのだが、表情は生気の無い能面。気配は禍々しく、一般兵は気配を感じただけで固まり、姿を見た者は其のまま固まってしまう。

 

 彼女の周りにいた兵も直ぐ様、只ならぬ気配を感じて脱兎のごとく戦略的撤退をする。

 

 気づいていないのは未だにバカ笑いをしている、彼女のみ。

 

 流石の一刀も呆れてしまう。そのまま、朔に念話を飛ばす。

 

 

「(そう言えば、朔?)」

 

〈(何でしょう?)〉

 

 

 そのまま、彼女の肩を軽く叩く。

 

 

「ふはは?誰ぞ、私の笑いを…」

 

 

 彼女が振り向こうとする。

 

 

 

 

「よォ(-“-)(華琳は『“生きて”…“無傷”で連れて来い』とは言って無いよな?(ニヤリ))」

 

〈本気で逃げて、零[れい]ちゃーん!!〉

 

「邪魔す…る?朔っちに血畏怖[チーフ]?」

 

 

 彼女、『零』と呼ばれる者が振り向くと、そこには無表情で愛刀『朔夜』を振り上げる上司と、叫ぶ奇妙な友達“朔”がいた。

 

 零の表情が固まる。思考が動かない。やっと、絞り出した言葉は…。

 

 

「―――ふははっ…。血畏怖、それは流石に私こと司馬懿[しばい]仲達[ちゅうたつ]は死にますよ…?」

 

「安心しろ。峰で打つから死にはしない」

 

「朔っち?」

 

〈――― その命、神に還しなさい?〉

 

「裏切り者~~~!?」

 

 

 零…司馬懿が涙を流しながら叫ぶ。その泣き顔を愛くるしい小動物を妄想させるが、一刀には効かなかった。

 

 

「裏切り者、っと云う前に何度…何度も注意したよな?」

 

 

 無情にも一刀は『朔夜』を振り下ろす。

 

 

「不穏な行動、同僚を煽動する様な事をするなっ~!」

 

 

「ふはっ、私は別に、や、らめっーーーーー!」

 

 

 

 今日、この日。私こと、性を司馬[しば]、名を懿[い]、真名:零[れい]は何度目になるか分からない、北郷軍師の『血畏怖』の意味を身を持って今日“も”知った。

 

 

 

――― ふはっ!(T∀T)

 

 

 その後、ボロ雑巾の様になった零が血畏怖[一刀]に引きずられていく姿を見た同僚たちはこう思った。

 

 

『不憫だ。イタ娘!!』

 

 

 

 

 

「―――で、一刀。其れが例の…『イタ娘』って娘?」

 

 

 今、一刀は今後の軍の方針を決める為、軍議の場来ている。

 

 勿論、司馬懿…零を連れてだが。華琳はこの娘こそが一刀の言う、司馬懿と確信する。

 

 一刀も再び、零を見る。

 

 灰色に近い黒い長髪。幼さを残しつつ開花しかけている花を思わせる顔。その瞳は紫電の色。容姿は華琳同い年くらいで頭にラベンダー色の大きな烏帽子[えぼし]、その躯体を同じ色の花柄を撒き散らした和服に似た物を着飾っていた。

 

 似た、と云うのには語弊があるかもしれない。

 

 彼女の服は胸の所が大きく開いており、肩口も二の腕に引っかかっているくらいである。裾にも大きくスリットが入っており、瑞々しい美脚が丸見えである。その服を帯と胸の髑髏の飾りで止めていた。(詳しくは金色のグゥレイトゥ!さんの『司馬懿』を見てください)

 

 

一刀は何気に零の胸に視線が止まる。

 

「(零は華琳と同い年くらい。同い年くらい…)」

 

 

 華琳に視線を移す。

 

 

「同い年くらい…?」

 

 

 華琳と視線が合う。速攻で逸らす。

 

 

「今何を見て、なにを比べたのか、言いなさい」

 

 

 覇王さまは何でもお見通しの様だ…。

 

 それを逸らすように、華琳の最初の質問に答える。良い笑顔で。人、それを愛想笑いと云う。

 

 

「そう、こいつこそが俺が言っていた女。零、目の前にいる人が誰か分かるよな?」

 

「馬鹿にしておりますか?自分の国の王くらい知っていますよ!?」

 

 

 不適された様に頬を膨らませる彼女を見た一刀は、不思議そうな顔をしながら首を捻る。

 

 

「知っていたの?」

 

〈知っていたのですか?大事な処なので、二回訊きました〉

 

「これを天の国で云うとこの、『派我腹[ぱわはら]』というものですね?」

 

 

 一刀的には零は正に生きる『バカと天才は紙一重』と思っていた。

 

 行き成り『この二房クルクルは誰ですか?』などと口走らないか心配していたが、杞憂で終わったようだ。

 

 涙目になりつつある零に近づき、耳元で囁く。

 

 

「零…」

 

「ひゃい!」

 

 

 いきなり、近くで囁かれた為かそれとも耳が弱点なのか、零がスットンキョな声を上げる。周りからも『きゃー』などと姦しいが敢えて無視。

 

 零も震えた声で抗議する。

 

 

「ち、血畏怖!私は、その、み、耳が性感帯で…!」

 

「(ミミガー?沖縄料理…?)」

 

 最後の方が聞き取れなかった為、一刀はその抗議を無視して続けた。

 

 

 

 

「―――、―――」

 

「ッ!!」

 

 

 一刀が何かを囁くと、今までも零とは一転して真剣な、それでいて冷酷さを感じさせる雰囲気を醸し出していた。

 

 次に目を瞑り、深く深呼吸をした。

 

 一刀が離れると零は眼を開き、華琳の前に一歩踏み出す。

 

 その行動に春蘭が臨機体勢に入るが、それを華琳が片手で制す。

 

 零が…司馬懿として更に一歩近づき、地面に膝を付く。そして右手で拳を作り胸の前で左手で右拳を包み込む。

 

 

 

――― 抱拳礼。相手に敬意を表す物。これを逆でやってしまうと『命を賭して闘う決闘の印』らしい。

 

 

 華琳が…曹孟徳が司馬懿を視る。それは値踏みをしている。自分の国に必要なものかを。

 

 皆がその行く末を見守るり、少しの間、沈黙が流れた。

 

 

「あなた、名前は?そして、何を望む?」

 

 

 最初に沈黙を破ったのは曹孟徳であった。どうやらお眼鏡にかなったようだ。

 

 しかし、司馬懿は安堵も喜びもしない。ただただ曹孟徳を感情の篭もっていない瞳で曹孟徳を見つめる。

 

 そして、短く答えた。

 

 

「―――我は、性は司馬[しば]、名を懿[い]、字は仲達[ちゅうたつ]。真名を零[れい]と申します。この真名、我らが覇王曹孟徳と皆さまに預けます。して、私が望む物。其れはこの知略…我が国の為に捧げ、軍を勝利へと導く事に貢献したく存じます」

 

 

 司馬懿は恭しく頭を垂れる。其れはまるで神に懺悔しているようにも一刀は見えた。

 

 が、曹孟徳はこう続けた。

 

「本当にそれだけか?」っと。

 

 司馬懿の口元が歪に歪む。悔しさでは無く、子供が嘘をついて『やはりばれたか』という表情であった。

 

 

 

 

 

「流石は曹孟徳の眼力。この司馬仲達、御見それ致しました」

 

「甘言はいい。そなた、我を試したのか?」

 

「!?」

 

 

 その言葉に古株メンバー、春蘭、秋蘭。そして桂花が反応した。唯一、反応しなかったのは一刀位であった。

 

 覇王曹孟徳を試す。其れは少し前に荀彧…桂花が自分を取り次いでもらう為に行った策と酷似していた。

 

しかし、あの時とは違う。

 

 司馬懿は完璧に取り次いで貰おう等と思ってはいない。

 

 寧ろ、嘲笑っているようにも見える。

 

 それは自らの主を愚弄している事になると、感じた春蘭たちが一刀を睨む。

 

『何故、このような者を連れてきた』と。しかし、口に出す事はしなかった。

 

 

 それは二つの理由からであった。

 

 一つ、一刀の視線が『黙って見ていろ』といっていた。

 

 何故かは解らないが、一刀なりに思う処があったのだろう。

 

 そして、二つ目は…。

 

 

「(余計な手出し、無用)」

 

 

 その王自らが、制止させていた。これも理由は解らないが、自分の王を信じて今は見守る事にした。

 

 

 

そして次に沈黙を破ったのは司馬懿であった。

 

 

「決して試した訳ではございません。ただ、これ以上は強欲かと思いまして…」

 

「我は欲する物を答えよと申しつけた、もう一度問おう。何を“望む”?」

 

 

 憤慨する訳でもなく、唯、司馬懿に問う。

 

 

「…私はまだ若輩もの故、許されるならばもう少しの間、我が師…“北郷師”に教えを請いたく存じます」

 

 

 一瞬、沈黙が破れそうになるが、華琳の眼力により皆を制止する。

 

 

 そして、曹孟徳が降した判決。それは―――。

 

 

 

 

「良いでしょう。貴女の真名、確りと預かった。我が真名、華琳。ソナタに預けるぞ。あと、貴方の知略は国の為に使いなさい。そして、北郷一刀を師と仰ぎこれからも精進なさい。確かに申しつけたぞ?」

 

 

「その命、確かに拝借いたします。華琳さま」

 

 

 司馬懿…零は再び頭を垂れ、曹孟徳…華琳に忠誠を誓った。

 

 零と春蘭たちが真名を交換した頃合いを見計らって、一刀が零のポジションについて話す。

 

 

「じゃあ、華琳。零は以前話した通り、俺の副官として取り上げるが良いよな?」

 

「えぇ、好きになさいな。あと、愛弟子だけでは無く凪たちの面倒も確り見なさいよ?」

 

 

 その言葉に一刀は横にいる二人、凪、真桜を見る。何とも例え難い表情をしていた。

 

 そんな二人を余所に一刀は澄ました顔でこう言った。

 

 

「当然だ」

 

 

 そう、これは一刀にとっても自分を成長させるチャンスなのだ。

 

 昔、道場では人に教えると言う事が出来きなかった自分をかえる。

 

 その答えに華琳共に凪、真桜がほっと一息をついた。多分、盥回しみたいにならないか心配であったのだろう。

 

 因みに桂花は多少、不服そうな顔をしているが一刀の能力も若干ながら認めてはいる為に反論はしない。

 

 とは言え、桂花は内心穏やかと云う訳でもない。

 

 

「(司馬懿仲達、零の動向が気になるわね。北郷の奴が気づいて無い訳がない。どんな事にせよ、警戒が必要ね…)」

 

 

 秋蘭の方を見ると、彼女も頷いた。どうやら、桂花と同じ考えに至ったようだ。

 

 二人が華琳を見ると、彼女は彼女で何か考えている表情をしていた。

 

 

「(…ふふっ、零。貴方の望み、欲望を見通せないと思っているの?この曹孟徳は甘くなくてよ。そして、一刀。どういうつもりで連れてきたかは知らないけど、楽しくしてくれそうね…?)」

 

 

 そう思うと、自然に笑みがこぼれる、そして、その視線は一刀に向けられていた。

 

 その彼自身は瞑想するかのように目を瞑っている。まるで何を考えているのかを悟らせぬように。それは深い考えがあっての事であろうか?

 

 

「(早く帰って、伝卸煌で珈琲を飲みたいな…。あっ、光里さん特製健康茶が出たら夜葉に…。でも、アイツはちゃんと陳留に帰れたかな?それから…)」

 

 

 確かに考えていた。下らない事を。

 

 

 

 そして、様々な思惑が往きかう中(一部、下らないが)で軍議が始まった。

 

 

 

 

 

 後書き~と云う名の懺悔室?~

 

 

 何と言いますか、かなりのスランプに陥っています。

 

 どうしようもなく、タイピングが進みません。

 

 まぁ、それでも書き続けようとは思っていますけどね?

 

 

 さて、そんなこんなでついに出てきました。原作以外のキャラクターヒロイン④(ヒロイン的に①伝卸煌の光里[恋愛対象外]②逢魔③旭)

 

 その名もかの有名な

 

性は司馬[しば]、名を懿[い]、字は仲達[ちゅうたつ]。真名を零[れい]。

 

 さて詳しい事は次回に後回し。

 

 取り敢えず、この娘。在る意味では袁家の者に似ていますが、袁紹達とは違って“一部”の人間に愛される莫迦では無く、“皆”に愛される莫迦である。

 

 そして、軍師である以上は頭脳明晰ではありますが、一刀の言うように『何とかと天才は紙一重』な子です。

 

 詳しい事は次回の『教えて北郷さん』にでも押し付け…任せましょう!

 

 さて、気が付いている人もいるでしょうが、確りと一刀さんも聞き逃しはしていませんので次回は『開幕戦』と『終結』させましょうかと思っております。

 

 あと、零さんも次回は活躍出来るかな?ねぇ、闘う軍師2号?

 

 

 

金色のグゥレイトゥ!様、司馬懿のキャラクターを使わして頂き、まことにありがとうございます。

 


 
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