No.187927

孫呉の龍 一章 邂逅 中編

堕落論さん

どうも一週間ぶりの投稿になります堕落論です。

孫呉の龍 一章 邂逅 中編 をお送りさせて頂きます。

今回は一刀君と及川君の掛けあい中心となっております。拙い文章ではございますが、どうか読んでやってくださいまし。

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2010-12-04 19:44:43 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:1979   閲覧ユーザー数:1779

       前回のあらすじ

 

 

 聖フランチェスカ学園二年生の子義龍虎は最近自分が『三国志』の登場人物の孫策と行動を共にしているという突拍子もない夢を頻繁に見る様になったのと同時に自分の身体や精神がまるで自分の物では無いかの様な違和感を感じる様になった。

 

部活である弓道部の朝連の終了後に龍虎を襲った急な立眩みは龍虎が見た事の無い光景を脳裏に映し出す。そこには何故かクラスメートである北郷一刀が華琳と言う少女の前から消えていくと言う衝撃的な場面であった。

 

立眩みが去った後に剣道場で同じ様に朝練を行っていた北郷一刀に、その時に見た映像の事を龍虎が尋ねた時、人当たりの良い北郷一刀の顔が驚愕の表情にかわるのであった。

「それと、これが一番聞きたい所なんだが……あの金髪の少女……華琳って何者だ??」

 

龍虎の問い掛けに、一刀は一瞬思考が追いつかないぐらいの衝撃を受けた。絶句している一刀を見て龍虎は更に言葉を続ける。

 

「自分でも何で、一刀にこんな事を聞かなきゃいけないのかイマイチ理解出来ていないんだけれども、それを聞く事で俺自身の何かが分かる気がするんだ。だから、教えて欲しい。何故一刀は、あの満月の夜に彼女の前から消えなければならなかったんだ。」

 

「ちょっ、ちょっと待ってくれ子義!!何でお前がそんな事を……」

 

「ふむ、そんな事を……か、では、やはり今俺が一刀に尋ねた事は、実際に有った事と思って良いんだな。」

 

「ぐっ、そ、それは……」

 

元々一刀は、あの時の出来事を誰にも話すつもりはなかった。まあ話した所で誰にも信じてもらえないであろうし、下手すれば狂人扱いされかねない内容であるのも事実である。それ故本来ならばシラを切り通して龍虎の問い掛けをはぐらかせば良かったのだが、余りにも唐突に華琳の事を言われて面喰った所に、あの満月の夜の事迄尋ねられた一刀は、軽くパニック状態に陥り的確な対応が出来なかったのである。

 

「勘違いして欲しくないんだが、俺は一刀と、その華琳って少女について興味本位で聞いている訳じゃあないんだ。さっきも言った通り俺自身の為に一刀に何があったのかを知りたいんだ。」

 

「子義自身の為??どう言う事だ??」

 

「そうだな一刀の事を聞くのに、俺が自分の事を話さないのは駄目だよな。まずは俺の話を聞いてくれるか?」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ。仮に子義の話を俺が聞いたとして、それでも俺がさっき子義が言った事に答えなきゃどうするんだよ。」

 

未だ明確にはならない思考の中で、やっとの思いで一刀は龍虎に問いかける。

 

「その時はそれまでの事だ。一刀が話したくはないと言う事を、俺の都合で無理やりにでも聞き出すなんて事は絶対にしたくないしな。」

 

一刀の目を見つめて龍虎はそう応える。

 

「どうだ?一刀、そう言う条件でいいか?」

 

「う、うん卑怯な言い方かもしれないけれど、子義がそれで良いと言うなら……」

 

「ああ、俺は一向に構わないよ。とは言え、流石に今から俺の事を話していたら間違いなく遅刻だな。どうする一刀、俺と一緒に学校サボるか??」

 

「いやいや、クラス委員の子義が率先して言う言葉じゃないよねそれって……」

 

「ハハハ…確かにそうだな。じゃあ、一刀も一刀の事情ってのもあるだろうし、俺もそれなりに自分の心の準備ってのがあるから俺がバイトから帰ってきたら、一刀の部屋に行っても良いか?遅くても10時過ぎ頃には行けると思うけど。」

 

「ああ、それで俺は構わないよ。でも子義、本当に良いのか?さっきも言ったけど子義の話を聞いても俺が、その……」

 

「本当の事を言うかどうか分からないって事か、そう気にすんなよ。実際一刀の答えが気になるのは確かだけれど、俺自身が俺の事を一刀に聞いてもらいたいだけかもしれないからな。」

 

そう言って龍虎は男の一刀から見ても、遂引き込まれてしまう様な惚れ惚れとする笑顔を見せた。

 

(敵わないなぁ……子義が人を引き付ける魅力を持った奴だって事を改めて実感させられるよなぁ。でも子義にならあの世界の事を話しても理解してくれる様な気がするんだよなぁ。)

 

龍虎の笑顔を見ながら頭の片隅で一刀は、ぼんやりとそんな考えを持ち始めていた。

龍虎と共に始業時刻ギリギリに教室に駆け込み、なんとか遅刻を免れた一刀は午前中の授業を、ほぼ上の空で過ごした。その理由は簡単でずっと朝の出来事を考えていたからである。

 

(子義は何で華琳の事だけでなくて、俺があちらの世界から消えた事迄知っているんだろう?あの世界の人間??いやいや、子義は以前からこっちの世界の人間の筈だし……)

 

とりとめのない考えだけが浮かんでは消えつつ一刀の頭の中をグルグル回る。

 

(それに子義が言ってた、俺に話したい事って一体何なんだろう……)

 

授業中や授業の合間の休憩時間に一刀は龍虎の様子を窺ったりしたが、当の龍虎は、男女問わず多くのクラスメートの輪の中心に居るいつもの龍虎であり、一刀の様に何かを深く考え込む様な素振りは微塵も見せなかった。

 

(そういえば、俺ってクラスメートって以外は子義の事何にも知らないんだよなぁ。インハイで一年の時に優勝したり、成績はいつも学年一だったりって事は知ってるけど……)

 

諸々の事を取り留めもなく考えているうちに午前の授業の終了を告げるチャイムが鳴り昼食の時間となった。龍虎を呼び止め、二人だけで何処かで食事でもしようと考えた一刀をまるで拉致するかのように悪友の及川が購買部に引っ張って行く。どうやら新しく出来た年下の彼女の話を、どうしても一刀に話したいらしく、何を言っても聞く耳を持ってくれない。一刀はヤレヤレと思いつつ龍虎との食事を諦めて及川と共に購買部に向かうのであった。

 

 

一刀は、今現在眼の前で購買部で買ってきた惣菜パンを口いっぱいに頬張りつつ、新しく出来た年下の彼女の事をずっと話し続けている悪友の及川と共に屋上のベンチで昼食を取りつつも未だ龍虎の事を考えていた。

 

「どしたんや、かずピー、今日はエライご機嫌斜めやなぁ。さては近頃ラブラブの不動先輩と何かアッタんやな。」

 

緊張感のカケラもないノホホンとした声が一刀の思考を中断させる。

 

「及川、言っておくが不動先輩は最近朝練に付き合ってもらってるだけで、及川が考えている様な事はこれっぽっちもないぞっ。」

 

「エェ~ホンマかいなぁ。他の剣道部員からも聞いたけど、ここ3、4ヶ月かずピーは不動先輩とベッタリっちゅうやないか。」

 

「いや、だからそれは不動先輩の立会稽古の相手を、偶々俺が勤めているだけであって、それが何でラブラブとかって話になるんだ。」

 

「アヤシイなぁ~、かずピー。最近迄は、そんな熱血剣道少年とは違った筈やでぇ。それに何かここんとこ急に図書室とかで調べモンしだすしなぁ。」

 

『外史』から戻ってきて半年、一刀は己の生活の様式を一変させた。勉学に励む事は勿論の事、今迄は気の入って無かった部活も誰よりも真剣に取り組んだ。幸いにも先の『外史』では、春蘭や霞などの武人達に手心を加えられていたとはいえ稽古をつけてもらっていた為に、天才と言われる不動の動きですら手に取る様に分かった。まあその所為で部内で本気の不動の相手を出来るのが自分だけになってしまい、その事を誰にも知られたくない一刀が無理を言って不動と二人だけで朝練をしているのだが。

 

「俺にも色々と事情があるんだよっ。」

 

「その事情ってヤツを今度ユックリ聞かせて欲しいもんやなぁ、かずピー。」

 

及川の何か勘違いをしている様なツッコミに軽く目眩を覚えながらも、一刀は以前に何度か及川と龍虎がツルンでいる光景を見た事があるのを思い出し、何か手掛かりになる様な事でもないものかと及川に尋ねた。

「なあ、及川。」

 

「ん?なんや?事情ってヤツを話してでもくれる気になったんか?」

 

「バ~カ、違うよ。お前、子義とは仲良かったよな?」

 

「ん、たっちんの事かいな…って、まさか、かずピーは、たっちんとの禁断の愛に目覚めて……」

 

「及川、殴って良いかな。」

 

ユラリと席を立った一刀が及川を殴る真似をする。

 

「いやいや冗談やがな、冗談。そんなマジにとらんでもエエがな。」

 

「お前の冗談は偶に笑えねえんだよっ!!」

 

「そないに怒らんでも…で、たっちんの事がどないしたって??」

 

「ああ、今日の朝練の時に子義とちょっと話したんだけどさ、俺って及川みたいにアイツとツルンだ事が無かったから話題がなくてさぁ。」

 

当たり障りのないネタ振りで及川に龍虎の事を尋ねてみる。

 

「せやなぁ~、かずピーとあの『聖フランチェスカの完璧超人』では会話は難しいかもしれへんなぁ。」

 

「何か凄い馬鹿にされてる様な気がするんだけれど…」

 

「おっ、かずピー、正解!!って……痛っ!!ホンマにドツくんやからなぁ……」

 

「なんなら、次は竹刀ででもツッコンデやろうか。」

 

「うわぁ~っ、竹刀を突っ込むって……かずピーって鬼畜!!」

 

「オ・イ・カ・ワ・ク・ン!!」

 

「う、う、嘘やって!!た、た、たっちんの事やったな、たっちんの……」

 

冗談が過ぎたのか目がマジになった一刀を見て、及川が焦った様に話を元に戻す。

 

「ったく、始めから真面目に話せっつぅの。で、子義って及川の目で見てどんな奴なんだよ??」

 

「どんな奴言われてもなぁ。たっちんは成績は学年で常に一番やし、体力測定でも追随は許さへんし、弓道部では一年生の時に全国優勝したみたいやし、男前な性格で男女問わず人気モンで、あっ、そやそや来季の生徒会長の大本命らしいっちゅう話しやで。」

 

「はぁ~っ、聞けば聞くほど子義って同じ高校生かよって感じだよなぁ。」

 

あまりの基本スペックの違いに一刀はガックリと肩を落とす。

 

「でも何で今更、たっちんの事を聞いて来るんや??はっ、やっぱりかずピーは禁断の……」

 

「及川…お前って学習能力が皆無なのな……」

 

半ば憐れむような目をして一刀は及川の前頭部に手加減無しで手刀を叩き込む。

 

「うううっ、可愛い冗談やのにぃ……」

 

一刀の目の前には両手で頭を抱え込み涙目になる及川の姿があった。

「痛たたたっ…加減ないなぁかずピーは。」

 

「お前に、人の話をマトモに聞くつもりが全く見えないからだろっ!!」

 

「せやから、可愛い冗談やっちゅうに……かずピー、カルシウムが足らへんのとちゃうの?そんなに苛々しとったら、たっちんに嫌われてまうでぇ~」

 

「まだ言うか、お前は……」

 

一刀の手刀を喰らっても一向に懲りない性格に若干疲労感を覚えつつ、今一度ツッコム体制を取ろうとする一刀にむかって及川が話す。

 

「まあ、これ以上かずピーを苛々さすんもなんやから、ここで、かずピーに有益であろう情報を一つ。」

 

「今度こそマトモな話なんだろうな。」

 

「おう、任しときぃ!!たっちんは、ここん所変な夢をかなり見るらしいで。」

 

「変な夢を??」

 

「せや、なんでも確か『三国志』の世界の夢やって言うてたわ。」

 

「『三国志』だって!!」

 

今の一刀には聞き逃せない単語に身体が過敏に反応して、一刀は思わずベンチから立ち上がってしまう。

 

「うわっ!!ビックリした。何イキナリ喰い付いてきてんねん。」

 

「うっ、スマン及川。で、子義は『三国志』のどんな夢を見るって言ってた?」

 

「うわぁっ、『三国志』の何にかずピーがこんなに喰い付くねん?別に『三国志』の曹操達が全員女性って訳でもないんやでぇ。」

 

「及川……それってどういう意味だ…お前何か知ってるのか?」

 

何も知らない筈の及川から曹操の名と全員が女性と言う、最近迄自分が経験していた事を聞かされて、ついつい詰問口調になってしまう。

 

「へっ、何の事や??ワイは『三国志』に出て来る武将達が皆可愛いネエチャンやったらええなぁって思うただけやけど。」

 

「及川、それ何の脳内エロゲーの話だ??」

 

「うわっ、かずピーのいけずっ。でもそんな世界があったらかずピーもモテモテかもしれへんなぁ。三国のどれかに迷い込んで、その国の可愛い武将達とあんな事やこんな事まで……ハーレムやんか。」

 

「そっ、そんな事がある訳ないだろう……」

 

実際、あちらの世界ではそんな状態であっただけに微妙に焦りつつ及川の話を否定する。

 

「ひ、酷いっ。男の夢を一言で切って捨てるやなんて……」

 

「お前の夢なんてのはどうでも良いですから!!それよりも子義がどんな夢を見るって?」

 

「う~ん、なんでもたっちんが言うには、たっちんは孫策達と一緒にいる夢ばっかり見るんや言うてたなぁ。」

 

「孫策って、呉の孫策だよなぁ。」

 

「せやな、それにたっちんの周りには孫策だけで無くて周瑜や、張昭、黄蓋に韓当もおるらしいてな、それも皆有り得んくらいイケメンらしいわ。で、たっちんは夢に出て来る皆と会話をするんやけれど、皆が呼ぶ自分の名前だけが聞こえへんって愚痴ってたわ。」

 

「自分の名前が聞こえない……」

 

「他の事は、寧ろ生々しいぐらいハッキリと聞こえてくるらしいんやけど、自分の名前だけはどんな場面でも、その部分だけ全く聞こえへんらしいで。」

 

「へえ、面白い話だなぁ。で、その夢ってのは昔から見てたのかな?」

 

「いや、たっちんが言うには、ここ半年前ぐらいから、急に見る様になった言うてたで。そういえばかずピーが急に勉強し出したり、剣道に熱中し出したんもそれぐらいやったんとちゃうやろか?なんやオモロイ偶然やなぁ。」

 

及川が語り終えると同時に休憩終了の予鈴が鳴り二人は連れ立って屋上を後にした。

 

(確かに面白い偶然かも……いや本当に偶然なのか?俺が華琳と離れ離れになったのが半年前、子義が孫策との夢を見る様になったのも同じ半年前だと言うし、それに子義は向こうの世界の凪の様に俺自身の氣の流れが見えてるらしいし、何と言っても華琳との別れの場面の事も知っていたし……ああもう余計に分かんなくなってきた。一体何者なんだ子義って……)

 

二人して教室に向かう間中、一人考え込みながら前を歩く一刀は気付いてはいない。一刀の後ろからついてきていた及川の顔が妖しい笑みを浮かべている事を。

 

 

 

 

 

……to be continued

 

 

 

 

 

 

あとがき……のヨウナモノ

 

 

 

どうも今晩わ1週間ぶりぐらいではございますが皆様お元気でございましたでしょうか?堕落論です。

『孫呉の龍 本編 第1章 邂逅 中編 』をお届けさせて頂きました。

今回はお話のもう一人の重要人物である一刀君と悪友の及川君との絡み主体でお送りいたしましたが如何だったでございましょうか?

会話文中心でお送り致しましたがイマイチ会話のリズムが悪いなぁ…(泣)なんだかんだで反省しきりの今日この頃でございます。

次回後編では一刀君と龍虎君の対峙となる予定ではございますがそん時迄にはもう少しテンポ良く書けるよう努力していきたいと思います。

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 

今回の中編では及川君にある程度の含みを持たせた行動をさせております。今後の伏線と言うほど大袈裟なものではございませんが

筆者は及川君が結構好きなキャラなんで、この章ではそこそこ活躍していただきたいとは思っております。

 

 

 

 

コメ頂いたり、支援していただいた皆様へ

 

毎度毎度拙い文に皆様からコメや、支援いただき本当にありがとうございます。結構おっかなびっくり書いている私には皆様のコメや支援が大変嬉しく又、励みになっています。

まだまだ駆け出しの新米ではございますが今後とも本当に宜しく御贔屓の程をお願いいたします。

 

 

 

 

また、このssに対するコメント、アドバイス、お小言等々お待ちしております。「これはこうだろう。」や「ここっておかしくない??」や「ここはこうすればいいんじゃない」的な皆様の意見をドンドン聞かせていただければ幸いです。皆様のお言葉が新米小説家を育てていきますのでどうか宜しくお願いいたします。

 

 

ではでは次回の講釈でまたお会いいたしましょう。 堕落論でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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