No.192961

真・剣帝夢想~魏の章~ 第9話

皆さん明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

2011-01-01 00:01:46 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:3126   閲覧ユーザー数:2766

「……で何処の使い?」

 

 

毎朝の恒例の軍議の中、突然兵士が報告に来た。どうやら客人らしいが、その答えを兵士が答える。

 

 

「はい。袁紹の使いの者とのこと」

 

「……あまり聞きたくない名を聞いたわね。まあいいわ、通しなさい」

 

 

華琳は少し眉をひそめたが、一応許可をだした。

 

 

(……袁紹、前にも何回か聞いた名だ)

 

 

レーヴェは思い出す。そう、確かその名が出た時華琳はいつも微妙な反応をしていたが昔に何かあったんだろうか。

 

 

レーヴェがそんなことを考えているうちにその使いの者がやって来た。

 

 

(……二人とも女か)

 

 

また女。だが見る限り秋蘭には及ばずともそれなりにはできるヤツのようだ。

 

 

(……この世界は男より女の方が優秀なのだろうか……?)

 

 

レーヴェがまた何かを考えているうちに二人は口を開いた。

 

 

「お初にお目にかかります、曹孟徳殿。私は顔良と申します」

 

「あたいは文醜! 我が主、袁本初より伝言を預かり、南皮の地よりやって参りました!」

 

 

一人は育ちのよさそうなお嬢様という感じだが、もう一人はどちらかと粗暴な感じで春蘭と似てるタイプかとレーヴェは思った。

 

 

「そう、ならさっそく伝言とやらを聞きましょうか」

 

「はい。実は……」

 

 

華琳に急かされ顔良と名乗った少女がその内容を話し始める。

 

 

「袁紹に袁術、公孫賛、西方の馬騰まで……よくもまあ、有名どころの名前を並べたものね」

 

「………」

 

 

レーヴェは話を聞いて考えを巡らせる。簡単に言えば董卓という者の暴政に民は困っているのでみんなで粛清をしようとのことだ。レーヴェはこの話の詳しい事情はしらないが裏がありそうだと思った。

 

 

「……どう思う、桂花」

 

「は。顔良殿、先ほどあげた諸侯の中で、既に参加が決まっている方々は?」

 

 

桂花の問いに顔良が答える。

 

 

「先ほど挙げた皆様は既に。今も、流れを見ていた小勢力や、袁家に縁のある諸侯たちを中心に、続々と参加の表明を受けております」

 

「ふむ……桂花。私はどうすればいい?」

 

「ここは参加されるのが最上かと……」

 

「オレもそう思う。この流れに乗らない手はない。……そうだろ?桂花」

 

 

桂花は一瞬不機嫌そうに睨みつけてきたが。

 

 

「……当たり前でしょう。 華琳さま、これだけの英傑が一挙に揃う機会など、この先あるとは思えません。ここで大きな手柄を立てれば、華琳さまの名は諸侯の間に一気に広まります」

 

 

そう。この戦いは董卓を倒すためだけの戦いではない。この戦いの結果次第では後に大きな影響を及ぼすことになるとレーヴェは考えていた。

 

 

「……そうね。顔良、文醜。麗羽に伝えなさい。曹操はその同盟に参加する、と。」

 

「はっ!」

 

「ありがとうございます! これであたい達も、麗羽さまにおしおきされないで済みます!」

 

 

(……袁紹とはどういう人物なんだ……?)

 

 

レーヴェは文醜の言葉にそう思わざるを得なかった。

 

軍議が終わった後、レーヴェは華琳といっしょに季衣達がいる森を進んでいた。華琳の話によると季衣の友達が来てなにやら喧嘩をしているらしい。

 

 

森を進んでいくと、木々の間から轟音が聞こえてきた。その音は金属の塊がぶつかり合うような、明らかに異様な音だった。

 

 

「はぁ……はぁ………はぁ…」

 

「ふぅ……ふっ…ふぅ………」

 

 

見ると季衣と季衣くらいの背丈の少女が戦っていた。

 

 

「どう? 調子は」

 

「あ、華琳さまと隊長。見ての通りですわー。」

 

 

どうやらずっと真桜が見守っていたらしい。少し疲れているように見えた。

 

 

「見たところ全力ではないようだな、精々八割といったところか」

 

「えぇっ!アレで全力やないの!?ウチ、何度死ぬ思うたことか……」

 

 

確かに真桜は大丈夫だろうが、並みの者なら二人の間に割って入れば一撃必殺だろう。とそう言ってる間にも二人はそれぞれの得物をぶつけ合う。

 

 

「………流琉、おなかすいた」

 

 

そんななか季衣が口を開いた。

 

 

「作ってあげるから、降参しなさい」

 

「………やだ。流琉をぶっ飛ばして、作らせるんだから!」

 

「言ったわね! なら、季衣を泣かして、ごめんなさいって言わせるんだから!」

 

「ちょぉりゃああああーーー!!」

 

「どぉりゃぁぁぁぁぁーーー!!」

 

 

そう言って二人はまた戦い始めた。さっきから木が何本も吹っ飛んでいる。

 

 

「さっきから、ずーっとあのノリやで」

 

 

真桜は少し疲れるように言った。

 

 

「そうね。そろそろ話をしたいのだけれど……レーヴェ、止めれる?」

 

「………当然だ」

 

 

二人ともかなりの強さだがレーヴェにとってこれくらいならわけない。春蘭が4,5人くらいいたら苦戦するかもしれないが。

 

 

「ええ!あれ止めるって……隊長そんな自信満々に……」

 

 

真桜がレーヴェに声を掛けた時、既にレーヴェは剣を構え二人の間に入ろうとしていた。

 

 

「どぉりゃああああーーー!!」

 

「うりゃあああああーーー!!」

 

 

二人はレーヴェに気付いていない。それぞれ自分の相手しか見えていないのだろう。

 

 

(……仕方ない二人だ)

 

「なっ!?」

 

 

真桜は目を見開いて驚いた。目の前に同じ人間が二人もいれば自分の目を疑うのも仕方のないことだ。

 

 

次の瞬間、レーヴェは二人の得物を剣で正面から受け止めた。

 

 

「「え?」」

 

 

二人はそれぞれの一撃を二人に止められポカーンとしている。

 

 

「……二人ともそろそろ終わりにしろ。少しやりすぎだ」

 

 

レーヴェがそう言うと一瞬で片方が消え一人に戻った。

 

 

「え、あ、兄ちゃん!」

 

 

季衣はレーヴェを見ると得物をしまった。

 

 

「え、兄ちゃんって……じゃあこの人が季衣の言ってた……」

 

 

流琉と呼ばれていた少女がレーヴェを見上げる。

 

 

「季衣がなんて言っていたのかは知らないが、レオンハルトという者だ。『剣帝』とも呼ばれている。親しい人はレーヴェと呼ぶ。……よろしく頼む」

 

「あ、私は典葦って言います。兄様のことは季衣から聞いてます。だから私のことは真名で呼んでください。真名は流琉です。兄様」

 

 

(……また新しい呼び名か)

 

 

まあ、今はとりあえず置いておくことにした。

 

 

「……そうか。流琉、季衣。どう言うわけかは知らないが少しやりすぎだ。二人は友達なんだろう。仲直りしないか?」

 

「「………」」

 

 

二人はレーヴェの言葉に少し気まずそうに黙った。そして先に口を開いたのは季衣のほうだった。

 

 

「……ご、ゴメンね、流琉。ボク、流琉と早く一緒に戦いたかったから……手紙、きちんと書けなかったんだよね」

 

「……いいよ。わたしも季衣と早く働きたかったから……州牧さまの所で将軍やってたのは、びっくりしたけどね……」

 

「じゃあ、ご飯、作ってくれる?」

 

「うん。一緒に食べよ」

 

 

レーヴェはその二人の様子を見守っていた。喧嘩してもすぐ仲直りできるのも友達、というものなのだろう。

 

 

「ようやく決着が着いたようね。二人とも」

 

「あ、華琳さま……」

 

「曹操さま……」

 

 

話が終わったのを見て華琳が声を掛けた。

 

 

「典葦」

 

「はい」

 

「もう一度誘わせてもらうわ。季衣と共に、私に力を貸してくれるかしら? 料理人ではなく、一人の武人……武将として」

 

 

どうやら話を聞く限り先ほどにも一度話したのであろう。料理人というのはどういうことなのかは分からないが。

 

 

「わかりました。季衣にも会えたし……季衣がこんなに元気に働いている所なら、わたしも頑張れます」

 

 

流琉は華琳をみながら答えた。その表情は嬉しそうな笑顔だった。

 

 

「ならば私を華琳と呼ぶことを許しましょう。季衣。流琉の件はあなたに任せるわ。流琉も、分からないことは季衣に聞くようにね」

 

「はいっ!」

 

「わかりましたっ!」

 

 

季衣と流琉は二人とも元気に返事をした。

 

それから数日が過ぎたころ。レーヴェ達は軍を率いて、街道を進んでいた。行先は連合の集合場所。

 

 

「曹操さま! ようこそいらっしゃいました!」

 

 

集合場所につくと前に会った顔良という少女が出迎えた。

 

 

「顔良か。久しいわね。文醜は元気?」

 

「はい。元気すぎるくらいですよ」

 

「結構な事だわ。……で、私たちはどこに陣を張れば良いかしら? 案内してちょうだい」

 

「了解です。それから曹操さま、麗羽さまがすぐに軍議を開くとのことですね、本陣までおいで頂けますか?」

 

「分かったわ。凪、沙和、真桜。顔良の指示に従って陣を構築しておきなさい。それから桂花は、どこの諸侯が来ているのかを早急に調べておいて」

 

「御意」

 

「わかったのー!」

 

 

華琳の言葉に桂花と沙和が答えた。

 

 

「私は麗羽の所に言ってくるわ。春蘭、秋蘭、それからレーヴェは私に付いてきなさい」

 

「はっ!」

 

「了解です」

 

「ああ」

 

 

そう言う事でレーヴェは華琳達について軍議に顔を出すことになった。

 

 

(……見極めないとな)

 

 

ここに来ている者がどれほどの英傑なのか。レーヴェは素直に気になった。それは華琳の目指す目的のため、それと単純な武人としての好奇心だった。

 

「おーっほっほっほ! おーっほっほっほ!」

 

「………」

 

 

レーヴェは来て早々に少し頭が痛くなった。

 

 

「……あれが袁紹だ」

 

 

秋蘭がひそひそと教えてくれた。

 

 

「久しぶりに聞いたわね。その耳触りな笑い声……麗羽」

 

「華琳さん、よく来てくださいましたわ」

 

「………」

 

 

華琳は黙っている。あまり話をしたくないんだろう。

 

 

「さーてこれで主要な諸侯は揃ったようですわね。」

 

「いや、あと一つ来てないぞ」

 

 

麗羽の言葉に赤い感じの髪の少女が答えた。

 

 

「何ですって!それはどこの田舎者……」

 

「すいませ~ん!遅れました!」

 

 

どうやら全員揃ったようだ。最後に遅れた者達は華琳達の隣に来た。

 

 

(……こいつらもたいしたことはないな)

 

 

レーヴェは顔も見ずに最後に遅れてきた三人の評価を下した。レーヴェが見たところそこそこ出来るヤツはそれなりにいるが、ずば抜けて出来るヤツはあまりいなかった。

 

 

「遅いですわよ!まったく……それでは最初の軍議を始めますわ。知らない顔も多いでしょうから、まずはそちらから名乗っていただけますこと? そこの遅れた者達は一番最後で結構ですわよ。おーっほっほっほ!」

 

 

(……なるほど、華琳も微妙な反応をするはずだ)

 

「……幽州の公孫賛だ。よろしく頼む」

 

「涼州の馬超だ。今日は馬騰の名代としてここに参加することになった」

 

「袁術じゃ。河南を治めておる。まあ、皆知っておろうがの! ほっほっほ!」

 

「私は美羽さまの補佐をさせていただいています、張勲と申しますー。こちらは客将の孫策さん」

 

 

孫策と呼ばれた女は立ち上がると、黙礼を一つしただけでそのまま座ってしまう。

 

 

(……この女……)

 

 

おそらく春蘭と同じかそれ以上の実力をもつであろう女をレーヴェは一瞬だけ見定めた。

 

 

「………」

 

 

(……客将、か)

 

 

この女は客将どころで治まる器ではないと、レーヴェは感じた。

 

 

そう考えているうちにレーヴェ達の番になった。

 

 

「……典軍校尉の曹操よ。こちらは我が軍の夏侯惇、夏侯淵……それから、レオンハルト」

 

 

その名前を呼んだその時、軍議の場が少し静かになった気がした。

 

 

「……あなた、かなりの有名人みたいね」

 

 

華琳は静かにレーヴェに声を掛けた。

 

 

「……そうだな」

 

「次、そこのびりっけつの三人ですわよ」

 

「ええと……平原郡からきた劉備です。こちらはわたしの軍師の諸葛亮とご主人様の北郷さん」

 

「よろしくおねがいします」

 

「一応……ご主人ってことになってる本郷です」

 

 

(………!)

 

 

レーヴェは最後に名乗った男を観察する。レーヴェの目が向いたのは強いとかそういうことではない。どちらかと言えばこの中でもずば抜けて弱い。なぜこんな男がご主人なのかレーヴェには分からなかった。一人だけ雰囲気や纏ってる空気が違うと感じたが気のせいだろうと思った。

 

 

(頭が切れるというわけでもなさそうだが……)

 

 

「―――――っ!」

 

 

レーヴェが考えている間も軍議は進んでいる。

レーヴェはそのことはひとまず置いて軍議を聞くことにした。

 

 

出し巻き卵です。

 

明けましておめでとうございます。

 

今年もよろしくお願いします。

 

新年最初の投稿を区切りのいい10話にしたかったんですけどぎりぎり間に合いませんでした。

 

相変わらず意見募集してます。


 
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