No.189467

るいは智を呼ぶ 二次創作①  <そしていつもの日常と、ちょっとしたイタズラごころ>

largestさん

初投稿です。よろしくお願いします。

るいは智を呼ぶの二次創作です。
一応続きもので考えて作っています。

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2010-12-13 13:22:22 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:3416   閲覧ユーザー数:3353

 

 

 

 

  約束とは絆だ。

 

 

 

  約束を結ぶとき……それはたとえどんな些細な約束であれ、

  他人との信頼を糧に結ばれる。

 

 

  「明日もまたあそぼうね」

  ――これも約束だ。

 

  「買い物に行くならついでにポテチも買ってきて」

  ――これも約束と言えなくもない。

 

  「朝8時に駅前集合。時間厳守で」

  ――約束には重いものも軽いものもあれば、

 

  「来月までに完成させます」

  ――個人的なものも組織的なものもある。

 

 

  約束は信頼を糧とする。

  すなわち約束を破れば、当然大なり小なり信頼は失われる。

  信頼の価値というのは非常に実感しにくいもので、

  失って初めてその価値に気付く人も少なくはないだろう。

 

  『僕ら』のような子供には、理解するのは難しい。

 

 

  しかし実のところ、その『価値』は子供だって知っているものだ。

 

 

  なぜなら、『友達』や『仲間』といった者達は、

  その信頼によって結びついているのだから。

 

 

 

  だから、僕は約束をしよう。

  僕は、ようやく得たこの仲間たちと、いつまでも友達でいよう、と。

 

  この約束を他人に明かす気はない。

  約束をする『友達』に対してもだ。

  僕だけが知っていればいい。僕が約束を守れればそれでいい。

  それが僕の彼女らに対する信頼の証だ。

 

 

  ――信頼の代償が、僕自身の死であろうとも。

 

 

  それでも、僕はいつまでも、友達であり続けよう。

  もしも伸ばしたその手が、何をもつかむことなく、力尽きたとしても。

 

  それはきっと、『価値』のあることだ。

 

 

 

 

「みんなでクリスマスパーティーがしたい!」

 今日も今日とて、いつもの溜り場。そうやって口火を切ったのは、チームの食欲大魔神こと皆元るいだった。

 時節はまだ、冬に入ったばかりの12月の第一週。商売人さん達はすでにクリスマスの飾りつけを終えているころだけど、一般の学生たる僕らにはクリスマスの話は少し早い。

「そだ、いいこと思いついた!」と前置きしてさっきの一言をのたまったるいさんは、下のコンビニで買い込んだ肉まんを口いっぱいに頬張ってご満悦だ。ハムスターみたいでなんかカワイイ。

「鳴滝めは大賛成であります!」

「そうね、まだまだ先の事だけど……良いんじゃないかしら。私も賛成よ」

 真っ先に賛成したのはマスコット担当のこよりとKY……もとい、まじめ担当の伊代だ。愛用のインラインスケートでくるくると滑りまわるこよりは、手袋、ニット帽、マフラーに、かわいらしいピンクのイヤーウォーマーの重装備。伊代も制服の上から厚手のロングコートを着込んでいる。そろそろこんな吹きっ晒しのビルの屋上に集まるのは無理があるかも。冬用の新しい溜り場も考えなくちゃいけないなぁ。

 今日は珍しく8人全員がこの場に集まっていた。集合場所の変更を切り出すにはいい機会だ。まあ、だからこそるいもこんなことを言い出したんだろうけど。

「フン、下らんな。相変わらずお気楽なヤツらだ」

 隅っこの方から吐き捨てるのは央輝だ。全身黒ずくめの出で立ちは夏の頃から変わってない。

 つれない態度をとりながらも時々顔を見せるあたり、少しは仲間意識を持ってくれているんだろうか。

「えー? お気楽でいいじゃん、央輝! てーれーるーなーよー」

「こ、こら、からみつくな、鬱陶しい!」

 るいに抱きつかれて慌てる表情などを見る限り、本気で嫌がってるようには見えないね。

 うん、良きかな良きかな。

「私も賛成だわ。皆元もたまには良いこと言うじゃない。……ということで央輝ちゃん、親睦を深めるためにス・キ・ン・シ・ッ・プを~~ッ!!」

「き、貴様、こら、服の中に手を入れるなぁっ!!」

 うわぁ……なにやら一気に背徳的な絵になってしまいました。

 このごろはみんなも慣れたもので、花鶏の桃色空間が発生した途端に残りのメンバーは放置プレイを敢行する。まあ、つまり『見て見ぬ振り』というやつですね。なんだかんだ言って、花鶏も野外ではそれほど破廉恥なことはしない。きっと。

「あなたはどう? さっきから黙ったままだけど……」

 伊代が僕の顔を見ながら言う。

「都合が悪いなら無理に参加しなくていいのよ? どうせいつもの馬鹿騒ぎなんだから」

 少し考え事があったから、あえて何も言わなかったんだけど、妙に気遣われてしまったみたいだ。こういうところ、伊代は気配りのできる優しい良い娘だと思う。圧倒的に空回りすることが多いのが玉にキズだけど。

 僕は安心させるように笑いかけた。

「大丈夫だよ。るいの案には賛成。それとは別に、ちょっと考えてることがあってね」

「あら、何かしら。あなたがそんなことを言うとちょっと怖いわね」

「まったくだ。今度はいったい何をたくらんでいるんだい、智」

 横からいたずらっぽく喋りかけてきたのは、僕ら『ピンク・ポッチーズ』の白一点……と見せかけて実は女性の、男装の麗人を地で行く才野原恵。今もやはり恒例の詰襟制服を着込んで、一見すると絶世の美少年といった風情だ。

 しかし全くもって神様は間違っている。つくづくどうして僕と彼女の立ち位置を逆に出来なかったものかとゴニョゴニョ……

 え~、こほん。

 とにかく、そんな胸中のもやもやはおくびにも出さず、僕はウインクさえ飛ばして不敵に言い返した。

「うふ、だめだめ、今はまだ秘密だもん」

「ほほ~う、この茜子さんの前で隠し事とはいい度胸ですな。我が僕メガロガルガンよ、やっておしまいなさい」

「にゃ~!!」

「あはは、きゃん! だめだってば!」

 突然現れて強そうな名前の猫をけしかけてくる茜子。飛びついて来た猫を抱き上げて逆に頬擦りしてやる。この子は名前のわりにおとなしい猫で、抱きしめても暴れない。これも茜子の教育のたまものなのだろうか。

「猫と戯れる智……良いわね、そそるわ。取り合えず抱きしめていい?」

「どっちを!? ていうか今どこから湧いて出たの!?」

 央輝を襲っていたはずの花鶏が、いつの間にか僕の背後で手をワキワキしている。

「キャー! イヤー! 助けて犯されるー!」

「茜子センパイと恵センパイはどうするでありますか?」

「フフフ、茜子さんはどこにでも出没するのです。ガギノドンもそう言ってます」

「そうだね、年に一度のクリスマスを友人と賑やかに過ごすというのも、悪くはないんじゃないかな」

「そう、ならみんな参加するのね。となると、問題はどこでやるかだけど……」

 僕が股間を死守している間にもクリスマスパーティーの企画は進んでいく。しかしさすがは伊代、言い出しっぺのるいが丸投げで央輝にじゃれ付いて遊んでいるのに、勝手に司会進行してまとめに入っている。苦労人というか、根っからの委員長気質というか。

「ああ、それなら僕の家をパーティー会場として提供しよう。浜江もお客が来てくれると喜ぶ」

「ム」

 僕に抱きつきながら複雑そうな顔をする花鶏。恵と知り合う前は、何かしらのイベント時には花鶏の屋敷に集合するのが常だった。自分の屋敷を使って欲しいわけではないにしろ、微妙に思うところがあるらしい。

「まったく、付き合ってられん。あたしは帰るぞ、ばかばかしい」

「ぶ~ぶ~」

 ようやくるいを振りほどいた央輝が足早に出口へ向かう。

 だいぶ打ち解けて来たとはいえ、央輝はこの手の集まりには滅多に参加してくれない。央輝の生い立ちを考えると仕方のないことかもしれないけど、せっかく仲間になったんだから、もっとがんがん親交を深めてもらいたい。

 今回は特に参加してほしい理由もある。央輝が快く参加してくれるよう、後で色々と根回しをしておこう、フフフ(黒い笑顔)。

 

 その後、冬の間の集合場所を決める首脳会談が行われ、コストパフォーマンスや移動時間、その他スペース等の観点から、恵邸、もしくは時々花鶏邸を使用する、と言うことが全会一致で可決された。

 うん、ぶっちゃけいつも通りだけど。

 差し迫っての必要事項が決まったところで、恵が時計を気にするそぶりをして立ち上がった。

「すまないね、僕もそろそろ失礼するよ」

「あれ、今日は早いね恵。用事でもあんの?」

 携帯の時刻表示を見ると、時刻は4時半だ。日も短くなってきたとは言え、日没まではまだ間がある。

「そんなところだ。パーティーについては佐知子と浜江に話しておくよ」

「うん、ありがとう。よろしくね」

 恵はお決まりの薄い笑みを浮かべた後、踵を返して屋上を出て行った。

 ……ふむ、これは僥倖。思いのほか早く条件が整った。

「もうすぐ暗くなるわね。私達も移動する?」

「そうですねぇ~、ちょっと寒くなって来ましたし……」

「はいはいは~い! るい姉さんおなかすいた!」

「あなたさっき食べたばかりじゃない! 晩御飯食べられなくなるわよ?」

「だってだって、寒いとおなか減るの早いんだもん!」

「さすがは犬コロ、はらぺこになれば後先考えず本能全開ですな。わおーん」

 僕らは今日も一緒に過ごす。きっと明日も、明後日も。

 同じ呪いを持つ6人で、力を合わせて生きていくために。

 それが僕らの同盟だ。

 同盟を結んでからしばらく経って、6人は7人に、7人は8人になった。

 人数が増えたって契約内容は変わらない。

 ただ自分の為に、自身の為に、お互いを守るだけ。

 世界は相変わらず厳しいし、僕らは相変わらず呪われたままだ。

 ただ、だからといって……

 

 (楽しいことがないわけじゃ、ないんだよね)

 

 これからのことを考えると、発作的な笑みをこらえきれない。

 僕の思惑通りに行けば、とても楽しいことになるだろう。

 幸いにも僕は、呪われた世界と一緒に戦ってくれる戦友を手に入れた。

 仲間たちと、『友達』と一緒なら、どこまででも歩いて行ける。

 

 僕らはみんな、呪われている。

 みんな僕らに、呪われている。

 

 さあ、いつものように『悪巧み』を始めよう。

「ねえみんな、一つ提案があるんだけど……」

 

 

 

 

 
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