No.183278

真・恋姫無双~君を忘れない~ 十七話

マスターさん

十七話の投稿です。
今回は一刀の策についてと戦場をお送りします。
あまり期待はしないでください。駄作です。
今回は次回予告なるものを付けてみました。

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2010-11-08 00:14:18 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:14949   閲覧ユーザー数:11975

桔梗視点

 

「俺の世界では、董卓さんは連合軍に敗れます。厳密には敗れたわけではないんですけど、結果的に洛陽を放棄して、長安まで退くはずです」

 

 北郷の言葉は驚くべきものだった。月殿の軍が敗れる。恋や霞を有する西涼の精強な兵がそんな簡単に敗れるだろうか?

 

「ふむ、確かにその可能性は否定できまい」

 

 しかし、冷静に考えると、その話も信じられないものではなかった。恋や霞は猛将ではあるが、それはあくまでも原野での戦ということが条件である。おそらく、董卓軍は虎牢関で連合軍を迎え撃ち、兵力の差を考えると、籠城戦をするだろう。そうなると、恋や霞の力を十分に発揮できないはず。

 

「しかし、堅牢な虎牢関を抜くことは至難の業。連合は大軍なので、兵糧などに悩まされるのでは?」

 

 焔耶が不思議そうに首を傾げながら、異論を唱えた。焔耶の言うとおり、虎牢関は堅牢な事で有名で、いかに連合軍が大軍を抱えていようと、そこを抜くのはかなり困難なはずである。

 

 また、連合の盟主はどうせ袁紹であろうが、あやつに連合を取り纏めることなど出来るとは思えず、また諸侯も自分の兵を傷つけたくないと戦に積極的になれず、数だけの烏合の衆になる可能性もあり得る。

 

「ふむ、確かにそれはあるだろうが、儂はこの連合の結成自体に、悪意を感じる。もし、誰かが作為的に反董卓連合を結成させたのだとしたら、その後の展開も用意してあるはず。連合が結成された時点で、すでに月殿に勝機はあるまい」

 

 考えればおかしな話だった。月殿が西涼の田舎太守だからと言え、その実績を確認せずに連合を結成するなど。いくら袁紹が阿呆だからといって、帝がいらっしゃる都に兵を向けるなど、常人のすることではない。

 

 しかし、一体誰がそんなことをするのだ?

 

 儂は細作から上げられた情報を、頭の中でもう一度確認した。月殿は洛陽入りを果たした後に、宮廷の治安を守るために、張譲らを筆頭とする十常侍を粛清した。

 

 そのおかげで宮廷内のゴミは一斉に排除され、月殿も自分の思うとおりに政治が出来る体制は整えたはずだった。

 

 その後の情報はあまり入ってきていないが、月殿が己の欲望のために悪政を布くことなど絶対あり得ない話である。

 

 ということは、十常侍を粛清した後に、何かが起こったと考えるのが妥当であろう。月殿の出世に嫉妬した、愚かな廷臣が袁紹と結ぶのは、考えられぬ話ではないが、そやつの力だけでは、ここまで話を大事には出来んであろう。

 

 では、一体誰が……?しかし、今は犯人を捜す前に、月殿救出の方が優先すべきだろうと、儂は北郷の話す策に耳を傾けた。

 

一刀視点

 

「もし、虎牢関が抜かれた場合、董卓さんはどうするでしょう?」

 

 とりあえず、虎牢関が抜かれるという可能性については、桔梗さんからあり得るという答えをもらえた。俺が考えた作戦は、董卓さんが負けることを前提としている。

 

「月殿の事、帝のいらっしゃる洛陽を戦場にはしまい。もし虎牢関が抜かれた場合、お主の言うとおり、長安、あるいは本拠地である天水まで退くか……」

 

「あるいは、自らの首を連合に差し出すかしか、戦を終わらせる手はないわね……」

 

 紫苑さんの呟きに室内の空気が一気に重くなった。自体はそれほどまで逼迫しているという事だ。それは曲げようのない事実だった。

 

「まぁ、紫苑の言うようにはなるまい。詠のやつが易々と月殿の命を差し出すような真似は許さぬて」

 

 桔梗さんの言葉にホッと胸を撫で下ろした。敗北という事は、すなわち死を意味する事が、この時代においては普通なのだ。

 

「だったら、董卓さんは都から脱出する可能性が高いわけですね」

 

「そこを狙うか……」

 

 桔梗さんは、俺の言葉で、何を考えているのかを読めたらしい。紫苑さんも軽く頷いている。

 

「はい、兵隊を率いることが出来ない以上、俺たちだけの力で何とかするしか方法はありません」

 

「しかし、月殿が洛陽から脱出できるとは限らん。それにそんなに都合良く、儂らが洛陽に到着するともな。そして運よく月殿を救出できたとて、その後はどうする?まさか、連合に月殿は悪くないとでも言ってみる気か?」

 

 その通りだ。俺の狙い、それは洛陽から撤退している所を狙って、董卓さんを救出するということ。しかし、実際問題、そんなに都合良く物事が運ばれはしないだろう。

 

「おそらく連合にも、洛陽を見れば、董卓さんが悪政を布いていたという話が事実無根であることが分かる人間がいるでしょう。そうなれば、連合はその存在意義がなくなります」

 

 連合には曹操や劉備も参加するはず、きっと洛陽を見れば、董卓さんが名君である事を理解してくれるはずだ。

 

「なるほど。考えたの。後は、儂らが間に合えば良いのだがな」

 

「……はい。賭けみたいなものでしょう。でも、俺達には手は残されていません」

 

「まぁ、そうだの。それに賭けるしかないか」

 

 そういうわけで俺の提案した策、いや、この場合、策にすらなっていないのだろうけど、俺の考えが採用された。

 

 すぐに俺たちは行動を開始した。董卓さんを救うために。目指す場所は洛陽だ。

 

華琳視点

 

 反董卓連合。麗羽からの檄文により、諸侯が兵を率いて集結した。麗羽によると、董卓は悪逆非道を絵に描いたような人物で、都の洛陽に住む民は虐げられ、安寧な暮らしを奪われたそうだ。

 

 董卓という人物に関しては、あまり情報が多くなかった。元々西涼の田舎太守であるので、誰も彼女に注目なんてしていなかったのは当然と言えば当然よね。

 

 董卓が洛陽入りを果たしたという報告を聞いた私は、すぐに部下の桂花に細作を放つように命令した。桂花は実に見事に情報を集めてくれた。その情報には、董卓が十常侍を全て排除したところまでは書かれていた。しかし、その後はどういうわけか細作から情報が上がることはなかった。

 

 この連合はどうにも怪しかった。麗羽はどこから檄文に書いてある情報を入手したのだろうか。細作を放って、情報を一つ一つ確認するような細かい作業を、あの女がするとは考えられない。そして、それを自主的に行うような優秀な家臣もいない。

 

 怪しい部分は多く見られたものの、名声を得るために、私たちも連合への参加を表明した。他の諸侯も、ある者は本気で檄文を信じ、ある者は檄文が本当かどうか確かめるために、ある者は私と同様に名声を得んがために、連合へと参加しているようだ。

 

 まぁ、本気で檄文を信じているものは、自分たちで情報集めを怠っているという証拠だから、論外であるし、檄文の真偽を確かめると言う者も、都に兵を向けている時点で、すでに手遅れ。そんな諸侯は相手にならない。

 

 実際、連合に参加している諸侯の中で、私の覇道の邪魔になるような人物は、西涼連合盟主の馬騰、今回は娘の馬超を送っているようだけど、彼女は私にとっては大きな壁になるでしょう。

 

 そして、袁術の元に客将として飼われている孫策。一目見ただけで、彼女もまた王の器であることが分かった。いずれ、飼い主を食い殺して、自らの意志で覇道を歩もうとするのでしょう。フフ……楽しみね。

 

 連合軍は麗羽を盟主にして、洛陽に向けて進軍した。まずは立ちはだかる汜水関を攻略するために、麗羽は劉備を先鋒に配した。

 

 劉備は、黄巾賊の反乱の際に戦功を立てて、特に関羽、張飛という二人の豪傑を従えている事で有名だった。私も実際に黄巾賊の討伐の際に共闘したが、二人の強さは春蘭、秋蘭に勝るとも劣らないほどだった。

 

 しかし、率いる兵力は微力で、汜水関を守る華雄と正面から戦ったのでは、勝てるはずもなかったのだが、挑発で華雄を関の外に誘き出し、その突撃を麗羽の軍に擦り付けるという策を用いて、回避した。突出した華雄を連合が包囲して、撃退することが出来た。そして、汜水関を見事に抜く事が出来た。

 

 

 そして、私たちは最後の砦である虎牢関へと兵を進めた。洛陽を守る最終拠点にして、難攻不落の軍事拠点。虎牢関は、その名に違わぬように、麗羽たちの攻撃を撥ね退け続けた。

 

 汜水関で戦功を取られてしまったのが悔しくて、今度は麗羽たちが主力となって関所を攻め続けているものの、さすがに今度は関所から打って出ようなどとは、敵も考えてはいないようね。

 

 虎牢関を囲んで何日過ぎたろうか、連合も諸侯同士の小競り合いや、兵糧などの問題が浮き彫りになり、士気はかなり低くなってしまっていた。そろそろ、潮時のようね、そんな風に考えていた時だった。

 

「華琳様!」

 

 桂花と秋蘭が慌てた様子で幕舎の中に入ってきた。

 

「どうしたの?」

 

「董卓軍に動きが見えます。どうやら、関所から打って出るようです」

 

 秋蘭は、口調こそ冷静ではあったが、表情には困惑の色を隠す事が出来ないようだった。当然よね。どうして、もう少しの所で、連合を崩壊させられるという時に、わざわざ籠城の利点を捨てて、打って出る必要があるというのだろうか?

 

「それは確かなの?」

 

「おそらく。董卓軍は呂布と張遼を先鋒にして決戦を仕掛けるようです」

 

 呂布と張遼。二人の勇名は中原まで届いている。呂布は自身の武は人知を超えていると言われ、黄巾賊の反乱では、一人で三万の賊を屠ったという報告がある。

 

 張遼も、神速の張遼と謳われるほどの用兵術の持ち主。正面きっての戦いなら、こちらも相当の被害を覚悟しなければならないだろう。数では勝っているものの、士気の落ちた今の連合軍ならなおのことね。でも、どちらもここで討ち取ってしまうのは惜しい人材ね。

 

「……御所望ですか?」

 

 桂花が私の目を伺いながら尋ねてきた。いけないわね。自分の欲望を部下に悟らせてしまうようでは。

 

「可能かしら?」

 

「呂布はまず無理かと。春蘭、秋蘭、それに季衣と流琉を犠牲に払う必要があります」

 

 呂布は、桂花にそこまで言わせるなんて、それ程の人材ということね。惜しいけど、この子たちを犠牲に払ってまでも欲しいとは思わないわね。

 

「張遼だけならどうなのかしら?」

 

「張遼の強みはその巧みな用兵術にあります。兵と張遼を分離してしまえば、張遼の方は姉者と私でなんとなるでしょう」

 

「そう。ならば、秋蘭、張遼は生け捕りになさい」

 

「御意」

 

「そっちの指揮は、桂花、あなたに任せるわ」

 

「御意」

 

 私は幕舎の外に出た。すでに桂花たちが兵を全て集めていたようね。我らが魏武の精兵たち。この戦、私の覇道のための大事な一歩。あなた達の武を思う存分発揮してきなさい。

 

「出陣する!!!」

 

秋蘭視点

 

「出陣する!!!」

 

 華琳様の号令で、私たちは兵を虎牢関に向けた。それと時を同じくして、虎牢関からも董卓軍が出撃してきた。深紅の呂旗に紺碧の張旗を先頭にして、袁紹軍に突撃した。

 

 さすがに董卓軍が誇る二枚看板だけあって、西涼が誇る騎馬隊を縦横無尽に駆けさせて、袁紹軍の陣地を踏み荒らしていく。そこはまさに阿鼻叫喚の地獄と化し、兵士に狩られる者や馬に潰されるもので溢れた。

 

 時期尚早だ。呂布と張遼が轡を並べて戦場を駆けている限り、それを止められるものはいないだろう。桂花もそれを分かっているようで、指示を出していない。

 

「桂花!どうして突撃しない!?」

 

 桂花が何も指示しないのを見て、姉者が不満の声を上げた。

 

「はぁ!?あんた馬鹿じゃないの!?今、突撃した所で呂布に邪魔されるだけでしょ!」

 

「何!?誰が馬鹿だと!馬鹿と言う方が馬鹿に決まっておるだろ、この馬鹿め!」

 

「姉者、少し落ち着いてくれ。桂花の判断に今は従おう。華琳様が桂花に指揮を委ねたのだから」

 

「しゅ~ら~~ん……」

 

 フフフ……可愛い姉者をもっと見ていたいのは山々だが、今は張遼を捕らえるのに尽力しなければいけないな。

 

 袁紹軍の陣を半ばまで駆けたところで、張遼の部隊は呂布の部隊から離れ、そのまま転進し、今度は袁術の陣へと向かった。

 

「今よ!全軍、前進せよ!」

 

「よし、突撃だ!!」

 

「ちょっ!あんたぁ!!」

 

 桂花の声を聞くや否や、姉者は先頭を駆けて行ってしまった。やれやれ、今度は桂花の方を宥めなくてはいけないではないか。

 

「まぁ、我らも行くぞ」

 

「全く、これだから、脳筋は困るわよ」

 

 ブツブツと文句を言っている桂花を引き連れて、姉者の後を追った。これからが我らの仕事だ。

 

霞視点

 

「本気で出撃するですか?」

 

 城壁の上から下を見ていると、ねねが不安げな表情で尋ねてきよった。まぁ、せっかく戦を有利に進めてたんに、今から連合軍と決戦のために出撃するなんて、常軌を逸しているわ。でも、これも月のためやから、しゃーない。

 

「心配せんでええよ。うちらはそんな簡単に負けへん。な、恋?」

 

「……月は、恋が守る」

 

 いつも通り何を考えているかわからんけど、恋は言った事を必ず守る。

 

「恋もこう言ってるし、心配無用や」

 

 ねねの頭を優しく撫でた。ねねがしっかり策を練ってくれたおかげで、兵力差のある連合軍と、ここまで有利に進めてこれたんや。せやけど、あいつらのせいでそれも無用になってしもうた。

 

「じゃあ、行くで」

 

 飛龍偃月刀を肩に担いで、城壁から下に待機しているうちの兵に視線を向けた。ここまでよく耐えてくれたなぁ。ほんまにお前らはうちの誇りや。

 

「ええか!お前ら!よぅ、聞け!ここから先は修羅道、うちらは死地に入る!これが最後の戦場や!せやけど、あいつらに知らしめるんや!うちら董卓軍の誇りを!強さを!うちに命を預けてくれ!!」

 

「おう!!!!!!!」

 

「全軍、出撃!!!!」

 

 うちと恋を先頭にして、まずは城壁に取り付いていた袁紹軍の陣に雪崩れ込んだ。これまで、ずっと狭い関所の中にいたんや、溜まっとった鬱憤を存分に晴らさせてもらうで。

 

「うらぁぁぁぁぁ!!」

 

 馬上から飛龍偃月刀を振り回し、兵の首を刈り取って行く。やっぱ、戦場はこうやって駆け回ってなんぼやなぁ。

 

「恋!うちは袁術の部隊に向かう!こっちは任せてええか!?」

 

「…………(こくん)」

 

「よし!生きっとったらまた会おうな!」

 

「…………大丈夫。恋も霞も強い」

 

 恋に力強く頷いて見せ、うちは部隊を転進させた。連合の中でもっとも兵力を有しているのが袁紹、その次が袁術や。この両軍を壊滅させれば、うちらにも勝機は見えるかもしれん。

 

 せやから、うちは諦めへんよ。このまま連合軍を打ち破って、そのまま洛陽に帰るんや。月を助けるためにも。恋も言うてくれた。うちは強いって。恋が強いって言ってくれたんや、うちは負けへん。

 

次回予告

 

「う、うちは負けられへん……。絶対に……絶対にやぁぁぁぁ!!」

 

「その意気やよし!私も華琳様のために負けるわけにはいかん!!」

 

「はぁぁぁぁぁ!!!」

 

「おぉぉぉぉぉ!!!」

 

 戦場に舞う二人の鬼神。交わる刃。交わる想い。

 しかし、戦場を穢す一つの影。

 

「あ、姉者ぁぁぁぁ!!!」

 

「ぐぅ!!あぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 そして、戦は終わる。戦に負けた一人の姫は、闇に攫われ、命を奪われんとす。

 その中で天の御遣いは一人の覇王と出会う。

 

 

「あ、あなたは……?」

 

「私は曹孟徳。さぁ、北郷一刀。董卓の首を刎ねなさい」

 

「……分かりました」

 

「一刀、ダメだ!!」

 

 抜かれた刀は初めて人の生血を啜る。

 それを止めようとする少女の声は、天の御遣いには届かなかった。

 

あとがき

 

十七話の投稿です。

 

結構長くなりそうなので、ここで区切りたいと思います。

 

一刀の策ですが、期待していた皆さま、すいません。

 

いろいろ考えましたが、こんな結果に収まりました。

 

超展開は無理でした。文才がありません。

 

そして、視点は連合軍と董卓軍に。

 

連合に不信を抱きながらも、名声を得んとする華琳。

 

有利に進めながらも、決戦を挑まなくてはならない董卓軍。

 

そして、月に迫る闇の手。

 

繰り広げられる霞と春蘭の死闘。

 

一刀は月を救う事が出来るのでしょうか?

 

次回で全て明らかにします。

 

今回は次回予告を設けてみました。

 

いろいろ書いてありますが、この台詞が忠実に再現されるとは限らないのでご注意を。

 

誰か一人でもおもしろいと思ってくれれば嬉しいです。


 
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