「おい、ホントかよ・・・」
「あの兄ちゃん、俺の横でラーメン食ってた人だぞ・・・・?」
「やだ、ちょっとカッコいい・・・・・///。」
「あれが、『天の御使い』なのか。」
街の人達は一刀に視線を向け、ザワザワと騒ぎ出す。
「あなた、それはホントなの?」
「はい、間違いありません!!!孫権様、あの方はたった一人であの盗賊達から生き残った私達を助けてくれました!!間違えるハズがありません!!!」
『孫権』と呼ばれる少女は、連れて来た女性の瞳をじっと見つめ、そしてフッ、と微笑んだ。
彼女の言葉から、確信に足る『何か』を見出したのだろう。
「そう、わかったわ。思春!!」
「はっ。おい、止まれ。」
紫の髪の少女が一刀に静止を求める。
「(あのデカブツの二の舞はゴメンだ・・・・。)」
一刀はすぐさま逃走ルートを考えたが、この街の道はあまりわからない。
逃げるなら、来た道を戻って行くしかないだろう。
「(・・・・・撒けるかな?)」
一刀は走り出した。
「おい、待て!!!」
「思春!!捕まえるわよ!!!!」
「はっ!!」
タタタタタ・・・・・と、わりと速めに走る一刀。
後ろを振り向くと、『孫権』と呼ばれていた少女が追いかけてきていた。
「(屋根伝いに行くか・・・・・。)」
ちょうど走っているその先に『はしご』が見えた。
一刀はスルスル~と、はしごを登る。
「待ちなさい!!」
登り終えると、真下から孫権の声が聞こえた。
ちょうどはしごに手を掛けようとしていたので、一刀は
「・・・・・なんだ、その笑みは??」
「ごめんなwww」
「え!?ちょっ・・・・・・キャアッ!!」
はしごを蹴り倒した。
「ケガしてねぇかぁ~??」
「あ、危ないじゃない!!!」
「ってことは無事なんだな。」
少女の無事を確認した一刀は、再び走り出した。
しばらく屋根から屋根へ飛び移りながら走り続ける一刀。
「(撒いた・・・・・っぽいな。)」
後ろを向いても誰もいなかったので、少しスピードをおとす。
その時
《チリー・・・・ン》
「?」
どこからか、鈴の音が聞こえてきた。
《チリー・・・・ン》
「気持ちいいねぇ・・・・・この音。」
鈴の音に少し心落ち着かせる一刀。
だが、その直後。
《ドガッ!!》
「がっ・・・・・は!!」
『何か』が一刀のわき腹を直撃、一刀はその衝撃で倒れそうになる。
すると、背後から腕が伸び、一刀の首を絞める。
「ぐっ・・・・・!?」
「おとなしくしろ。」
「あー・・・・・紫のお嬢ちゃんか。」
「お嬢ちゃんではない。我が名は甘寧、字は興覇だ。」
「俺は北郷一刀・・・・・・って、この状態で自己紹介するか??」
「貴様が私を『お嬢ちゃん』と呼ぶからだ。」
「イヤか?」
「ああ。不快極まりない。」
甘寧はグググ・・・と締め上げていく。
「かっ・・・・・はぁっ・・・・キツイキツイ!!!」
「問題ない。すぐに楽になる。」
甘寧は一刀を気絶させる気だった。
一刀は脱出法を考える。
「甘・・・寧・・・・・よぉ。いい加減・・・・緩めてくんない??あんまり・・・・苦しいと・・・・・俺・・・・・逃げちゃうぜ??」
「ふん。逃げれるものなら逃げてみろ。」
「・・・・・言った・・・・・な??」
一刀はニヤリ。と笑う。
そして、甘寧のわき腹に手を伸ばした。
コチョコチョ。と擦っていく。
「はぅっ!?ひっぁあああ・・・・ん/////。」
いきなりわき腹を擦られたので、甘寧の力が一気に抜けた。
一刀はそのまま甘寧から離れる。
「ゲホゲホ・・・・・ハァ・・・・・ハァ・・・・・ザマみろ。」
「きっ・・・貴様ぁ・・・・!!」
甘寧は顔を真っ赤にする。
「どうした、顔が赤いぜ??」
「あ、あのような事をされれば誰だって赤くなる!!!」
「そうかい・・・・・っと!!」
「あっ!ま、待て!!」
一刀は再び走り出す。
甘寧もすぐさま追いかける。
すると、向こう側から誰かが走ってくる。
「やべ・・・・挟み撃ちかよ。」
「蓮華さま!」
「思春!!」
一刀は立ち止まる。
「(後ろには敵。飛び移っても敵・・・・・)」
「ハァ・・・・ハァ・・・・おとなしく降参しなさい。」
「蓮華さまの言う通りにしろ。」
「よっ、と!!」
一刀は屋根から飛び降りた。
そして、着地時に膝を曲げて前転する事で衝撃を緩和した。
「なんと往生際の悪い・・・・・。」
そう言いながら甘寧も飛び降りる。
「し、思春待って!!!」
「蓮華さま!?」
「お、降りるの手伝って・・・・・・////」
「・・・・・。あ、蓮華さま。蓮華さまはそのまま―――」
逃走しだして十数分は経った。
さすがに一刀の息も乱れ始める。
「(どっかで休みてぇな・・・・。)」
するとその時。
《チリー・・・・ン》
「また鈴の音・・・?」
《チリー・・・・ン》
「(待てよ。たしかさっきは鈴の音が聞こえた後、甘寧に襲われたんだよな。ってことは・・・・・)」
一刀は走るスピードを最大まで上げる。
《ドスッ》
その数秒後、背後から何か鈍い音が聞こえた。
振り返って見ると、そこには赤い湾曲した剣が突き刺さっていた。
「(おいおい、いよいよ殺す気か??)」
一刀はそのまま走り続け、人気のない路地に入る。
すると。
《ヒュ・・・・・・!!》
「うおっ!!」
《ガシャン!!》
今度は上から瓦が落ちてくる。
「っぶねぇな・・・・・!!」
さすがに一刀も我慢の限界のようだ。
一刀はペイロードライフルを上に向けて構える。
「ビックリさせてやる・・・・。」
屋根に当たれば砲弾が爆発する恐れがあるので、屋根に当たらないように、空に向かって撃つ。
《ドッゴォォォォン!!!!!》
突然の轟音に、屋根の上から声が聞こえる。
「な、何・・・・今の・・・・??キャァッ!!!」
「は?」
その時、真上から誰かが降ってきた。ビックリして足を滑らせたのだろう。
「キャアアアアアア!!!!!」
「おっ!?」
一刀は手を伸ばしてその人をキャッチし、いわゆる『お姫様だっこ』の状態になる。
「大丈夫か?」
「ハァ・・・・ハァ・・・・え、えぇ。ありがとう・・・・。」
「そっか。無事で―――《チャキッ》―――・・・・・良かったよチクショー。」
背後には甘寧がいた。首に剣の刃が当てられ、おまけに手が塞がっている。
一刀の負けだった。
「動くな。蓮華さまをおろせ。」
「どっちだよ。」
こうして、一刀の逃走作戦は失敗に終わったのだった。
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今回は楽しく書けた。
ちなみに作者は補習という名の悪魔からよく逃げます。
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