No.173460

猫飼い始めました♪

月野渡さん

地霊異変のあとたびたび神社を訪れることになったお燐に餌をやることになった霊夢でしたが博麗神社の台所事情は……

2010-09-19 13:48:46 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1108   閲覧ユーザー数:1087

地霊異変の終結後、たびたび地上に出てくることになったお燐に餌をあげることになった霊夢であったが……

「ねえ魔理沙、猫って何を食べるのかしら?」

「いや、お前そんなのも知らないで餌やりを引き受けたのか?」

 いつもどおり無理やり神社に押しかけて縁側でお茶をすすっている魔理沙は呆れ顔で答えた。

「まあ何でも食うんじゃないか? 野良猫なんか結構たくましく生きているしな」

「うん、私もそう思ったんだけどね。見てよあの子、私の出した野草の盛り合わせを一口も食べないで残しているのよ」

 魔理沙が霊夢に指した部屋の隅を見てみると、皿にこんもりと盛られた野草の前で二股の尻尾を不機嫌そうに揺らしながらそっぽ向いているお燐の姿があった。

「おいおい、いくらなんでもっつっても限度があるだろ……」

 猫の餌としてはほぼ最悪といってもいい霊夢のチョイスに魔理沙は頭を抱えた。

「何よ、私の主食にケチつけようって言うの!」

「どんだけ金がないんだお前は!」

 この神社を訪れる人妖達が自分を含め賽銭を一円たりとも入れないことは知っていた魔理沙であったが霊夢の食事情に関してはさすがに涙が出そうになった。

「ま、食べないのならしょうがないわね。仕方がないからこの出がらしのお茶っぱでも……」

「だからそういうのは食わないって!」

「どうして!? だってこれは二番煎じのお茶よ? 普段は三番まで煎じたあとでお茶っぱもおいしくいただくのを奮発して二番まででやめたやつよ!?」

「そいつは断じて奮発とは言わない!」

 道理でここのところ神社で飲むお茶がだんだん薄くなってきていることに合点が言った魔理沙であった。

「はじめは何でもいいっていってたくせにさっきからあれは駄目これは駄目って、じゃあいったいなんならいいって言うのよ」

「そりゃあ猫が好きなものといえば魚とかだな……」

「……魚なんてここ数ヶ月まともに口にしてないわ」

「だろうな」

 魔理沙自身言ってから気づいてしまったが案の定予想どおりすぎる答えであった。

「まあなんだかんだで菜食はしないんじゃないか? 魚とまでは言わなくてもなんかしら動物性の食い物のほうが猫は好きじゃないかと思うんだぜ」

「動物性ねえ……」

 ほぼ毎日の糧を『水』と『草』で補っている霊夢にしてみれば動物性の食べ物なんてものは月に一度あるかないかのご馳走である、猫の餌として出せるものはおろか、今この神社の中にあるものは何一つなかった。

「……蜂の子」

「は?」

 そんな中、ポツリと霊夢のつぶやいた一言に魔理沙は耳を疑った。

「そうよ蜂の子よ、あれがあったわ! まってなさいお燐、今すぐおいしいご飯を用意してあげるから!」

「おい!? ちょっとまて霊夢、いくらなんでもそれは……」

 そして魔理沙が止める間もなく霊夢は山の中へと飛び出していった。

 

―――数時間後―――

 巨大な蜂の巣を抱えて泥まみれになった霊夢が山から戻ってきた。

「ただいま~いいのが獲れたわ」

「お、おう、おかえりだぜ……」

 よくよく見れば蜂の攻撃をうっすらと全身を覆った結界で防いでいる。つくづく才能の無駄遣いをしているなあ、と魔理沙はため息しか出なかった。

「返して~お願いだから返してよ~」

 おまけに霊夢の足にリグルが泣きながらしがみついていた。

「なによ、あんた蛍なんだから関係ないでしょ」

「関係なくなんかない! その巣の蕃熊蜂太夫君は親友なんだ! だからお願い、食べないで~」

 なぜだろう? そんな名前がついた時点でその蜂には避けようのない死亡フラグが立っていた気がする魔理沙であった。

「いい加減にしなさい、夢想転生!」

「あじゃぱーっ!」

 懇願むなしく霊夢の一撃によりリグルは空の星へと消えた……

「何もリグル相手にラストワード使わなくてもよかったんじゃないか?」

「食材調達の邪魔するやつに容赦する理由はないわ」

 リグルのあまりの不憫さに魔理沙がふと空を見上げると大空でリグルが笑顔できめているような気がした。せめて心の中で元気に生き続けろよ、と魔理沙は思った。

「あれ? そういえばお燐はどこいったのかしら?」

「とっくに帰ったんだぜ」

「そっか、少し時間かかっちゃったもんね~おなかすかせてただろうに悪いことしたわ」

 正確には霊夢が蜂の巣を取りに飛び出していった直後に帰っていったのだがそのことは魔理沙の胸の中にとどめておくことにした。

「しょーがない、これは私が食うか。魔理沙、あんたも食べてく?」

「い、いや、あたしゃあ遠慮しとくんだぜ、じゃあな霊夢」

(今度来る時は差し入れにきのこでも持ってくるかな……)

 そう思いながら魔理沙はいそいそと蜂の子の佃煮を作り始めた霊夢を尻目に家路へとついたのであった。

 

――次の日――

 神社を訪れた魔理沙が見たものは憮然顔で茶碗とにらめっこしている霊夢であった。

「どうしたんだ霊夢?」

「ああ魔理沙、ちょうどいいとこにきたわ、これどう思う?」

 そういって霊夢が指差したのは霊夢がじっと見つめていた茶碗であった。

「朝起きたら枕元においてあったのよ、ねこまんま入りで」

「一応聞いておくが中身はどうした?」

「いただいたわ、ありがたくね」

 予想通りの答えであった。

「問題はいったいだれがそんなものをおいて言ったかってことなんだけど」

「お前は誰が置いていったか分からないものでも食べるのか……まあおそらくはお燐だろうな」

「やっぱり? でもどういうことかしらね? 今になって地霊異変のお礼とか? それともご飯のリクエストとかかしら?」

「あ、いや、たぶんそうじゃなくてだな……」

「なによ? ずいぶん歯切れが悪いわね、あなたらしくもない」

 魔理沙にはなぜお燐がそのようなことをしたのか見当はついていたがそれを直接霊夢に伝えるのは憚られた。

「お前、同情されてるんだぜ……」

「なっ!?」

 その後しばらくの間、霊夢の枕元にお燐からさとり特製ねこまんまが届けられることになるのだがプライドよりもカロリーを優先した霊夢が残さずそれを食べたことは言うまでもなかった……

 


 
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