No.186261

真・恋姫無双 呉に降り立つ天女と御使い 第二話

南方機神さん

目が覚めたらそこは見覚えの無い部屋だった・・・

誰も見たことの無い、新しい物語の始まり始まり~♪

2010-11-23 23:29:33 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:2306   閲覧ユーザー数:1997

『お前は村人全員を騙していたんだな・・・!!』

 

・・・・・・違う。

 

『この男女が・・・ッ!!』

 

・・・・・・違う・・・!!

 

『出て行ってくれッ!!』

 

『信じていたのに・・・!!』

 

・・・・・・違う!!

 

『やーいやーいおっとこおんな~い!!』

 

『きもちわりぃーんだよ!!』

 

『あっちいけ!!』

 

・・・・・・五月蝿い。

 

『どうしてこんな子供が生まれたの・・ッ!!』

 

『バケモノめ・・・ッ!!』

 

・・・・・・五月蝿い・・・!!

 

『死んでしまえ』

 

『消えろ』

 

・・・・・・五月蝿い!!

 

『お前なんてこの世にいちゃいけねぇんだよッ!!このバケモノめッ!!』

 

「五月蝿い黙れぇぇぇぇぇッ!!!!」

 

私はそこでハッと目を覚ました。

 

気付けば息遣いが荒くなっていて、先程の悪夢で跳ね起きたのだと自覚した。

 

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」

 

気分は最悪。寝汗をかいていたのか、着ていたシャツはベトついていて更に不快感が増す。

 

「・・・・・・ッチ。」

 

苛立ちに任せて私はガシガシと自分の長髪を掻いた。

 

ふと気付けば、日差しが窓から覗いており、朝だと言うことを思い至らせた。

 

「・・・ハァ~。全く、嫌な起き方したわね・・・。・・・・・・ん?」

 

そういえばさっきは頭がグチャグチャしていて分からなかったが、ここは昨日泊まっていた部屋とは全く違うことに気付いた。

 

天井には電球なんて付いてないし、壁だって土作り。周りの細かいとこまで見れば、どこか中華っぽい雰囲気が漂っていた。

 

「・・・・・・もしかして誘拐されたとか?・・・いや、それなら『一刀』が事前に察知してるはずだからありえないし。でも、現実としてここはどこなのか分からないわけだし・・・う~ん・・・」

 

・・・・・・ダメだ。状況整理が全く出来ない。こんな時はとりあえず・・・

 

「寝るッ!!」

 

に限る。

 

私は再び布団を手繰り寄せると、頭まで被り再び眠りについた。

 

「おい、今この部屋から叫び声が上がらなかったか?」

 

部屋の前で見張っていた兵士がコソコソと喋りだした。

 

「あぁ、聞こえたが・・・だがここにいるのは男のはずだろ?さっき聞こえたのは女の声だったぞ?」

 

「確認しようにも周瑜様からは絶対に覗くなとのお達しがあるし・・・」

 

そこで一人の兵士が更に小さな声でボソッと言った。

 

「内緒で覗いちまおうぜ・・・?」

 

それに溜息をついた兵士が呆れたように言い返した。

 

「ばーか。そんなことしたら一瞬で周瑜様にバレるに決まってるだろうが。」

 

「どうしてだよ?今あの御方は政務中だぞ?」

 

同調してくれると思っていたのか、兵士は不満げに声をだした。

 

「あのなぁ・・・それだったらとっくの昔に孫策様が忍び込んでいるだろう?だが結果としてそんなこと起きていない・・・つまり、この扉を開けると何らかの方法で周瑜様にバレてしまうってことだろう。」

 

ちなみにこの部屋、この扉以外から出ることは不可能なのである。窓からは鉄格子によって無理であるし、壁にもそれぞれ鉄柱が入っているため壊すことが難しいのである。

 

その唯一の脱出口である扉に周瑜が何もしないわけなど無く・・・といったところである。

 

それにしてもこの兵士、よくここまでの推理が出来たものである。恐らく金田〇少年の祖先であるに違いない。

 

「・・・俺まだ死にたくないからやっぱ止めとこ。」

 

「あぁ。そうしたほうがいいと思うぜ。」

 

この話を屋根から聞いていた雪蓮はコソコソと自室へと戻っていった。

 

現代でいう午後5時頃。

 

祭、冥琳、そして雪蓮は部屋の前に来ていた。

 

「さて、大人しくしていて居るかのう?」

 

腕を組みながら目を細める祭に対して冥琳はフッと笑った。

 

「心配せずとも、ここからは出られませぬよ。・・・ところで雪蓮?貴女昼間部屋から消えていたけどどこに行ってたのかしら?」

 

ギクッと体を一瞬硬直させてから雪蓮は答えた。

 

「ちょ、ちょっと厠で用を足しに・・・」

 

「ほう・・・それにしては『やけに』長かったなァ・・・?本当なのかしら?」

 

キラリと目を光らせるその姿はまるで目の前の獲物に今にも飛び掛りそうな虎を思い浮かばせた。

 

「ほ、ホントよッ!?」

 

必死に嘘を貫き通そうと冷や汗を流しながら答える雪蓮。

 

その目をジーっと見る冥琳だったが、やがて溜息一つすると「分かったわ」と言った。

 

心の中で「ふぃー・・・危なかったぁ~・・・」と雪蓮が思っていると、冥琳は今度は祭の方へとグリンと首を回した。

 

「祭殿?貴女にも一つお伺いしたいことが?」

 

その様子に祭は体を仰け反ったが、続きを促した。

 

「今日の町の警邏、貴女でしたよね?それなのに何故居りませなんだか?」

 

「あ・・・・・・。」

 

そのことを今になって思い出したが、冥琳はその心を読んだかのように続け様に言った。

 

「おや?そのご様子だと今の今まで忘れていらしたようですが、そんなに大事な用が貴女にありましたかなァ・・・?」

 

再び目がキュピーンと光る様は、まさに獲物をロックオンした鷹のようだった。

 

(・・・・・・サボって酒を飲んでいたとバレたら公謹のヤツ怒り狂うじゃろうな・・・)

 

その様子を思い浮かべたのか、ブルッと体を震わせる祭だった。

 

何も言わない祭に対して、冥琳は非情にも止めを刺した。

 

「そういえばァ、つい先程調理場を覗いてみたところ、酒瓶の五つほど少なくなっておりましたがァ、『どこ』の『誰』が飲んだのでしょうねェ?祭殿ォ?」

 

「い、いやな公謹?あれはじゃなぁ、ホントに出来心で・・・」

 

泣き顔になりながら祭は弁明しようとするが、冥琳はそれを手で制した。

 

「祭殿。」

 

「・・・・・・はい。」

 

「一ヶ月の禁酒を命じます♪」

 

笑顔で言われたその一言に、祭は一瞬時が止まったかのように動きを止めると、次の瞬間滂沱の涙を流し始めた。

 

「そ、それだけは勘弁してくれェェェェェェェッ!!!!公謹、それだけはァァァァァァァァッ!!!!」

 

床に崩れ落ちながらも尚冥琳の足にしがみ付き、懇願する祭。

 

「黙らっしゃいッ!!今度と言う今度は許しませんよこのサボり魔ッ!!貴女のお陰でどれだけ迷惑したと思ってるんですかッ!!」

 

激怒する冥琳はまるで蜂の巣を突いた様に次々と祭に説教の言葉を紡ぎだす。

 

その言葉一つ一つに怯えまくる祭を見て、遂に笑いが堪えられなくなったのか、雪蓮が爆笑し始めた。

 

「あぁ~あ、祭もダメねぇ~。私みたいに上手に嘘をつけば怒られずにすん・・・だの・・・に・・・?」

 

最初は明るかった声が次第に途切れ途切れになった。

 

何故なら雪蓮の目の前には鬼よりも怖い形相をした冥琳が此方を見ていたからである。

 

「しぇ~れ~ん~・・・・・・?」

 

「ア、アハハハハ・・・ハ・・・・」

 

次の瞬間雷よりも大きい怒声が響いた。

 

「二人ともそこに座りなさいこの仕事サボり魔がァァァァァァァァァッ!!!!!!!!」

 

「分かりましたか二人とも?」

 

「グスッ・・・うん、分かった・・・」

 

「ううぅ・・・・・・」

 

そこには二人のマジ泣きした大人がいた。

 

「はぁ・・・、少々刻が過ぎたがまぁいいだろう。・・・ほら二人とも立ちなさい。」

 

言われて立つ二人は涙を拭き、扉の前に立った。

 

「それじゃ開けるわよ・・・」

 

雪蓮が二人に確認を取ると、両者頷いた。

 

ギィ・・・・・・

 

扉を開くと、三人の目に映ってきたのは・・・

 

鉄格子を何とかして引き剥がそうとする青く美しい髪をした一人の少女だった。

 

「~~~~~~~~!!!!!」

 

扉の向こうから聞こえる怒声で目を覚ました私は、夢かと思って二度寝しようとしたが、やはり現実だと言うことに落胆してベットから跳ね起きた。

 

「二度寝の時も最悪な起こされ方だわ・・・」

 

窓を見れば既に日が傾きつつある。

 

「でもまだ『交替』するにはまだ早いか・・・」

 

その時、私のお腹からグゥ~という音が聞こえた。

 

そういえばまだ朝から何も食べてなかたっけ・・・?

 

唸るお腹を擦りながら私は未だに怒声が聞こえる扉へと目を向けた。

 

「向こうから出るのは無理そうね・・・。んじゃこっちは・・・っと。」

 

言って窓側へと移動する。

 

見れば頑丈そうな鉄格子が嵌っていてちょっとやそっとじゃビクともしなさそうだった。

 

「こんな時一刀だったらなぁ・・・まぁ仕方ない・・・っか!!」

 

無理を承知で鉄格子を手で掴み、思いっきり此方へと引っ張ってみる。

 

「ふぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ・・・・・・!!!」

 

が、案の定ビクともしない。

 

「だぁああああもうッ!!こうなったら意地よ!!意地!!」

 

私はもう一度鉄格子を掴み、そしてさっきよりも全力で引っ張った。

 

すると、突然後ろの扉が音を立てて開いた。

 

何事かと思ってみて見れば、そこには三人の女性が此方を見て唖然としていた。

 

「?」

 

不思議に思った私は、引っ張るのを止めて振り返った。

 

・・・・・・全員が全員私と同じ位の胸をしていてビックリしたけど。

 

一応これでも自慢だったので、なんだか少し複雑な気持ちになってしまった・・・。

 

私がそんな気持ちを抱いていると、割と大人っぽい少し紫がかった長髪をした女性が話しかけてきた。

 

「・・・貴様、ここにいた男はどうした?」

 

突然何を言われているのか分からなかった。

 

「・・・貴女どちら様よ?」

 

というか初対面なんだから挨拶位ちゃんとしなさいよ・・・

 

「ワシか?ワシはここ孫家の宿将黄蓋じゃ。見慣れん顔じゃが・・・ってそんなことはどうでも良い。」

 

案外場に流されやすい人なのかしら・・・?

 

「もう一度聞く。ここに居った男はどこじゃ?」

 

再び聞かれた質問の真意が分からないんだけど・・・

 

「ここには最初から私一人しかいないわよ。人違いじゃないかしら?」

 

「いやそれはありえない。私達はここに軟禁していた男に会いに来たのだ。それに男はこの特別な部屋に入れておいたのだ。この部屋以外そんな鉄格子など付いてはいないし、間違えるはずも無かろう。」

 

腕を組みながら此方を見据えてきた眼鏡の女性はキッパリと言った。

 

うーん、目を見た限りでは、どうやらその話は本当のようだし・・・

 

すると今度は桜色をした長髪の女性が此方に話しかけてきた。

 

「ねぇ、貴女名前はなんて言うの?」

 

「雪蓮、今はそんなことを聞いている場合じゃ・・・」

 

「黙って冥琳。私に考えがあるの。」

 

そういってその女性は眼鏡をした女性を黙らせた。

 

・・・まぁ聞かれた以上は此方も答えたほうが良さそうね。

 

「私の名前は北郷一香よ。一応もう一つ名前はあるけれど・・・」

 

「姓が北郷で、名が一香ね。・・・冥琳、侍女にそんな名前を持った子いたっけ?」

 

話を振られた冥琳と呼ばれた女性は首を横に振った。

 

「いや、聞いたことは無いな。新人だとしても、そのような話は上がってきてはいなかったし・・・。」

 

侍女?それに宿将?それに孫家?しかも黄蓋だなんて・・・さっきから妙に時代劇っぽいことを言ってるけど何なのかしらね?

 

やがて再び桜色の長髪をした女性が此方に振り向いた。

 

「ねぇ、貴女って何者なのかしら?」

 

何者って聞かれても困るんだけど・・・

 

「そんなこと言われたって、人間、としか答えようが無いじゃない。」

 

「お主、我等を舐めているのか?」

 

キッと睨みつける黄蓋と名乗った女性は、腰に差してあった剣を此方に切っ先を向けて抜き放った。

 

私は反射的に後ろに飛び抜くと、その女性を睨み付けた。

 

「その反応からして、貴様間者か?」

 

あぁもうさっきから古臭い言葉ばかり使って何なのよ全くッ!!

 

「間者って忍者の事でしょ!!さっきから時代劇みたいな単語をベラベラと話して・・・あんた達はキャストか何かなのッ!?」

 

私の言葉が何かおかしかったのか、三者同様に首を傾げていた。

 

「にんじゃ・・・?きゃすと・・・?ええい、訳の分からぬ言葉を言いおってからにッ!!幻術か何かの類かッ!?」

 

もう訳が分からない。言葉遣いも滅茶苦茶古いしッ!!

 

と、気が付けば日がまさに沈もうとしていた。

 

それに気付いた私は少し焦った。

 

「ック!!あんた達早く出て行ってッ!!」

 

突然の言葉に驚いたのか、眼鏡をした女性が聞いてきた。

 

「・・・・・・何故だ?話はまだ終わってはおらんのだが?」

 

あぁもう本当に時間が無いッ!!

 

こうなったら仕方ない・・・強行突破よッ!!

 

私は素早く前のめりになると、瞬時に足裏に力を溜めて解き放った。

 

爆発的な速度が出て、その反動で床が凹んだ。

 

「ッ!?」

 

三人はいきなり私が目に捉えられなくなったので驚いたようだった。

 

よし、行けるッ!!

 

そう思った時だった。

 

次の瞬間、私は再び鉄格子のところまで弾き飛ばされていた。

 

遅れて腹部に鈍痛が走る。

 

「っ痛!!」

 

前を見ると、そこには丁度潜り抜けようとしたところに桜色の長髪をした女性の足があった。

 

・・・どうやら瞬時に反応して蹴りを入れたらしい。

 

「ゴホッ・・・ゴホッ・・・!!」

 

当たり所が悪かったのか、上手く力が入らない。目がチカチカとして気持ちが悪い。

 

あぁ・・・もうタイムリミットだよ・・・

 

「よくあの速度に反応できたな雪蓮?」

 

眼鏡をした女性が桜色の長髪をした女性に問いかけていたのが耳に入ってきた。

 

「まぁ最後のほうは勘だったからよく覚えてないけど♪でも我ながらいい蹴りだったわね。」

 

・・・どんな勘よ、どんな。

 

私は薄れゆく意識の中で三人に言った。

 

「・・・いいわよ。見せたげる。けど、あんた達はきっと見ないほうが良かったと思うはずよ。」

 

私の言葉に疑問を持ったのか、口を開こうと眼鏡をした女性(・・・ってもうメンドイから眼鏡でいいや。)を遮って、私は続けた。

 

「・・・ゴメン、一刀。約束守れなかったわ・・・」

 

そうして日が落ちるのと同時に私の体は光り輝いていった。

 

「一体なんじゃ!?」

 

祭は眩いばかりの光を放ち始めた少女・・・一香を見て言った。

 

よく見れば少しずつ骨格や肉などが変形し始めているではないか。

 

しかしおぞましい、という感じではなく自然となっていくので何故か不思議と受け入れることが出来ていた。

 

雪蓮や冥琳もその姿を自分の手を通して見ていた。

 

・・・・・・やがて光が収まると、そこには一人の青年が立っていた。

 

「お主は・・・!!」

 

驚きの声と共に目を見張る祭を見て、一刀は寂しそうに微笑んだ。

 

「どうも皆さん。『始めまして』、北郷一刀です。昨日は危ないところを助けてもらったみたいで。感謝しています。」

 

ペコリと礼儀正しくお辞儀をすると、先程着ていた服と違ってキラキラ光る服に付いていた埃を軽く払った。

 

『・・・・・・・・・。』

 

目の前で起きたことに対して未だに対処し切れていない三人に対して、一刀は若干苦笑した。

 

「あの、とりあえず事情を説明したいと思いますので、適当な場所に座ってくれませんか?」

 

その声で我に返ったのか、冥琳は椅子に、雪蓮はベットに、祭は壁にもたれかかった。

 

その姿を見て安心したのか、優しげな表情を一刀は作ると、まず、と前置きを入れてから話し始めた。

 

「いろいろと気になられることもあるとは思いますが、どうか自分の話を最後まで聞いてください。後で質問を受け付けますから。」

 

『コクリッ』

 

と三人はそれぞれ頷くと、それを見て一刀は口を開いた。

 

「先程見て頂いたとおり、俺は周りと違って特異な体を持っています。二重人格・・・に近いと思います。あぁ、言っている意味が分からないですよね。えっと・・・簡単に言えば、俺はもう一人の自分、北郷一香とこの体を分け合っているものと考えたほうがいいかもしれませんね。・・・それも、日が昇ると北郷一香が目覚めてこの体を動かし、逆に日が暮れてからは俺、北郷一刀がこの体を動かす・・・といった具合に、お互い活動できる時間が限られているのです。なんでと聞かれてもこれは自分でも物心ついた時から一香と一緒にいたので分からないんですが・・・」

 

そこで一刀は区切ると、何かここまでで質問は?と三人に聞いた。

 

そして最初に手を上げたのが、冥琳だった。

 

「ということはなんだ?先程の貴様・・・一香だったか。それは今この話を貴様の中で聞いているのか?」

 

「はい。聞いています。厳密に言えば、一香が此方の話に興味を持っているときだけですが。あと思考もお互い意識しあえば共有することも可能です。」

 

「はいは~い。てことは何?貴方と彼女、どちらがその体の本当の持ち主なワケ?」

 

雪蓮がジーと一刀の体を不思議そうに見ながら聞いた。

 

「えっと、体の本当の持ち主とかは決まってないって言うのかな・・・。記憶は少ししかないけど、恐らく俺達が産まれた時からだと思うので、正確には判りませんね。」

 

その時雪蓮はハッとした。

 

その話を終えたときの一刀の表情が一瞬暗くなるのを。

 

しかし雪蓮はそれを指摘をしなかった。

 

「では続きをお話します。・・・訳あって俺達は旅をして各地を転々としてたんですが、ある時夢を見ましてね。こんな俺達を必要としてくれている人たちがいるいうお告げがあったんです。そこで自分達はそこに向かっていたんですが・・・気付くと此方のお屋敷?なのでしょうか、寝かされていたという状況だったんです。そこまでが自分の新しい記憶です。後は今朝方に一香と『交替』して現在に至る・・・というわけです。」

 

そこで一刀の話は終わった。

 

暫く黙って聞いていた雪蓮が再び質問した。

 

「それじゃあ貴方は天からの使者ってことでいいのかしら?」

 

「はぁ、天からの使者ですか・・・」

 

漆黒の髪をポリポリと掻きながら復唱する一刀に、祭は説明をした。

 

「お主らの聞いたお告げとやらはどういったものかは知らぬが・・・ワシ等はある占い師の噂を聞きつけ、その場所に赴いたところにお主が居ったのじゃ。その内容とは、「巣湖へ天より使われし者が現るだろう。その者仕官しえる王に天下は訪れるであろう。」というものだったのよ。そこで我等はお主を保護し、ここに運び込んできたわけなのじゃ。」

 

その説明を聞いて、一刀は頷いた後、暫くの間黙ってしまった。

 

・・・どうやら、一刀のもう一人の人格である一香と話しているようだった。

 

やがて、顎から手を離してゆっくりと、しかし確信を持ってこう言った。

 

「もし貴女の言う事が本当ならば、此方のお告げと類似している点が幾つかあります。」

 

「本当(かッ)!?」

 

雪蓮と祭は同時に声を上げた。

 

しかし、一刀は少し表情を寂しげにしながらこうも言った。

 

「しかし・・・個人的な意見としては、今すぐにでもここから立ち去りたいんです。」

 

その言葉に冥琳は反応した。

 

「何故だ?」

 

少し言い辛そうにしていた一刀だったが、ポツリポツリと言い始めた。

 

「・・・・・・先程自分達は訳あって旅をしていたと言いましたよね。何故だと思いますか?」

 

「ん?なんじゃ好きで旅をしていたわけではないのか?」

 

祭は首を傾げながら疑問に思ったことを口にだした。

 

「・・・・・・そうじゃ・・・無いんです。俺達は、親に捨てられたんです・・・。」

 

「え・・・?」

 

雪蓮はまた一瞬悲しそうな顔をした一刀の表情を見逃さなかった。

 

その表情は、一番最初に浮かべたものとは比べ物にならないほどの・・・悲しみ。

 

「ほら、俺達ってこんな体じゃないですか。・・・最初は親も何かの見間違いだって目を逸らしてたみたいですけど・・・。けど、現実を見た途端に態度が変わって俺達の事を「バケモノ」扱いしだしたんです。そして、俺達が寝ている間に・・・誰も知らない山奥に捨てたんです。」

 

その言葉は震えていて、当時どれだけの絶望感が二人を襲ったのかを物語っていた。

 

「それからというもの、俺達はなんとか生きる為の術を必死に習得して、各地を転々としたんです・・・。ですが、どこの土地も最終的には追い出されました。ひっそりと暮らしていても、それは同じでしたよ・・・。死ねば楽になれるのだろうかと何度も思い、その度にお互いがお互いを支えあって今まで生きて来れました・・・」

 

そして、一呼吸入れてから一刀は震える口で言った。

 

「貴女方は俺達が怖くないんですか・・・?体が日があるなしで変わるし、それに産まれた時からあるおかしな力だってある・・・。人だって平気で殺せるし、それに・・・」

 

「話はそれだけかしら?」

 

「え・・・?」

 

前を向けばそこに立っていたのは冷めた目を此方に向けた雪蓮だった。

 

「ようはあんた達は結局どうしたい訳よ?ここから出て行きたいの?それともお告げにしたがってここでその役目を全うしたいの?」

 

「お、俺達は・・・」

 

「甘えてんじゃないわよッ!!」

 

突然の怒声に一刀はハッと雪蓮の顔を見上げた。

 

「あんた達がいた天の世界では殺し合いがおかしかったのかも知れないけど、少なくてもこちらはそれが当たり前よッ!!それに体が変?それがどうしたって言うのよ。変な力がある?上等じゃない。その力を使って誰かの役に立つことをすればいいじゃない!!体なんて、少なくても私は気にしないわよ!!親は確かにあんた達を捨てたかもしれない。けどッ!!あんた達を産んだのは間違いなくあんた達の親なのよ!!それに感謝したことが一回でもあるの!?」

 

一刀とその中で話を聞いていた一香は、その言葉を受けてある日々を思い出した。

 

・・・そう、それはそこに確かにあった幸せな日々。

 

一香が町を歩けば誰もが優しい声をかけてくれ、一刀が話をすれば誰もがその話を静かに聴いてくれた。

 

たとえ結果的に村や町から追い出されたとしても、そこには確かな幸せが存在した。

 

そして、たとえこんな体でも、そして最後には自分達を捨ててしまった親でも。

 

・・・・・・今の自分がいるのは他でもない両親が自分を産んでくれたからこそだった。

 

「・・・・・・もう一度聞くわ。あなた達はこれからどうしたいの?」

 

雪蓮が再び聞いてきた。

 

(一刀・・・私はあんたに任せるわ・・・だって、私はあんただから・・・)

 

一香が意識の中でそう語りかけた。

 

一刀はやがて心の中で静かに決めた。

 

「・・・俺達は・・・いや、『俺』は・・・」

 

言って立ち上がりながら、今まで二人で決めたことではなく、『一人』で決めたことを力強く言う。

 

「俺はたとえどんなに皆から嫌われたとしても、俺はこの体と力を皆の為に使いたいと思う。・・・それが、俺のこれからしたいことだ。」

 

そういうと、目の前に立っていた三人の女性が各々微笑んだ。

 

「ではその力、我等が孫家に使って貰いたいのだが?天から来し天女と御使いよ?」

 

微笑みながら雪蓮は手を差し出した。

 

「・・・お受けしましょう。この身とこの力、孫家の為に。」

 

一刀はその手を取り、一香と共にその想いを心に刻み込むのであった。

南「機神と~」

 

雪「雪蓮の~」

 

南・雪「あとがきコ~ナ~」

 

南「はい連日更新で最高にハイってる機神だ。」

 

雪「そういえばこの小説から始めることになったのね。まぁ当然だと思っていたけれど。」

 

南「ああ。なにやら投稿した順がいいとか。まぁそりゃシリアス、ギャグ、シリアスのほうがテンポ的にいいわな。」

 

雪「ちなみにこの一刀と一香?だっけと私達って同い年なの?」

 

南「そうだねぇ。私達っつっても祭はちが・・・イエナンデモナイデスヨ?祭サン?」

 

祭「ワシはどうだって?機神?」

 

南「いやぁ、今日もとてもお美しいと思いましてね。ね?雪蓮?」

 

雪「そーね~。」

 

祭「フッフッフ・・・そうじゃろうそうじゃろう!!」

 

南「・・・さて、一応ストーリーを書いてみたんだがいかがだったろうか?展開的には一度一刀と一香には吹っ切って貰った方が良かったからこういう展開にしてみたんだが。」

 

雪「ま、一重に私のお陰よねぇ~♪」

 

南「はいはい。まぁそう簡単に吹っ切られるわけも無く・・・とこれ以上はネタバレの可能性もあるから黙っておこう。」

 

雪「てかさっきの質問に答えてないじゃない。答えなさいよ~」

 

南「判ったから瓢箪で殴るの止めてくれ。意外とイテェんだぞこれ。・・・・・・一刀と一香はそれぞれ20歳位だと思ってくれ。理由は雪蓮達もその位の年齢だと思ったからな。」

 

雪「へ~機神の私達のイメージってそうなんだぁ~」

 

南「蓮華は18くらいだと認識してるし、シャオは・・・あれで16ぐらいあるんじゃないかと思ってる。」

 

雪「まぁ妥当っちゃ妥当よね。」

 

南「さて今回はこれにてお開きにしたいと思う。まぁ次回も期待して待っててくれるとありがてぇな。」

 

雪「それじゃあ読者の皆。また会いましょ♪」

 

南「さらばだッ!!」

 


 
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