No.175845

魏√after 久遠の月日の中で 5

ふぉんさん

魏√after 久遠の月日の中で5になります。

前作の番外編から見ていただくと幸いです。

それではどうぞ。

2010-10-01 23:27:12 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:23730   閲覧ユーザー数:19625

「ん…………んーー……」

 

眩しい朝日に目が覚める。

固まった体を伸ばして解す。全身に軽い痛みが走るが、気持ち良さが勝った。

これなら差し支えは無いだろう。

 

「せい!!……たぁッ!!!」

 

ぶぉん!!と、風を切る音と共に気合の入った声が聞こえる。

少しぼーっとする頭を振り、立ち上がり声のする方へ向かった。

 

「ふっ……はぁッ!!!」

 

「……………………」

 

空を覆う葉の隙間から零れる朝日。

地面に注がれるいくつもの日光の筋の中、華雄さんが鍛錬を行っていた。

人を簡単に殺せそうないくつもの斬撃。

流れるように繰り出されるそれは、背景も相俟ってどこか幻想的なものを感じさせた。

 

本当に……すごい。何故俺がこんな人に勝てたのかとても疑問に思う。

 

「ふぅ…………ん?一刀か、おはよう」

 

華雄さんはこちらに気付き動きを止めた。

 

「おはよ。朝から鍛錬か……熱心だなぁ」

 

「?武の向上は武人としての誉れだろう?一刀は違うのか?」

 

「あはは……」

 

本当に不思議そうに返してくる華雄さん。

やっぱりこの人は生粋の武人なんだなぁ。

と、華雄さんの視線が俺の脇差に止まる。

 

「一刀の武器は唯の木でできた剣の様だが、何故私の金剛爆斧と打ち合って折れないんだ?」

 

金剛爆斧……華雄さんの大斧の名前か。かっこいいな。

疑問を答えるため、一心を持つ。

 

「これは一心っていって、俺の家に伝わる木刀なんだ」

 

「ほぅ……」

 

「流石に普通に打ち合ってたら折れるだろうけど、こうやって……」

 

普段より多くの氣を込める。

すると、一心は淡い光を放ち始めた。

 

「氣を込めると、剣よりも鋭く、岩よりも硬くなるんだ」

 

「なるほど……一刀は氣を使えるのか……」

 

どうやら納得してくれたみたいだ。

ふっ、と力を抜き氣を戻した。

「ところで華雄さんはこれからどうするの?」

 

一緒に朝食をとり、小休止している華雄さんに尋ねた。

 

「そうだな、とりあえず今噂になっている蜀との国境付近の野盗共を捕まえに行こうと思っているが」

 

野盗か……ん?蜀との国境付近ってもしかして……

華雄さんの話によると、野盗等は少数。だが腕が立つため国が送った兵達では手も足もでなかったらしい。

そこで華雄さんに白羽の矢が立ったらしいが……

 

「もしかしたら、それ俺がもう捕まえちゃったかも」

 

恐らく、許昌に向かう際接触した野盗のことだろう。

道理で動きが良かったわけだ。唯の兵士じゃやられるのもわかる気がする。

 

「むぅ……そうなのか。なら今のところ予定は無いな。各地を旅して探すか」

 

「……ならさ、俺も一緒に行っていいかな」

 

「何?」

 

我ながら不躾な願いだと思う。

しかし俺にはこれからの行き先も無く、一人で旅をしていくにも心寂しいものがある。

華雄さんは、むーと唸り考え込んでいる。

武人とはいい彼女も立派な女性。男の俺との二人旅はやはり無理だろうか。

気を揉む俺に、華雄さんは漸く口を開いた。

 

「仕事はいいのか?」

 

「仕事?」

 

「一刀の腕を見るに、何処かの国の武官なのだろう?何か仕事があるんじゃないか?」

 

張飛ちゃんにも言われたな……

だが俺にはもう帰る国も職も無い。

 

「いや、仕事なんて無いよ。俺も旅をしてるんだ」

 

「……私は名も無い旅人に負けたというのか……」

 

肩を落とす華雄さん。だがすぐに顔を上げ気を取り直した。

 

「よし、いいだろう」

 

「本当!?」

 

「私も道中腕のいい相手がいなくて困ってたんだ。これで思う存分鍛錬に励める」

 

ふふふ、と本当にうれしそうに微笑む。

そうか、華雄さんとの旅なら毎日手合わせすると考えて間違いないだろう。

……俺の体もつかなぁ。

 

「ありがとう。これからよろしく」

 

「あぁ、よろしく頼む」

 

腕を差し出し握手をする。

華雄さんの手は柔らかく、予想よりもずっと小さくて綺麗だった。

森を出た俺らは、馬に乗り荒野を進んでいた。

 

当てのない旅。進む方向は華雄の気分で決まっていた。

しかし今の状態……

 

「か、華雄……そんなに動かないで」

 

「むぅ、すまんな。なかなか体制が安定しないんだ」

 

馬を連れていなかった華雄。

手綱を引く俺の背に抱きつき、落ち着かない様子で体制を変えていた。

ちなみにこれから旅を共にするとのことで呼び捨てを強要された。

まぁ仲を深める上で重要な事なので反論は無い。

 

それにしてもこの馬は本当にすごい。

多くの荷物に加えて、華雄と金剛爆斧を乗せて尚悠々と歩いている。

こいつとの付き合いも長くなりそうだし、名前をつけるか。

 

「……纏風(てんふ)なんてどうかな」

 

「ん?何の事だ?」

 

「この馬の名前。こいつとも長い付き合いになりそうだしね」

 

片手で纏風の首を撫でる。

 

「これからよろしくな、纏風」

 

すると纏風は俺に答えるように陽気に嘶いた。

 

 

 

しっかし、元の世界では女性との接点が皆無だったため。この接触は精神衛生上良くない。

華雄の形の良い胸が、女性特有の良い匂いと共に背に押し当てられ煩悩が掻き立てられる。

 

「?どうした一刀」

 

「なんでもない」

 

はぁ。

こんなので二人旅ができるのだろうか。

我ながらとても不安なスタートになってしまった。

「華琳様ー」

 

「入りなさい」

 

執務室外からの声に、中へ入るよう促す。

華琳は持っていた筆を置き、入ってきた風へ視線を向けた。

 

「先日の蜀国境付近の野盗達から例の男の情報を得ましたー」

 

「報告なさい」

 

「はいー。彼らによると、顔は暗闇によりよく分からなかったそうです。武器は……木の剣。戦闘の際に鉄の剣が折られたそうです」

 

「木が鉄を……?」

 

「続けますね。背丈は普通、体格は細めだそうです。襲い掛かる前に投降を促す言動があったようなので、随分とお優しい人柄のようですね」

 

「…………」

 

「正直これ以上の情報は望めないと思います。どうしましょうかー」

 

「……そうね、でも木の剣が武器だなんて珍しいはずだわ。木の剣を持つ容姿の似た男は、全て検問に引っ掛けようかしら。魏領地内全域に通達なさい」

 

「それはそれは……お言葉ですが華琳様。高々得体の知れない男一人に、大げさすぎじゃありませんかー?」

 

「そうかもしれないわね。でも木で鉄を凌駕する腕。興味が絶えないわ」

 

「……また華琳様の悪い癖が……」

 

「ふふ、悪いわね風。私の我侭に付き合って頂戴」

 

「了解しましたー」

 

 

 

再び筆を持つ華琳。

書簡を一つ開く。と、内容を読みその動きを止めた。

 

「……ぼうるぺん?」

 

 

 

物語の始動は近い。

あとがき

 

 

 

どうもふぉんです。

内容の少なさにごめんなさい。ですが自分はこれくらいで手一杯なのが現状です。

あとがき含めて5ページ~を目安に投稿していきたいと思います。もっと書いてから投稿しろ等の批判があれば、ご報告ください。

 

ここで事件が発生。華雄って貧乳なの?普乳なの?本編を見直した際、とっても微妙だと筆者は思ったので、形の良い、という表現にとどめておきました。

 

早くあの展開が書きたい!というのはありますが、それに至るまでの物語も疎かにできませんのでヤキモキしてしまいますね。

見てて面白い作品を作るのはとっても大変です。

 

さてあとがきはこれにて、次回作でまたお会いしましょう。


 
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