No.171904

~真・恋姫✝無双 孫呉伝~序章

kanadeさん

リメイク第一弾。よろしくお願いします

2010-09-12 00:28:19 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:17697   閲覧ユーザー数:12629

〝真・恋姫無双―孫呉伝〟序章

 

 

 

 ――作られた外史。

 ――それは新しい物語の始まり。

 ――終端を迎えた物語も、望まれれば再び突端が開かれて新生する。

 ――物語は己の世界の中では無限大。

 ――そして閉じられた外史の行き先は、ひとえに貴方の心次第。

 ――さぁ。

 ――外史の突端を開きましょう。

 

 

 

 未だ冬の寒さの名残がある春先の夜空の下を、二人の女性が歩いていた。

 「はてさて・・・漢王朝は廃れたと評しても誰も異論は唱えん世の中になってきたな。じきに爪を研ぎ澄まし、身を潜めて好機を窺う獣たちがこぞって姿を現し始める・・・くくっ、退屈しない時代になりそうだ・・・なぁ、祭?」

 獰猛な獣のような笑みを湛え女性は自身の背後を護る女性に話しかけた。

 「堅殿は乱世になると申されるか・・・確かに、昨今の漢王朝の状態を考えればそうなったところで、なんの不思議もありはせんのう。となれば、この老兵を休ませる日はまだまだ先になりそうじゃな」

 「はっ、隠居する気なぞ更々ないだろうによく言う」

 「御尤も。時に堅殿は管路の占いを御存じか?」

 「乱世に天の御使いが降り立つ・・・だったか。時代の流れを考えればそういったものにすがりたくなる民達の心情は理解できんでもないが、民達を導く立場にいるあたし達がそれにすがるのはどうかと思う・・・まぁそれはそれとしてなんだがな、祭よ」

 「堅殿?」

 女性が立ち止まり空を見上げる。

 背後を歩いていた女性も立ち止まり共に空を見上げた。

 

 ――「何かが始まりそうな気がする・・・そう、我等〝孫呉〟にとって大きな何かがな」

 

 言い終えた途端、辺りが閃光に包まれる。その光は目を開けていられないほどに強く、体が反射的に目を閉じてしまう。

 程なくして光は治まり、閉じていた眼が自然と開いていく。

 「治まったか・・・しかし、なんだったんだ?五胡の妖術・・・或いは妖の類か

 「堅殿、どうやら有力なのは後者のようじゃ。ほれ・・・」

 指さす先に人影が倒れていた。

 先程まで影も形も無かっただけに自身で言った意見が現実味を帯びていく。自然と腰にさげていた剣に手が伸び、警戒心が強まる。

 じりじりと人影との距離を詰めていく二人。

 やがて、人影がハッキリと線を帯び、その姿形を確かにとらえる。

 「「・・・」」

 

 二人がその瞳に移したのは見た事もない服を纏った一人の青年だった。

 

 

 倒れる青年を見降ろしながら二人は考える。

 この青年は、どこからどうやって現れたのか、と。

 そうして至る結論は、先程の眩い閃光と共にというのが二人の導きだした答えだった。

 「・・・さて、管路の占いが不意に頭をよぎったな。この夜闇を切り裂くほどの光と共に現れた儒子・・・どうしてくれようか」

 傍らの女性に問いかけると問われた方は疲れ切った溜息を吐く。

 それは、わざわざ問いかけるほどの質問なのかと。

 溜息の意味を汲んだ女性はククッと笑い倒れていた青年を抱えた。

 「連れて帰るぞ♪いやぁ、本当に退屈せずにすみそうだ」

 キラキラとまるで子供のように瞳を輝かせる女性にもう一人はやれやれと再びの溜息。こんな態度こそとっていたがかく言う彼女もまた、同じ意見だった。

 「ん?堅殿、この剣、その儒子の物ではないかの?」

 ひょいと拾い上げる。

 その手に握られた剣は彼女達には全く縁のない〝日本刀〟と呼ばれる代物だった。

 「ふむ、この儒子に聞けばわかるだろうさ。一緒に持って帰るぞ」

異論などなく、肯定の意をそのまま頷いて伝える。

 ふと、日本刀に興味を惹かれた女性は鞘からその刀身を抜く。

 外気に晒された刀身は、月明かりに照らせれ美しく輝く。

 思わず二人は見惚れてしまっていた。

 「・・・これはまた、なんとも美しい刀剣だな。明命の魂切に近いが、アレに比べると少々短いな。長さはあたしの〝南海覇王・赤帝〟と同じ・・・いや、こちらの方が少し長いか・・・まぁいい、とにかく帰るぞ」

 そうして二人は帰路につく。

 

 これが後に〝天の御使い〟と呼ばれる青年――北郷一刀と〝江東の虎〟と呼ばれる女性――孫文台との最初の出会いだった。

 

 

~あとがき~

 

 

 リメイク第一弾です。

 

 今回の話は、香蓮が一刀を拾うまでとなっています。次回の話は一刀と彼女たちとの対話となりますのでお楽しみに。

 

それではまた次回のお話で――。

Kanadeでした。

 

 

 


 
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