No.177586

私のことを、夢の中へと 第五話

みかどさん

『私のことを、夢の中へと 第四話』の続きです。

お待たせしました。現代編も終わりになります。

やっと物語が始まった気がします……長かった。

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2010-10-11 10:51:38 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:2405   閲覧ユーザー数:2093

もう戻れないと思っていた。

 

きっかけなんてない、ただの偶然で始まった物語だった。

 

けれど、今度は違う。

 

始まるんだ、俺と彼女達の物語が――――

 

 

 

 

『私のことを、夢の中へと 第五話』

 

 

 

 

「……惨めだな。北郷一刀」

 

突然の呼びかけに振り向き、相手の姿を確認する。

 

 

「っ……誰だ!なぜ俺の名前を……」

 

 

見慣れない格好だった。

 

道士が好んで着るような道袍を纏い、白い肩布を羽織った男が目の前にいた。

 

 

「俺のことを貴様が知る必要などない。答えろ北郷っ!あの世界に帰りたいか?」

 

 

その問いかけに全身が硬直する。

 

先ほどとは違う疑問に頭の中が支配されていく。

 

この男が言うあの世界とは俺の捜し求めている世界のことなのか、と――――

 

 

「ちょっと待ってくれ!あの世界って……」

 

「なんだ忘れているのか?お前が愛する者たちのいる世界を」

 

 

名も知らぬ道士が俺を小馬鹿にするような笑みを浮かべて答える。

 

少々癪に障る言い方だったが、おかげで疑問が確信へと変わる。

 

 

「華琳っ……曹操達に会えるのか!帰りたい!あの世界へ……」

 

 

懇願にも似た気持ちで想いを発するが引っかかることがある。

 

 

「なぜあんたは俺を助けてくれるんだ?」

 

 

すると道士が本当につまらなそうに顔を顰めながら言葉を口にする。

 

 

「貴様が起点で始まった外史は貴様が消えることで収束に向かうはずだった。

しかし、予想を反して膨らみ続ける外史が他の外史に影響を出し始めた。

……その岩に刻まれた詩が良い例だな」

 

 

貴様に分かる話ではなかったか、と付け加えた男の言葉通り疑問符が沸く。

 

俺が起点で始まった外史?

 

俺が消えることで収束する?

 

膨らんだことによる影響?

 

訳の分からないことばかりではあるがこれだけは知らなければならない。

 

 

「……俺はなにをすればいいんだ?」

 

「俺の知ったところではない。……俺としては野たれ死んでくれると嬉しいんだがな」

 

 

聞き捨てならない言葉とともに、貂蝉が邪魔さえしなければ、とまた知らない単語が耳に入る。

 

あまり好きにはなれそうにない奴ではあるが、これだけは伝えないといけない。

 

 

「……ありがとう。あんたのおかげでまた皆に会える」

 

「ちっ……!礼などするな気持ちが悪い。それより歯を食いしばれ!

あちらに行く前に舌を噛み千切ってしまっては俺が来た意味がなくなってしまう!」

 

 

道士の言葉とともに、俺の身体が宙を舞う。

 

なにが起こったのかわからないが、確信を持って言えることが一つある。

 

このまま落ちたら川の中へ顔面ダイブだってこと――――

 

 

 

 

川に響く爆音が静まったところで森の中から男が現れる。

 

 

「別に蹴り飛ばさずとも送る方法はいくらでもあったでしょうに……左慈も無茶をしますね」

 

 

左慈と呼ばれた青年が現れた同じく道士に対して愚痴を零す。

 

 

「于吉か……。あれくらいやっても死ぬような男じゃないさ」

 

 

眼鏡を掛けた于吉と呼ばれる聡明そうな男がため息をつきながら返答する。

 

 

「妬けてしまいますね。一度は殺し合った仲である北郷を信頼するとは……」

 

「気持ち悪いことを言うな!上からの指示で仕方なくやっているだけだ!

それよりも次の仕事があるのだろう?俺は先にいくぞっ!」

 

 

形勢が悪いと見たのか左慈は逃げるように薄暗い森の中へと消えていく。

 

 

「はいはい。北郷一刀……今回は見守ることにしましょう。

外史の行く末をあなたに任せますよ?」

 

 

まるで目の前にいる人間に語りかけるような独り言を残し、左慈の消えた森へと歩を進める。

 

彼と……彼女達の物語が幕を開ける――――

 

 

 

 

『あとがき』

 

 

本当にお待たせしました。現代編は以上を持ちまして終幕です。

 

長かった……皆さんが読む量としては少ないでしょうが、

小説を書いた経験のない私が書くにはすごく時間が掛かりました……

 

そんなことはさて置き、今回タグに左慈や于吉の名前を入れませんでした。

 

読んだ人へのサプライズのつもりでしたが楽しんでいただけたでしょうか?

 

 

次回からは、華琳たちのいる三国志の世界にて物語が動き出します。

 

急展開をいくつも用意しているつもりですのでおつき合い頂けたら幸いです。

 

 

では、また『私のことを、夢の中へと 第六話』でお会いしましょう!

 

 

『追記』

 

 

正史と外史について認識を間違えていました。

 

一刀の住む世界を正史と思っていたのですが、一刀の住む世界もまた別の外史でした。

 

小説の方は修正しましたので、気になった方がいましたら申し訳ございませんでした。

 

 


 
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